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「観光」は「地域づくり」
 宇佐八幡で有名な宇佐市に安心院(あじむ)という町があります。農家民泊、いわゆるグリーンツーリズムの盛んな町です。親戚の人が遊びにでも来たように飾り気なく客を迎え、ありのままの農村生活を体験してもらうことをモットーにしています。首都圏や関西圏など大都市部の子どもたちがよく来てくれるそうです。農家に着いたときは多くの子どもたちがいやな顔をするそうです。しかし、数日泊まり、農家のブドウ作りや野菜の収穫を手伝い、夜はゆっくりと地場のものを食べながらいろいろな話をしているうちに、目の輝きも違ってきて、帰るときにはみんながもっといたいと言うそうです。地域にあるものをありのままで楽しむことが、都市部の人たちにとって新鮮な魅力となっているようです。他方、地域の人もこうした活動の中から地域の魅力を再認識し、自信を持ってきたとも言われます。地域の産物を地域で味わう地産地消やスローフードといった取り組みも広がってきました。
 その宇佐市の隣に豊後高田という小さな市があります。客足が減ってリニューアルできなかった商店街が逆転の発想で往年の姿そのままを「昭和の町」と銘打って、古き佳(よ)き時代の空間に昔なつかしい商品を並べて大変な人気を博しています。
 観光といえば、一般に名所旧跡や景勝地を見て歩くようなイメージがあります。しかし、本来の意味は、地域の魅力が光を発して、そこに人が訪れるようになることです。その意味で、地域の人が自然、伝統、文化、産業、そしてそれらを総合した暮らしぶりに自信と誇りを持ち、そこに魅せられて人が来てくれる、それがまた相互に良い影響を与える中で魅力を高めていくのだと思います。つまり魅力ある地域づくりこそが観光を振興することにつながります。
 このため、大分県では、観光と地域づくりを一体的に推進することとし、これを「ツーリズム」と称しています。本年4月1日には、このツーリズムを民間の発想とアイデアで自主的・主体的に推進していく組織として、「ツーリズムおおいた」が生まれました。これまでの大分県観光協会を改組したのです。県や市町村の関係者は役職員に入らず、県からの運営費の補助もやめました。もちろん県がまったく応援しないのではありません。観光事業者に加え、農林水産業・商工関係者をはじめ、地域で活躍する民間非営利団体(NPO)やボランティアなど、「ツーリズムおおいた」に集う民間の方々が企画・提案する事業をしっかりとサポートしていくこととしています。
 「ツーリズムおおいた」の発足早々ですが、今年は大変楽しみなことが二つあります。一つは、本年秋からのNHK連続テレビ小説の舞台に「湯布院町」が選ばれたことです。テーマはスローフードということですが、地域にこだわり、地域の食を生かしていくことで次第に評価を得てきた湯布院のツーリズムが再認識されるのではと期待しています。
 もう一つは、本年11月に「世界観光学生サミット」が別府市で開催されることです。大分県は立命館アジア太平洋大学などがあって、留学生がとても多い県です。人口比では東京に次いで全国2位で、世界の80を超える国・地域から2,800人あまりの学生が県内の大学で学んでいます。これからのツーリズム振興を考える上で国際的な視点は欠かせません。幸い大分県にある留学生のネットワークをフルに生かして、世界中からツーリズムに関心のある学生やキーマンを招き、多角的な討論を行うことになっています。そんな中でツーリズムを担う豊かな人材が育っていくことを期待しています。

『地域づくり』(財団法人 地域活性化センター発行)平成17年7月号「巻頭エッセー」

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