2001・4 Vol.40
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地球に優しい、人に楽しい、新世紀
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井 植
将来の夢を持たなければ
ならないと思います。
しかし夢だけではだめですから、
しっかりと根をおろして
いかなければなりません。 |
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平 松
いま日本にかけているのは
若者たちの夢と情熱です。
「グローバルに考え、
ローカルに行動せよ」。
私はそう呼びかけています。
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アジアとの共生
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| 平 松 大変ご多忙の中、ご来県いただきましてありがとうございます。
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| 井 植 初めて大分県を訪れ感激しています。特にここ湯布院の風景のすばらしさに感動しました。 |
| 平 松 今日は、井植会長の企業経営や二十一世紀についてのお考えなどをお伺いしたいと思います。「三洋」という社名は太平洋、大西洋、インド洋の三つの海を表し、創業時から世界に目を向けた経営に取り組まれてきたとお聞きしました。 |
井 植 五十年前、ゼロから出発した創業者は「努力し社会に貢献したものは世界から迎えられるようになるであろう。われわれは世界を相手に仕事をしよう」と、最初から世界に目を向けてきました。今ではアメリカ、中国、フィリピンなど世界各国で現地法人を設立しています。
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| 平 松 著書を読ませていただき、井植会長と各国・地域の方々とのお付合い、人を引き付ける磁石みたいなものがその土台になっているという印象を受けました。
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| 井 植 確かに最初から場所を決めるのでなく、人を頼りに進めていく方法をとっています。三洋電機の特徴ではないでしょうか。 |
平 松 クリントン前アメリカ大統領との出会いのお話は印象的ですね。 |
| 井 植 初めてお会いした時、彼は三十二歳で、アーカンソー州知事に就任される一ヶ月前でした。私は同州で、その二年前に買収した会社の社長をしていました。その会社の立直しが評価され、私との面談を希望されたのです。外国企業誘致のための課題などを聞かれました。
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| 平 松 「従流志不変(流れに従い志を変えず)」が座右の銘だそうですね。 |
| 井 植 それは、父を亡くし新規事業で苦しんでいたとき京都大徳寺の立花大亀老師に書いていただいたもので、会社の私の部屋に掛けていました。一九七九年、初来日された当時のクリントン州知事が当社を訪問され、その書軸に興味を持たれましたので、大統領という彼の目標になぞらえて意味をご説明すると、とても感激されました。その後その書軸を贈呈したところ、州知事の公邸、大統領時代はホワイトハウスに飾っていてくださいました。 |
| 平 松 大分県出身の村山総理大臣(当時)がクリントン大統領に会いに行く際、私が一村一品の日田杉の下駄をお土産にとおすすめし、持っていかれました。そうしたらすぐに大統領からお礼のお手紙をいただき、下駄のことをほめてくださいました。大統領にもぜひ大分にご来県いただき、地域の活性化や特産品づくり運動のお話をさせていただきたいと考えていました。 |
| 井 植 とても魅力的な方ですからね。 |
| 平 松 当県では、「アジアの世紀」二十一世紀を迎えるにあたり、アジアとの交流に力を入れてきました。フィリピンとはラモス大統領(当時)がこの湯布院に訪れたのをはじめ、活発に交流していますが、元大統領のアキノさんが三洋電機の重役を務めていらっしゃるのですね。 |
| 井 植 社外取締役をしていただいています。私が委員長をしてる兵庫県芦屋市の国際交流協会のフォーラムでの出会いがきっかけです。アキノさんからぜひマニラへと招かれました。行って驚いたのは、飛行機を降りたタラップのところにアキノさんが迎えに来てくださったのです。とても感動しました。アキノさんの郷里にある工業団地を見せていただき、そこに立地することを決定して帰国しました。 |
| 平 松 アキノさんとの出会いがきっかけとなったのですね。 |
| 井 植 実は芦屋市の国際交流協会のフォーラムが終わって帰国される際、私はアキノさんを関西空港までお送りしました。そのことにすごく感激されたようです。それで今度は私を飛行場まで迎えに来てくださったというわけです。私はいつも社員に「何事も別れるときが一番重要である」と言っています。 |
