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竹の楽しみ

オリジナル竹楽器
カテリーナ古楽器研究所 松本公博さん(杵築市山香町)
竹楽器づくりが楽しいだけでなく
竹は地球環境の保全・改善に役立つエコ素材。
だからこそ、つくろうというエネルギーが湧(わ)いてくるんです。
身近な竹を生かしたオリジナル楽器の研究開発に携わること約30年。
16年前、東京から竹の産地・大分に家族と移り住んだ松本公博(こうはく)さんは
森の中で木や竹を植え育て、自然と共生する暮らしを営みながら
手づくり楽器の楽しさを伝える活動を地道に続けている。
自らの手で木や竹を育て生かす 楽器づくりの原点を求めて
 山香町の中心部に近い里山に突然現れた小さな森。車1台が通れる小径(こみち)を行くと、広葉樹や竹林に埋もれるように築150年の古民家がある。風がさやさやと木々を渡り、”トトロの家“を思わせる懐かしい風景だ。
 ここが松本公博さんが主宰する『カテリーナ古楽器研究所』の工房であり、松本さん一家の住まいでもある。東京の音大で調律やチェンバロ製作を学び、35年前に同研究所を開いてヨーロッパ中世・ルネッサンス時代の古楽器の復元研究製作を続ける松本さんは、木の古楽器と並んでオリジナル竹楽器の研究開発・製作にも力を注いできた。
 「発端はリコーダー(ヨーロッパで愛用された木の縦笛)。子供のころ近所に篠笛(竹の横笛)をつくるおじさんがいてよく見ていたので、笛=竹の感覚が強く、小学校で使うプラスティックのリコーダーを竹でつくれないかなと思ったんです」。かくして、なじみやすい西洋のドレミ音階に竹特有の和の音色、というユニークな竹リコーダーが誕生した。
 アジアには世界の竹林の8割近くがあるといわれ、ジャワのジョゲット、フィリピンのトガトンなど多くの竹楽器が存在する。現在は木製の二胡や琴も、もとは竹製だったという。
  「竹楽器が世界の楽器のルーツだという説もあるんです」と松本さん。「アジアの国々で竹楽器は儀礼や芸能に欠かせないものでした。産業革命以前、楽器は生活の中で生まれ、売るために作られることはなかった。人はその土地の素材でものをつくり、自然に生かされてきたんです」。かつて日本でも尺八づくりの名人は山人だったという。自ら木や竹を育て生かす楽器づくりの原点を求めて、42歳の時、妻と3人の子供とともに東京から山香町に移り住んだ。「実家の北九州に近いのと、大分県は竹の産地というのに惹(ひ)かれました」
 自然と共生する循環型生活を実現したいと、森や竹林を手入れし、稲作を中心とした農の暮らしが始まった。古楽器や竹楽器の研究製作、自作楽器を使ったレクチャーコンサート、楽器づくりのワークショップも再開したが、東京と違って大分でこれらの活動が理解されるには時間がかかり、「持ってきたお金はすぐに底をつきました。今でもわが家にはお金がない(笑)」
松本さんの写真
エジプトが起源の“ライア”を竹で製作する松本さん。竹楽器の製作技術は古楽器の応用だが、竹の伝統的な技術や竹そのものの知識も必要だ
未來君の写真 透かし彫り細工の写真
6年前から父のもとで修業を重ねている長男の未來(みらい)君。得意のローズづくり(透かし彫り細工)に真剣な表情を見せる
道具類の写真
楽器に合わせて道具類を手づくりすることも多い
竹林の写真
庭の竹林。竹楽器づくりは身近な竹林で良材を見極めることから始まる
乾燥中の竹の写真
割れ・虫食い・カビという竹の三大欠点をカバーするため、虫の入りにくい10〜12月末に伐採したものを3年以上乾燥させて使用。表面を火であぶって丈夫にする「油抜き」の処理も欠かせない





手作りの竹楽器が並んでいる写真
松本さん手づくりの竹楽器たち。種類が多く、誌上ですべて紹介できないが、長い2本のモウソウチクの上に並んでいるのが竹リコーダー、バンブーフルートなどの笛類。その奥は右から竹・ダ・ガンバ、トランペットのような音がするトロンバ・マリーナ、竹線、竹チェロ、フィリピンのカラカラ“アンクルン”。籐椅子の上は奥右から竹ハープ、竹線、ひょうたんと竹を組み合わせたクワルト・リュート、竹ヴァイオリンなど。一番奥に立っているのが音階トガトン

