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特集 おおいた彩発見「大分のお宝」シリーズ其の四 大分の「里山」彩発見 守り継ぎたい、自然と人の営み 日本人の心の原風景、棚田のある里山(別府市内成)「牛」と「椎茸」と「人づくり」に生きる里山(豊後大野市朝地町温見地域)角埋山の自然や歴史とともにある里山(玖珠町森)コラム
先人の軌跡 九重の自然を守る会初代理事長 赤峰武2008チャレンジ!おおいたSPORTS
ソフトボール2008チャレンジ!おおいたSPORTS
ラグビーおおいたの蔵 小野酒造株式会社おおいたの色彩 躑躅色(つつじいろ)

おおいたの蔵
文=三浦洋子<br>
写真=久保貴文
小野酒造株式会社
時代は棒のようにまっすぐ進むわけではない。
すっきりした減圧蒸留の麦焼酎が大ブームをつくったあと、
クセや香りを残した常圧蒸留の焼酎がふたたび好まれるようになった。
無用の長物として蔵の奥に眠っていた機械が、30年ぶりに日の目を見ることに。
その常圧蒸留機は、スイッチを入れるとドカンドカンと
ロケットのように大げさな音を立てるそうだ。
おい、喜んでいるのかい、しんどがっているのかい?
30年ぶりに活躍しはじめた”復活常圧蒸留機”貯蔵室の写真

