Vientoのトップへ大分県庁のホームページへ
特集 おおいた彩発見「大分のお宝」シリーズ其の四 大分の「里山」彩発見 守り継ぎたい、自然と人の営み 日本人の心の原風景、棚田のある里山(別府市内成)「牛」と「椎茸」と「人づくり」に生きる里山(豊後大野市朝地町温見地域)角埋山の自然や歴史とともにある里山(玖珠町森)コラム
先人の軌跡 九重の自然を守る会初代理事長 赤峰武2008チャレンジ!おおいたSPORTS
ソフトボール2008チャレンジ!おおいたSPORTS
ラグビーおおいたの蔵 小野酒造株式会社おおいたの色彩 躑躅色(つつじいろ)

「牛」と「椎茸」と「人づくり」に生きる里山
豊後大野市朝地町温見地域
山腹のクヌギ林に牛を放牧し、下草を食べさせることで
里山の森を手入れし、健康な牛を育て
良質な椎茸の原木を産する。
地域の自然を生かした独自の方法で、ともに助け合い
牛と椎茸作りに生きる知恵を見い出した人びとは
みんな“いい顔”をしていた。
そして、牛と人と自然が共存する里山の風景は、優しかった。
 標高500〜650mの山あり谷ありの地に、落葉広葉樹におおわれた山林が続く豊後大野市朝地町の温見地区。大分市から久住方面に向かう国道442号線の周辺にあたり、最初に訪れた11月半ば、一帯は渋い色調の紅葉に包まれ、霧雨にけむる里山はしみじみと美しかった。斜面に広がる林の中には点々と黒い牛の姿が見える。
 「ここでは、牛の放牧がなければ、クヌギ林のこの紅葉もいずれ消えてしまうんですよ」
 この地で肉用牛の繁殖と椎茸栽培を約30年続けてきた小野今朝則(けさのり)さん(52)は、一面のクヌギ林が牛の放牧によって保たれていることを教えてくれた。同地区ではクヌギを原木とする椎茸栽培が盛んだが、クヌギ林は定期的に下刈りをしないと育たない。傾斜地ばかりの山で人間がこれを続けるのは大変だが、牛を放牧して下草を食べさせる「牛の舌刈り」を行うことで、林は保たれ、毎年美しい紅葉を見せてくれるというわけである。
 林間放牧のイイコトは、まだまだある。まず牛の飼料代が大幅に削減でき、堆肥出し(糞尿処理)も不要。牛が適度な運動をするため健康に育つ。椎茸栽培にとっても、林が常に清掃された状態にあるため原木に害虫の寄生が少なく、牛の糞が肥料となって木の発育もいい。
 かつてこの地域は傾斜地で田んぼも少なく、米作りをしながら炭を焼き、牛を1〜2頭飼う暮らしで、人びとは貧しかった。そこでクヌギ林に恵まれ寒暖差の大きい自然条件を生かして、椎茸と肉用牛繁殖の複合経営に地域ぐるみで取り組み始めたのが昭和30年代。現在は温見地区138戸のうち畜産農家が31戸、椎茸栽培は自家用のみも含めると100戸以上で行われている。
 小野英一さん(49)は肉用牛繁殖専門で、現在、親子で80頭近い牛を飼育する、同地区でも大規模な農家だ。子牛の間は畜舎で育て、親牛はクヌギ林に放牧する。「山で育てると運動するので足腰が強くなり、ミネラル分の多い野草をバランスよく食べるから健康で耐用年数も長く多産になる。放牧は牛にも人間にもいいんです」
 産まれた牛の大半は生後8〜10ヶ月で市場に出荷され、全国へ。そのうち朝地の肥育センターで20ヶ月間肥育されたものが「朝地牛」だ。
 英一さんは毎日畜舎や山を見回って牛の健康管理を行い、畜舎の牛にはエサやり、堆肥出し、飼料用の牧草栽培なども。地区の共有牧野もあり、市場に出す牛の削蹄(さくてい)(爪切り)や除角(じょかく)は重労働なので若手が共同で行う。ここには昔の集落にあった”助け合い“の精神が今も息づいている。(*)
 小野九州男(くすお)さん(70)は、椎茸作り40年。全国乾椎茸品評会で最優秀の農林水産大臣賞9回受賞に輝いた”椎茸名人“である。温見地区は、九州男さんが牽引役を果たしたおかげで椎茸産地として全国的に高い評価を得ている。(**)
 椎茸栽培にはまず菌を植え込む原木選びが大切。栄養分が多いクヌギは原木に適しており、椎茸は木から栄養をもらって成長するという。紅葉時期の「原木伐採」に始まり、1月には木の長さをそろえる「玉切り」、梅の花から桜の花までの「種駒(たねこま)打ち(植菌)」、山に寝かせて菌を活着させる「仮伏せ」、ほだ場にほだ木を組み上げる「伏せ込み」、そして湿度や温度に気を配りながら手入れをして二梅雨を越し、ようやく収穫できる。
 クヌギの木の栄養と太陽と水だけで育つ原木椎茸は、微妙な温度変化や雨などで出来が変わるので、経験と勘が必要。名人いわく、「いいものを作るには、時間と手間暇をかけること」。一日に何度もほだ場に足を運び、「子供以上に愛情をかけて育てちょる(笑)」
 長年、椎茸や牛を出荷するだけの農家に変化をもたらしたのは、「里の駅 やすらぎ交差点」のオープンだった。平成15年、温見小学校閉校に伴い、地域活性化の新拠点にと若手中心に始めたもので、今朝則さんが二代目駅長。地区の人の野菜や加工品、椎茸、朝地牛などを直販し、地元の主婦らが地域の食材で作る料理も提供する。
 「今までは出荷時に100gいくら、みたいな感覚しかなかったけど(笑)、この店ができて、皆さんにおいしいと言ってもらえるものを作ろうという意識が強くなりました」と今朝則さん。開店後1年半は赤字が続き苦しかったが、みんなで時にはケンカもしながら試行錯誤を重ねて、ようやく経営も安定してきた。
 「椎茸も牛も一朝一夕には育たん。先輩たちがいて、地域のつながりの中でここまでやってこれた」。まち社会がなくしてしまった横のつながりが、この里山では人びとの仕事や暮らしを支える柱となっている。そしてみんながとても”いい顔“で楽しそうに仕事をしているのが、素晴らしい。

