大分県庁のホームページ   『新時代おおいた』のバックナンバー
新時代おおいたVol.50(2007年1月発行) 新時代おおいたVol.50表紙
特集1 新春座談会 これからの大分の教育を考える
特集2 輝くセカンドライフのために
風紋 園田高弘先生のことなど
トピックス
県民ひろば
心ひらいて
とよの国の食彩
県内の各世帯に配布(奇数月に発行)しています。 ご意見・ご感想をお聞かせください。
メール:
a10400@pref.oita.lg.jp


新春座談会 これからの大分の教育を考える。
参加者
山崎 清男高橋 正夫芳我 徹三西村 多恵子広瀬 勝貞
大分大学教育福祉科学部教授県高等学校PTA連合会会長新日本製鐵株式会社大分製鐵所製銑工場長おおいた子ども・子育て応援県民会議委員大分県知事
広瀬知事の写真
広瀬知事
山崎さんの写真
山崎 清男さん
芳我さんの写真
芳我 徹三さん
西村さんの写真
西村 多恵子さん
高橋さんの写真
高橋 正夫さん

広瀬知事
広瀬
 新年明けましておめでとうございます。
 現在、教育をめぐってさまざまな問題点が指摘されています。今日は次代を担う子どもたちの教育について、各分野でご活躍の皆さんとお話しを進めていきたいと思います。

生活習慣、コミュニケーション力
広瀬知事
広瀬
 小、中学校の先生に話を聞くと、子どもに基本的な生活習慣が身についていないことで苦労すると言われます。朝起きて顔を洗い、「おはようございます」のあいさつをしてご飯を食べ、それから学校にきてもらいたいのだけれども、それができていない子どもが多いそうです。また、先生の話していることがきちんと子どもたちの頭に入っているのか、そしてそれに基づいてきちんと行動を起こせるのか、コミュニケーション力と言いますか、そういう力が付いていないことを心配しています。
山崎さん
山崎
 社会が複雑・高度化してきて、生活のあり方が変わってきています。夜寝て朝起きるというパターンが崩れており、その影響が子どもたちに出てきていると思います。しつけというのは、先天的に備わっているものではなく、親と子が生活する中で身に付けられていくものですから、家庭生活の中で親が基本的な生活習慣を付けさせていくことが必要だと思います。
 もうひとつ、コミュニケーション能力について、「1.5の人間関係」と言っていますが、わたしと皆さんがお話しする関係は、一対一の人間ですから、足したら2になります。こういう関係は、時には嫌だなと思っても、お互い気を使いながらコミュニケーションするわけですが、人間とコンピュータのように、半分人間とでもいいましょうか、そういう相手とは自分からいつでも関係を断ち切ることができます。こういう関係が増えており、自分の気持ちを伝えたり、相手の気持ちを聞いたりする関係ができにくくなっているのではないかと思います。
高橋さん
高橋
 確かに生活習慣が非常に不規則になっています。最近では、親がカラオケに小さな子どもを一緒に連れて行って、夜遅くまで遊ぶ光景を目にします。こうしたことで子どもたちの生活習慣が壊れていくのだと思います。
 それと本を読む機会が減っています。今の高校生が大学受験などに向けて一番不足しているのは、表現力と読解力と言います。本を読む時間を決めて一生懸命努力している学校もありますが、大切なことだと思います。
芳我さん
芳我
 企業も、若者だけでなく、おじさん相手にもしつけを行っています。私どもの会社では6S活動と言いまして、整理、整頓、清掃、清潔、それと、しつけ、最後が作法だと言って取り組んでいます。しつけは、社会といいますか、会社などをうまく回していくための秘訣ではないかと思います。
広瀬知事
広瀬
 生活習慣は、小さい頃からしっかりしつけておけば、子どもにとって何の負担もなく、当たり前のことになりますが、後になってしつけるのは大変です。そこは、あえてお父さん、お母さんにしっかりと頑張っていただかなければならない気がします。
 