水は阿蘇野か男池の水
 山歩き、あるいは水汲(く)みが好きな人なら、黒岳の男池の水、阿蘇野の水と聞いただけであの水面のゆらめきや透明感が目に浮かぶと思う。小野酒造株式会社の焼酎は、男池や阿蘇野の水を使っているという。木々の根に割られた岩の間を通り、地底を伏流してきたミネラル分豊富な山の水だ。由布市庄内町は全般に水に恵まれている。
 けれど、小野酒造が先祖伝来の土地である小野屋からここへ移って来たのは、酒工場のための水がほしくて新しく井戸を掘ったら温泉が出たためだそうだ。昭和43年。コーラ色をした、肌にぬめるような泉質の単純泉だった。うれしいような、困ったような状態で、はじめのうちは酒造りの木桶(おけ)に温泉の湯を汲んで近所の人たちにもみんな入ってもらったという。そのうち、温泉人気で旅館を開業し、温泉センターをつくった。父祖の地はこうして温泉が主役となり、酒工場は大竜(おおたつ)という農村地帯に移った。
 そういうわけで、大正年間からのブランド『由布岳』に加え、土地の名前を取った『大龍蔵(おおたつぐら)』や『黒岳』などの焼酎が造られている。
これからは裸麦の時代
 今回の主役は『由布之郷(ゆふのごう)』。一般の店の店頭にはないらしいので、飲んだ感想を書くと、おいしく、ほどよい。常圧蒸留だけれど香りがきつくなくて、甘すぎもせず、うまい。これなら晩酌組がリピートしそうな気がする。
 「JAさわやかのグリーン店3店舗で販売していますが、在庫で残ることはありません」とJAさわやか(由布市)の大津留課長は、企画の成功を喜んでいる。『由布之郷』は、”はじめに麦があった“。JAさわやかは米の裏作として麦作を振興したかった。作った麦は確実に売らねばならない。麦焼酎の原料にするのが良いのではないか。そこへ、ある問屋さんが「これから先、焼酎の主流は大麦から裸麦になりますよ。それも、新しく造るなら常圧蒸留の25度が良いですよ」と教えてくれた。
 はじめのうちは半信半疑だったという。なぜなら一昔前は農村で焼酎というと、ダルマや宝や三楽やダイヤといった甲類(*)であり、20度をストレートで飲む人が多かった。農村のお祭りに町の人間が乙類の焼酎を持って行くと「誰か、こげな臭ぇ焼酎を持ってきたやつは」と怒られたりしたものだ。乙類の、しかも常圧蒸留の焼酎が好まれるだろうか。裸麦が本当に焼酎の原料の主役になるのだろうか。JAさわやかは、何度も協議した末、裸麦の生産と焼酎造りを決定した。それが平成17年のことで、麦作りは”名人“と言われる柿原の衛藤武美さんに依頼した。焼酎造りは小野酒造に依頼した。
 衛藤さんが作る裸麦の銘柄は『一番星』。裸麦は麦の中でも高品位、現在は生産が間に合わないほど需要が多いそうだ。裸麦を使った常圧蒸留の焼酎としては、宇佐市の四ツ谷酒造場の『兼八』がプレミアムがつくほどの幻の名酒となっている。「裸麦は個性が光る原料なんです」と、小野酒造の小野宗之(むねゆき)さんが教えてくれた。東京農大醸造学科を出ているが、酒造りでは工場長である兄昌利(まさとし)さんの補佐をし、営業を担当している。
 「常圧蒸留機は蔵によって材質、形状がみな違って、できあがった焼酎も、同じ原料でこんなに違うの?というくらい違いますね」。 大分県から爆発的に広がった麦焼酎のブームは、減圧蒸留という蒸留法に支えられた。臭くない、すっきりした、しかも乙類の旨みがある焼酎は全国の酒飲みたちに喜んで迎え入れられた。そして、30年。今また、原料の味や匂いをより多く留めた常圧蒸留の焼酎が静かなブームを起こしている。常圧蒸留の復活で、小野酒造は蔵の中に30年以上眠っていた常圧蒸留機を3年かけて修繕したという。『由布之郷』は、その復活蒸留機によって造られる。
 普通、酒母(しゅぼ)に蒸した麦を2回かけて発酵を活発にさせるのだが、『由布之郷』は酒母にもう一度、酒母を加える手法を取っている。酒母を造る手間が倍かかることになるが、その手間によって湯割りにしても良く伸びるコクや深みが生まれる。麹(こうじ)は黒麹を使用。
 『由布之郷』は平成17年、一升瓶換算で2000本が造られ、完売して、18年も同じ量が造られた。焼酎は確実に売れる。残る問題は、原料の麦の方にある。引く手あまたの麦を裏作で作る人が少ない。高齢化によって裸麦の生産量が保てるかどうかということだそうだ。
*焼酎には、「甲類」と「乙類」という分類がある。甲類は「新式焼酎」とも呼ばれ、連続式蒸留機で蒸留を行う。無色透明で不純物が少なく、クセのない味わいが特徴。乙類は「旧式焼酎」とも呼ばれ、蒸留は単式蒸留機で行われる。アルコール以外の香味成分も抽出され、それが原料独特の風味や味わいになる。
  大津留功さんの写真
JAさわやかの農産課長大津留功さん。
「はい、私も甲類をやめて由布之郷を飲んでいます」
焼酎の写真

JAさわやかが企画した麦焼酎『由布之郷』。
企画の意図は「麦を作って、麦焼酎を飲もう!」
小野宗之さんの写真
小野酒造の小野宗之さん。営業担当だが東京農大の醸造学科卒業なので醸造に詳しい
梅酒の写真
『豊後梅酒』。完熟梅の香りがする
白ワインのような洗練された梅酒だ
小野昌利さんの写真
試験免許の許可を早くも昭和63年に取っていたという梅酒製造の草分け。梅は大山産の鴬宿(おうしゅく)を使う。写真は工場長の小野昌利さん
出荷準備の様子
ほとんどの商品が東京市場へ出て行くそうだ
さまざまな瓶が並んでいる写真
小野酒造の代表的な焼酎。
そして梅酒
畑の風景写真
『由布之郷』の原材料となる裸麦は、衛藤武美さんのこの畑で作られている。
由布市庄内町柿原のこの地域は、水はけが良くて、昔から良い麦ができることで知られている土地だそうだ
小野酒造(株)
由布市庄内町東長宝454-1番地
TEL:097-582-0211

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