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雪害対策マニュアル(施設の対策)

印刷ページの表示 ページ番号:0000296579 更新日:2014年12月15日更新
1.共通事項
(1)ヘルメットをかぶり、滑りにくい靴を履き、転倒に注意する。
(2)降雪時に見回りをするときには、安全に注意し必ず複数人で行う。
(3)積雪により倒壊する恐れのある施設には近づかない。
(4)ハウスの雪降ろし等を行う際には複数人で作業を行い、転落しないように注意する。
 
2.施設
(1)ハウスの構造と倒壊のメカニズム
ア.ジョイント方式とスエッジ方式
   パイプハウス天井部の接合方式は、通常はジョイント方式又はスエッジ方式の2種類であるが、スエッジ方式の屋根形状は扁平な形となり強度が低下するので、ジョイント方式の方が望ましい(図1)。 ハウス天井部の接合方法
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                                                   図1 ハウス天井部の接合方法 
  
  
イ.倒壊のメカニズム
   積雪による荷重及びパイプの変形に関する実験によるとパイプのひずみは、ハウス肩部、屋根中央部、天井部の順であり、肩部では外側方向に、屋根中央部では内側方向におこる(図2)。中央のみの崩壊では、どちらかが先に曲がりそれにつられて、中央部から反対側が倒壊したと考えられる(写真1)。
 
倒壊のメカニズム 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(2)ハウスの補強方法
ア.横梁の補強
   支柱のみの補強では雪が屋根中央部の左右どちらかが、重たくなると横の肩部の動きを補強しないと傾いて倒れる。このため、太い直管や丸太(写真2)での補強は有効な対策である。但し、太い直管でつなぐ場合、直接穴を空けてボルトで止めないと(写真3)、左右にずれて倒壊につながる。
 
 丸太により補強したハウス
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
イ.パイプの交換
   パイプの径は、太いほど強度が向上するが、すべて太いパイプに替えると費用がかさむので、数本に1本の交換の方が、低コストで一定の強度の向上につながる方法として、取り組みやすい(写真4)。
 
32mm径パイプを6本に1本導入しているハウス 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ウ.他の補強方法
   夏秋型のみのハウスでは、冬期はビニール被覆除去(又は中央に束ねる)が基本であるが、春一番や台風対策も兼ねて事前の補強について検討する必要がある。
   横梁の設置、タイバー(T型)の取り付け、アーチパイプの追加(5本に1本程度)、直管の追加、定着杭の設置、筋交いの設置が補強に効果的であるが、筋交いは妻面からの倒壊防止の方が効果的である(図3)。
 
ハウスの事前補強方法 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                                                  図3 ハウスの事前補強方法
 
   これらの方法を、直ちに全て行うことは大変である。アーチパイプの追加と筋交いの設置の2種類の補強により耐えられた例もあり(写真5)、まずはできる対策から順次行っていくことが肝要である。
 
事前補強により被害を防いだハウス 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 防虫ネットの積雪被害  
 
(3)積雪が予測されるときの事前対策
ア.事前点検
   (ビニールを除去していない場合で)降雪が予想される場合は、屋根被覆資材の表面に雪の滑落を妨げるような資材等がないかを事前に点検し、除去する。害虫対策用のネットも必ず外しておく(写真6)。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
イ.被覆ビニールの収納
   施設の場合は、年1回被覆を除去して、雨水に当てることで土壌環境が良くなるので、雪害対策だけでなく、被覆の除去を励行することが基本である。
   また、ブドウの雨よけ栽培では着色等の品質面からも除去が望ましい。  
   夏秋型単棟ハウスでは、作付けのないハウスのビニールは栽培終了後早めに除去するか、全てのビニール除去が困難な場合は、天井部に丁寧に結びつけておく(写真7)。
   但し、端もうまくまとめないと、そこに雪の重量で圧力がかかり、潰れる場合があるので注意する(写真8)。
 
