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自然・風土 【大分の植物】

植物の宝庫
 大分県の気候は温暖、降水量にも恵まれている。遠浅で干潟の広がる周防灘、断崖が海に迫る豊後水道のリアス式海岸、県土を斜交いに通る中央構造線を境として新旧の火山岩と古い時代の堆積岩の山々が広がる。県土には、九州本土の最高峰(中岳1791メートル)をも擁する。長い年月をかけて山を削り、渓谷を刻んで平野や河原、砂丘をつくり、湿原も形成されて、植物たちの生育地となった。草原や岩場にはススキやヨシ、ヌマガヤ、イブキシモツケなどの群落が栄え、低地から山地にかけてシイ・カシ林、モミ・ツガ林、ブナ林などの気候的極盛相の自然林が繁茂した。
 大分の野生植物では、シダ植物330種、種子植物2500種、合わせて2830種類。分布型からみて、その内訳は、アジア大陸にも広く分布するススキやイタドリなどの日華要素が40%と最も多く、日本固有種のリンドウやノアザミなどが35%。ヌマガヤやミズナラなどの北方寒冷地の植物、ハマオモトやアコウなどの暖地植物がそれぞれ5%となっている。それに都市や周辺地を生育地とするセイヨウタンポポやセイタカアワダチソウなどの外来植物が加わって、豊の国の植物は、多様なメンバーとなる。

大分の自然にこだわる植物たち
 大分県特産種のツクシボダイジュやタガネランなどは、広い地球上で、この大分の地だけに生き続けてきた。火山山頂の風衝地にはミヤマキリシマ、祖母山頂の岩場にはウバタケギボウシが群生するが、これらは九州の山にこだわり、ソハヤキ(襲速紀)要素とされるケイビランやキレンゲショウマは、九州や四国、紀州の山々に分布する。およそ2万年前の氷河期に南下したミツガシワやサワギキョウなどの北方寒冷地の植物は、火山性高原の湿地に栄え、大陸と西南日本とが陸続きになったとき、分布域を広めたエヒメアヤメやヒメユリなどは、高原の乾燥した草原に定着した。一方、亜熱帯や熱帯に分布する暖地植物は、黒潮の洗う温暖な豊後水道域の島々や岬に居着いた。植物たちは、千年、万年もの間、これらの自然に育まれて生き続けてきたのである。

豊かな自然よ とこしえに
 平地の狭い県土では、人の生活・生産活動が海辺や川辺から広がっていった。都市をつくり、水田や、畑地が開かれた。野焼きされ維持されてきた高原の半自然草原は、人工牧野や植林地となっていく。多くの自然林も伐採されてスギ林に変わっていった。生育地を脅かされた希少植物の中には、絶滅のおそれのあるものが多くなっている。その現状は、平成13年に大分県が刊行した『レッドデータブックおおいた』にまとめられている。それには、絶滅したもの、生育状態が不明なものを含め、シダ植物102種、種子植物606種があげられ、それぞれ危険性の度合いや絶滅の要因などが記載されている。
 大分の自然に固執してきた植物たちは、豊の国の大切な遺産として、その生育環境が保全され、末永く繁栄していくことを願う。
 
周防灘の干潟(真玉町)


豊後水道 米水津の海岸


鋸山(山香町)


祖母の山々

日華要素 日本から中国中部を経てヒマラヤ東部に至る地域に分布する。
ソハヤキ(襲速紀)要素 九州山地とその東側、四国、本州の紀伊半島地域に集中して分布する。


ツクシボダイジュ


ウバタケギボウシ


サワギキョウ


ヒメユリ