| 平 松 アジアの国々との交流を深めるうえでも、やはり人間的なふれあいや理解が土台となりますね。 |
| 井 植 三洋電機では、経営理念の根底にある「共生の思想」に基づき、進出国及び地域の産業・文化の発展に寄与することを最も大切に考えています。 |
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人に楽しい、IT
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井 植 アメリカのアーカンソー州は、ちょうど湯布院のようにすばらしい自然に囲まれた地域です。こうして薪を焚いてくつろげるロッジがたくさんある町です。そこに今世界の流通を代表するウオルマート社の本社があります。
この会社にいつも感心するのは、世界中から商品を買っていながら、バイ・アメリカンを常に忘れないことです。会社の自慢は売り上げと利益と従業員です。一昨年は百万人を雇用できたことがウオルマート社の自慢なんです。やはり人を大切にしていかなければならないということなんです。 |
| 平 松 そうすることで、ますます人材が集まりますね。
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井 植 二年ほど前に社長さんに「これだけ会社が大きくなって、本社を大きな都市に移さないんですか」と聞いたことがあります。そうしたら「こんないい所はない。今はIT(情報技術)の時代です。情報通信ネットワークはどこでも同じです。あとは、人と人の心のふれあいを大切にすることが必要です」と言われ、なるほどと思いました。
人の移動は十八機の飛行機で行い、内二機は国際線用です。アーカンソー州の田舎の飛行場ですから離陸に待ち時間もかかりません。ところが都市へ行ったら三十分か一時間は待たされます。パイロットの人件費や燃料費もかさみます。そもそもアーカンソー州はアメリカの中央に位置しますから、どこへ行くのも距離的に好都合です。
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平 松 逆転の発想ですね。情報通信と交通のネットワークが確立しているアメリカでは、働く人のことを考えた環境や文化など地域の良さが企業立地の条件として優先されるのですね。日本でもITの時代を迎えましたが、高速交通網の整備と同様に国が中心となって強力に情報通信ネットワークの構築を推進する必要があります。
大分県でも各地域に大容量の専用回線の敷設を進めるほか、IT塾を開催するなど情報先進県を目指して取り組んでいます。大分県にはすばらしい自然、文化、食べ物などいい環境が整っていますので、立地条件は抜群ですよ。
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井 植 日本のアーカンソーといったところですね(笑)。当社では、今回の文系社員採用でITの活用をしました。
まずインターネットを利用して選考試験を行うと発表しましたところ、約二万五千人のアクセスがありました。
その中で六千二百人が一次試験にエントリーされ、ネット上での試験の結果千七百人に絞らせていただきました。その後、ぺーパーや面接の試験を行い、最終的に五十五名の内定者が決まりました。従来の電話による応募受付に比べますと応募者は約三倍、応募校数は約二倍に拡大しました。
また今回からは、大学時代にしっかり勉強し、弁護士などの資格を取得したり、学生時代に起業経験があるなど努力をした人を正しく評価して、初任給から格差を設け人材を活用する新しい処遇制度(オーナーマインド社員制度)を導入しました。
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| 平 松 経営システム改革の一環ですね。
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| 井 植 過去の日本企業にあった、採用後に教育する余裕が、コスト的にも保てなくなっています。企業にとっても日本経済にとっても、国際競争力に影響する問題です。採用のあり方を変えていくことは、教育問題に一石を投じることにもなると考えています。 |
| 平 松 ITの活用が、入社を希望する人との接点を広げ、教育問題解決のヒントまで提供してくれる。ITの無限の可能性ですね。
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地球に優しい、環境
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| 平 松 一九八七年に前上海市長(当時)汪道涵さんが来県され、大分の一村一品運動は一種の品質管理運動だと言われました。モノづくりも大切ですが、人づくりはさらに大切です。一村一品運動は国全体を起こす運動につながるものです。
