県政だより 新時代おおいた VOL.32
vol.32 2004年1月発行 県内の各世帯に配布(奇数月に発行)しています。 ご意見・ご感想をお聞かせください。
    メール a10400@pref.oita.lg.jp
特集1 新春座談会
     県民中心の県政『安心・活力・発展』
特集2 ゴミゼロ作戦おおいた
風紋  県民のための県庁
地産地消・とよの国の食彩
県民レポーターによる訪問記
心ひらいて
21世紀に伝えたい「大分の風景」
地域の風だより

【表紙写真】ごみゼロおおいた推進隊(特集2)として任命された「宇佐郡中高一貫PTA」代表の荒金見治さん(安心院町)




特集1 県民中心の県政 安心・活力・発展
 
鈴木 麻理
(すずき・まり)
・OABアナウンサー
菊屋 奈良義
(きくや・ならよし)
工学博士、(財)大分野生物研究センター理事長
自然環境の賢明な利用を提唱して活動中
広瀬 勝貞
(ひろせ・かつさだ)
・大分県知事
合原 眞知子
(ごうばる・まちこ)
林業家、マルマタ林業株式会社専務
日本の杉桧を守る会環境部長
大津 博美
(おおつ・ひろみ)
県立大分西高等学校教諭
国体なぎなた総合優勝の原動力となった少年女子の監督

