vol.16 2001年5月発行

特集1 財政健全化と景気対策の両にらみ予算

県政フラッシュ


 

特 集
 財政健全化と景気対策の両にらみ予算
平成13年度一般会計予算  
7,018億2,600万円
〜事務事業を見直し、財政健全化と景気対策に重点的に取り組む〜

 21世紀を迎え、社会経済情勢は、長引く景気の低迷、少子・高齢化の進行、国際化・情報化の進展、地方分権・規制緩和など大きく変化している。このような状況の中、平成13年度の県予算が成立した。景気回復と財政健全化を両立させ、県民一人ひとりがゆっくりと豊かさを実感できる「生活優県・おおいた」 の実現に向けて取り組んでいく。
 今回は、平成13年度予算の概要について、新規事業を中心に紹介する。


 

大分県知事
平松 守彦

夢と情熱をもって、「生活優県・おおいた」を創造しま

 最近の経済情勢は、景気の先行きなど依然として不透明な状況にあります。このため、13年度予算では、健全財政に配慮し、引き続き県債の発行を削減するとともに、事務事業の見直しを徹底して財源を確保し、@財政健全化と景気対策、A「育材・育心」すなわち人づくりと、福祉・環境対策、B地域産業等の抱える緊急課題への対応の3つに重点を置いて編成したところであります。
 今後とも、「おおいた新世紀創造計画」の着実な実行を図りながら、地方分権や行財政改革を推進し、景気回復に直結する道路や下水道などの生活基盤に対する公共投資を引き続き行うとともに、環境施策の充実、中小企業の金融対策や倒産防止、商工業、観光の振興やアジアと共生できる農林水産業の振興、IT対策、人材育成など、県民一人ひとりがゆとりと豊かさを実感できる「生活優県・おおいた」の創造に夢と情熱をもって全力で取り組んでまいります。

 

 

 
 今年度の予算の特徴は?  

A
 景気の先行きが不透明な状況の中で、財政健全化に配慮しつつ、景気対策に取り組む。  
県単独の地域経済緊急対策として、道路整備、河川改修を行うとともに、下水道など生活関連型の社会資本整備のた
め公共事業を確保した。さらに中九州自動車道、東九州自動車道の整備などの国や公団の事業も行われる。また、倒
産防止の金融対策、15億7,000万円を措置したIT対策、倒産の相次いだ佐伯南郡地域の緊急雇用対策など景気を
下支えするための積極的な景気対策を重点的に行う。
アジアなど海外からの輸入による価格下落などの打撃を受けている農林業、大型店の出店で経営環境が厳しい商
店街などに対し緊急対策を実施する。
人材を育て、人の命を大切にする心を育む「育材・育心」を重視し、教育委員会、警察本部と一体となって青少年の
非行防止・健全育成に取り組む。


 財政健全化、事務事業の見直しは?  

 財政健全化の取り組みとして、県債の発行額は953億9,500万円(対前年度比1.5%減) に抑制し、当初予算で
比べて5年連続の減額となった。また、後年度の公債費負担を軽減するため、県債30億円を繰り上げて償還する。
事務事業についても、廃止・縮小など384件にのぼる見直しを行い、新規事業の財源を確保した。


健やかで心やすらぐ 社会の構築
・高齢者福祉の推進
・障害者福祉の推進
・子どもを生み育てやすい環境づくり
・健やかで心ふれあう社会の構築
豊かな自然と共生し 安全な生活環境の創出
・社会生活環境の整備
・県民生活の安全確保
連携と交流による 活力ある地域の創造
・交通体系の整備
・個性ある地域づくりの推進
・国際化・情報化の推進
競争と共生の時代を 生き抜く産業の振興
・農業の振興
・林業の振興
・水産業の振興
・中小企業の振興
・商業・観光の振興
新世紀を拓く多彩な文化と 人づくりの推進
・地域を支える人材の育成
・個性を生かす教育の充実
・文化とスポーツの振興

健やかで心やすらぐ社会の構築
●高齢者福祉の推進  
 特別養護老人ホーム、老人デイサービスセンター、痴呆性老人グループホームの施設・設備の整備、養護老人ホームの改修に対し助成する。(中津市、佐伯市、宇佐市、九重町の6か所)
 
    ・老人福祉施設整備事業      
     5億8,135万円
 
 民間の土地所有者、社会福祉法人などが建設・改良する高齢者世帯向け賃貸住宅の建設費などの一部について、県・市町村が補助し、高齢者が安心して安全に住み続けられる住宅の整備を図る。
 
