目次 特集 Preserve Nature 「自然保護」ってなんだろう?
おおいた文学紀行 「雪の夜」−織田作之助
先人の軌跡 横田穰−日出生台植林の父
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川や原っぱで遊んでいるうちに子供たちはいろんなことを受け取っていく。
自然保護は難しいことじゃない。
自然と遊び、驚き、感動した子供たちは山や川や生き物たちを大切に思う心を遊びながら培っていく。
自然の中では子供も大人も素直になれる。


菊屋 奈良義 菊屋 奈良義(きくや ならよし)さん
工学博士。1930年、大分市生まれ。52年、大分大学学芸学部生物学科中退。71年、害虫駆除や環境評価を主な業務とする会社を設立。75年、大分野生生物研究室設立(のち(社)大分野生生物研究センターに改組)。70年ごろから自然環境保全活動に積極的に取り組み、現在は日本自然保護協会参与、世界自然保護基金キムラグモ保護プロジェクト、国土交通省河川生態学術研究会研究員、同九州地区整備局アドバイザー、大分県自然環境保全アドバイザーなどを務めて、自然環境の「賢明な利用」を提唱し活動中。著書に『自然にドキドキ』『子どもたちの森』(白水社)など。

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観察会前日、うなぎ籠を仕掛ける菊屋さん。「川が濁ってる時は岸の近くをうなぎが通るんじゃ」

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草のかんざし、帽子に串刺し!

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ほーら、今度はうまく蚊帳がつれたぞぉ。

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休耕田には野生のイネも生えている。「昔はこうやって縄を作ったんぞ。やってみぃ」
 台風が九州付近を通過した雨上がりの夕方。明日は大分市立八幡小学校の子供と親、約50家族が組織する「祓川探検隊」の観察会だ。八幡地区を流れる祓川やその周辺で遊ぶ会が今年から毎月1回続いている。指導にあたるのは、キムラグモ研究の権威として知られる大分市在住の菊屋奈良義さん。会社経営のかたわら、30年にわたって県内及び全国で子供と親のための自然観察会を開いてきた。
 菊屋さんは明日に備えて祓川へうなぎ籠の仕掛けに向かう。雨で増水した川に入り、お手製のうなぎ籠を2つ仕掛けた。「子供のころは、朝早く川に行っては大人が掛けた籠からうなぎだけ取ったり、よぉ悪いことしよったなぁ」。八幡地区の生まれで祓川で遊んで育ったという菊屋さん。「最近は子供が川で遊ばんごとなった」と嘆く。

 翌朝は台風一過の晴天。子供たちがワイワイ集まってきた。親や先生、菊屋さんを手伝う自然観察員も含めて計21人。普段着姿の校長先生も楽しそうだ。
 最初は川べりに広がる休耕田で草遊び。菊屋さんはかやつり草を1本採り、茎を両端から裂いて“蚊帳”を作ってみせる。「こんなふうにすると蚊帳をつったみたいだから“かやつり草”と言います。実はお米の仲間です。さぁやってごらん」
 子供たちの目が輝いた。2人1組で茎の両端を持ち、そろぉーりと裂いていく。
「あっ、切れたぁ」
「見てー、大きいのできたよー」
 子供も親も先生も、夢中で蚊帳をつる。ひとしきり盛り上がったあとは、草で傘を作ったり、毛虫ごっこをしたり。去年の株から育った稲が米粒を付けているので、みんなで数を数え、口に入れてみる。「わぁ、あまーい!」「米粒って結構おいしいもんでしょ。イノシシが食べに来るわけじゃな」
 草むらにはクモやバッタ、カマキリ、カエルなど虫もいっぱい。今度は網を手に虫捕りだ。「さぁ虫捕って来-い!」「もっと草むらに入らんかッ」。菊屋さんが叫ぶ。網を振り回す男の子。「毛虫が出たぁ」と半泣きになる女の子。「菊屋先生、こんなクモがいたよ」「このクモはいじめちゃいかん。お腹がパンパンやろ。赤ちゃんを持ってるからそっと返してやろう」「コオロギって、よく見たら可愛い顔してる。タレ目の仮面ライダーみたいや」「そうじゃ、仮面ライダーは実はそれがモデルじゃ(笑)」草むらには危険な虫もいる。自然観察員のスタッフが、クモを殺して食べるという“ハネカクシ”を見つけた。
「それは触ったらかぶれるぞ。みんな、危ない虫を見せてもらいなさい」
 こんな身近な原っぱにもいろんな植物や虫が生きていること、楽しいこともいっぱいあるが危険も潜んでいること、種を守り継ぐ生き物たちの営みの大切さなどが、遊びの中で教えられていく。
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「お前、何捕った?」「なんかいろいろ入っちょん。あれぇ、毛虫も捕れた!」

