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「稚夢・新志」の二十一世紀
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堺 屋
ITが発達して日本人がその気になれば
東京一極集中もなくなると思うんですね。
いかに楽しい地域か、
面白い地域かどうかが決め手になります。
平 松
私は生活者に優しい大分県を目標にしてますが、
とくに高齢者が暮らしやすく、
楽しい空間をつくっていかないといけませんね。
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| 平 松 あけましておめでとうございます。
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| 堺 屋 おめでとうございます。 |
| 平 松 今年の正月は久しぶりに経済評論家としてお迎えになったようですが、新内閣の顧問に就任され相変わらずお忙しいようですね。大臣在任中の二年四ヶ月間、景気対策を一人で背負ってこられた苦労話からお伺いしたいと思います。 |
堺 屋 二年四ヶ月前の七月三十日に、第一次小渕内閣に入閣しました。予想どおり日本経済は貸し渋りと企業倒産で極めて悪い状態でした。そこで金融再生と倒産防止のための融資、公共事業の拡大、減税と次々に政策を打ち、年の暮れには中小企業経営者の表情がちょっと明るくなった。私が「変化の胎動」と言った頃です。それから五ヶ月経ち、九九年の春ぐらいには経済指標も少しよくなりましたので、昨年は景気対策と並行して構造改革を進めました。
しかし、まだ消費がついてきません。不況の長期化で物価や地価が下落し、あわててモノを買わないし、住宅も急いで建てないという状態が続いているためです。
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| 平 松 地方も同様です。消費が伸びませんので、企業倒産が増え、大手スーパーが撤退し、中小企業や商店街も大変です。
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堺 屋 全体として見ると、企業収益は相当増えてますが、その多くはバブル崩壊の損失の穴埋めになり、勤労者に還元されていない。やっと去年の暮れぐらいからボーナスが増え、新規求人倍率もあがってきてますので、今年は消費に火がつくんじゃないかと期待できる段階です。
景気がよくなると、経済構造の改革をやらなければなりません。構造改革には痛みが伴います。それが昨年秋以来の二番底です。こんな時に公共事業を急に減らすと、九七年の大不況と同じことが起きます。やはり一定の需要は確保しなければいけない。
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| 平 松 地方としては、東九州自動車道や地域高規格道路などインフラ整備のための公共投資は優先的にやってもらわないといけません。本来やるべき地方のインフラ整備を景気対策で行えば景気の下支えにもなるわけです。日本経済が元気を回復してから財政再建をやらないと、これまでの努力がすべて元の木阿弥になります。いまが一番肝心な詰めの段階ですからね。 |
| 堺 屋 日本経済が本来の姿に戻るには時間がかかります。国民の皆さんはこの点をよく理解して、辛抱すべきは辛抱し、夢を持つべきところは夢を持ち、二十一世紀の日本に明るい未来を確信して欲しいですね。
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| 平 松 二十一世紀がいよいよ始まるわけですが、経済新生対策のカギとしてIT革命がありますね。大臣時代にインターネット博覧会をやろうと電話をいただきました。大分県では温泉をテーマに参加しています。IT革命やインパクについてはいかがですか。 |
堺 屋 日本は昭和の初めから規格品の大量生産で成長してきました。これが九十年代はじめにバブルでつぶれ、いよいよ知恵の時代になってきたわけです。
これからは多様な知恵の値打ちを作り出していかないといけません。知恵の原材料は情報です。情報が日本国中どこでも手に入り、それに刺激されて人々が創造力をかき立て、出来たものを発信できる。この三つが確実に出来るようにしないといけない。そのためにIT立国、情報技術の優れた国にしようということです。ところが残念なことに、IT分野は日本は遅れているんです。 |
| 平 松 韓国など、アジアの国々の中にも日本よりITが発展した国は多いですよね。
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堺 屋 日本が一番失敗したのは、電話線の上にネットを張ろうとしたことです。アメリカがCATVや光ファイバーをひいて高速で通信しているのに対して、日本は電話線ですから同じ情報を送るのにも通信時間が長い。それでは見る方がじりじりして楽しくないから知恵が出ない。そこで大きく差を開けられたわけです。
これを五年間で世界最高水準にしようという計画です。そのためまず今年から光ファイバーを出来るだけ引いてもらうことにしています。大分県もイントラネットをずいぶん進めておられるようですね。 |
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| 平 松
昨年の公共事業予備費で、大分市から佐伯市までギガビット回線を敷設していますし、中津、国東、竹田方向へも「豊の国ハイパーネットワーク構想」で高速回線を引くことにしています。しかしこれから最も大切なことは、ネット上にどんなコンテンツ(内容)を載せていくかだと思っています。
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| 堺 屋 政府は三段階で考えています。最終的には電子政府を作る予定です。二〇〇三年には県、市町村をイントラネットでつなぐ。二〇〇二年にはEコマースの基本を作る。さらにその前年の今年は、インターネット博覧会で皆さんの創造力をかき立てるということです。全県に出展をお願いし、政令市、企業、NPOなど二〇〇以上が参加しています。地方のテーマは非常に多様です。文学もあれば、食もある。昆虫があれば、天文もある。いろんなコンテンツが出てきています。その中で、やはり大分県の温泉というのは光っています。
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| 平 松 いろんな団体がアイデアを競ってインターネット博覧会に出展してますから興味深いですね。「楽網楽座」というキャッチフレーズも面白い。大分のホームページで好みの温泉を探していただき、たくさんの人に来ていただきたいと思っています。 |
