大分県庁のホームページ   『新時代おおいた』のバックナンバー
新時代おおいたVol.47(2006年7月発行) 新時代おおいたVol.47表紙
特集1 次代を担う子どもの安全・安心のために
特集2 県の相談窓口電話帳
風紋 情報発信基地「坐来大分」
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心ひらいて
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県内の各世帯に配布(奇数月に発行)しています。 ご意見・ご感想をお聞かせください。
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特集1 次代を担う子どもの安全・安心のために
最近、子どもが被害者となる事件や事故が続発しています。 また、不審者からの声かけ事案も増加しており※(表1参照)、 その対策が求められています。 一方、食生活の乱れで子どもの健康も脅かされています。 次代を担う大切な子どもたちの安全や健康を守りたい、 こうした思いを胸に地域や学校でさまざまな取り組みが行われています。 今回は、こうした子どもを守る取り組みを紹介します。
青パト活動の写真 (表1)子どもへの声かけ事案の発生状況
「見せる防犯」青パト
 外見はパトカーなのに、回転灯が青色の自動車を最近、見かけませんか?これは、防犯パトロール車(通称、青パト)と呼ばれるものです。
 緊急自動車などを除いて、一般の自動車に回転灯を装備することは、法律で禁止されていましたが、警察から自主防犯パトロールを適正に行うことができるという証明を受けた団体は、青色回転灯をつけることができるようになりました。
 それをきっかけとして、県下各地に続々と青パトが誕生しています。豊後大野市でも今年4月から青パトが動き始めました。ボランティアで青パトを運転し、防犯活動に取り組む田部二生さんに日ごろの活動状況を伺いました。田部さんは、郵便局を退職後、多くの地域づくりの団体に所属しているほか、交通安全や防犯活動にも参加しています。
 「まずは、青パトの存在を知ってもらおうと、わたしの出身である旧緒方町の各学校のPTA総会に車を乗って行きPRしました。パトロール中は、車が目立つからか、子どもたちはもちろん、山中を走っていると遠くに見えるお年寄りも手を振ってくれます。青パトは見せる防犯活動。車を見て、不審者が近づかない、子どもが安心感を覚えるなど、少しでも防犯に役立てばと思っています。子どもの安全を守ることはもちろんですが、悪質な訪問販売などの予防に役立つとお年寄りからも感謝されています」
 今後の取り組みについては、「昔は、人とすれ違うと知らない人でもあいさつを交わしていました。最近は、知らない人にあいさつされたら返事をするなと子どもは教えられています。青パトの見守り活動で、積極的に子どもたちとあいさつを交わし、あいさつしあえる古きよき時代に戻るきっかけとしたいです」と田部さん。パトロールで立ち寄った緒方小学校では、青パトを見つけて子どもたちがすぐ周りを取り囲みました。
青パト パトランプの写真
青パト パトカーの写真
田部二生さんの写真

頼りになる「スクールガードリーダー」
 教育委員会では、地域社会全体で学校安全に取り組む体制を整備しようと、昨年から「地域ぐるみの学校安全体制整備推進事業」を行っています。地域学校安全推進指導員(スクールガードリーダー)による学校巡回や、各学校に学校安全ボランティア(スクールガード)を養成することなどが主な内容ですが、昨年に引き続き、スクールガードリーダーの委嘱を受けた、杵築市の藤原勇郎さんの学校巡回に同行しました。スクールガードリーダーは、通学路や学校周辺を巡回し、不審者や危険個所などの情報を学校に提供することが主な役割です。
 杵築市大田の山あいの通学路を不審者がいないか、危険な物はないかなど注意深く観察しながら、藤原さんの車は進みます。通学路に張り出した竹などを自らノコギリで切ることもあるそうです。「学校にお願いして、校舎の周辺にあったゴミをずいぶん片付けてもらいました。大きなゴミは、不審者の隠れ場所になったり、凶器になったりすることも考えられますから」と藤原さん。子どもが被害者となる事件の続発について「人びとが自分の生活に手一杯で他人にかまう余裕がなくなった気がします。しつけの面でもわたしたち戦後世代は、子どもの怒り方を知らなかったため、わがままに育った大人が増えました。子どもを甘やかせすぎたつけが今、出ているのかもしれません。小、中学生時代は、人格形成のうえで最も大切な時期です。この時に嫌な思いを子どもにさせたくない、その思いでスクールガードリーダーを引き受けました。わたし自身、少年時代はやんちゃで周りに迷惑もかけましたので、まあ罪滅ぼしですよ」とさわやかに笑いながら、気になる通学路があるといって再び車を走らせました。
藤原勇郎
活動の写真

