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  あすへの話題-琴花酒のあるものを 
人は旅に出て時空自在の境地に浸り五感を洗い直しながら新しい自分を探し出す。迎える方も旅人のそんな思いに応えていかなければならない。県内4人の観光カリスマが集まって客を迎える心を語り合った。
 湯布院のカリスマはごまかしのない本物のもてなしにこだわる。今ならざくろの花や野いちごの小枝を箸置(はしおき)に使って客の心を山里の温泉宿に誘い込む。あとは地場の山海の珍味をそれもつつましく並べる。雑木林の庭は空気までおいしく思わず深呼吸したくなる。日本アンリ・ファーブル会のご一行が「あの宿の庭は昆虫まで喜ばすように造られている」と感心していた。どこからでも秀峰由布岳が望めるように町に働きかけて条例で建物の高さ制限もしている。
 緑深い山あいの峡谷沿いに温泉宿を展開している長湯のカリスマは地中の養分を炭酸とともに吹き上げてくる良質な温泉を大事にしながらむしろ気楽な湯治場の雰囲気づくりを目指している。マス・ツーリズムの衰退とともに客が減っている別府のカリスマは健康やアミューズメントの新潮流にきめ細かく対応しながら泉都再生の道を模索している。
 農村民宿、グリーンツーリズムをリードしている安心院(あじむ)のカリスマは親戚(しんせき)でも遊びに来たように客を迎え、ありのままの農村生活を体験してもらいながら、心と心のふれあいを大事にする。ぶどう作りを手伝ってもらい、野菜を一緒に収穫しているうちに客の目の輝きが違ってくる、そうするとこちらも何だか生き生きしてくるという。
 琴花酒のあるものをとゞまり給(たま)へ旅人よ
 藤村の詩、観光の原点は旅人の心をつかむ魅力的な地域づくりである。

日本経済新聞6月2日夕刊掲載

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