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木を守る人【杵築市】県漁協女性部杵築支部 真鍋ハマ子さん 木を植える活動には、漁民も山も農家も街の人も一緒に参加して欲しい。世界は一つで、海は繋がっているのだから
’海の男たちは山の男たちになった‘
公共広告機構の広告で有名になった杵築の漁師たちはなぜ、山に木を植えることにしたのか?
浜辺から見えてきた、森と海のお話。

 偶然にも、姫島の童話で知った魚付き林の話 海も川も木もすべてが繋がっていた!
 浜育ちのハマちゃんこと、真鍋ハマ子さんは、ある日、姫島のことを書いた椋鳩十の童話に出逢う。そこにはこんなことが書かれていた。
  「昔は森に囲まれた海だったのに、芋畑を作るためにすべての木を切ってしまったら、海から魚がすっかりいなくなった。それで一人の男が立ち上がった。これはいかん、大木の日陰に魚たちが来て卵を産むのだから、すぐ木を植えにゃいかん!こう言うて木を植えたら、また魚が増えたっちゅうんよ」
  そこで、初めてハマ子さんは木と森と海の関係を知ったのだと言う。そういえば、昔は海の周りに森林がたくさんあった。あそこもここも魚付き林だったのか?なら、ひじきも海草もカブトガニも減少した海を昔の海に戻すには木を植えるしかない!そんな時県漁協女性部杵築支部の代表であるハマ子さんは、すでに漁民の森作りを行っていた佐賀県や宮崎県に出かける機会に恵まれた。しかし、女性部杵築支部はそこで、また新たな発見をすることになる。魚付き林とは海の側にあるとばかり思っていたのが、宮崎の海岸などは石ころばかりで木が1本も見当たらない。実は、海岸から離れたずっと奥の山に広葉樹を植え、そこから栄養のある豊かな水が川に流れ、海まで辿り着いているのだと言う。それを知った漁民たちから、山に木を植える活動が始まった。
真鍋ハマ子さんの写真
美濃ア水産加工グループ代表者の真鍋ハマ子さん。彼女に代表されるように、漁協女性部杵築支部の皆さんは明るく、元気がいい
美濃ア漁港の写真1美濃ア漁港の写真2
山と海が一つの風景に治まる美濃ア漁港
 
 もっと活動の輪を広げて、大勢を巻き込みながら、少なくとも10年は見届けていきたい。
 最初は山香の大村山。婦人部、青年部、森林組合、ボランティアの人が集まった植樹では、地元の農家の婦人たちが猪鍋を作り、海部の人たちが海賊鍋を作って交流を図った。山と海の人々が一つに交わり植栽を行ったのだ。以来、毎年人数を増やし、ボランティアを募り、カエデ、ケヤキ、モミジ、山桜などたくさんのを広葉樹を植えた。それから今年で6年目。その間、杵築、別府、湯布院、日出の山々に出かけて交流を図り、輪を広げて行った。
  「由布院に行ったとき、あんたたち杵築の人が、わざわざここまで来て木を植えて何の利益があるんかえち、聞かれたんよ。だから私は言ったよ。そりゃ心が狭いわ、世界は一つや、海は繋がっちょるんで(笑)。どこも、ここもない。木を植えるという機会に恵まれて自分たちの体が空いてたら、どこでも行けるところは参加せにゃって。山も川も海も農家も一緒よ。子供も大人も巻き込まんと!」
  威勢のいい声が響く。植えれば終わりではない。下刈りもしないといい木に育たない。少なくとも10年は続けたいと漁師たちは言う。そのためにもこれは漁民だけの活動にしたくない。海底の清掃活動も行なったという青年部の部長である篠原徳弘さんは「青年部を始め若い世代に積極的に参加してもらいたい」と話す。
  海の魚を食べる人、山に登る人、海岸で遊ぶ人、みんなの活動に広めていきたい。そして、最後にハマ子さんは、さらに大きな声で言った。
  「昔の人が植えた木を切ったんやんけん、次の世代の人たちのために今、みんなが植えていかな!」
  次世代まで届きそうな力強いメッセージだった。
漁協女性部杵築支部と青年部の方々の集合写真
左から川原ヨシ子さん(漁協女性部杵築支部副部長)、真鍋ハマ子さん(漁協女性部杵築支部部長)、
一人置いて篠原徳弘さん(青年部長)。下刈り作業も全員協力の下で行う
別府湾「漁民の森」づくりの活動(平成13年度〜平成16年度まで)の写真



この、スピードと消費の時代に、
わたしたちは大きな勘違いをしていたのかもしれない。
あたりまえのようにいつも山はそこにあり、
緑は豊富で、木々はふんだんにあると。
本来の山の姿や、木々のありかた、
そして、緑や海の深さに
じっくりと向き合うことも、
知ろうとすることもなく、
ただ、「環境」という言葉をあまりにも簡単に
使ってはいなかっただろうか。
山と共に生きる人、木の声を聞こうとする人、
森の中から素材を探す人、海を見て森に向かう人・・
彼らはみんな、今を生き、そして、先を見ていた。
ゆっくりと年輪を積み重ねるように、
木が育つのと同じ長い時間の中で、
今、自分たちができることを始めている。
そんな人々が特別であってはならない。
一人ひとりが、彼らと同じ立場であり、
同じ視点でいることが大切だ。
街の人も、山の人も、農家も海辺もみんな同じ地球に住む人。
ほら、浜辺から明るい掛け声が今にも聞こえてきそうだ。
「世界は一つ海も森も一緒。みんな、木を植えようよ!」

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