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先人の軌跡 元中津商工会議所会頭 若松木材初代社長 若松常一郎2008チャレンジ!おおいた SPORTS ホッケー選手 岩尾幸美おおいたの蔵 老松酒造株式会社おおいたの色彩 鴇色(ときいろ)

おおいたの蔵 老松酒造株式会社 老松酒造株式会社の写真
  老松酒造の正面玄関。真ん中の小さな屋根がお大師さまのお堂
日田市街から向かうと「大鶴(おおつる)」は、
山越えをした先に現れる”隠れ里“のような印象だ。
しかもその小さな里に、小説『男子の本懐』に描かれた
蔵相・日銀総裁井上準之助の生家(角の井酒造)があり、
大分県有数の山林地主井上家の屋敷があり、
この記事の取材先である老松酒造がある。
さらにこの里にはトンチで吉四六さんに対抗できそうな
”有男(ありお)先生“もいたのだった。
新しさと古さの混在
 会社案内に書かれた老松酒造株式会社の創業は寛政元年(1789年)。その古い歴史の気配を現在の会社に探すと、壁に造られた鏝絵(こてえ)の並びに、ひっそりとお大師さまのお堂があった。中央に弘法大師、左に地蔵菩薩、右に薬師如来。春と秋のお彼岸には、日田市中からマイクロバスで霊場巡りの人たちがやってくるのだそうだ。
 片や工場の中では、自動製麹機(せいぎぐき)をはじめとするパソコン制御の機械が活躍している。今回の主役は地元の大麦を使った麦焼酎『がまだす』なのだが、製造工程の3段階まではこの自動製麹機の中で済んでしまうのだという。原料の大麦をこの自動製麹機の中に入れると「洗う」「蒸す」「麹をつくる」という3工程を48時間かけてこの機械がしてしまうのだそうだ。
 というわけで、見学コースの最初は自動製麹機からザーッと出てくる麹を見た。大麦麹に混じって、連想が貧弱で申し訳ないけれど、ちょうど牛のウンコのような質感の黒い固まりが出てくる。これが黒麹の固まりなのだそうだ。いちどきに500kg出てくる大麦と麹を四角いテント地の箱で受ける。箱の名前は麹箱というそうだ。キャスターが付いているので、小柄な女性が一人でコロコロと押して行き、滑車を使って1人で吊り上げて一次発酵タンクの真上へ。ここで「おおっ」と感心したのは、四角いテント地の箱と見えたのは実は二重になった袋で、吊り上げられて一次発酵タンクの上まできたら、袋の底がパカッと開いて中から白い布の袋が下りてきて大麦と麹を一粒もこぼさずタンクの中へ。思わず拍手したくなる仕掛けだった。
 続いて二次発酵タンクを覗いてから、蒸留している建物へ。蒸留したばかりの65度という焼酎の香りだけ嗅いだ。
 蒸留まではパソコン制御の機械が続いたが、焼酎ろ過器洗浄の工程は突然タライの水遊びみたいだった。冷却タンクで冷やした焼酎には油分が浮いているので、それを除去しているのだそうだ。その作業をしている足立さんが、焼酎『閻魔(えんま)』のラベルの文字を書いた小学生の男の子のパパなのだそうだ。
大麦麹の写真
自動製麹機から出てきた大麦麹。黒い部分が黒麹の固まり
作業風景1
大麦麹を麹箱へ
作業風景2
麹箱が吊り上げられて1次発酵タンクの上へ
小野さんと平川さんの写真







