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| 実は大分県の大半には日経新聞の夕刊はない。折角(せっかく)の田園生活、何も夕刊まで読まなくても、という新聞社の配慮には感謝するが一抹の寂しさもある。情報格差といえば携帯電話の不感地帯も県土の50パーセント以上と広い範囲に及ぶ。定住の若者からは「格好がつかない」と苦情が多い。 だからといって気分も落ち込んでいるわけではない。落語組合もあってそこの名人の十八番(おはこ)の一つに「たかくんの通学路」というのがある。学校まで20分の距離なのにたかくんが家を出るのは1時間前。途中いくつもの関所があるからで、その一つはお神楽名人のおじいさん。「たか、復習だ」と言って朝の特訓が始まる。さんざん舞わせておいて「学校に遅るんな(遅れるな)」と言って送り出す。「おはよう」と声をかけ、たかくんの自慢話を喜んで聞き、褒めてくれるおじいさんも待っている。名人にかかると抱腹絶倒の落語なのだが、互いに励まし元気をもらって誇らしく生活している姿が頼もしい。 海を臨む丘、緑深い山と住む所はどこにもあるし、山海の珍味にも恵まれている。大分県勤務者は二度泣くと言われる。最初は勤務を命じられた時、二度目は食住に恵まれたこの地を去る時。住み心地が良いから猪(いのしし)、鹿(しか)、猿なども多く、その被害には悩まされている。畑の周囲に電線を巡らせて電気を通したり、猟期を延長したりと工夫はしているが決め手がない。漁師もさすがに猿は敬遠するようで、かなわないと田畑を捨てて逃げ出す農家も出かねない。猿から「去るものは追わず」と言われたのでは洒落(しゃれ)にもならない。 そろそろ私の方も去ることにします。 |
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日本経済新聞6月30日夕刊掲載 |
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