1999・10 Vol.34

  1次産業の人づくり
特集2 新時代にチャレンジ
食料・農業・農村基本法(新農基法)が施行されるなど、21世紀に向けて県下の農村、特に中山間地域における農林業、さらには水産業について、その振興方策と具体的な目標等を明確にすることが求められている。県としては、これらの第一次産業を担う企業的事業者や次代を担う意欲ある若者、さらには女性がそれぞれの能力を発揮できる環境づくり、人づくりを最優先の課題として推進する。
認定農業者
農地の高度利用をすすめる五郡 博志さん(三重町)

 農業経営の改善(規模拡大や集約化など)を計画的に進めようとする農業者を、地域における将来にわたる農業経営の担い手として市町村が認定する制度。県内の「認定農業者」は8月末で4,602人。県では、5,000人を目標に認定農業者の掘り起こしを進めている。

 五郡博志さん(49歳)さんは、20年前に三重町久知良地区の実家に戻り、水稲(3ha)と野菜の育苗(10万本)を手がけていた。平成9年、耕作地が公共工事にかかり、ほかに土地を探していた時に、高齢化と後継者不足で農地が荒れていくのを憂慮していた法泉庵地区の神田農業委員長に請われ、野菜の育苗に好適地だったこともあって移住した。

 移転後は、作り手のない農地の耕作を次々と頼まれ、1年ほどで7haの営農をすることになった。いまでは、水稲と転作の大豆、裏作の麦を生産し農地利用率200%を達成し、98年産の豆類経営改善共励会では最優秀賞を受賞した。農業委員会を通して小作契約を結び、土地の調整、集積と契約期間が明確になり、大型機械の導入も出来た。作業しやすく、経費の償還計画も立てやすくなった。

 以前、東京、名古屋、静岡などで精密機械の仕上げ組立てに10年従事したこともあって、中古の大型農業機械の修理、メンテナンスは得意である。また、認定農業者支援金融特別対策事業を活用し、米と大豆と麦という土地利用型農業と、野菜の育苗という労働集約型農業を積極的に展開している。

 2月から6月までの5ヶ月間は、休む間がないほど忙しい。夫婦で営農しているが、育苗ハウスでは年間に70日、田の草刈りなどでは30日、近隣の人たちを雇用する。大型機械と地域の人の協力で未利用の農地を最大限に活用している。認定農業者としての経営改善計画も、100%以上達成した。

 五郡さんの目標は、耕作面積10ha、純利益1000万円。サラリ―マン以上の収入をあげられるようになれば、息子も跡を継ぐ気になるのではと期待している。
五郡さんご夫婦と2月に収穫を迎える大豆。
秋の町産業祭の品評会にだすジャンボかぼちゃ。(成育中)


農業未来塾
西高ナチュラル塾塾長・農業未来塾生 野田浩仁さん(大田村)

 県では、意欲ある30〜40歳代の農業者を対象に平成2年から農業平成塾、また平成8年からは県内12地域に農業未来塾を開設。農業経営のみならず地域づくりをも担うトップリーダーを育成している。現在、農業平成塾の卒塾生を中心とした150名を超える塾生が、県内それぞれの地域のリーダー農業者として活躍している。

 大田村小野地区に住む野田浩仁さん(39歳)は、自宅から車で30分ほど行った豊後高田市内に5.5haの土地を借り、葉たばこを生産している。さらに大田村の村有林を借り受け、葉たばこ生産のため2.5haを開墾している。夫婦、両親で営農しているが、繁忙期には臨時的に人を雇うこともある。

 大学卒業後すぐ実家に戻り農業を始め、農村青年連絡協議会、豊の国づくり塾2期生、農業平成塾1期生、農業未来塾などに積極的に参加してきた。農業平成塾では、いろんな人の講演を聞き、仲間と議論したり、先進地への視察研修、ニュージーランド研修などに加わり、先祖代々受け継いだ山や畑にこだわる農業から、「経営として展開する農業」を目指している。将来は、幅広い作物づくりに取り組み、子どもたちと共に働ける体制をつくりたいと考えている。小野地区で営農しているのは60戸。50歳以下の専業農業者は3人しかいない。農業未来塾では、「これから帰ってくる人々を迎えられる農業・農村づくり」をテーマに、定年後にUターンして農業を始める人や、地域のサラリーマン、更には女性にとって住みやすく居心地のよい農村づくりに向けての環境整備に取り組んでいる。いま野田さんは、農村女性や若手農業経営者と一緒に、劇団ふるさときゃらばん「噂のファミリー1億円の花婿」の準備に奔走している(12月2日、真玉町トレーニングセンター)。過疎の農村生活をテーマにしたこのミュージカルは、自分たちの生活と重ねるものがあるが、ふるさとを考え、ふるさとを好きになり、ふるさとを大切にする仲間の輪が広がることを願って、新しいロマンづくりに挑戦している。目標観客数は1,100人。
たばこの葉は2年間工場で樽詰めにされ  熟成した後製品化される。(たばこの出荷をする野田さんご夫婦)
野田さん一家・親や祖父母の働く姿を見ながら子どもたちが育つ。


