賀来条里跡発掘調査速報
事業名
賀来川東院地区築堤護岸外工事に伴う埋蔵文化財発掘調査
所在地
大分市大字東院
調査期間
平成29年10月10日~平成29年12月1日
調査概要
賀来条里跡は大分川の支流である賀来川南側の海岸段丘上に立地します。条里とは古代から中世にかけて行われた土地区画制度で、耕作地を約109mの間隔の正方形に区画する特徴があります。遺跡は賀来川の築堤工事に伴い発掘調査が行われました。
検出遺構
発見された遺構は自然流路(旧河道)と溝、土坑と柱穴が数基で、これらは出土遺物から13世紀頃に埋没しています。また、弥生時代中期後半の高坏を埋めた土坑1基も発見されました。
遺物の出土状況
弥生時代の土坑からは、中期後半に位置づけられる須玖式土器の高坏が出土しました。高坏は旧河道の側から単体で出土したことから、「水」に対する祭祀に使われた可能性が高いと考えられます。
自然流路(旧河道)の埋土からは、12~13世紀代を主体とする中国産の青磁や白磁の破片が出土しています。遺物は周囲からの流れ込みと思われ、ほとんどが小さな破片となっていますが、青白磁合子蓋など、碗や皿以外の器種も少量出土しました。
調査のまとめ
弥生時代中期後半には、調査区内に自然流路が存在し、その付近で「水」に対する祭祀が行われた可能性があります。しかしながら、住居跡などの生活の痕跡は確認されていません。
自然流路は13世紀代に人為的に埋められ、その付近に小規模な溝なども作られたようです。また、調査地点より南側では条里地割りが広範囲にわたって認められますが、調査区付近では、埋没した条里地割りのような区画遺構は確認できませんでした。
今回の調査で発見された遺構・遺物は少量に留まりますが、調査地点周辺の土地利用の状況を検討する資料を得ることができました。
写真
調査区空撮
自然流路 出土遺物