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2-1 多様な障がいへの対応

印刷用ページを表示する掲載日:2018年3月1日更新

1 多様な障がいへの対応

(1)現状と課題

ア 幼稚園、小・中学校等、高等学校における多様な障がい

 幼稚園、小・中学校等には、特別支援学校への就学基準となる障がいの程度に該当する幼児児童生徒から、診断はされていないが何らかの困りのある幼児児童生徒まで、多様な障がいのある子どもが在籍している現状があります。
 その結果、担当する教員は障がい種別の特性を理解するとともに、障がいの程度に応じた様々な指導方法を検討することが求められます。
 視覚障がい、聴覚障がい、知的障がい、肢体不自由、病弱の子どもを教育する特別支援学校の指導内容とその指導方法に併せて、特別な教育的支援を必要とする幼児児童生徒が在籍しているという前提で、自閉症スペクトラム障がい、LD又はADHDなどの発達障がいへの理解と対応も必要です。
 そして、多くの通常の学級において、教員に個別の指導計画を作成する力が求められ、特別支援学級や通級による指導では、保護者の了解を得つつ、関係機関と連携し、個別の教育支援計画を作成する力と、保護者と合意形成した上で、より一層の合理的配慮の提供も求められます。
 また、中学校等卒業後は、通常の学級から特別支援学校へ進学する生徒や、特別支援学級から特別支援学校、高等学校へと進学する場合があり、進路選択が多様化しています。
 幼稚園、小学校段階から障がいの状況に応じた進路実現を意識した進路指導が重要です。
 そのためには、障がい福祉サービスの利用を含め、様々な進路選択に対応できるよう必要な知識を身に付けておく必要があります。幼児児童生徒の担当教員はもちろんのこと進路指導に関わる教職員の専門性が求められます。

イ 視覚障がい

 県立盲学校の在籍者数は全体的に減少してきており、特に幼稚部、小・中学部の在籍者数が少なく、高等部の本科・専攻科の在籍者数が多くなっています。
 県立盲学校は、視覚障がいのある幼児児童生徒に対する専門的教育を行うとともに、県内全域を対象とした教育相談等をとおして視覚障がいのある幼児児童生徒本人とその保護者、担当教員等への助言を行う役割も担っています。
 県内で唯一、視覚障がい児者である幼児児童生徒に対する教育を行う特別支援学校(以下「視覚特別支援学校」という。)である県立盲学校における平成28年度の相談件数は、巡回相談56件・来校相談97件と増加の傾向にあります。そして、小・中学校等では通常の学級に在籍している児童生徒の相談が全体の78.8%を占めている現状があります。
 視覚障がいのある児童生徒の多くが通常の学級に在籍している現状から、小・中学校等の教員は、その障がい特性を理解し、個に応じた支援を適切に行うことが求められます。
 また、視覚障がいに起因する特別なニーズへの対応には、視覚特別支援学校の実践によって培われてきた指導の専門性の活用が欠かせません。視覚障がいのある幼児児童生徒の学びの場として、幼稚園や小・中学校等の通常の学級における指導の専門性向上が必要です。
 県立盲学校教員で特別支援学校教諭免許状の視覚障がい者に関する教育の領域の免許保有率(自立教科教諭免許状保有者を除く)は年々向上しているものの、5割弱にとどまっています。
 視覚特別支援学校は、専門的な教育を提供するとともに、視覚障がいのある幼児児童生徒が、児童生徒会活動などの経験をとおして自主性・社会性などを学ぶことのできる大切な学びの場です。現在、視覚特別支援学校における視覚障がい児者に関する教育の領域の免許状保有率の低さや専門性を支える教員が極端に減少していることから、専門性の低下が懸念される状況は本県のみならず全国の視覚特別支援学校における大きな課題となっています。
 県立盲学校は、本県の視覚障がい教育の拠点として、今後その教育内容の質の向上が必要であると考えられます。そのためには、専門性のある人材の確保と育成、個々の教員の教材・教具の開発力の向上が求められています。
 例えば、校内研究や個別の指導計画作成の核となる指導教諭として視覚障がい教育の専門性の高い人材の配置を検討し、授業研究や校内研修の活性化を図ることが必要です。

