農家の料理が博多で大人気
福岡市野間につくられた
大分大山町農協直営・木の花ガルテンのレストラン『オーガニック農園』
梅みつ、柚子みつジュース、コーヒー、ハーブティーなど飲み物が豊富なのも人気のもと。 昼の12時前にもう待ち客が出る。
福岡市野間のダイエーの隣につくられたオーガニック農園。
大山町と大分市や福岡市の直販店だけで
レジを通るお客さんの数が年間約二百万人。
この数字だけでも
「木の花ガルテン」の勢いが分かる。
木の花ガルテンは現在、
農産物直売所と農産物を使った
バイキングレストランとの組み合わせで
事業展開している。
平成15年12月にはお隣の福岡市野間に進出。
農家のおばちゃんたちの料理が大人気を博して
レストラン経営のプロたちを驚かせている。

はやるからといって椅子を詰めたりはしない。待ち時間はあっても中に入るとスペースはゆったりしている。
農家がつくる野菜や加工品になじんでいただくための提案型レストラン。そのため表札のアイディアが生まれた。
お金を使わないで事業する
 バイキングレストラン「オーガニック農園」は福岡市野間のダイエーの隣にある。直前まで老舗のレストランだったという平屋の立派な建築である。なぜここを借りることができたか。若いころは”必殺セールスマン“の異名を取った大山町農協の矢羽田正豪参事によると「博多のキャナルシティや大分市のパークプレイスを持っている福岡地所が家主さんでね、農家が困っちょるなら助けてやろうと榎本会長が言うて安く貸してくれました」。どうやら榎本会長と意気投合して、”農家の事業“に協力してもらったらしいのだ。「お金を使って仕事するのは誰でもできます。お金を使わんで仕事せにゃね」。
 
おばちゃん軍団の活躍
 このレストランの料理はすべて大山町のおばちゃん、ばあちゃんたちがつくる。バイキングレストランが初めてできたのは大山町千丈の木の花ガルテンで平成14年4月のことだった。60歳代、70歳代のばあちゃんたちを中心に”40〜50年間、台所を預かってきた匠(たくみ)の技“
を生かして大好評。このレストランの特徴は献立表に従って料理をつくるのではなく、その季節に採れた野菜の顔を見て料理をつくること。だからレシピがない。全員が長年のカンの世界で仕事をし、人間がレシピである。
  平成15年の暮れに福岡市に進出したときは、大山から3人のばあちゃんたちが長期出張で派遣された。あとの7人は福岡市に嫁いだ大山の女性たちという構成で「大山の味」を維持している。ふつうならゲートボールで遊んでいる年ごろの人たちも、お客さんからおいしいおいしいと喜ばれると仕事に張りが出る。「みんな腰もしゃんと伸びてスキップして出てきます」。
 

新鮮な野菜をお上がりよりますか?
農家は農産物がいちばんおいしいときをよぉく知っちょりますよ
レストラン・オーガニック農園の目的は、「あら、このお野菜、こうして食べるとおいしいのね」と認識してもらうこと。
お帰りに大山の農産物を買って自宅で使ってくれたらバンザイ大成功なのである。だから料理はなんでもたっぷり出す。
まるでお祭りのとき農家で「さぁさぁどんどん食べておいき」と出されるような気前が人気を呼ぶのだろう。

農家が農業で食べるということ
 大山町農協の事業展開の基本となる考えは「農家が農業で食べていけるような支援」ということだ。それがなぜ福岡市のレストランにまで発展していくのか。
  農家がつくった農産物を市場に出す青果部門は農協の基本的な仕事である。ところが市場にはA級、B級、C級の品質と、L、M、Sの大きさを決めた「規格」があり、これに合わないものは出せない。市場に出せない農産物を生かす方法として大分大山町農協は農産物加工場を経営してきたが、平成2年に直売所を建設し「木の花ガルテン」と名付けた。直売所なら、小さな農園でつくった少量のものでも売ることができる。農業ではなくサラリーマンの収入で暮らしている小規模な農家も直売所なら農産物で収入を上げることができる。
  平成2年、大山町千丈に初めて農産物直売所木の花ガルテンをつくったとき、農協は農家の人たちにこう言っている。「あんたたちが親戚や友達にあげるような、ほんとうにおいしいものをつくって持って来てください」。畑でじゅうぶん太ったキュウリは見かけが大層悪いけれど実は一番おいしいというようなことを、農業のプロはみんな知っている。だからそれを直売所に出した。するとお客さんから「こんな野菜、見たことないけど、どうやって食べるの?」と質問される。自分たちの農産物を買って使ってもらうためには、こうして食べればおいしいですよということを実際に体験してもらう「提案型のレストラン」が必要だということにみんなが気付いた。こうしてバイキングレストラン「オーガニック農園」が構想され、大山で成功し、福岡市へ出店したのである。 レストランより先に展開した農産物直売所の方は本拠地の大山のほか、平成4年に福岡市、平成6年に大分市の明野アクロスと店舗を増やし、平成15年4月には直売所とレストランの年間売り上げが12億円を突破。祝賀会を開いて不況の時代に気を吐いた。
  好評のレストランは昨年末の福岡市進出に続いて今年6月には大分市明野に開店する予定で、その2店が加わった平成16年度の売り上げはさらに伸びるだろう。
大山町農協の農産物加工工場はイスラエルのキブツ(農業共同体の一形態)に学んだもの。加工することでほとんどの農産物が無駄にならずに生きる。
いまは野菜が少ない季節だが、夏野菜がどっと出る頃には 福岡市の直販所はパニックになる恐れがあり早急な対策が考えられている。
併設の直販所。商品に生産者の名前が付いているのは精算の都合でもあるが、まさに顔が見える流通。
毎週お金になる
 直売所の良さはほかにもある。木の花ガルテンに農産物や加工品を納めると毎週締めて毎週お金が振り込まれる。この、現金を得るスピードの速さによってどれだけ農家が助かっているかしれないと、ある農家のおじいさんは言った。「昔はなかなか金にならざったからみな苦労しました」と。現在、多い人で月100万円近い振り込みがあるという。
  大山では、おじいさんは野菜をつくってお小遣いを手に入れ、おばあさんは料理をして給料をもらうことが楽しくて、なかなか遊ぶ暇や病気になる暇がないのだそうだ。農協中央会からゲートボール選手権の案内が来たけれど、選手が集まらなくて棄権したという話もある。
中食産業に手を伸ばそう
 「いま日本人が飲食に消費する金が年間80兆円と言われています。日本の農業の粗生産高は10兆円しかありません。この80兆円と10兆円の間の70兆円の部分に農業者は手を伸ばさないと生産するだけでは生き残れないと思います」。大山町農協の矢羽田参事は、大山のような土地がないところの農業者が農業で食べて行く道は、「中食」だと言う。「中食」とは、レストランなどで食べる「外食」と家庭でつくる「内食」の間に位置する”お惣菜“のことだ。新鮮で安い自家製野菜を使って、飽きのこない無添加のお惣菜をつくっていきたい。この分野が大山の農業を支える新しい事業展開になっていくのだろう。


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目次 特集 新しい流通の風
「繭」「青年」に見る林房雄の原像
先人の軌跡 仲家 太郎吉
大分県立芸術会館ギャラリー

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