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特集 森を守る 木を生かす 森の恵みを時代に伝える人々を訪ねて
おおいた文化紀行 もりおうがい 「長宗我部信親」先人の軌跡 酪農経営の先駆者 岩尾 伏次郎おおいたの色彩 墨色(すみいろ)

森の木を生かす人【豊後大野市緒方町】クラフト職人 王美紀さん 何になりたいかは、気が教えてくれるんです。私は声を聞いて、望みを聞いて生かしてあげるだけ
神社を壊した後の木、使われなくなった家の柱、伐り倒された山や庭の木…
やがて廃材となる運命だった木を、王さんの手が、ひとつひとつ丁寧に再生させていく。

 生の木を2年、3年もかけて自由に遊ばせてあげる。
 何になりたいかはその木が決めること。
 王さんの周りの空気はゆったりと流れている。棚田に囲まれた緒方町の民家が王美紀さんの木工工房だ。製品も同じように、ゆっくりと時間をかけ、長い長いスパンで制作されていく。
  例えば桜の木。伐られた後の生の木を数年間放置し、自由にさせてあげるのだという。割れたり、そったり、伸びたり、縮んだり…ひとしきり遊ばせている時間、王さんは話しかけるように、その木に向かいあう。「さあ、あなたは何になりたい?」
  「これ言うとヘンな人って思われそうですけど、本当に木が応えてくれるんですよ。わたしはスプーンになりたい、わたしは箸になりたいって」そうやって導かれるままに王さんは桜の木を生かし、柿の木を生かし、カボスの木を生かす。その木々たちを王さんは購入したことは一度もない。王さんの所にたどり着かなかったらすべてが廃材になっていた木ばかりだ。「最近になって木の声が聞こえる人たちが増えてきて、私のところにさまざまな物語を持つ木が持ち込まれるようになりました。例えば、子どもが生まれるときに植えた木を伐らなければならなくなったけど、家族の思い出がいっぱいありすぎて処分できない、という方が、その木を持って私を訪ねてくれました。そうして預かった木が3年後の今年の春に、結婚する子どもさんの記念品として’靴ベラ‘に生まれかわりました」
王美紀さんの写真 木と人をつなぐ「架け橋」になりたいと話す王美紀さん
完成した靴べら・スプーン&フォーク置きの写真
靴べらを取った残りの部分で、スプーン&フォーク置きやハシ置きが誕生。最後まで無駄にしないという王さんの職人技だ
ドイツ製のオイルとスプーンの写真下書きされた木片の写真
木の呼吸を止めないドイツ製の天然オイルを使用。木の色、手ざわり、本物の質感を育ててゆく楽しみがある
  伐られた後も木は生き続けているから残りの最後まで捨てられない。靴ベラ型にくりぬいた後には、はし置きができそうだ。小さなスプーンにだって、キャンドル立てにだってなりそうだ。燃やされるか、捨てられる運命だった木たちは、見事に美しい生活道具に生まれ変わり、天然のオイルに塗られ、以前以上の輝きを増して、使う人の元に届くのだ。
  木の声を聞きながら、木を再生させながら、王さんは、木の’いのち‘をも伝えている。
慎重に木を切る王さんの写真 ← 木を切る瞬間は慎重。破片はなかなか捨てられない。何かに使えそうだから、と王さんは言う 王さんの工房兼住まい外観の写真
木片を電動ヤスリにかけている写真

→ 棚田を見下ろす高台に立つ民家が王さんの工房であり、住まい。 すっかり地域に溶け込んでいる


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