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特集2 始動!「おおいた次世代ニュービジネス」


 長引く景気後退、この厳しい現状の中でこそ新たな局面を切り開こうと奮起する人たちを、県は応援しています。
 温めているビジネスプランがあるけれど、資金、人材の不足で手が出せない―
そんな企業、NPO、個人が新しく展開するチャンスとして、県では「おおいた次世代ニュービジネスプラン」と称して事業を募集しました。
 これは、雇用対策の一環として実施したもので、安定的な雇用につながる事業(ニュー・ビジネス)を広く県民から公募。採択された事業を提案者に委託することで、雇用創出とニュービジネスの発進、両方の効果を狙ったものです。
 予想を上回る161件もの応募をいただき、中でも、特に地域の実情に沿い創意工夫に富んだ18 件が採択されました。
 今回は、これまで思い描いてきたプラン実現に向け走りだした、「おおいた次世代ニュービジネス」の担い手たちの姿を追います。


届けます!寒い冬に灯油と人情

遠藤龍也さん
松井達也さん
 「現在、津久見市では高齢化が進んでおり、また全世帯の約17 %が独居世帯です。特に半島部では坂が多く、高齢者が自分で重たい灯油を運ぶのはとても大変です。これからの高齢化社会には絶対に必要な事業だと思っています」と強く訴えるのは、(株)オーティーネットワーク【宅配つくみ】代表の遠藤龍也さんと松井達也さんです。
 それぞれ津久見市内でガソリンスタンドを経営されているお二人は、県のビジネスプランの公募に「配送サービス連携推進事業」を提案し、採択されました。この事業は、灯油の配送を効率化するため、各ガソリンスタンドで行っていた配送を一元化して、新たに灯油配送ネットワークを作るというもの。
「宅配つくみ」の一同
(下段右が西岡さん)
半島部は急な坂道が多い

 お二人は採択を受けて同社を設立、委託費を活用して、配送を含めて5名を新規に雇用しました。現在5店のガソリンスタンドがネットワークに参加しており、市内津々浦々に灯油をお届けしています。
 その日の配送は四浦半島の突端(とったん)まで。片道40分、山越えを含む曲がりくねった道を給油車は進みます。
 今回採用され、配送を受け持つ西岡晴男さんは「この事業の趣旨に非常に共感して応募しました。以前勤めていた会社では高齢者に接することが多かったので、高齢者のために何かしたいという気持ちがあったんです」とおっしゃいます。
 半島部では山が海に迫り平地がほとんどないため、家々が建つのは急な傾斜地。配送員はその急な坂道を上がり、各家庭の玄関口といわず、頼まれれば部屋の中まで灯油缶を持っていきます。
 「本当に助かる。腰が悪いから、重いものを持って家の前の坂を上がるのがしんどいけど、中まで持ってきてくれるから」と顧客からは、ただ届けるだけではない親身な心配りが評判。配送時には住民と温かいやりとりを交わし、地域の見守り役としても一役買っている様子です。
 「困っている人がいるなら、津久見の果てまでお届けしますよ」とおっしゃる同社の皆さん。頼もしい言葉です。
 来年度には、市内の商店街と協力して生活用品の配送を開始するため、準備を進めています。
 「必要としている人のため」、入り組んだリアス式海岸をどこまでも走る「宅配つくみ」は、頼れる地域の担い手として、大きく成長しているところです。




「国東七島イ」に新しい風を

細田利彦さん
 国東の特産「七島イ」は、畳表の原料となる植物です。強くしなやかで、折り曲げても痛みにくいことから、縁(ふち)のない「琉球畳」に加工され流通しています。しかし、かつて広く栽培されていた七島イも、今では国東市が最後の国内生産地。
 この消滅の危機にある七島イの再生を目指し「国東七島イ再生支援事業」を提案したのが、二豊製畳(有)の細田利彦代表取締役です。
 「国内の七島イ畳の需要は年間四万〜五万枚。そのうち、国東市で作るものがおよそ三千枚で、残りは中国製です。本物志向の消費者は国産を求めていますから、生産がおいつけば十分に拡大のチャンスがあります」と分析します。
 10年ほど前に七島イの畳を見て以来、これをなんとか地域ブランドに育てられないかと、プランを練ってきた細田さん。
手作業が多い七島イ栽培
 「地域ブランドにするためにまず必要なのは『量』。しかし、七島イの生産農家は年々減っています。機械化されていない作業を、高齢化が進む生産者が担うのは限界があるんです。しかし今回提案が県に採択され、量産化への足がかりができました」と意気込みます。
 従来のやり方では、生産者は栽培から製織までを各戸で行っていたため、自分で織れる分量だけを生産していました。これでは生産拡大は難しく、品質も安定しません。そこで細田さんはさまざまな支援策を考案。
廃校を活用した製織工場
 「今回の事業を活用して新規に5名を雇用し、植え付けやネット張りなど、機械化されていない重労働の手伝いと、製織の全工程を請け負うことにしました。そしてその報酬を、お金ではなく原草でもらうようにしたんです。生産者にとってまずは作業の軽減になるし、原草の余剰生産分が売れれば生産拡大への動機付けになりますから。量と品質が安定すれば、販売店に強くPRできます」。
 また、こうして畳表の製作工程に携わりノウハウを習得してもらえば、後継者の育成につながるとの思いも。
今人気の琉球畳
 10月には、廃校となっていた旧西武蔵小学校の体育館と幼稚園舎を活用した製織工場を開所。
 「価値のある商品を作りだせれば、また次の人が参入を考えてくれるかもしれません。とにかく七島イの文化を絶やしたくないという気持ちです」と力強く語ってくださいました。
 消えかかっていた伝統産業の火に、今新しい風が吹き込まれました。七島イの未来に、確かな道筋が見えてきたようです。 





  雇用創出を核として、新たな産業の掘り起こしをも行おうという今回の試み。紹介した2件以外にも、「おおいた次世代ニュービジネス」の担い手たちは、さまざまな分野で雇用創出と地域振興の旗手として活躍しています。
 「地域のために」という熱意から生まれる問題意識やアイデアは、雇用を生み出すにとどまらず、人々に大きな勇気と元気を与えているのではないでしょうか。


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