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新時代おおいたVol.48(2006年9月発行) 新時代おおいたVol.48表紙
特集1 防災の日を迎えて〜 備えていますか?
特集2 危険な地域を把握しましょう。
風紋 「プリンシプルのない日本」を読んで
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特集1 防災の日を迎えて〜 備えていますか?
9月1日は「防災の日」。1923(大正12)年9月1日に発生した関東大震災の教訓と、この時期に多い台風など、災害への心構えの意味も込めて、1960(昭和35)年に制定されました。大分県でも、台風や豪雨、地震などにより、これまで幾度となく大きな災害が発生しています。
このような自然災害から身を守る為には、どうしたらよいのでしょうか。
今回の特集では、防災に対する日ごろの備え、県や市町村、地域の取り組みなどを紹介します。
災害情報の収集拠点、防災センター
 6月12日、午後5時1分ごろ、県中部を震源とするマグニチュード6.2の地震が発生しました。各地の震度は、佐伯市の震度5弱をはじめとして、大分市などでも震度4を観測しました。
 県では、県内で震度4の地震が発生すると「災害対策連絡室」を設置することにしています。
 今回も地震発生と同時に県庁のコンピューターから要員等の職員181人に携帯メールが自動的に送られ、職員が順次、災害警戒本部などに参集しました。
 本部では、市町村やライフライン(電気・水道・ガス・交通機関など)の被害情報を収集し、必要な措置を講じていきます。本部内のスクリーンには、市町村の被害時発生状況が色分けで表示され、気象情報やニュース映像、ヘリコプターからの映像受信も可能です。幸い、この地震で大きな被害は生じませんでしたが、災害の発生状況に応じて自衛隊や他県への応援要請、ヘリコプターによる救助活動なども行われます。
 1995(平成7)年の阪神・淡路大震災では、行政の初動の遅れが被害拡大の要因になったともいわれています。県では、参集基準などを記載した防災ハンドブックを全職員に配布し、災害時の職員の迅速な行動で初動体制の確立を図っています。
 このように県や市町村では、防災情報を少しでも早く県民の皆さんに知らせるため努力していますが、地震による津波からの避難などは一刻を争う場合も多く、住民自らが判断し、行動する必要もでてきます。

災害警戒本部の様子 大分県が色分けされている写真
↑震度状況
天気図
↑台風情報

自分たちの地域は自分たちで守る
 「自主防災組織」をご存知ですか?自分たちの地域は自分たちで守るという「共助」の精神のもと、住民自らが防災活動を行おうという組織です。災害時の人命救助の9割は家族または近所の人たちの協力によるものといわれており、住民自ら助け合い、行動することが自分たちの生命・財産を守ることにつながります。昨年4月現在の自主防災組織率は、県全体で73.7%になっており、県では更なる組織化を推進しています。
 その一環として昨年度から、自治会や町内会などの地域を単位として、住民の防災意識の啓発や災害発生時の応急対策の習得など、地域の防災力の向上を目的とした「地域防災力強化育成事業」を実施しています。
 昨年度、この事業により地域の防災実践活動に取り組んだ臼杵市中津浦地区を訪ねました。中津浦に入ると、まず、青く澄んだ海が目に飛び込んできました。地区を歩くと、あちこちに避難場所へ誘導する看板が目立ち、消防車庫には防災マップが貼られています。

中津浦地区の簡易地図
↑消防車庫に貼られた防災マップ
消防車庫の写真

全ては盆踊りから始まった
 中津浦地区は、117世帯、人口331名で65歳以上の高齢者が38%を占めています。地形的には集落の前は海、すぐ後ろには山が迫り、これまで台風や豪雨で何度も災害に見舞われてきました。漁業やみかんなどかつての基幹産業が衰退し、人口も減少するなか、40人を超えていた消防団員が9人にまで減少。こうしたことに危機感を覚えた当時の区長さんらは、この地域をどう守っていくか、6年前から試行錯誤の活動を始めたといいます。
  「この地域は、地引き網など共同で作業することが多かったため、もともと地域のまとまりは強いものがありました。しかし、人口が減り続けるなかで、新しく入ってくる人も増え、次第に地域のきずなが薄れていき、かつては4日間行っていた盆踊りが2日間になってしまいました。このままではいけない、ご先祖さまが泣いている、ということで、盆踊りを復活する取り組みから始まりました」と現区長の平松孝さん。
  住民同士で話し合い、交流を深めていくなかで、盆踊りは3日間に復活し、現在では都会に出ている人も帰省して盛大に行われるようになりました。
  その後、歴代の区長さんらの働きかけで、防災行政無線の設置、急傾斜地の防災工事の実施など、防災面での取り組みも着実に行われてきました。「防災活動というのは、地味で見えにくいものです。無線や防災工事など目に見える部分もないと住民はなかなかついてきてくれません。また、祭りやレクレーションなど楽しいこともないと防災や奉仕活動など、苦しいことはやっていけません」と話すのは副区長の東昭太郎さん。
  昨年の防災実践活動では、防災マップづくりや避難場所、避難路の確認、災害時要援護者の支援などについて、多くの住民が参加して訓練や会合がかさねられました。
中津浦地区の風景 話し合いをしている写真 防災実践活動の様子