    ・高齢者世帯向け賃貸住宅建設促進事業       
     450万円
 
●障害者福祉の推進
 障害者の地域における自立と社会参加を支援する。  
 精神障害者について、生活訓練施設、通所授産施設、入所授産施設、地域生活支援センターを整備する。(大分市、日田市、竹田市、千歳村の4か所)
 身体障害者について、デイサービスセンター、生活支援センターの整備、療護施設の修繕を行う。(日田市、臼杵市、竹田市、緒方町の5か所)
 
    ・精神障害者社会復帰施設整備事業   
     2億3,829万円
 
    ・身体障害者福祉施設整備事業      
     2億812万円
 
●子どもを生み育てやすい環境づくり  
 「新おおいた子ども育成計画」を広く県民に普及啓発し、少子化問題や子育てのあり方などについて考える契機とし、県民参加による少子化対策の取り組みを進める。  
  市町村が行う学校の空き教室などを活用したふれあい児童館(小規模児童館)の設置に助成する。
(佐賀関町など6か所)
 
     ・少子化対策特別推進事業       
      2,447万円
 
  保育所、児童養護施設を改築・修繕し、児童福祉施設の充実を図る。(大分市、日田市、津久見市、武蔵町の4か所)
 
     ・児童福祉施設整備費      
      2億9,842万円

保育所で遊ぶ子どもたち
 
 
  不妊治療に関する情報提供や医療面・精神面での相談を行う不妊専門相談センターを県立病院内に設置する。
 
     ・不妊専門相談センター設置事業         
      400万円
 
 児童相談所に精神科医を配置し、保護者に対するカウンセリングを充実させるなど児童相談所の体制や関係機関との連携を強化し、児童虐待の防止、早期発見・早期対応を推進する。
 
    ・子どもの虐待防止ネットワーク強化事業
     932万円
 
●健やかで心ふれあう社会の構築
 県民健康づくり計画の普及啓発を行う。また、患者の療養環境の改善を図るため、医療施設が行う施設整備に対して助成する。(大分市、日田市、日出町の3か所)
 
    ・県民健康づくり推進事業

     1,378万円

 
    ・医療施設近代化施設整備事業
     3億6,846万円
 
 学校、地域、家庭が連携して青少年の非行防止・健全育成対策に取り組む「SCHoolシンフォニープラン21」を推進する。このため、各地方振興局単位で地元有識者、PTA代表、教育事務所、警察、行政などで構成する「地域青少年健全育成協議会」を設置し、地域の実情に応じたきめ細かな取り組みを行う。
 
    ・地域青少年非行防止対策事業
     1,233万円
 
豊かな自然と共生し安全な生活環境の創出
●社会生活環境の整備  
 一般廃棄物と産業廃棄物を合わせて廃棄物の減量化を進めるため、廃棄物排出量の実態を調査し、処理計画を策定する。
 
    ・廃棄物処理計画策定事業
     1,992万円
 
 環境・保健衛生分野の調査研究・試験検査の中核機関である衛生環境研究センターの平成15年度移転に向けて、建築工事に着手する。
 

    ・衛生環境研究センター整備事業
     11億8,692万円


衛生環境研究センター完成予想図
 
 
 大気・水質・土壌の汚染実態調査、ダイオキシンの常時監視や事業所の監視指導を行い、ダイオキシン類排出量の削減を図る。
 
    ・ダイオキシン総合対策推進事業
     2,943万円
 
●県民生活の安全確保
 食中毒、O157、食品への異物混入などで揺らいでいる食品の安全性や食品検査の信頼性をより高めるため、食品の検査や分析に用いる機器の整備、食品衛生監視マニュアルの作成などを行う。
 
    ・総合食品安全対策事業
     2,255万円
 
 河川流域に暮らす住民を水害などから守るため、地域の防災を担う消防職員・団員などに対して効果的な水防教育を行えるよう消防学校に水防訓練施設を整備する。
 
    ・消防学校水防訓練施設整備事業
     623万円
 
連携と交流による活力ある地域の創造
●交通体系の整備  
 大分空港へのアクセスを向上させるため、日出バイパスを今年度中開通に向けて整備する。また、県内60分圏域内30分道路交通圏構想を推進するとともに、地域経済緊急対策として地域の生活に密着した道路整備を行う。
 
    ・道路改良事業
     181億6,000万円
 
    ・地域経済緊急対策道路改良事業
     30億円
 
    ・地方特定道路整備事業
     84億9,000万円
 
 日豊本線の大分〜佐伯間(64.9km)を高速化し、現行の所要時間59分を8分短縮させ、県南地域と大分方面との活発な交流を進める。
 
    ・日豊本線大分佐伯間高速化事業
     2億1,138万円

高速化される日豊本線(大分〜佐伯間)
 