どんなふうに楽器をつくればいいか何もかも自然が教えてくれる
 松本さんが使う竹はモウソウチクやマダケ、メダケ、クロチクなど15種余り。自宅の庭や町内に生える竹だけを使う。製作した竹楽器は約30種、細かく分けると100種近く。バスからソプラニーノまで音域別の竹リコーダー、フィリピンの山岳民族の打楽器に音階をつけた”音階トガトン“、古楽器ヴィオラ・ダ・ガンバの竹版”竹(たけ)・ダ・ガンバ“、日本の三味線と沖縄の三線(さんしん)をミックスした”竹線(ちくせん)“などアイデア溢れる竹楽器の基本は、ヨーロッパの古楽器や世界の民族楽器だ。
 「オリジナルには歴史があり、それらを研究する中からアイデアが生まれる。僕にとって竹林は”楽器林“に見えるんです」。大学時代からネパールやインド、アフリカなど世界各地で民族楽器のフィールドワークを重ねてきた松本さんならではの新しい楽器づくりだ。楽器に必要な条件は、まず音がいいこと、堅固なこと、そして機能美。中が空洞の竹は笛などの管楽器を作るには最適という。「作りやすいだけでなく、自然にいい音を発してくれる。まさに自然からの贈り物です」
 松本さんは自作の竹リコーダーを手に取り、素朴な旋律を吹いてくれた。体の奥にじわりと響く優しい音色。竹サウンドには人の心とからだを癒してくれる不思議な生命力が潜んでいるようだ。
  「大切なのは竹と共存すること。人間にとって竹は昔から生活の必需品であり、竹もまた人間の手が入らなければ繁殖しすぎてダメになる。しかも竹は1年で成長点に達し、3年経つと使える。1本の竹の寿命は約20年だが、地下茎を伸ばして増えるので竹林は永遠に続く。まさに地球環境の保全・改善に役立つエコ素材。僕自身、楽器づくりが楽しいだけでなく、竹はそういう面を持っているからこそつくりたい、つくらなければというエネルギーが湧いてくるんです」。竹の伐採から製材、製作まで自ら行うことで竹の生命に触れられる、という松本さん。「どんなふうに楽器をつくればいいか、何もかも自然が教えてくれる」
 工房で自然と触れ合い竹楽器づくりや演奏の楽しみを知ってもらうワークショップ活動も、ライフワークのひとつだ。「以前は東京から来る人が多かったが、最近は大分での関心が高まり、子供連れで参加して楽しむ家族の姿も。竹と接することは自然と接する早道なんです」。人間が自然と対当し、地球上に悪いことが起こり始めた今こそ、もう一度自然と共存する道を選ぶべき。日本人にはその一番のきっかけが竹、と力を込める。
 目下の目標は竹のパイプオルガンづくり。「将来は今住まいにしているわが家を大改造して『森の音楽堂』をつくるのが夢。そこに竹のパイプオルガンを据え、みんなで森の楽器を奏でたり、自然の素材で音づくりをしている演奏家を世界中から呼んで演奏を聴く場をつくりたい。今のような音楽ビジネスがなかった時代の音楽環境を再現してみたいんです」。この森を響かせたい、と松本さんは目を輝かせた。
工房の外観
森の中の住まい兼工房。
ここだけ時間が止まったような空間だ
竹製ライアの写真
取材時に製作中だったライアが完成。「バンブー・スマイル・ライア」と名づけられ、豊かな音を森に響かせたという
ワークショップの様子
毎年、自宅の庭で開く恒例のワークショップで、自らつくった竹の鳥笛を楽しげに吹く子供たち
家族で竹楽器を演奏する様子 手づくりの竹楽器で演奏を聴かせてくれた長女の舞香(まいか)さん、公博さん、奥様の照(てる)さん、長男の未來君。家族でレクチャーコンサートを開く他、未來君と舞香さんは『Baobab』というバンドを組み、全国で演奏活動を展開。2004年プレスナイン九州沖縄音楽祭大分大会で最優秀賞受賞
カテリーナ古楽器研究所
杵築市山香町野原428
TEL0977-75-0247

カテリーナ古楽器研究所の看板の写真

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