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知事からのメッセージ 風紋 日本初の児童養護施設―日田養育館

印刷ページの表示 ページ番号:0002149245 更新日:2021年11月16日更新

日本初の児童養護施設
―日田養育館

大分県知事 広瀬勝貞

 

 大分県は、「子育て満足度日本一」を重要施策の一つに掲げて県民挙げて取り組んでいます。子育ての真っ最中、あるいはこれからというカップルに「大分県は何と子育てしやすいことか。行政もいろいろ支援してくれるし、まわりの人々も温かく励ましてくれる」と思ってもらうことです。お陰様で施策も充実してきて「そろそろトップグループまで来たのかな」と内心誇らしく思っていた矢先、「今頃日本一とは、遅い遅い。私たちはとっくにやってのけたバイ」という大分県の先人の声が聞こえてきました。
 日田県の初代県令(知事)として赴任した松方正義が明治2年(1869年)、地元有志の浄財も募りながら、近代日本初の児童養護施設「日田養育館」を創りました。棄児や孤児を養育し、できれば里親を見つけて繋ぐ役割も担っていたようです。それにしても、維新後数々の政策制度を創設しなければならない中、しかも財政力もまだ全く整わないうちに、真っ先に養育館を創ったということは本当に貴重な日本一だと思います。
 松方県政の多くの功績の中でもこれはやはり特筆すべきこととして、記念碑が建てられました。題字は咸宜園生で総理まで務めた清浦奎吾、そして碑文は大河ドラマ「青天を衝け」でお馴染みの渋沢栄一という豪華キャストです。渋沢は松方とは半世紀にわたる付き合いで、とくに全国的な養育館活動を応援したと言われています。
 実はこの記念碑は日田の大原神社の長い石段の脇にあって、私は神社に行ってはよく見ていたものでした。誠に恥ずかしながら、それがこんなに貴重な歴史を刻んだものとは今日まで全く知りませんでした。私どもとしては、先人の素晴らしい功績に敬意を表し、最近はニーズやそれに応える手法も変わってきていますから、それを踏まえつつ、新しい子育て満足度日本一を実現しなければならないと思います。
 1つは、経済的負担の軽減です。
 出産、育児、教育、いろいろお金がかかりますが、あの時代に比べると財政も相当豊かになっていますから、国、県、市町村が連携して、経済的な支援を充実していかなければならないと思います。
 2つは、デジタル技術等を活用して高度に、効率的に子育てを応援することです。
 最近は、子育てと仕事を両立できるようにすることが大事と言われますが、仕事をしている親にとって、子どもが急に病気になった時は大変です。病児・病後児を預かってくれる保育施設を探すのが大変というご家庭が多かったのですが、今年から県内どこの施設でも利用できるようになり、それもスマホで空いているところを検索し、予約できるようになりました。こんな技も使っていく必要があります。
 3つは、子育て関係機関の連携です。
 例えば、児童虐待等で親元を離れざるを得ない児童も後を絶ちません。こちらの方は県、市町村それぞれに対策を講じており、そのための組織は整ってきましたが、かえって連係プレーがうまくいかなくて、見過ごして大変な結果を招くことがあります。大分県ではそのようなことがないように要保護児童対策地域協議会を設けて、官民関係者で連携し、万全の構えで支援しています。
 子育て満足度日本一に向けて、施策充実は図られてきましたが、やはり一番大事なことは地域が優しく見守り励ますことではないでしょうか。子育て中のカップルに聞くと、「赤ちゃんかわいいね」「元気だね」と声をかけて励ましてもらうと子育ての疲れがいっぺんに吹っ飛ぶそうです。道ですれ違う時、同じバスに乗り合わせた時、ちょっと声をかけて、「必要なら私たちがいつでも力になるよ」と地域が応援メッセージを出し続けることが実は一番大事かもしれません。

 

~県政だより新時代おおいたvol.139 2021年11月発行~