 
●個性ある地域づくりの推進
 若者にとって魅力のある住環境を整備し定住を促進するため、過疎市町村等が行う分譲宅地の開発に対し助成する。
 
    ・ゆとりある定住環境整備事業
     1億2,050万円
 
 市町村の自主的合併を促進するため、合併フォーラム等を実施するほか、関係市町村の協議会から合併後の市町村に至るまで、広く対象にした県単独の市町村合併推進交付金制度を創設する。
 
    ・市町村合併推進緊急対策事業
     3,250万円
 
●国際化・情報化の推進  
 一村一品運動を基調としたローカル外交や留学生支援を拡充するため、県民の国際交流・協力の拠点である(財)大分県国際交流センターの基金造成に対し助成する。
 
    ・大分県国際交流センター基金造成事業
     3億9,600万円

国際交流センター
 
 
 広く県民が、情報通信技術(IT)に関する基本的知識を習得するため、各市町村の学校・公民館などで「豊の国IT塾」を開催する。
 
    ・豊の国IT塾推進事業
     7億2,045万円
 
 県内全域に高速・大容量の情報通信ネットワークを整備する。県南地域での運用を開始するほか、別杵国東ルートの実施設計を行う。
 
    ・豊の国ハイパーネットワーク構築事業
     5,066万円
 
競争と共生の時代を生き抜く産業の振興
●農業の振興  
 輸入野菜の増加による価格低迷に対応して、野菜生産の低コスト化、高品質化を図るため、モデルほ場を設置するとともに、白ネギのとも補償制度を創設する。
 
    ・野菜国際競争力強化対策事業
     1,790万円

大分県の代表的な一村一品
「白ねぎ」の 栽培
 
 
 厳しい肉用牛経営の環境に対応して、パイプハウス畜舎や哺乳ロボットを導入するなど経営規模の拡大に必要な施設を整備し、低コスト化を進める。
 
    ・肉用牛経営活性化施設整備推進事業
     2億5,985万円
 
●林業の振興  
 木材価格が急落し、森林所有者の生産意欲や投資意欲が減退していることから、市場ニーズに合った良質材の選別出荷に対して助成するほか、若齢林の保育間伐に対し公共造林事業に上乗せ補助するとともに、伐採期に達した山林の保育間伐に対する県単独の助成制度を創設する。
 
    ・良質材供給緊急対策事業
     5,000万円
 
    ・保育間伐推進緊急対策事業
     4億1,888万円

保育間伐により手入れがいき届いた
高齢級森林
 
 
    ・長伐期誘導間伐緊急対策事業
     5,310万円
 
●水産業の振興
 県内の沿岸漁協を一漁協に合併し経営基盤を強化するため、利子補給などを行う。
 
    ・21世紀型漁協構築推進事業
     2,434万円
 
 自立的な栽培漁業を確立するため、自主放流と漁獲調整を行う姫島村と米水津村の漁協に対し助成する。
 
    ・自立型栽培漁業推進モデル事業
     600万円
 
●中小企業の振興
 中小企業を取り巻く経営環境が厳しい中、倒産防止対策として、中小企業活性化資金の新規融資枠を10億円拡大し110億円としたほか、特に雇用情勢が厳しい佐伯南郡地域において、雇用の下支えのため、離職者に対する雇用の創出を図る。
 
    ・中小企業金融対策費
     224億400万円
 
    ・佐伯南郡地域緊急雇用対策事業
     4,000万円
 
 IT活用経営セミナーの開催などによりITの導入を推進するほか、ソフトパーク内に研究開発スペースを確保し、IT関連のベンチャー企業を誘致する。
 
    ・中小企業IT導入促進事業
     821万円
 
    ・ITインキュベータ整備推進事業
     3,792万円
 
●商業・観光の振興  
 過疎地域や中心商店街の商業機能を維持するため、宇目町が行う共同駐車場の整備、豊後高田市などが行う商店街の街並み景観の統一的な整備に対しそれぞれ助成する。  
 また、黒岳御池園地に駐車場を整備する。
 
    ・過疎地域商業振興支援事業
     1,146万円

12年度の空き店舗対策で整備された
竹田市の商店街
 
 
    ・地域商業魅力アップ総合支援事業
     3,638万円
 
    ・自然公園施設整備事業
     3,080万円
 
新世紀を拓く多彩な文化と人づくりの推進
●地域を支える人材の育成  
 看護科学大学大学院の平成14年度開設に向けた施設整備を行う。また、農業文化公園内の都市農村交流研修館で広く県民を対象にした講座を開催するほか、若手経営者を対象とした「豊の国経営塾」、環境保全リーダーを育成する「おおいた環境塾」、肉用牛生産者を対象にした「豊後牛飼い塾」をそれぞれ開設する。
 