(*)温見地域畜産振興会は「地域資源を活用した肉用牛振興と地域活性化」により、平成18年度畜産大賞《地域畜産振興部門》優秀賞受賞。
(**)平成18年は、温見地区から農林水産大臣賞を3名、林野庁長官賞を3名が受賞。
里の駅やすらぎ交差点
豊後大野市朝地町梨小1141-1
TEL0974・74・2020
牛の写真
クヌギ林で牛たちは草を食べたり寝転がったり、気の向くままに過ごす
牛が暖をとっている写真
子牛の時からお腹を冷やさず健康に育てることが大切と、牛舎一角の床を電熱器で温める装置を7年前に発案。牛たちが暖を求めて集まってくる
餌を与えている写真
みんなちゃんと食べているか、観察しながらエサをやる小野英一さん。牛も子供と同じで、愛情をかければいい牛に育つ
小野九州男さんの写真
名人・小野九州男さんの椎茸は名入りで東京のデパートなどに出る。盆栽や狩猟の腕前もピカイチ、何にでも好奇心旺盛なのが若さの秘訣!?
小野今朝則さんの写真
「同じ牛や椎茸作りでも自分の個性が出せると農業が楽しみになる」という小野今朝則さん。「農家も消費者にもっとアピールすべき」と地域の宣伝役も引き受ける
椎茸の写真
頭の白い割れ目は、椎茸が生まれた時にできたものがそのまま大きくなる。きれいに割れているほど評価が高い
定食の写真
朝地の産品を使った人気料理、しいたけ定食、朝地牛ステーキ丼、よくばりコロッケ。ご飯は近隣の綿田地区で温見の牛の堆肥を利用して有機栽培した「綿田米」
集合写真
「里の駅 やすらぎ交差点」を支えるのは、料理長の工藤光代さん(左端)はじめ地元の女性スタッフ。お店に入ると元気なあいさつと笑顔で迎えてくれる
ほだ場の写真
ほどよく自然光が入る杉林の中のほだ場で、収穫作業をする九州男さん夫妻と長男の晋作さん夫妻。採取時期がわずかに遅れても傘が開きすぎたりするので、こまめに足を運ぶことが大切
ほだ場の写真
1本のほだ木に15〜20個の種駒を打つ。木の栄養を椎茸に取られて栄養分がなくなっていくので、4年を目安に新しい木と替える
温見地域の写真1
畜舎の写真1
取材中に1頭の牛が出産した。母牛は子牛のからだをきれいになめ、子牛は懸命に立って、乳を飲もうとする姿に感動
畜舎の写真2
温見地域の写真2
温見地域の写真4

Vientoのトップへ大分県庁のホームページへ
特集 おおいた彩発見「大分のお宝」シリーズ其の四 大分の「里山」彩発見 守り継ぎたい、自然と人の営み 日本人の心の原風景、棚田のある里山(別府市内成)「牛」と「椎茸」と「人づくり」に生きる里山(豊後大野市朝地町温見地域)角埋山の自然や歴史とともにある里山(玖珠町森)コラム
先人の軌跡 九重の自然を守る会初代理事長 赤峰武2008チャレンジ!おおいたSPORTS
ソフトボール2008チャレンジ!おおいたSPORTS
ラグビーおおいたの蔵 小野酒造株式会社おおいたの色彩 躑躅色(つつじいろ)