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住むと都
地域の魅力発信が住民の生きがいに
「神の里交流センター緒環」運営委員会事務局長広瀬 正煕さん

広瀬さんの写真


←「神の里交流センター緒環」
 運営委員会事務局長
 広瀬 正煕さん(63)
 Yoshihiro Hirose
 竹田市出身。若い頃から山や自然を愛し、学生時代は山岳部に所属。常々山の近くに住みたいと思っていたことから、6年前、竹田市街地より神原地区に居を移す。自宅3階には、祖母山や自然、山岳、文学書など多数の書籍を集めていて、いつか「山の図書館」として開放したいと考えている。


 連なる山々が織りなす深く濃い緑、空気は澄みわたり、水は豊かで清らか。登山家で文筆家でもあった深田久弥の著書『日本百名山』にも登場する祖母山の懐に抱かれた山麓の竹田市は、ただそこにいるだけで、あふれんばかりの自然が全身に語りかけてくる場所である。
 様々な伝説や神話が残る祖母山だが、そのふもとにあたる神原地区は、平家物語の第八巻「緒環」の章、「緒方三郎惟栄(おがたさぶろうこれよし)大蛇伝説」のクライマックスの地。
─ある娘(通称うた姫)のもとに、いつの頃からか素性の知れない男が夜な夜な通いつめるようになった。やがて娘は身ごもり、心配した母が緒環の糸を通した針を男の襟もとに刺すように娘に言った。男が帰った後、娘が糸をたどると、そこは祖母山のふもとの大きな岩屋。会いたいと懇願する娘の前に岩屋の奥から現れたのは、5、6尺はあろう大蛇であった。大蛇は媼岳(うばたけ・今の祖母山)の大明神だった─
 緒環とは、紡いだ麻糸を花の形のように丸く巻いたもの。この伝説にちなんで名付けられ、3年前にオープンしたのが「神の里交流センター緒環」。事務局長を務めるのは、広瀬正煕さんである。
 「緒環は、この美しい里山の暮らしを感じてもらうための施設として誕生しました。木工体験室や、薬膳料理のレストラン、農林産物直売コーナーがあり、神原地区の人々が2年の任期で交替しながら運営しているんです。地元はもとより、県内外からやってくる人々との交流の場となっています」
 また、最近ではグリーンツーリズムも盛んで、たくさんの人々を受け入れている。農泊が4軒と民宿が2軒からなる「皆泊村」では、しいたけのコマ打ちなどの農業体験や、自然に囲まれた田舎暮らし体験ができるとあって、都会に住む人達に喜ばれている。
 「もともとこの辺りは、住民同士のつながりが強くて、みんな兄弟のような感覚で暮らしています。自分達のことは自分達で、力を合わせてやり遂げるといった気質を持っていました。今は過疎化と高齢化が進んでいますけどね。しかし今、緒環やツーリズムなど外部の人達を積極的に受け入れるようになって、住民の様子が変わってきたようです。外の人達と話す楽しさ、ふれあう喜びを知り、社交的になりました。外部の人と交流することがみんなの生きがいになっているようです。沖縄の中学生も修学旅行でここへやって来るんですけど、毎年みんな楽しみにしていますよ」

この地を愛する人たちと自然を守り伝えたい

 大野川源流の豊かな水源に恵まれた祖母山麓は、入田(にゅうた)湧水群や白水の滝やダム、陽目(ひなため)渓谷、音無井路円形分水など、数多くの湧水・名水を有する。そんな水の恩恵を多くの人に感じてもらうため、7月〜11月末まで、第1回アジア・大平洋水サミット(注)協賛事業「荻・祖母山麓キャンペーン」を実施中。「荻・祖母山麓の水と森を守る」をテーマに、地域を巡るスタンプラリーを開催している。名産のトマト狩りや奥豊後名所めぐり、祖母山トレッキングなど様々なツアーも企画されている。
 「残念なことに大分県内の人でも、わざわざ遊びにやって来る人はそういないんですよね。祖母山の原生林、きれいな水、昔ながらの里山の風景と、地域住民との温かいふれあい……。本当に心が洗われる場所なんですよ。県外の都会から来る人達も、ここの景色や生活を喜んでくれます。一度ここへ来た人はみんな気に入ってくれますから、まずはこの地のことを知ってもらいたいんです。県外の人の中には、ここに住みたい、店を出したいという人もいるんですよ。そのような人が少しずつでも増えていくのは嬉しいことですね。地域住民だけはでなく、別の地域の人達の力を借りて、日本の原風景を残すこの土地を一緒に守り、そしてたくさんの人に伝えていけたら素晴らしいなと思っています」
 地元の魅力を発信することに積極的な思いを寄せ始めた住民、そしてその魅力に惹かれていく人々の交流によって生まれるパワーが、祖母山麓にいっそうの魅力を加えていく。

音無井路円形分水の写真

↑音無井路円形分水。耕作面積に応じて水を分配するもので、昔の人々の知恵が生きる画期的なシステム


【祖母山麓】
 大分県、熊本県、宮崎県の3県にまたがってそびえる秀峰祖母山。その山頂には桓武天皇の祖母、豊玉姫を祀った小祠があり、古くから信仰の対象とされてきた。また、数多くの伝説が残る山でもある。
 祖母山の豊かな自然の恩恵を受けて、歴史を刻んできた、山麓の竹田市。今この町に、新たな出会いと温かな交流が生まれているという。

祖母山麓の地図

風景写真

穴森神社写真

「大蛇伝説」で、大蛇が住んでいたとされる穴森神社


神の里交流センター緒環の写真

「神の里交流センター緒環」


(注)アジア・大平洋水サミット
2007年12月3日(月)・4日(火)、別府市のビーコンプラザでアジア・太平洋諸国の首脳及び産官学・市民団体、メディアなど各界のリーダーが集い、水問題の解決に向けて議論する国際会議。



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