2000・4 Vol.36

特集2 本格的な国際交流立県に向けて
 国際化の進展に伴い、国境を越えた地域と地域の交流の時代が本格化しつつある。大分県では、一村一品運動を通じて、アジアを中心とする世界の各地域と交流するローカル外交を展開してきた。国際的に開かれた地域社会を形成するためにも、地域づくり、文化、スポーツなど各分野にわたる交流を推進する必要がある。 県内の様々な取り組みを紹介する。
■動きだす留学生支援の輪   亀川さんもく会(別府市)

 別府市の亀川駅は、4月に開学した立命館アジア太平洋大学の玄関口となる。定期バスでわずか13分で結ばれ、開学後は日本人学生だけでなく、多くの留学生や外国人教職員が亀川駅を利用する。これを心待ちにしているのが、地元の地域活性化グループ「さんもく会」だ。13年前に商店主や公務員、マスコミ、会社員など、様々な職種の70人で結成。留学生を地域に積極的に受け入れ、地域の活性化を図ろうとしている。
 これまでも、春祭りや夏祭りなどのたびに、別府大学の留学生に呼びかけ、交流を図ってきた。昨年からはアジア太平洋大学の開学をにらんで英会話教室を月1回開催。今年は「国際異文化教室〜in亀川」と題して台湾からの留学生を招いて日本の印象や文化、習慣の違いを学んだのを皮切りに、2月は中国編、3月は韓国編を実施。今後、ニュージーランド編などを開催し、異文化についての理解を深めることにしている。
 また、留学生の生活をサポートするため、商店街の空き店舗を活用して、地区住民から集めた生活用品のリサイクルショップをはじめた。アジア各国からの留学生が、少ない資金で学生生活をスタートできるように準備をしている。会長の堀さんは、「留学生が日常的に亀川地区に入ってくるようになれば、必ず亀川地区は活性化します。そのために、できることからやっていきたい」と語る。留学生とさんもく会の交流はこれからが本番だ。

亀川さんもく会 堀会長。
集まったリサイクル用品は、きれいに箱詰めされ出番を待っている。
イベントを通して、外国人とも交流を深める。

■草の根交流の架け橋役  国際交流大使・矢野伸太郎さん(大山町)

