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私の3R 第5回 南こうせつ - シンガーソングライター

印刷用ページを表示する掲載日:2012年3月23日更新

南こうせつ写真

 僕が最初に3Rという言葉を知ったのは、ノーベル平和賞を受賞された、ケニアのワンガリ・マータイさんにお会いした時でした。彼女はその3Rにもうひとつrespect(尊敬の念)を加えて、『もったいない』という日本の言葉を世界に提唱しました。ケニアで大量のゴミとなっているレジ袋の削減や自然環境の再生のための植林、それらの活動を通して形成された人々のネットワークと貧困からの脱却、そして女性の地位向上、更にはケニア社会の民主化へと話は尽きませんでした。

 灯台下暗しとはこのことですね。我々の先輩から受け継がれて来た日常の暮らし方『もったいない』が、今世界から注目され必要とされています。そう言われてみると、僕が小さかった頃は、豆腐を買いに行く時はちゃんと自前の入れ物(ボウル)を持って行きましたし、魚屋さんは切り身を新聞紙に包んでくれました。こうもり傘の修繕や包丁研ぎやバリカンの修理の人も来ましたし、富山の薬売りの人は時期を見計らって現れて、使った分だけの薬の補充と集金をして、子ども達には紙風船をおまけにくれました。

 いつの頃からか、人間だけが暴走しました。わずかこの数十年の間に山も川も海も切り刻み、大気や大地を汚染し、いったいどこへ行こうとしているのか?エゴむき出しの今の政治・経済の姿には、未来が見えてきません。この星の生態系の頂点に立つ人間が、自分たちの利便性だけを求め、その責任と義務を忘れ、まるで人間が人間から遠ざかって行くような現実に危機感を覚えます。

 かくいう僕もその人間の一人です。あの会社が悪い、行政が悪い、教育が悪い、時代が悪いという責任転嫁はもはや許されません。全ての責任は、今この社会に生きている我々大人にあります。それを認めるところから、この3Rの第一歩が始まる気がします。そのうえで例えば、日々の暮らしの膨大な情報の中から何をチョイスするのか、実はこのことこそが、これからの時代に光をもたらしてくれると思います。

 僕は、都会ではなく田舎での暮らしを選びました。野菜を育て、生ゴミは土へ返し、落ち葉や刈草は堆肥にするというエコの暮らしです。そこで季節の風に吹かれて鳥の声を聞いていると、人間は多くの生物に助けられて命を育んでいるんだなあと、実感できます。その大自然の慈悲深いエネルギーに人はもう少しだけ目を向け、自然に対する畏敬の念と謙虚な気持ちをもっと持ってもいいのではないか、と一人でブツブツとつぶやいています。今年も季節は巡り、誰に褒められる訳でもなく料金も取らずに、木々は花を咲かせ緑を恵んでくれます。この大いなる宇宙の交響詩にもっと生き方を学び、そして楽しみませんか?

(平成24年3月21日大分合同新聞朝刊掲載)

プロフィール

大分県出身。
1970年デビュー。
直後に「かぐや姫」を結成し「神田川」「妹」等の数々のミリオンセールスを記録。
解散後もソロとして、「夢一夜」等のヒットを放つ一方、大地に根ざした独自のライフスタイルと時代を見据える姿勢が、多く人々の共感と支持を得ている。
現在も第一線で活躍中。

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