    ・看護科学大学大学院設置事業
     835万円

看護科学大学で助産学の
実習をする 学生達
 
 
    ・都市農村交流研修事業
     3,930万円
 
    ・豊の国経営塾開設事業
     649万円
 
    ・おおいた環境塾の開設
     327万円
 
    ・豊後牛飼い塾設置事業
     410万円
 
●個性を生かす教育の充実
 中学校31校、県立高校16校にスクールカウンセラーを配置するほか、子ども会の自主企画による自然・社会体験活動を実施し、子どもたちの生きる力や連帯感を育む。
 
    ・いじめ・不登校対策事業
     9,621万円
 
    ・大分っ子わくわく体験推進事業
     591万円
 
●文化とスポーツの振興  
 「八幡の歴史と文化」をテーマに、歴史博物館の開館20周年記念特別展を開催する。また、スポーツ公園の開園を契機に、県民のスポーツ振興、スタジアム(ビッグアイ)の利用促進を図るため、(財)大分スポパーク21の基金造成に対し助成する。
 
    ・歴史博物館開館20周年記念特別展開催事業
     2,059万円
 
    ・大分スポーツ公園交流推進事業
     3億円

大分スポーツ公園総合競技場
(ビッグアイ)
 
 



 
 
 
 


県内初の受賞!県産真珠の評判全国へ
 3月1日に三重県伊勢市で開催された「第25回全国真珠品評会」で、真珠養殖業を営む磯和秀通さん(臼杵市)が最優秀賞の農林水産大臣賞を、また、戸高真珠合資会社 (蒲江町)が水産庁長官賞を受賞した。いずれの賞も県内の生産者が受賞するのは初めてで、大分県の真珠養殖技術の優秀さを証明するものとなった。大分県真珠養殖漁業協同組合長の大畠儀一郎さんは、「今回の受賞で県産真珠の知名度が上がりうれしい。これを励みにますますよい真珠ができるようにがんばります」と喜びを 語った。
   磯和 秀道さん

  戸高真珠合資会社
  代表 戸高 勝平さん

看護の心いつまでも
 保健医療を支えてきた大分県立厚生学院の閉校記念式典が3月10日大分市で開かれ、同窓生や医療関係者ら約700人が出席し、97年の歴史に幕を下ろした。
 当学院は、明治36年に大分県産婆養成所として設立された後、昭和28年に大分県立厚生学院となり、看護婦、保健婦、助産婦を養成する中核施設として、これまでに 4,761人の優秀な人材を輩出してきた。
 式典では、平松知事と永松学院長が、講師や実習の指導など看護教育に貢献した団体・個人に感謝状を贈った。また、卒業生を代表して、看護婦科第一期生の池辺頼子さんが「卒業生としての誇りを大切に、これからも看護の発展に貢献したい」とあいさつした。

地域の実情に応じた青少年健全育成を推進
 青少年の健全育成、非行防止に関する施策について、総合的かつ効果的な対策を推進するため、知事を本部長とし、教育庁、警察本部を含めた組織「大分県青少年対策本部」が、3月19日女性青少年課内に設置された。支部は県内12の地方振興局ごとに設けられ、福祉事務所、保健所、教育事務所、警察署などで構成される。支部が地域の実情に応じて青少年に関する施策を企画・推進・調整し、市町村長、地区別PTA代表、地元有識者と連携して青少年の健全育成に取り組む。

大分県防災センター始動
 大分県防災センターが県共同庁舎8階に完成し、3月21日から始動した。この施設は、災害情報を一元的に収集・分析し、配信する総合情報室と災害応急対策を総合的に指揮する災害対策本部室で構成されている。
 総合情報室では、天気図、河川水位、雨量、水道・電気などのライフライン情報、災害現場の画像、各地域の被害情報など災害に関するあらゆる情報が集まり、処理されて大型マルチスクリーンに表示されるなど常に最新の情報や状況が把握できるようになっている。また、それらの情報は、ネットワークでつながっている気象庁、市町村、消防本部、警察など防災関係機関に配信される。

21世紀を担う地域のリーダーに期待
 地域づくりの担い手を育てる「豊の国づくり21世紀塾」の卒塾式が3月24日県庁で開かれ、県内12の地域で研修を積み重ねてきた塾生175人が巣立った。
 式では、平松知事が一人ひとりに卒塾証書を手渡して激励し、「活動を継続しながら常に内容を新しく改革し、これまで学んできたことを各地域で実践してほしい」とあいさつ。卒塾生を代表して、佐伯南郡塾の吉田博子さんが「この1年間で得た大きな自信と県内に広がる人のネットワークを生かし、地域での活動を続けていきたい」と謝辞を述べた。