会議の写真 自主管理活動を通して
人づくり・職場づくりを実践

人づくり、人間力
広瀬知事
広瀬
 教育というのは、人間力を培って、しっかりとした人をつくっていくことです。人間力ってなんだろうという気もしますけれども、このことについて、伺っていきたいと思います。
芳我さん
芳我
 人間はそれぞれいろんな才能を持っています。それぞれのステージで、どれだけ力を発揮できるか、そういう力を付けてやることが大事だと思います。
 日本人は、海外の情報もよく勉強したうえで工夫する力を培ってきました。おかげで物づくりの実力はいいところまできていると思います。今、企業の中でそういう力をさらに伸ばしていかなければならないということで、集団で改善活動を行なっています。お互いに知恵を出し合って、それを結果に結びつける、そういう活動を行なっています。
 これを教育の視点から見ますと、知識ベースをまずしっかりとたたき込んでおいていただきたいと思います。その上で、いろいろ知恵を出すトレーニングをしていただければと思います。
高橋さん
高橋
 いろんな意味で、子どもたちの理解する力は上がってきているとは思います。最近の子どもはものがはっきり言え、それは素晴らしいことだと思いますが、一番不足していると感じるのは、相手を思いやる余裕がないということです。自分中心で、相手のことを理解していこうというところが欠けていると思います。
西村さん
西村
 子どもももちろんですが、親の方も人を思う気持ちがだんだん薄れてきたと感じます。今、母親として一番心配なのは、マスコミとか、いろんなところで、情報があふれすぎているということです。そうした情報に対して、子どもがきちんとした知識を持ち、きちんと決断できる、そういう教育を行うことが大切だと母親の立場から思います。
広瀬知事
広瀬
 先日、「国家の品格」の著者である藤原正彦先生とお話しする機会がありましたが、読み書き、昔はそろばんでしたが、今は計算、そういうことを徹底的にたたき込むことが大事だと言われました。それらが頭に入っていけば、自然に自分で考え、新しい知識を身に付けて楽しんでいく、自動的に成長していく過程に入っていくと言うのです。
山崎さん
山崎
 読み書き算ですね。こういうことを徹底的に知っていくことで、人間力が生まれてくるのでないでしょうか。
 近代教育学の基礎を築いたペスタロッチは、人間の諸能力を頭と心臓と手と言い、この三つを調和的に発達させることが教育の原理だと言います。頭は、生きて働く力、知恵。心臓は心、心情の問題。手は技術や技能です。こういうものを総合的に発達させていくことが大事だと言っています。
 また、今の子どもたちを見ていると、あまり働くということをしません。家族の一員として当然働くべきことがあると思います。風呂の掃除をするとか玄関を掃くとか新聞を取ってくるとか、そういうことも人間力を育成していくうえで大事ではないかと思います。
西村さん
西村
 うちは男の子ですが、お風呂とか自分で入る時は掃除しますし、わたしが忙しい時は長男が料理を作ってくれたりもします。小さい時は、「靴をそろえるのはあなたの係よ」などということはありましたが、自然に自分のできることはやってくれるようになりました。
広瀬知事
広瀬
 「少年の船」に乗って子どもたちと沖縄まで行きましたが、船には、リーダーとして高校生、サブリーダーとして中学生が乗ります。彼らは、小学生の面倒を見ますし、子どもたちが寝ている間に、明日は何をやろうかと、人のために一生懸命働いています。見ていて本当に感動しますが、ああいうことが人間力を養ううえで、いい経験になるんでしょうね。
高橋さん
高橋
 そうした素質を持っている子どもはたくさんいます。しかし、危ないとか面倒くさいといって、親の段階で仕切ってしまい、そういったチャンスを与えない家庭が増えてきたのではないかと思います。親がちゅうちょすることなく、いろんなところに子どもを送り出せば、子どもは子どもなりの、新しい世界がしっかり見えてくるのだと思います。
広瀬知事
広瀬
 知識ベースをきちんと身に付けて、後はボランタリーにいろいろ工夫をさせることによって、人間は新しいステップに入っていくということですね。これもなかなか難しいところがありますけれども、これからの地域や国のことを考えると、このあたりにしっかりチャレンジして人間力の養成に努めていかなければならないと思います。
 