両親、子どもの日ごろの備え
 このような見守り活動のほか、防犯パトロール、防犯教室、避難訓練、通学路安全マップ作成など子どもの安全を守るさまざまな取り組みが行われています。しかし、実際に不審者に遭遇するなどした場合、どのように対処すればよいのでしょうか。日ごろの心構えを警察本部生活安全企画課の熊瀬寛警部補に伺いました。
  「まずは、できるだけ1人で遊ばないことです。それから当然、知らない人の車には乗らない、何かあったら大声を出して周りに助けを求める、とにかくすぐ逃げる、どんな人が何をしたか親に知らせる、などを子どもに徹底してください。どういう行動が危ないのか、いざというときにどうすればいいかをしっかり教えておくことが大切です。そうした意味から、避難場所にもなる『子ども連絡所』の位置や防犯パトロールを行っている大人の特徴などを教えておくことも大切です。また、防犯ブザーや笛などの防犯グッズを携行することも有効です。
 警察からのお願いとしまして、不審者を見かけたなどの情報がありましたら、ささいなことでも結構ですので、最寄りの交番や警察署に連絡してください」と語ってくれました。
熊瀬寛さんの写真

大人が変われば子どもも変わる!

 以前は、子どもが悪さをすると地域の大人がしかったり、困っているのを見かけると声をかけるなど、地域の子どもを地域で守り育てる風潮がありました。そうした習慣を取り戻そうと、県では、今年度から「大人が変われば子どもも変わる」県民運動を行います。県と共同でこの運動に取り組む、県青少年育成県民会議の平松徹夫副会長にその内容を伺いました。
  「運動の柱の一つは、大人が身近にできることから、手本を子どもに示そうというものです。『子どもは社会を映す鏡』です。あいさつをするとか、ごみのポイ捨てをしない、公共の場では携帯電話を使わないなど、大人が自らマナーを守ることで子どもに手本を示せればと思います。もう一つの柱は、社会全体で子どもを育てようということで、近所の子どもたちを温かく見守り、声かけなどを行っていくことにしています。『地域のおじさん、おばさん運動』といいますか、わたしが子どもの頃は、子どもの数が多くても、近所の人は名前を覚えてくれていました。今は、隣の家の子どもの名前を知らない人も増えています。あいさつすることで、名前を覚え、子どもとの距離感をなくしていければと思います。
 また、最近の子どもは危険予知や回避能力が落ちている気がします。その原因のひとつは、自然体験、生活体験、集団遊び体験の少なさからきていると思います。子どもにこうした体験を提供する活動もあわせて行っていきたいですね」と力強く語っていただきました。
 県では、7月から県民総ぐるみあいさつ運動や公共マナー向上運動を県民の皆さんと進めていくことにしています。
平松徹夫さんの写真

食育で子どもの健康を守る
 最近、「食」の面からも子どもの安全・安心が脅かされています。すなわち、BSE(牛海綿状脳症)や食品の偽装表示問題などで「食」の安全性が危ぶまれ、ファストフードの台頭などで、伝統的な食習慣や文化も失われつつあります。「食」は子どもの心身形成の基本となる大切な要素です。
 このため、県では「大分県食育推進計画」を策定して、健全な食生活を送る子どもの育成に取り組んでいます。その一環として、昨年度から、地域の食育を進める指導者となる「食育コーディネータ」を養成してきました。そのメンバーで、子ども達に安全な食材を提供し、伝統料理を伝える取り組みを行う臼杵市の壱岐千恵子さんを訪ねました。壱岐さんは、生活改善グループ活動などを経て、農産品直売所「四季菜彩」を仲間と立ち上げ、農村女性の所得向上と、安全な食材提供に取り組んできました。
 「小学校でだんご汁を作る料理教室を開いたのですが、だんご汁を知らない子どもがいて驚きました。慣れない手つきでだんごを楽しそうに伸ばし、できただんご汁をおいしそうに食べるのを見てうれしかったですね。臼杵市では、安全な野菜を子どもに提供しようと、『給食畑』と指定して、減農薬で生産者の顔の見える野菜を学校給食に使っています。また、子どもに芋掘り体験をさせるなど、食材である野菜に触れる活動も行われています。
 現在は、家族でお母さんの手料理を囲みながら、ゆっくりと団らんする機会が少なくなっています。このことが、子どもの健全な心身育成の障害になっている気がします。若いお母さんや子どもに、昔からの郷土料理の作り方を教え、食べてもらうことにより、食を通じて子どもたちを守っていきたいと思います」と抱負を語ってくれました。

給食を作っている様子
壱岐千恵子さんの写真農産品直売所「四季菜彩」の写真

よき地域のおじさん、おばさんとともに
 子どもの安全・安心を守るため、いろいろな地域で、多くの人が努力しています。今回、取材した方々は、それぞれの立場で、地域のよきおじさん、おばさんとして子どもを守るための活動に取り組んでいました。子どもは次代を担う「宝もの」。県では、こうした県民の方々とともに、子どもを守る取り組みをこれからも進めていきます。
子どもに「イカのおすし」を練習させましょう! イカない 乗らない 大声で叫ぶ すぐ逃げる 知らせる


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