災害時要援護者への支援
 中津浦地区の防災に対する取り組みは、災害時要援護者への支援でも進んでいます。防災マップには、避難場所や避難路などのほか、災害時要援護者の住所地も記入されているのです。
  「災害時に自力で避難できない高齢者や身体障がい者などは、地域の人が協力しながら対応していくことが必要です。中津浦では、地区を7つの班に分け、班ごとに避難路、避難場所を定めており、避難する際は、グループの中で災害時要援護者の担当を決め、一緒に避難することにしています」と民生委員の板井直さんは話します。
  「個人情報への意識の高まりから、高齢者や障がい者などの情報を得ることが難しくなっていると聞きますが、ここでは、災害時の支援を求める方に自ら名乗り出てもらって災害時要援護者名簿も作成しています。何事も受身ではなく、自分を守って欲しいと思う人には、自ら手を上げてもらったのです」と平松区長さん。
  今後の抱負を伺うと「これまでの取り組みで防災に対する地区の力はかなり増したと思いますが、防災対策はまだ多くあります。地域のみんなで協力し、助け合い、今のまとまりを失うことなく、この体制を次代に引き継いでいきたいと思います」と語ってくれました。
平松さん、東さん、板井さんの写真
区長の平松さん(左)、
副区長の東さん(中央)、
民生委員の板井さん(右)

ボランティア、NPOとの協働
 大規模災害が発生した場合、被災地の支援に地域や行政だけでは手が行き届かない場合もあります。このような時、ボランティアの存在は大きいものがあり、県では災害ボランティアコーディネーターの育成やネットワーク化を進めています。県の委託を受け、災害ボランティアの育成と連携に取り組む、県社会福祉協議会の村野淳子さんに活動状況を伺いました。村野さんは、自らもボランティアとして活動した今年7月の鹿児島県北部豪雨水害の体験を次のように語ります。「私が大口市入りしたのは、災害発生から5日後でしたが、すでに災害ボランティアセンターが設置されており、多数のボランティアが支援活動を行っていました。大口市とセンターの運営を行う社会福祉協議会もボランティアとうまく連携していました。特徴的だったのは、地元の行政職員がボランティアの送迎を行ったり、ボランティア活動に同行していたことです。市外から来たボランティアにとっては、地理がわかりませんから助かりますし、被災された方々にとっても、初対面のボランティアが地元の方と一緒に活動することで安心感を覚えます。今回の経験から学んだことは、被災地域の人々がボランティア活動に参加し、外から来るボランティア等を適材適所に派遣することで、復旧活動がスムーズに進むということです。また、真剣に活動するボランティアの姿が、被災した方に自分たちで立ち上がろうという力を与えていることを強く感じました」と村野さん。
 平成7年の阪神・淡路大震災をきっかけに、災害ボランティアの重要性が認識され、全国的にボランティアの登録、研修などが行われるようになりました。大分県でも平成9年から、医師や看護師、建設業者など、特殊技能を持つ人を中心にボランティア登録を進めてきました。平成12年からは一般の方の登録も始め、現在では約800名が登録されています。「今年度は、災害ボランティアの育成とともに、登録ボランティア団体と個人ボランティア、NPO法人との連携・ネットワーク化を進めることにしています。お互いの活動内容や役割分担の確認を行い、それぞれの顔が見える関係を作っていきたいと思います。
 県南で6月に震度5弱の地震が起きたときには、全国の災害ボランティアから『大丈夫?』『支援は必要ない?』と多くのメールが届きました。一昨年の佐伯市の水害では、泥を拭き取るタオルが不足しているというと、神戸からすぐ届けられました。このように全国的に災害ボランティアのネットワーク化が進んでいますので、研修会や会合を通じて県内の災害ボランティアの連携を深めていきたいと思っています」と抱負を語ってくれました。


ボランティア活動の様子

村野さんの写真
県社会福祉協議会
村野淳子さん

日ごろの備えは万全ですか?
 大分県では、毎年のように複数の台風が接近しているほか、東南海・南海地震の発生も危ぐされています。わたしたちは、防災について日ごろからどのような備えが必要なのでしょうか。県防災危機管理課の財前賢治課長補佐に聞きました。
 「災害時には『避難しよう』と思っても事前に準備や確認をしておかないと安全に避難できない可能性があります。日ごろから、がけ崩れや浸水の危険性がある箇所などを市町村に聞いたりして、よく点検しておいてください。把握した危険箇所を地図に記入し、避難路に線を引いておく、いわゆる防災マップを地域で作成しておくといざという時に役立ちます。また、水や非常食、ラジオ、懐中電灯、貴重品など避難時に必要なものをあらかじめ家庭で準備しておいてください。
 また、『さあ避難しよう』と思っても、風雨が強くなってからでは、身動きが取れなくなることも考えられます。市町村やテレビ、ラジオの防災情報に注意し、早めの避難を心がけてください。それから、市町村から避難指示、避難勧告が出された場合は、近所に声をかけ合って直ちに避難してください。
 なお、お年寄りや障がい者などは特に避難に時間がかかります。一緒に避難する人を決めておくなど、地域で協力して、早めに安全に避難するよう心がけてください。
 市町村をはじめとした行政機関は、災害発生時、住民の皆さんの安全確保のため、あらゆる努力を行いますが、地域の方が、お互いに協力して避難したり、日ごろから避難訓練を行っていただけると、災害時にスムーズに対応できます。まだ自主防災組織のできていないところは、地域でよく話し合い、早急に組織化を進めていただくようお願いします」と話してくれました。

避難訓練の写真
訓練風景

財前さんの写真
県防災危機管理課
財前賢治課長補佐

防災についてもう一度考えてみませんか
 自然の猛威は、時として一瞬にわたしたちの生命や財産を奪うこともあります。このような災害が発生したときに、いかに対応するか「防災の日」を機会に日ごろの備えとともに地域や家庭でもう一度、考えてみませんか。


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