不思議な波紋を描く水面上にのんびりたたずむ二羽の鴨。穏やかな雰囲気につつまれた画面の中には、ゆったりとした時間が流れているようです。的確な写生によりながらも、対象のもつ造形的な面白さをうまくとらえ、随所にデザイン的要素を盛り込んだ本作品には、見る者の視覚に直接訴える感覚的な美しさを追求した平八郎の現代的な造形感覚が感じられます。
大分市に生まれた福田平八郎(1892-1974)は、京都市立美術工芸学校を経て、京都市立絵画専門学校を卒業、大正8年に帝展初入選し、同10年には鯉の生態をリアルにとらえた「鯉」が帝展特選となり、一躍画壇で注目される存在となります。大正から昭和のはじめにかけては、対象のあるがままを写しとろうと写実を徹底的に追求しますが、その後は形態の単純化をおしすすめ、鮮やかな色彩と大胆な画面構成による独自の装飾的表現を確立していきます。戦後は、「筍」、「新雪」、「雨」など人々の記憶に残る数々の名作を発表し、画壇を代表する巨匠の一人として活躍します。昭和36年には、文化勲章を受章、文化功労者にも列せられ、昭和49年、京都で82年の生涯を閉じました。
今年は、ちょうど平八郎の没後30年に当たります。県立芸術会館では、「没後30年 福田平八郎展」を開催することとしています。平八郎の画業の歩みを代表的な作品でたどるとともに、日々の生活の中で描きためたられた素描や下絵も展示し、その創作活動の全貌に迫ります。この機会に平八郎が目指した清新な美の世界に触れてみてはいかがでしょうか。
(大分県立芸術会館学芸員 吉田浩太郎)
「没後30年 福田平八郎展」 平成16年4月13日(火)から5月9日(日)まで |