鈴木  新年明けましておめでとうございます。
 2004年の幕開けを迎えました。今日は、県民中心の県政「安心・活力・発展」と題して、地域でさまざまな活動をされている皆さんと広瀬知事に、これからの大分県についてお考えを伺ってまいります。
 まずは、広瀬知事に昨年を振り返っていただきます。
知事  4月に知事に選んでいただき、その時は改めて、県民の皆さん一人ひとりの暮らしを支える仕事に就くという、ずしりとした責任を感じました。
 それから8カ月間、皆さんが安心して心豊かに暮らすことができる大分県、活力あふれる大分県、将来を担う子どもたちがしっかり育ち、発展可能性豊かな大分県をつくっていくんだと、無我夢中でやってきました。
 まずは、県政ふれあいトークと称して県内各地へ出かけていき、県民の皆さんのお話を聞かせていただきました。
鈴木  皆さんの反応はいかがでしたか。
知事  一生懸命第一線で、仕事やいろいろな活動をしている方々のお話は、真剣味があって心打たれました。教えられることも多かったです。
鈴木  大分の魅力を再発見することもあったのではありませんか。
知事  全県を回って一番心に響いたのは天然自然の美しさです。私は以前から「大分県の自然環境はすごい」と思っていましたが、久しぶりに帰ってくると改めてきれいに感じて、山といい、川といい、海といい、素晴らしいですよね。食べ物もおいしい。
鈴木  そういった大分の自然の話なども交えて皆さんにお話を伺っていきたいと思います。
 菊屋さんは定期的に自然観察会を開いているということですが、子どもたちの反応はいかがでしょうか。
菊屋  上品にしゃべるのは苦手じゃから、普段どおりで勘弁してもらいますよ。
 やっぱりなあ、子どもたちはたいそう喜んで「おいさん、今度いつやるの」と言うてくれる。ビックリするのは子どもたちよりも親の方がなあ、無我夢中になって遊んでくれるんよ。
 人間の付き合いと一緒で、仲良うした衆はいじめとうねえやろう。だから、いつも行って遊びよる森は「えっ、なんであげんこと木を切りよんの」とか、「おいちゃん、あっこん川じ何かいじくりよったで」とか、そういう目を持ってくれるんよ。「自然を守りましょう。大切にしましょう」と、わざわざ言わんでも、親しむちゅうのが一番大事なことやろう。
 大分の自然ちゅうのは、どこに行ってもみんな人手が入ったとこばっかりなんよな。だから、特別に原生林はねえけんど、人手が入った、昔から上手に使うてきた森を、年寄り衆の真似をして上手に使いながら残していくちゅうのが、大分の自然保護の一つのあり方やなかろうかな。
 例えば、ここで工事をするのに、邪魔になるけん「向こうに移動して保護しちょいた」ちゅう。普通はそれで保護が終わったと思うんやけど、向こうに移した日から本当は保護が始まるんやな。そのことを忘れちょるんよ。移した後「あんた世話ねえかえ、そこへ置いちょって不自由はねえかえ」とか、「あんた一人じゃすまんけん、仲間も一緒に移しちょこうかな」ちゅう”広がりで守る“という考え方がなかなか行き渡らんのよな。
 そういう「自然の全体の枠組みの中で人間の営みがどううまく取り組まれていくか」ということをベースにした自然保護のあり方、そういった仕組みちゅうものを子どもたちに感じさせるちゅうのが、わしの観察会の一つのテーマなんやけど。
 春日神社の森のごと、屁もへくれん森じゃあけど、森がのうなった街の中にちょこんと残っちょる。これは大事やろう。周りにないところに、わずかに残っちょる森はどげな妙な森でも大切や。自然に対する今までの絶対評価に対して、これからは、人間文化との関係での相対評価ちゅう新しい考え方がいるやろうな。
知事  菊屋さんみたいな素晴らしいリーダーがいて、そういうリーダーの下で、各地で自然を守るいろいろな運動をやってますよね。たのもしいことだと心強く思っています。
 私は、そういう皆さんと一緒に、大分県の素晴らしい自然を守り、これを21世紀の大分県の”売り“にしていきたいという気持ちで「ごみゼロおおいた作戦」を提唱しました。幸い、多くの方に同調していただき、いろいろな運動が起こっています。
「ごみゼロおおいた推進隊」も募集し、たくさんのご応募をいただきました。(特集2)
鈴木  これからは具体的にどういった形で進めていくのでしょうか。
知事  これは県が進めるというよりも、県民の皆さんの「自然の豊かな恵みを守っていこう、もっといいものにしていこう」という気持ちを大事にして、活動を支えていくことが大切だろうと考えています。環境を守っていくことが、心豊かに安心して暮らせる大分県づくりのベースですね。
 それから、大分県は高齢化が進んでいます。これは、経験豊かなお年寄りがたくさんいるということですから、大変いいことです。お年寄りに元気いっぱい、社会に参画してもらうことも、安心の大分県づくりにとって非常に大切です。
 また、もう一つは子育て支援。子どもたちを安心して生み育てられるような環境をつくるといったこともしっかりやっていこうと思っています。
鈴木  合原さんには林業の現状についてお話を伺いたいのですが、やはり昔と比べると状況は変わってきていますか。
合原  私は昭和52年に日田に帰って家業の林業を継ぎました。全体的な流れとしては、日本では昭和50年代から林業の地盤沈下が始まっています。
 21世紀は環境の時代で、地球規模で資源を大事にしなきゃいけない時代です。日本は木材資源が非常に豊かなのですが、残念ながら、子育てが十分にできなかった林業というか、植えてそのまま放っておいてしまったという現状があります。
 そのような中で、森林を育てる人間がいよいよいなくなってきています。国産材の経済効率が非常に悪くなったため、林業に携わる方々の意欲が減退しているのです。高齢化が進み、後継者はほとんど都会に出て行って、山には誰もいないという状況です。山はちょっと寂しくなっています。20何年前までは山に入ると、どこかでチェーンソーの音がしてたんですが、今ではその音がしないですね。
 それでも私は、循環型社会を基本とした、本来的な自然との共生の考え方が定着していけば、また山は元気になっていくと思っています。何かとても遠い先のことのような気もしますが。
知事  育てることができなくなった林業は問題ですね。
 林業が世代を超えてずっと受け継がれていくと一番いいのですが、今の経済は非常に回転が速いので、30年、40年かけて木を育てていくというのはビジネスとしてはなかなか難しいところがあります。
 しかし、森林は土を守り、水を育て、そしてまた今や地球環境問題解決のためのCO2吸収の一番大きなよりどころになってるわけですから、森林の重要性はますます大きくなっています。県民みんなで、あるいは国民みんなで森林を守っていく活動を進めることが必要になってきましたね。
 県では「県民総参加の森林づくり」を呼びかけています。私も昨年9月の「森林ボランティアの日」に山に入り、間伐などの手入れに参加しましたが、あれはなかなか大変ですね。
合原  エキスパート(熟練者)の育成も必要だと思います。
知事  ボランティアもいいけれど、やはり、エキスパートを育てて、適切な管理をやってもらうということが大事ですね。林業をやっておられる方も、付加価値の高い新しい林業、あるいは多角的な林業を指向する。また一方では、県民みんなで森林を守る努力をしていくことが必要だと思います。
 これからは、一人ひとりがそれぞれの働く分野で知恵を出し、元気いっぱいやっていくということが非常に大事な時代になってきますね。
 合原さんを見ていると本当に元気いっぱい、活力いっぱいなのですが、その元気の元はご商売がうまくいくということだと思うのです。働く皆さんが知恵を出して努力し、それが実を結んで活力がわく。そういう環境をつくっていきたいと思っています。
鈴木

 それでは3人目の方にお話を伺いましょう。
 大津さん、なぎなた総合優勝おめでとうございます。

大津  ありがとうございます。
鈴木  大会を振り返っていかがでしょうか。
大津

 昨年初めて、監督として国体へ出場したのですが、選手がみんな練習にもよく取り組んでくれたし、大会でも思った以上の頑張りを見せてくれました。演技競技で少年が4位、試合競技で5位、成年女子が試合競技で3位で、総合優勝という成績を収められて、大変うれしく思っています。
 途中までの成績はあまりいい方じゃなかったのです。ここまでは絶対頑張ろうというような感じでそれぞれが頑張って、予想外にどんどん勝ち進んだのもあるし、強豪チームが負けてしまうということもありました。最後は成年女子の試合の結果待ちだったのですが、総合得点を計算してみんなでビックリしました。