購買部長の小野勅郡さん(右)と、
社長室長の平川啓介さん
作業風景3
麹箱の中味は袋になっていて、これを滑車で吊り上げ発酵タンクへ。袋の底がパカッと開いて、一粒も逃さずタンクに入れた。お見事!
作業風景4
一見、タライの水遊びみたいだけど、冷却タンクで冷やした焼酎から油分を取り除いているところ
蒸留している写真
蒸留したて、65度の焼酎。「どうぞ」と出されても、見学者のほとんどが匂いだけ嗅ぐ
樽の写真
樫樽の貯蔵蔵。長期熟成の焼酎たちがバロック音楽を聴いていた
『がまだす』はがまだして倍の生産量へ
 今回の主役『がまだす』は、平成17年に初めて仕込まれ、今年売り出された。生産量は20度の製品にしたとき9000l。720mlのびん詰めに換算すると約12500本だ。麦の香りが高いのにすっきりして飲みやすいと評判がいいので、今年は昨年の倍の量を仕込むそうだ。
 その原料の大麦を作っているのが大肥郷ふるさと農業振興会。集落の田畑をまとめて組合で農業を運営して行こうという集落営農組織である。大肥郷ふるさと農業振興会の代表理事が”有男先生“と呼ばれる森山有男さんだった。
 有男先生と、姓でなく名前で呼ばれるのには理由がある。お宅を訪ねようと住宅地図を見たら、あたり一面森山さんだらけだった。”森山“だけでは誰だか分からない土地柄なのである。
 森山有男さんは小学校の校長先生だった。定年退職したのち、ご先祖が残した三反半の田を「致し方なく」耕そうとしてガク然とした。「こんなに金がかかるものなのか」。トラクター1台150万円、田植え機100万円、コンバイン240万円。これだけ多額の投資をして、どれだけ儲かるのか計算してみたら、一反当たり年間12万円の赤字だった。「なんとばからしいことか!」
 有男先生は、ばからしくない方法を真剣に考えた。結果、大明地区がまとまって集落営農をすればよいのだという結論に達した。大鶴と夜明の2つの集落を合わせて”大明地区“という。兼業農家が多く、農業の規模が小さい上に、各戸でそれぞれ農機具を買っているから、計算上は農機具のローン返済のために働いているような家が多かった。農事組合法人をつくってこの187戸の農家が農機具や人材を共有するしか方法はないんじゃないか。
 そのためには小さく区切られた各戸の農地をほ場整備で広く平らな土地にしなければならない。有男先生たちは集落での会合を繰り返し開いて、頭の切り替えができないお年寄りたちを2年間、説得し続けた。そして平成6年、記録的な水不足によってこの地域が取水に苦しんだことで、「ようやくオヤジたちも納得して」集落営農が実現したのだという。
 そういう経過で誕生した大肥郷ふるさと農業振興会に、老松酒造の森山保徳社長が二条大麦ニシノホシの契約栽培を申し込んだ。平成16年のことだ。「うちとしては、行き場がはっきりしているし、契約してくれると楽」と有男先生たちは喜んだ。老松酒造の側から見ると、ふるさと振興会の麦は、地元産の良さだけではなく、農薬の使用回数を制限し、農薬・肥料の投入時期、量などの栽培履歴を記録している安心な材料なのだ。
 平成17年は約9600kgを老松酒造に納入。その大麦でつくった麦焼酎は『がまだす』と命名された。日田地域の言葉で『がんばる』『精を出す』の意味。
 今年は裸麦30tを老松酒造の契約栽培で生産するそうだ。焼酎の原材料に使う大麦は、全国的にも佐賀県産がメジャーであるらしい。佐賀県産の大麦の特徴は、品質が安定していて、大産地だから注文の量が多くても対応できること。量はともかく品質なら大分県も焼酎用の麦の産地を目指せるのではないだろうか。
 ところで『がまだす』の味はいかに。有男先生に酒をお飲みになるかと尋ねると「私は酒は飲みません」。ほうほう。「酒は飲みませんが、焼酎は飲みます」。はいはい。それも20度の『がまだす』では物足りないので、老松酒造が造る昔ながらの粕取り焼酎『まるき』35度を湯割りで毎晩たしなむ、という。有男先生のもっぱらの関心事は在庫が50本になってしまった『まるき』を老松酒造が造り続けてくれるかどうか、なのだった。『まるき』を飲んで『がまだす』の麦を作ろう!
鏝絵の写真 麦とてんとう虫の写真 有男さんの写真
『がまだす』の大麦を作っている大肥郷ふるさと農業振興会の有男先生。『がまだす』はがんばる、精を出すという意味の日田地方の言葉。でも、有男先生は「自分で田を耕さないですむ方法を考え抜いた」あげく、農事組合をつくってしまった。がまを出さないために、がまを出した?
老松酒造株式会社の風景1
老松酒造株式会社の風景2
グラスと手の写真 色々な焼酎の写真
『麹屋伝兵衛』『閻魔』『がまだす』といった本格焼酎の他に、大山の梅を使った梅焼酎も作られている
麦踏み大会の様子大肥郷ふるさと農業振興会が毎年冬に行っている「麦踏み大会」。県内外の家族連れが参加する。地産地消、都市住民との交流、加工品の開発などのさまざまな活動が評価され、大肥郷ふるさと農業振興会は、平成17年度農林水産祭むらづくり部門で、農林水産大臣賞を受賞した

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