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休耕田の原っぱにはイネの仲間の草がいっぱい。子どもも親も先生も、みんな草遊びに熱中。

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自然観察員のお姉さんから教わって、草のかんざし作り。みんな、授業中より真剣なまなざし!?
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草むらで見つけた生き物
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祓川は、子どもの遊び場に絶好の小さな川。菊屋さんが子どものころはうなぎがよく捕れたという。

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こっちの籠もうなぎはなし。自然の遊びは筋書きがないから面白い。
 いよいよ次は、川遊びだ。子供たちは2組に分かれてうなぎ籠を引き上げに行く。わぁわぁ言いながら引き上げた籠は、ひとつはドンコ1匹、もうひとつは空っぽ。待望のウナギは掛かっていなかった。
「これが自然のアトラクションなんです。いつ行っても同じものがある人工の遊びとは違うから」と自然観察員の野村さん。
 今度は全員で魚すくい。大人は金網、子供たちはペットボトルを切って水をすくえるようにしたものを持って、川の中でじゃぶじゃぶやり始める。子供はもちろん、大人も夢中で魚を追いかけている。「あとは放っておけば、子供たちが勝手に遊ぶ。そして遊んでいるうちに自然にいろんなことを受け取ってくれる。嬉しいのは、親が子供より夢中になって遊びよることじゃな」と菊屋さんは笑う。「学校で見る子供たちと違って、みんな目がキラキラしてますよ」というのは、植木清則校長。「私も今日は先生じゃなく生徒です。もう楽しくてね(笑)」「さぁ上がれー」という菊屋さんの声に、名残惜しそうな子供たち。ペットボトル製の魚捕り器に魚を入れて帰る子もいる。「環境リサイクルなどと言わなくても、子供は家に帰ったらああいうのを作って遊ぶんです」と菊屋さん。
 自然と遊び、驚き、感動した子供たちは、自然を大切に思う心を遊びの中で培う。それは机の上で学ぶことじゃなく、自然が教えてくれること。自然の中では子供も大人も素直になれる。
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待望のうなぎは掛かってるかな。「あー、空っぽみたい」「えー、なぁんだー」。美味しい蒲焼きの夢ははかなく消え去って…?
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川で見つけた生き物

■ 祓川探検隊 自然観察会の一日
9月12日(金)
17:30〜18:00
写真  観察会前日の夕方、菊屋さんと自然観察員の野村さんが、祓川の流れの中へうなぎ籠を仕掛けに出かける。

9月13日(土)
10:00〜11:00
写真  祓川に集合。川べりの原っぱ(休耕田)でカヤつり草やネコジャラシなどを採って遊んだり、稲の穂についた米粒を数えたり、網を振り回して虫取りに興じたり。
11:00〜12:00
写真  川の中に入って、昨日仕掛けたうなぎ籠を子供たちみんなで引き上げる。あとは自由に川の中を歩き回って、小魚すくいに熱中。川から上がったあとは、捕った魚を各自好きなだけ持ち帰る。昼に解散。

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