鈴木  大津さんは選手としても活躍されてきたのですが、今回監督に転向されたというのは何かきっかけがあったんですか。
大津  選手をやめたわけではないんです。国体以外の大会では選手としてやってますが、平成20年に大分国体があるということと、世代交代というか、若い選手にも経験を積んでもらいたいという意味で、昨年の国体では監督をさせていただきました。
 実は自分がやる方が楽なんですよ。監督を経験してつくづく、教えるというのは本当に大変なことなんだなと感じました。自分ができるからといって選手ができるわけじゃないので、どういうふうにしたらできるようになるかとか、どういうふうに言ったらこちらの思いが伝わるのかということを考えながら指導しています。
知事  昨年、国体の結団式を拝見した際に、なぎなたの選手の皆さんを見て、「この方々は何かやるんじゃないかな」と思っていました。優勝の知らせが入った時は「やった!」という感じでした。本当にうれしかった。
 国体の総合で10位台に入りたいというのが悲願だったのです。そうしたらおかげさまで、19位、10位台になったんですよね。
 これは、4年後の平成20年に予定されている国体の大分大会に向けて、大変よい弾みになったと期待しています。こういう時節ですから、既存の施設、設備を使ってやろうと思ってますけれども、どうしても足りないものは県外の施設でやるとか、あるいは県民がその後もよく使ってくれるものなら造りますが、とにかく施設整備は倹約します。一方、選手が元気いっぱいに活躍してくれるということは、大分県の将来にとって大事な人づくりになりますから、こちらはあんまりお金をケチらずにと思っています。
 発展についてはもう一つ。大津先生が、プレーをするよりも教える方が大変だとおっしゃってましたが、今年は小学校1年生から30人学級を実施します。教える先生の負担をできるだけ軽減し、入学早々の子どもたちに丁寧な教育ができるようにします。
 人づくりに力を入れて、発展可能性豊かな大分県をつくっていきたいと思
っています。
鈴木  こういう時代ですので、県の事業も厳しい面が出てくると思うのですが。
知事  皆さんに大変ご心配をおかけしている県の財政についてですが、いろいろ議論して、ようやく昨年末に行財政改革プランの素案を出すことができました。
 これをもっと練って、3月末までには、行財政改革プランとして、これ以上借金をしないで、健全な財政運営ができるような道筋をつけていきたいと思ってます。
 大変、厳しい時代ですから、聖域なくあらゆる経費を、しかもゼロベースから見直すということをやっています。しかし、健全な財政運営を行うということはあくまで手段でして、大事なことは「安心・活力・発展」を目標に、県民の皆さんにとって住みよい大分県をつくっていくことです。これからも一層努力していきたいと思っています。
鈴木  最後に、皆さん一人ひとりに今年の目標を伺いたいと思います。
菊屋  そうやなあ、知事さんがおっしゃったように、財政が厳しいのはようわかるんよ。それだけになあ、公共工事の出し方、土木業者が喜ぶ公共工事じゃねえで、農家が本当に喜ぶような農業政策、林業家が喜ぶような林業政策じゃねえと悪いわな。
 県の元気債にいっぱい応募があるちゅうことは「知事さん、頑張りなさいよ」ちゅう声じゃからなあ。だから、自然と付き合いながら自然環境を大事にする時に、どうやって上手に利用させてもらえばいいか、そのためには、この工事はここで控えるべきやねえかとかな、そういう見直しをしてもらうためにちっとまた、落語の叱言(こごと)幸兵衛じゃねえけんど「あんたどう、あんまりやねえなぁ」と言おうかと思うちょん。
 知事さんがおっしゃった30人学級ちゅうのは、わし20年前から勧めよっち、20人学級にして教員の定数を2倍にせえちゅうて笑われよったんよ。あれはぜひやってもらいたい。
合原  山についての目標というと、交流というのがキーワードですね。
 これには、外部との交流と内部の交流があって、例えば都市と山村という外部との交流があります。また、山村内の結構小さな世界では、同じ方向を見てるんだけど、強い結束がないからうまくいかないということがたくさんあるので、なるべく少ない人数の、山に関わっている人たちの力が一緒に出せるような形での内部の交流、この2つの交流をキーワードにいろんなことをやっていきたいと思っています。
大津  昨年は総合優勝という大きな成果を残すことができましたので、今年もそれに近い結果が出せるように、できれば全種目で優勝に近い成績を収めて、総合優勝がまたとれるように、選手と監督が一丸となって日々努力していきたいと考えています。
鈴木  最後に知事の今年の目標をお願いします。
知事  今年は「きのえさる」「甲申(こうしん)」の年です。
 甲申の年というのは、今まで殻にこもっていたものが、すっくと芽が出て伸びていく年なんだそうです。
 日本の景気は底を打って明るい兆しが出てきたと言われています。この流れを大分県に持ち込んで、県内の景気もよくしなければいけません。ダイハツ車体が今年中に操業を開始し、キヤノンが大分市に新しい工場を造るなど、県内にも明るい話題があります。
 県民の皆さんが元気いっぱい、生き生きと暮らしていける、活力ある大分県づくりを進めたいと思ってます。
鈴木  大分県の未来を私たちの力でよりよいものにするためには、一人ひとりが、今何をすればよいかということをきちんと考え、行動することが必要なのだと思います。
 元気いっぱいで、今年を良い年にしていきたいですね。
(1月3日放送 OAB新春特別番組)
 

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