授業風景1 山崎教授の授業風景

授業中の子どもたちの写真 授業風景2
↑総合実践の授業風景

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学校、家庭、地域の協力
広瀬知事
広瀬
 教育は天下の一大事です。家庭、学校、そして地域が一体となって教育を支えていかなければなりません。知、徳、体、バランスの取れた教育を行うため、家庭、あるいは学校、地域の役割といいますか、その辺についてお話しを伺っていきたいと思います。
山崎さん
山崎
 現代のような社会では、家庭や学校、地域が自己完結的にそこだけで子どもの健全な成長発達を担うことは、おそらく不可能になってきていると思います。そういう意味で、家庭や学校、地域社会が協働して子どもの教育を担っていくことは非常に大事です。今、県では「大分発 協育ネットワーク」という言葉を使って、家庭、学校、地域社会の三者が協力して子どもを育てようとしています。この時に大事なことは、三者が共通の目標を持つということです。大分の子どもをどうしたいのか、それと同時に子どもの教育に関して、特定のところに責任を押しつけるのではなく、みんなが責任を持つことが必要です。
芳我さん
芳我
 わたしは、子どもたちが目を輝かせて、ああいう社会人になりたい、あの会社に入りたいと思われるようにならないといけないと思っています。「お父ちゃんの会社はこんなにいい会社なんだ」と家に帰って自慢できる、企業が頑張っている姿を子どもたちに伝えることができたら、教育の効果もずいぶん上がってくるのではないかと思います。
広瀬知事
広瀬
 子どもたちが親の背中を見て、自分もお父さんみたいになろうと夢を持ち、志を持って勉強する、そして人間力が培われていくようなサイクルを家庭の中で築いていかなければならないんでしょうね。
西村さん
西村
 わたしは、知、徳、体の基礎は「食育」だと思っています。心のバランスを保つには家庭がまず頑張らなければならないと思います。学校の先生を尊敬できる子どもになってほしいですし、地域のおじさんや、おばさんにかわいがられる子どもにもなってほしいです。学校、家庭、地域が三者とも子どもたちの笑顔のために教育をあきらめない、ここで止めないというか、とにかく一緒の目標に進んで行くことが大切だと感じています。
 また、わたしは青少年育成協議会に入っていて、いろいろな行事がありますが、お母さんたちは忙しくて、なかなか参加することができません。その時にカバーできるのは、PTAを卒業したお母さんたちやOBの方々です。そうした方たちが、積極的に協力してくれるような関係を今からつくっていきたいと思っています。
高橋さん
高橋
 長くPTA活動を行ってきましたが、いろんな方に家庭の教育力が下がっているし、地域の教育力も下がっていると言われます。
 わたしたち親が、地域の方に子どもの面倒を見てくださいというのであれば、まず自分たちが地域の行事なりに率先して協力することが必要だと思います。まず、親が自ら変わっていくことが必要だと思います。子どもは親の言うことはなかなか聞きませんが、親のすることはしっかり見ています。子どもに真似されてもいいよう、しっかり背中を見せられるよう、そういった親にまず自分たちが変わるべきだと思います。
広瀬知事
広瀬
 教育の前提として、それぞれが自分の責任を果たしていくこと、特に家庭、親が責任をしっかりと果たすことが大事だということですね。大分県では、11月1日を教育の日として定め、家庭、学校、地域が一体となって教育問題に取り組んでいます。子どもたちの将来をしっかりとしたものとするため、これからも努力していきたいと思います。今日はどうもありがとうございました。
  (一月二日放送 OAB新春特別番組要旨)

新春座談会集合写真


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