| 堺 屋 日本のITの問題点は料金が高いことです。料金がなぜ高いかというと、現在、NTTが引いている光ファイバーは稼働率が三%ぐらいしかありません。だから情報量が十倍になっても三十%ですから渋滞することはないのです。そうなると、単位当たりのコストは六分の一に下がります。料金が下がるとみんなが余計使うようになります。だから出来るだけ全国民に使っていただきたいんです。それで県、市町村にお願いして、全国民を対象にIT講習をやっていただくことにしています。
すから渋滞することはないのです。そうなると、単位当たりのコストは六分の一に下がります。料金が下がるとみんなが余計使うようになります。だから出来るだけ全国民に使っていただきたいんです。それで県、市町村にお願いして、全国民を対象にIT講習をやっていただくことにしています。
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| 平 松 二十一世紀の大きな問題は少子高齢化の問題ですね。私はこれからはアジアとの共生、観光と交流の時代だと思っています。少子高齢化で日本は多国籍の時代になっていくのではないかと思いますね。
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堺 屋 日本は世界で一番早く、少子高齢化が進んでいるわけですが、少子高齢化というのは非常に暗く受け止められていますが、そうではないんです。
高齢者は金持ち、知恵持ち、時間持ちです。高齢者は比較的豊かですし、長年の経験で知恵もある。ITで知識も入ってきます。
私は高齢者で意欲のある人は七十歳まで働くことを選べる社会を作らなきゃいけないと思っています。それには働きやすい場所が大事です。これからは生活条件で職業空間を選ぶようになります。最近三、四年の東京集中は凄まじいばかりです。しかし、ITが発達して日本人がその気になれば東京一極集中もなくなると思うんですね。いかに楽しい地域か、面白い地域かどうかが決め手になります。その意味で温泉のある大分県はいいんじゃないかと思います。
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平 松 私は生活者に優しい大分県を目標にしてますが、とくに高齢者が暮らしやすく、楽しい空間をつくっていかないといけませんね。
またこれからは韓国、中国といった国の優秀な若者がハイテク産業のソフトウエア要員として重要になってきます。立命館アジア太平洋大学の学生が卒業したら県庁に勤めたり、ソフトウェア開発に従事する。アジアの国と一緒になった世界というものが九州で起こってくるのではないかと思っています。
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| 堺 屋 東京にいるのと違って、九州はアジアが近いですからね。
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| 平 松 そうなんですよ。ソウルと大分は一時間ですからワールドカップに名乗りをあげました。アジアとの交流は九州がまず始めないとと思いましてね。一村一品運動の交流、スポーツ交流、文化交流、経済交流などを通じて九州アジア経済圏構想を視野に入れてやっていく時代だろうと思ってるんです。
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| 堺 屋 それは大変重要なことで、これから人口が減少してくる中で、日本が世界の大きな地位を占めるためには、人的資源を広く求め、相互に刺激しあうことが大事です。
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| 平 松 皆さんが一番注目してるのはずばり今年の景気ですが、どうでしょうか。
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堺 屋 景気は今、「向い風の朝だ」と言ってるんです。景気の一番悪いところを越えて夜が明けました。雨も止みました。けれども向い風が強い。そういう感じだと思いますね。設備投資の方はまだ続くという答えが出ておりますから、景気は今年の三月頃からよくなってくるんじゃないかという感じがするんですね。それをどう定着させるか。いかに新しい日本に結びつけていくかというところを、しっかりやらないといけません。財政再建の問題もありますが、皆さんに安心してもらう、これが大事だと思うんですね。
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| 平 松 日本全体の改革をしながら、景気もよくしていくにはどうしたらいいか、みんなが一緒になって考え、取り組まないといけませんね。最後に二十一世紀にかける堺屋さんの一つのキャッチフレーズをお願いします。
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| 堺 屋 「稚夢・新志」と書いています。稚夢とは子どもの夢なんです。子どもっぽい夢、子どものような夢を皆さんに持ってもらいたい。できるとかできないとかの前にまず、夢を持つ。そして、新しい志を立ててやってもらいたい。どうも最近は世の中が利口になり、考える先に、そんなことはできないよとか、それは得だ損だとか、世間で笑われるなどと言う。そうではなしに、まず夢を持ち、そのつぎに断固実現する志を描いて欲しい。これが二十一世紀にかける私のキャッチフレーズです。
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平 松 ありがとうございました。私の方は一番美しい自然を保っていくための積極的な「環境立県」、それからアジアの国の若者との交流、大分県に多くの人にやってきてもらう魅力のある大分県づくりを進める「観交立県」それから教育改革という問題もありますが、青少年の健全育成、人づくりなど、教育を大分県から新しい方向で考えていく「教育立県」の三つのKを二十一世紀の目標にしたいと考えているんです。
これからもご指導いただきたいと思います。
ありがとうございました。本年もよろしくお願いいたします。 |
| 堺 屋 二十一世紀もよろしくお願いいたします。
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| (1月2日放送OBS新春対談より) |
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堺屋 太一(さかいやたいち)
作家、経済評論家。
1935(昭和10)年大阪市生れ。東大から通産省に入り、 日本万国博覧会、沖縄海洋博などを担当。通産省在職中に執筆した小説「油断!」がベストセラーに。1978年通産省を退官後、執筆・講演など幅広く活躍。(財)アジアクラブ理事長、中央省庁等改革推進本部顧問、税制調査会委員、国会等移転審議会委員等を歴任。1998年7月、国務大臣経済企画庁長官就任。2000年12月に経済企画庁長官を退任し内閣特別顧問に就任。著書に「団塊の世代」「知価革命」「組織の盛衰」「明日を想う」など多数。
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