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新年おめでとうございます
大分県知事 広瀬勝貞
今朝よりは雪気の雲の跡はれて
緑にかへる春の初空(源通具 夫木抄)
昨日までの雪模様のどんよりした空が、年が明けて今朝はきれいに晴れて緑萌えるような初春の空となった。昨年災害の多かった大分県にとっては、心に沁みます。今年こそは平安を祈りたいですね。歌も意味も別府大学文学部浅野則子先生に教えていただきました。
そして初春ともなると、座右の銘もひとつ追加してみようかと思います。
不精ニ亘(わた)ルナカリシカ
旧海軍で自戒の言葉として言われていたことだそうです。古い言い回しですが、怠けたり、面倒くさがったり、注意を怠ったりしなかったかということでしょう。
たまに遊びに来る3歳の孫を見ていると、あの年齢は好奇心のかたまりみたいなもので、蚊取線香に火をつけて「熱いから触るなよ」と注意しても、触って熱いと言って泣いています。パソコンにスイッチを入れておくと、必ず壊されて、若い人に再起動してもらわなければなりません。好奇心の赴くまま、不精は全くありません。
皆さんも覚えはあると思いますが、中高生の頃は好きな学科だとやたらと「なぜ」「なぜ」と疑問が起って、次から次に聞いたり、調べたりしたような気がします。これも不精とは無縁でした。仕事を始めた頃も次々先を考えて、「これでもか」「これでもか」と手を打っていたような記憶があります。
問題はそれからです。世に棲み慣れてくると(敢えて年を重ねるとは言いません)、先のことは大体わかるような気がして、「この辺でいいか」「後は問題が起こって考えればいい」と不精を決め込みます。「もう一歩先を考えておけば後で苦労しなくて済んだのに」とか「もう少し調べておけば、この旅行ももっと楽しかったのに」と思うことがよくあります。不精の罰です。冬ともなると、日課の散歩も「今日は寒過ぎるからやめておこう」とか、理屈をつけては不精に逃げることが多くなります。
不精はひとりだけの問題ではなく、他人に迷惑を及ぼす場合もよくあります。例のラグビーでは誰かが不精をすると、チーム全体の攻撃も守りも総崩れとなって全体に迷惑をかけます。会社生活でも総じてトップや担当の不精が会社の評判を落とすこともしばしばです。
気力不足、努力不足なら客観的に測定できるし、その分気力を充実させ、努力を重ねれば良いのですが、不精の方は、主観的に自分自身でもう一歩、もう一工夫やるかどうかということですから、「ここらでいいか」と自分で許してしまえば、そのまま不精に陥る危険があります。
今年はもう一度思い直して不精ニ亘ルナク、自分に厳しく、そして興味、関心、ヤル気、冒険心を持って、丁寧にやるべきことは念を入れて、果敢に取り組むべきことは、思い切りよく事に当たる、そんなことを注意しながら過ごしたいと思います。
~県政だより新時代おおいたvol.116 2018年1月発行~