ウ 聴覚障がい

 近年、医療機器の発達により聴覚に障がいのある子どもが人工内耳を装用し、地域の小・中学校等への就学を希望することが増えてきています。本県では平成29年度、難聴学級が小学校に4学級、中学校に3学級設置されており、在籍者は小学校9名、中学校3名となっています。また、県立聾学校で実施している通級による指導を利用している児童生徒は、小学校13名、中学校10名(H29年9月1日現在)です。
 県立聾学校における巡回・来校相談は、通常の学級に在籍している児童生徒に対する「指導方法」に関するものが最も多く、専門性のある指導を求めていることがわかります。
 県内で唯一、聴覚障がい者である幼児児童生徒に対する教育を行う特別支援学校(以下「聴覚特別支援学校」という。)である県立聾学校への転入学者数は毎年度1~2名程度で、幼稚部・小学部・中学部の人数は減少傾向です。高等部・本科普通科への進学希望者は増えてはいるものの、本科卒業後に専攻科を希望する生徒が極めて少なく、過去3年は在籍者がいません。
 県立聾学校は、聴覚障がい児者に対する専門的教育を行うとともに、県内全域を対象とした教育活動をとおして聴覚障がいのある幼児児童生徒本人とその保護者、担当教員等への助言を行う役割も担っています。
 県立聾学校教員の聴覚障がい者に関する教育の領域の免許状保有率は、この5年間で倍増していますが、全体の54.3%であり、高いとは言い難い状況にあります。
 県立聾学校の通級による指導を利用している児童生徒は、通常の学級に在籍しており、小・中学校等の教員には、聴覚障がいの特性を理解し、県立聾学校教員と連携した支援を適切に行うことが求められています。聴覚障がいに起因する特別なニーズへの対応には、聴覚特別支援学校の実践によって培われてきた指導の専門性の活用が必要となります。
 そして、聴覚特別支援学校は、専門的な教育を行うという役割はもちろんのこと、聴覚障がいのある幼児児童生徒が、児童生徒会活動などの経験をとおして自主性・社会性などを学ぶことのできる大切な教育の場です。
 このようなことから、県立聾学校は本県の聴覚障がい教育の拠点として充実を図り、個々の教員には、障がいの特性に応じることができる専門性を身に付けることが求められます。
 そのため、県立盲学校と同様に指導教諭として、聴覚障がい教育の専門性の高い人材の配置などを検討し、授業研究や校内研修の活性化を図ることが必要です。 

 エ 肢体不自由

 肢体不自由者である幼児児童生徒に対する教育を行う特別支援学校(以下「肢体不自由特別支援学校」という。)は、別府支援学校本校とその分校である鶴見校の2校です。
 2校に在籍している肢体不自由の子どものうち、障がいが単一の子どもの割合は約1割で、重複した障がいのある子どもの割合が9割ととても高くなっています。
 また、医療的ケアを必要とする子どもが、平成29年度には17%程度在籍しており、医療との連携も欠かせない状況です。さらには、別府市以外の知的障がい特 別支援学校にも、肢体不自由と知的障がいを併せ有する児童生徒が在籍しており、中には医療的ケアを必要とし、障がいの状態が重度である子どもが通学しているケースもあります。
 肢体不自由特別支援学校である別府支援学校本校と鶴見校の2校における教員の特別支援 学校免許状保有率は、80%を超えているものの、学部によってかなり差がみられます。
 特に障がいの程度が重度であったり、重複していたりして、自立活動を主とした教育課程で学ぶ幼児児童生徒に対しては、自立活動の高度な専門性をもって教育にあたることが求められていますが、自立活動教諭免許状を保有している教員はいません。自立活動の指導には、教員自身の専門的知識や技術に裏付けられた指導力と理学療法士(Physical Therapist以下 「PT」という。)・作業療法士(Occupational Therapist以下「OT」という。)・言語聴覚士(Speech-Language-Hearing Therapist以下「ST」という。)などの専門家と連携して指導内容・方法の改善を図ることも必要です。
 また、特別支援学校に在籍する肢体不自由の単一障がいの児童生徒には、肢体不自由の状態に応じた自立活動の指導とともに、大学進学等をめざした各教科の学習保障も重要です。
 肢体不自由特別支援学校では、多岐にわたる教員の専門性の向上が課題となります。
 一方、県内の小・中学校等に設置している肢体不自由の特別支援学級は、小学校9学級で12名在籍、中学校2学級で2名の在籍となっています。肢体不自由のある児童生徒は、例えば、手すりやスロープの設置などの適切な基礎的環境整備や合理的配慮により、通常の学級への在籍が可能になる場合があります。小・中学校等においては、肢体不自由のある児童生徒へ合理的配慮が適切に提供できるよう、個々のニーズを的確につかむことが必要です。 