林研グループ  
祖峰婦人林研グループ 安達由美子さん(竹田市)

 
 林研グループの歴史は古い。昭和38年に初めて結成され、以降一貫して林業技術の向上と林業経営の改善により、地域林業の発展の中核として活躍してきた。現在48グループで会員は591名にのぼる。このうち、女性の林研グループは8グループで77名が参加している。近年地球環境への関心の高まりや都市住民を中心に自然とのふれあい志向の強まりを背景に林研グループの活動も広がっている。
 竹田市九重野地区。周囲を豊かな緑に囲まれ、南側には日当たりの良い耕地が広がる。安達由美子さんは、夫婦と夫の両親で杉と檜25haを経営している。このうち、床柱用の天然しぼり丸太が5ha。普通の杉に比べ、生産期間が約半分の25年程度で出荷できるのが魅力だ。ご主人が林業試験場や他県に研究に出かけた成果が実っている。

 安達さんが会長を勤める祖峰婦人林研グループは、今年2月に20周年を迎えた。林研グループの目標は、生産の向上とあわせて、いかに地域で「潤いのある豊かな生活」を営めるかだ。

 安達さんは、平成8年9月には、県のニューフォレスター海外派遣研修事業に参加し、10日間フランス、ドイツ、オーストリア、スイスの森を見て歩いた。酸性雨に侵された黒い森、きのこ(マッシュルーム)生産場、香水製造工場、農村女性との交流会など多くの刺激を受けた。特に、宿泊体験では、若夫婦が酪農経営をし、老夫婦が民泊の世話をしており、山のなかで、料理も気取らない田舎料理、家具も手づくり。「やる気があれば何でもできますよ」と言った奥さんの言葉が印象的だった。九重野地区には都市の人々を引きつける魅力は十分にある。竹田地区のグリーンツーリズム研究会の活動に関わり、勉強中だ。

 また、はつらつ林業女性ネットワーク大分の地区代表として活動する一方、平成10年11月の全国総会には大分県の代表として参加した。@女性でも機械を使いこなす林業、A川下の人々との交流、B地域の裏山の雑木復活と地域への開放などの活動事例を知った。実践に向けて、林研グループに働きかけている。

 「生産」と「交流」。安達さんの夢は大きくなっている。
ドイツ・バイエルン州有林での研修
ヨ―ロッパの民泊施設


青年漁業士  
若潮の「ぶり」を届ける 小野 富男さん(蒲江町)

 
 県では、大分県漁業を担う若者(40歳未満)を青年漁業士として認定している。これまで認定者81人。今年の10月には漁業士会が発足する。魚種ごとに、7つの部会がある。県の支援によりそれぞれが調査研究をしている。
 蒲江は漁業の町。漁業生産額は66億円で、県全体の約18%。とくに、ぶり養殖が盛んだ。県産の養殖ぶりは、「魚の全国ブランド」をめざし、県漁連が「豊の活ぶり」と命名。蒲江の若者たちは、高品質のぶりを消費者に届けようと、力を合わせて頑張っている。

 蒲江町上入津漁協では、ぶり養殖に取り組む20歳代、30歳代の後継者12人が「若潮会」を結成。全員が青年漁業士である。定期的に互いの養殖情報を交換したり、漁場の定点観測、飼料比較試験、新しい養殖方法の導入試験、全国の市場調査や先進地視察などに取り組む。若潮会会長は小野富男さん(35歳)。高校卒業後に、父が経営していたぶり養殖に飛び込んだ。父の引退後は、従業員を雇って経営している。生け簀は稚魚用が5台、成魚用が10台。

 成魚生け簀は湾外に置き、1台に3,500匹前後が育てられている。 「稚魚生け簀は湾内に設置しています。以前は同業者との競争が激しく、過密養殖したり、餌が大量投与されていました。そのためか、湾内に赤潮が多発するようになったんです」

 若潮会は「自分たちの手で入津湾を守ろう」と平成2年3月に結成。県海洋水産研究センターの研究員から指導を受け、メンバーが交替で湾内の定点観測を始めた。プランクトン数、水温、酸素量などを図り、赤潮を発見すれば餌止めを徹底させる。魚にストレスを与えない工夫もした。

 「私たちは地球の恩恵を受けています。だからこそ自然とともに生きる方策を常に考えていきたいのです。若潮のぶりを安心して食べてください」
生け簀での出荷作業
生け簀での餌作業