被覆ビニールの天井部に結びつけたハウス 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
ウ.支柱補強
   中柱による支柱の補強は、予め利用しやすい場所に竹や丸太等の資材を整備・保管しておく。中柱は、3~4m程度の間隔で取り付ける(写真9)。この時、支柱の下に、板やブロックなどの台石を敷いていないと、雪の重みで支柱が土中に沈み込み、バランスを崩して倒壊につながる場合がある(写真10)。
 
竹支柱により補強したハウス 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
   竹の場合、長期間保管していると裂けやすいので、丸太の方が好ましい。  
   特に、節間で切断した竹は裂けやすいので、節の近くで切断するようにする(写真11)。
   天井部分がずれないように支柱を二股にしておくとなおよい。
 
 切断位置による支柱強度の違い
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
エ.暖房の利用
   事前に強制暖房が可能な場合は、内張を外して直接天井ビニールに暖かい空気が十分行き届くように加温する。
   固定式の暖房機の場合、設定温度は最低10度は必要と思われる。それ以上の設定の方が効果は高いが、燃料がなくなり数日の積雪に耐えられない恐れがあるので注意する。
   また、かなり積雪してから強制加温する場合は、雪が凍って逆に重たくなる場合があるため、積雪初期から加温することが重要である。
   (稼働していない暖房機の場合は)燃油量を確認するとともに、暖房機や電源、配線等についても正常に機能するか事前に確認する。
   但し、豪雪の場合は停電も伴うので、補助暖房や緊急補強対策も考慮しておく。
   一方、加温設備がない場合、過去の事例で、灯油ストーブや、防霜用の園芸ろうそくをハウス内で燃焼させて、積雪による倒壊を防いだ事例がある。この場合、ハウス内温度を上げるには至らないが、熱対流により、天井部の積雪を溶かすといわれている。ただし、いずれの場合も火災には十分注意する。
(注)練炭・炭等の加温は、一酸化炭素中毒になる恐れがあるので原則利用しない。
 
オ.積雪後の倒壊防止
   雪が積もったら速やかに雪下ろしを行い、ビニールが雪でたるみ積雪量が多くなるのを防ぐ。
例1)内側から棒でつついて落とす。
例2)グランド整備のようなT型のブラシ性のもので落とす。
例3)両側にロープを渡して2人で斜め気味に引っ張って落とす。
(注)散水による除雪・融雪については、雪の積雪を防ぐ目的で積雪前から行う場合は有効であるが、積雪後に行うと水を
含んだ雪の重量が予想外に増大し、施設の倒壊を引き起こす可能性があるので絶対に行わないようにする。
  
 安全性 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
   片側日照または風向きにより天井部の片側だけに偏って積雪があると主骨に予想外の大きい力が加わり(図4)、ハウスの片側だけを除雪すると逆にパイプハウス倒壊の危険が生ずることもあるので、除雪の場合は初期から行うか、両側均等に除雪する。
   また、2年目以降の古ビニールは、滑性が劣り倒壊の危険性が高いので、除雪の順番としては古ビニールのハウスから行う。
   最終的に、ハウスの除雪が困難で倒壊の危険がある場合は、ハウス本体の倒壊を防ぐため、ビニールを切ってハウスの倒壊を防止する(写真12)。ビニールの切断は、天井パイプに対して左右対称に行うとともに、肩部だけでなく、天井部まできちんと行わないと、倒壊する場合がある(写真13)。また、連棟ハウスの場合、ビニールを切断しても谷部のパイプ上に雪が溜まり、両端のハウスの積雪に偏りが生じることで倒壊につながる場合がある(写真14)。そのため、このような形状のハウスの場合、谷部の前後にロープを渡して2人で斜め気味に引っ張って落とすなどの措置を別途行う必要がある。
   なお、ハウス内に入りビニールを切断する場合には、複数人で入りヘルメットの着用等の安全対策を行い落雪や倒壊に細心の注意を払い作業を行う。
   果樹棚等で防鳥・害虫対策のネット等を除去していない場合も同様に、ハウス本体の倒壊を防ぐため、ネットを切ってハウスの倒壊を防止する(写真15)。 
 
ビニールを切断したハウス 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ビニールを切断したが倒壊したハウス
 
 
   
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ビニール切断したが倒壊した連棟ハウス