オ 病弱

 県内に設置している病弱の特別支援学級は、病院内に設置された学級が8割を占め、現在、小学校3学級で5名在籍、中学校2学級で在籍者はいない状況です。しかし、入院に伴う転学先として在籍者数の変動が頻繁にあり、入院した児童生徒の学習の場となっています。
 病弱者である児童生徒に対する教育を行う特別支援学校(以下「病弱特別支援学校」という。)は、別府支援学校本校と分校である石垣原校の2校です。
 近年、腎臓疾患や喘息などの疾患による在籍者は減少し、発達障がいによる二次障がいとして適応障がい、不安性障がい、心身症などの精神疾患関連の診断がある児童 生徒が約4割を占め、特に高等部では約6割を占めています。
 また、病弱特別支援学校では、小・中・高等学校に準ずる教育課程で学んでいる「病弱」の児童生徒が約半数を占めています。その一方で、知的障がいと重複した障がいがあり、その障がいの状態が重度のため、各教科等を合わせた指導や自立活動を中心とした教育課程で学ぶ児童生徒が4割程度の39.2%在籍しています。
 病弱特別支援学校では、増加している精神疾患関連の診断がある児童生徒への対応が喫緊の課題です。生活リズムの乱れから学校を休みがちであったり、学習活動への意欲が低かったりするなどの様子があり、学習が遅れた状態で地域の学校から転入学してくることも多くあります。このような場合には、教育の側面からだけでなく、医療面からのアプローチも必要です。
 一部の教員だけが対象となる子どもへの指導を抱え込むのではなく、精神科医、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等との連携も検討する必要があります。
 また、肢体不自由の児童生徒と同様、障がいの状態に応じた自立活動の指導とともに、大学進学等をめざした各教科の学習保障が求められます。
 一方で、障がいが重度であったり、重複したりしている場合、訪問教育等の実施が必要になることも考えられます。そのような場合、児童生徒の経験を広げるためのタブレット型端末等のICT機器の活用など多様な学習方法の工夫も求められます。