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井 植 「着眼大局、着手小局」という言葉があります。当社の創業者で、私の父、井植歳男の教えに通じる言葉です。「事業計画を建てるときはケタはずれの大きい規模で考えろ。ただし実際に始めるときは慎重に、小さい規模でとりかかれ」。この考えは一村一品運動の精神と一致するのではないでしょうか。
将来の夢を持たなければならないと思います。しかし夢だけではだめですから、しっかりと根をおろしていかなければなりません。大きいことを目標に持ち、小さく育て最終的に大きくしていくということです。 |
| 平 松 いま日本に欠けているのは若者たちの夢と情熱です。「グローバルに考え、ローカルに行動せよ」。私はそう呼びかけています。
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井 植 私は太陽光発電技術研究組合の理事長を十年間務め、太陽光発電で少しでも今の化石燃料の使用を少なくすることを考えていました。昨年三洋電機が株式会社となって五十周年を迎えたことを機に、記念行事の一つとして岐阜県の新幹線沿線の工場に「メガソーラー」という名前の巨大な太陽光発電施設を建設しています。
三・四メガワットの出力で世界最大となるこの施設の完成式典は、二○○五年の愛知万博開催のときに行う予定です。万博に来る国内外の人たちに、地球に優しくあるべき人間の心や生活を理解してもらえればと考えています。「メガソーラー」はそのための世界のシンボルです。
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平 松 今年の年頭に、大分県内各地域の特性を生かした発電方法を示し、クリーンエネルギーマップ(図参照)を発表しました。日田郡前津江村では風力発電を行っています。また大分は温泉が多く地熱が利用できますので、九重町では日本の地熱発電力の約四分の一を生み出す地熱発電を行っています。
九州は太陽の光が強いですから太陽光発電も考えています。県庁舎の屋上に小さなモデルを作り、庁内でその電力を活用しています。そのほかには木くずを燃料にする木質バイオマス発電や海の潮の流れを利用する潮流発電など、これからも研究が必要なものもありますが、化石燃料以外のクリーンエネルギー施設を作り、世界のモデルを作りたいと考えています。
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注)太陽光発電については20kW以上の規模のものを掲載
風況調査については県で把握した箇所のみ掲載
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井 植 平松知事も大きな夢を描かれてますね。 |
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| 平 松 二○○二年に開催されるワールドカップサッカーの会場となる「ビッグアイ」の建設にあたっては、山の緑やサンショウウオなどの希少動物を元の状態で保全するなど環境に配慮しました。自然エネルギーを活用することで、サッカーの試合を観戦する世界の人々に、この競技場から環境についてのメッセージを発信したいと考えています。
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| 井 植 環境問題の解決には、世界中の人々が地球規模で考え、一人ひとりが地道に努力することが不可欠ですからね。
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| 平 松 まさに「グローバルに考え、ローカルに行動せよ」ですね。一企業、一地域の取り組みを、アジア、そして世界へと広げていかなければなりません。これからも夢と情熱を持ってがんばりましょう。
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井植 敏(いうえ さとし)
三洋電機(株)代表取締役会長
1932(昭和7)年神戸県生まれ。昭和31年同志社大学工学部卒業、三洋電機(株)入社。昭和36年取締役、昭和61年代表取締役、平成4年代表取締役会長。昭和61年(社)経済団体連合会常任理事、昭和63年(社)関西経済連合会常任理事、平成2年(社)日本電子機械工業会関西支部長(〜平成4年6月)、太陽光発電技術研究組合理事長、平成7年大坂商工会議所副会頭、(財)日中経済協会副会長(関西本部長)、平成8年(社)関西ニュービジネス協議会会長、平成2年ボストン大学名誉法学博士号、平成4年藍綬褒賞、平成7年大連理工大学名誉教授、平成9年同志社大学名誉博士号、中国科学技術大学名誉教授、立命館アジア太平洋大学アドバイザリー・コミッティー
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