 「梅、栗植えてハワイに行こう」で知られる大山町は、多くの家庭が町や農協を通じて、各国から特産のエノキ茸栽培の技術研修員の受け入れ、ホームステイを実践している。エノキ茸生産者の矢野さんの家庭もその一つ。矢野さんがまだ子供のころから、外国人研修員を受け入れてきたという。
 矢野さん自身は高校2年生のとき、初めてハワイへの海外渡航を経験。以来、オーストラリア、中国、イスラエルのキブツ(農業共同体)などの技術研修や交流事業に参加した。また、平成10年に県が開設した豊の国国際交流カレッジにも入学し、今年1月の卒業と同時に国際交流大使にも任命された。国際交流大使としては今後、留学生の地域への受け入れ、生活関連情報の提供、国際理解教育の推進、海外交流事業への参加などに取り組む。
 今年1月にはタイのソンクラ市で実施された植林活動にも参加。これは、第51回全国植樹祭での「アジアグリーンネットワーク宣言」(アジア諸国に植林活動の輪を広げる)の一環として実施されたもので、大分県から参加した23名の人とともに植林に汗を流した。「大分から出される宣言がアジアの国々の人に理解されれば、植林を通じたアジアの人々との共生が推進できます。これまでの国際交流で培ったネットワークを積極的に活用していきたい」と語る矢野さんの今後の活躍に期待がかかる。
自宅のエノキ工場で技術研修に来たラオスの政府関係者と。
ホームステイ中の着物姿のマレーシアの高校生と自宅で。
■国際交流の場づくり  財団法人大分県国際交流センター(大分市中島西3丁目1番7号)                       097−538−5161
 草の根交流活動支援の中核的機関である国際交流センター。情報コーナーやミーティングルーム、メッセージコーナー、一村一品コーナーなどがある。また、県民に役立つ海外情報、外国人に役立つ生活・文化情報、図書、ビデオなどの収集・提供のほか、ボランティアの育成、個人や民間団体などの交流活動への協力、イベントや講座等の開催、外国語マップや生活ガイドブックの作成などを行っている。
 「国際交流員や語学塾の先生、その家族、結婚して永住する人などを中心に、多くの方が利用しています。地元の人も多くなりました。子どもを連れて遊び方々、情報を探しに来る人もいます」とセンターの池部事務局長。
 センターでは、日本文化教室、国際理解講座などを開催しているほか、ボランティアの日本語講座『あいうえおクラブ』を地球人倶楽部(武田穣事務局長)が毎週3回ほど実施。教える方と習う方それぞれ30人ほどが集まり、熱心に言葉や文化を学んでいる。また、各国の料理や文化を楽しみながら交流を図るイベントなども積極的に開催。3月4日に行なわれた「アジアンナイト365分の1」には、100人を越える人が参加し、リラックスした雰囲気の中、出会いを楽しみ、国際理解を深めた。
 みなさんもセンターのいろんな催しに参加してみませんか。
『あいうえおクラブ』による日本語講座。
情報コーナーでは、本や雑誌を借りることができる。
アジアナイト1/365。 民族衣装が華やいだ雰囲気をつくり出す。
■感謝・安心は共通の言葉  亀の井ホテル(別府市)
 平成10年に大分県を訪れた外国人観光客は24万人。9割近くを韓国をはじめとするアジア地域からの観光客が占める。外国人宿泊客の70%は別府市に集中している。今後、立命館アジア太平洋大学の開学や国際観光客船スーパースター・トーラス号の別府港就航などにより、アジア地域を中心に海外から留学、観光で本県にやってくる外国人は確実に増えることが予想される。
 このような背景から、最近、外国語併記の案内表示をしたり、外国人スタッフを雇用するホテルが増えている。別府市中央町にある亀の井ホテルもそのひとつ。9年に改築した際、英語、韓国語、中国語による案内表示を設置したほか、韓国人と中国人のスタッフをフロント係に配属。昨年1年間で韓国からの観光客が1万人、香港、台湾からの観光客が数千人宿泊したという。フロント係のの朴裕慶さん(韓国)と曲志堅さん(中国)を訪ねた。
 朴さんは韓国の大学で日本語と日本文学を専攻した後、別府大学に1年間留学した。卒業後、いったん帰国したが、学生時代に過ごした別府の生活が忘れられず、たまたまスタッフを募集していた亀の井ホテルに就職、平成10年からホテルのフロントで働いている。「韓国と大分は定期航空路線で結ばれているのでとても近く感じています。2002年には日韓共催で行われるワールドカップサッカーが大分でも開催されます。別府温泉は韓国の人々によく知られており、韓国からの観光客はもっと増えると思います。母国から別府にやってくる観光客に安心して旅を楽しんでいただけるよう頑張りたい」と抱負を語る。


明るく、まじめな勤務態度で信頼の厚い曲さん(左)と朴さん。
 中国人スタッフの曲さんは、中国で商社に勤めていたが、別府市と姉妹都市の山東省煙台市出身の奥さんが5年前に職員研修生として別府市に派遣されたとき、一緒に大分県にやってきた。別府市日中友好協会を通じて亀の井ホテルで外国人スタッフを募集していることを知り、働くようになった。「中国、台湾、香港からのお客様に中国語で話しかけると安心されるようで、喜んでもらっています。中国も経済的に発展しているので、温泉があり、静かでゆっくりできる別府に多くの人に来てもらいたいですね」と曲さん。
 営業部長の沖本さんは「2人は日本と母国の両方の文化や習慣、嗜好を理解して細かい点まで気配りしてくれるので、外国人観光客に非常に好評です。」と喜んでいる。