カ 知的障がい

 県内に設置している知的障がいの特別支援学級は、小学校等219学級812名在籍、中学校等102学級328名在籍という状況です。特別支援学級を障がい種別に比較してみると知的障がいの特別支援学級数、在籍者数が最も多く、また年々増加している状況です。
 小・中学校等の特別支援学級においては、知的障がいの程度が比較的軽度の児童生徒と特別支援学校への就学基準に該当する程度の児童生徒が同じ学級で学ぶ場合も考えられ、担当する教員には、学級経営、個別の指導計画作成から授業実践や関係機関との連携等に対する高い専門性やスキルが求められます。
 一方、県立の知的障がい特別支援学校は、県内に11校設置しています。
 大分市や別府市の県立知的障がい特別支援学校では、児童生徒数が増加し、校舎の狭隘化等が課題となっています。
 特に高等部段階から特別支援学校へ入学してくる生徒数は年々増加の傾向で、新入学者の入学前の在籍は、特別支援学校中学部と中学校の在籍者がほぼ同数となっています。
 また、知的障がい特別支援学校では医療的ケアを必要とする児童生徒も増加しており、比較的障がいの程度が軽度な児童生徒から、多様な障がいの子どもたちが在籍している状況です。
 多様なニーズに応え、適切な指導を行うために、個別の指導計画の質を向上させることが求められています。特に給食等の指導において、嚥下障がい等食べる機能に障がいのある児童生徒を指導する場合、食事の調理形態(ペースト食、刻み食、普通食等)や摂食指導の方法について、医師や専門家の診断や助言に基づいて行うことが重要です。
 知的障がい特別支援学校の教育課程は、在籍児童生徒の実態、地域の状況などを踏まえて、各学校で編成されています。各校の教育課程を比較すると、例えば、小学部2年生、知的障がい単一障がいの児童の「国語」の年間授業時間数が105時間という学校と52.5時間という学校があるなど、指導の形態ごとの指導時間数が学校によってかなり差が見られます。
 これは、教育課程の方針や時数配当の根拠などが明確でなく、改善の視点が共有しにくいことが原因と思われます。
 特別支援学校では、カリキュラム・マネジメントの3つの側面の中でも特に、教育目標を実現するために学習指導要領に基づき教育課程を編成し、それを実施・評価し改善していくという側面の確立が課題と言えます。

(2)今後の計画

◆課題1 外部人材の活用による幼稚園、小・中学校等、高等学校における障がいのある幼児児童生徒への対応の強化
 PT、OT等の専門家等とのネットワーク構築により、各分野における専門性の高い外部人材を活用した授業研究会の実施など効果的な専門性向上をめざします。


 ○外部人材を活用した授業研究会や校内委員会などの実施を推進

◆課題2 特別支援学校教諭免許状の保有率向上
[特別支援学校]
 専門性の担保のためには、特別支援学校教諭免許状保有率は、100%となるべきと考えます。また、それぞれの障がい種の専門性担保のためには、該当する障がい種の免許状保有率の向上が必要です。


 ○特別支援学校教諭免許状を未取得の教諭は、原則、特別支援学校在勤2年以内に取得
 ○盲学校、聾学校に勤務する場合、原則、視覚障がい・聴覚障がいそれぞれの関係教育領域の免許状を取得

[小・中学校等]
 特別支援教育の専門性は、これからの学校教育を担う教員に求められる資質であると考えます。特に特別支援学級担任や通級による指導の教室担当者の特別支援学校教諭免許状保有率を向上させることが必要です。


 ○特別支援学級担任、通級による指導の教室担当者の特別支援学校教諭免許状保有率向上に向けた市町村教育委員会と連携した取組の検討

◆課題3 特別支援学校における「個別の指導計画」の充実と活用のさらなる推進
 授業研究会や校内研修の質を向上させ、一人一人に応じた教育の充実のために、より専門的な視点に基づいた個別の指導計画の作成をめざします。
 今後、増加していくことが予想される重度・重複障がいのある幼児児童生徒への対応については、これまで以上に充実した医療機関との連携を図ります。


 ○各障がい種の専門性のある指導教諭の配置によるOJT の実施
 ○「自立活動」の個別の指導計画作成段階からの外部専門家との連携強化
 ○医師や摂食指導等の専門家による授業観察や授業改善への支援

◆課題4 特別支援学校におけるカリキュラム・マネジメント
 明確で根拠のある社会に開かれた教育課程の編成を促し、学部や学年間で一貫性のある指導を継続できる教育課程編成のための組織的なPDCAサイクルを確立させます。


 ○新学習指導要領等に基づいた教育課程の改善
 ・新学習指導要領等の趣旨の周知・徹底
 ・「カリキュラム・マネジメント研究協議会」(仮称)による教育課程改善の推進