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新時代おおいたNo.104

印刷用ページを表示する掲載日:2016年2月1日更新
104号 

【HTML版】
特集1/新春対談~きり拓け!未来への挑戦~
特集2/大分からはばたくグローバル人材の育成 
風 紋/離島の元気
県民ひろば1/おおいたの豊かな森林を未来へ~森林環境税10年~
県民ひろば2/ラグビーワールドカップ2019がやってくる!
おおいたゆかりの図書 心ひらいて  とよの国の食彩   

【PDF版】
新時代おおいたNO.104 [PDFファイル/8.66MB]

【電子書籍版】
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特集1 新春対談~きり拓け!未来への挑戦~

【対談者】 

宇宙航空研究開発機構(JAXA)シニアフェロー 川口淳一郎さん

大分県知事 広瀬勝貞

はやぶさ模型前にて

「はやぶさ」60億キロの旅

知事 川口さん

広瀬
 あけましておめでとうございます。

 今日は小惑星探査機「はやぶさ」のプロジェクトリーダーを務められました宇宙航空研究開発機構(JAXA)の川口淳一郎さんにお話を伺います。

 はやぶさは小惑星イトカワに着地し、地表のサンプルを採って地球に帰ってきた、世界初のプロジェクトだったんですね。

川口 これまで地球の引力圏外に出るとなるとすべて片道飛行でしたから、そこでサンプルを持ち帰ったのは、はやぶさが初めてです。

 ただ、サンプルを持ち帰って調べることも確かに大きな使命でしたが、今回の一番の目的は往復飛行でした。将来、人類が太陽系を自由に行き来したり、宇宙の資源を利用する時代になった時、往復して帰ってくることが不可欠になりますから。

広瀬 いろいろとトラブルもあったんですよね。

川口 想定外なことがたくさんありました。私は「想定外になることは二流だ」と講演でよく言っていますが、はやぶさはたまたま運がよかったから帰ってこられただけで、本当は二流だったのかもしれません。

 到着までは順調そうに見えますが、実はリアクションホイール(精密姿勢制御装置)が、イトカワ到着前に1台、到着してから2台目が壊れました。ですから到着してしばらくはきれいな天体の写真がいっぱい撮れているんですけど、2つ目が壊れてからは撮影する方向が定まらなくて大変でした。

 一番大きなトラブルは、着陸がうまくいった後の燃料漏れです。燃料漏れ自体は止められましたが、閉めたバルブが開かなくなりましてね。結局、ロケットエンジンの回路が使えなくなるという致命的な事態でしたが、この探査機が幸運なのは、イオンエンジンという別のエンジンを持っていたことです。

広瀬 通信途絶の時も、よく諦めずにずっと待たれましたね。

川口 一生涯のうちにこういうプロジェクトを何回担当できるかというと、多分1回しかできないと思うんですね。ですから、簡単に諦めるわけにはいかないんです。

 はやぶさは、太陽の周りを回りながら、必ず地球の方向を向く時期がありました。そのチャンスにいろんな働きかけをしたら、太陽電池に光があたって、少なくとも地球からの最初の指令を待ち受ける状態にはなれる。それを計算から割り出して、信じることにしました。信じなければ奇跡も起きませんから。みんなで信じて打ち込んだら、回復につながったということですね。

広瀬 そうやって7年間の飛行から帰ってきたわけですけれども、その時にはもうはやぶさはただの機械ではなくて仲間のように感じられたみたいですね。

川口 そうですね。行方不明になっても復活してくれて、こちらからのいろいろな質問に自立性の機能を使って答えてくれるんですね。メンバーにとって、子どものような、同士のような存在でしたね。

広瀬 我々も一喜一憂しながら帰りを待っていました。いい経験をさせていただきました。

 

目指すのは『世界初』

広瀬 宇宙開発のプロジェクトをはじめ世界最先端の技術開発となると、人員も時間も費用も随分かかり、またいい結果が出るかもわからないわけでリスクも高い。そんな中で予算を要求して賛同を得なきゃいけない。中には、世界の1番はNASAに任せて、日本は2番でいいじゃないかという議論もあり、苦労をされたのではないですか。

川口 そうですね。はやぶさプロジェクトのスタートは30年ぐらい前、私たちがハレー彗星に向けて小さなロケットを初めて打ち上げた年に始まるんですが、自分たちが宇宙で何をしたいのかという根本的なことを考え始めて、やはりアメリカの後追いとかでなく、自分たちだけのオリジナルがなければいけないという結論に至りました。それが、地球圏外の物質を持って帰ることであり、往復の飛行だと、当時からみんなで築いてきたわけです。

広瀬 NASAに追いつけ追い越せの意気込みですね。

川口 世界一でなくて、世界初を目指しました。目指すべきものはオンリーワンであるべきで、それは自動的にナンバーワンですからね。それが私たちの根本的な意識であり、プロジェクトであるということです。

 一歩高いところに立たなければ、今見ている以上の世界は見えてきません。そこに行かないと、次に何を目指せばいいかもわからないし、2番でいると前の人の背中しか見えない。だから、この先に何か新しいものがあるのか、自分たちは何を目指すのかというのは、一歩高いところに上がらなければならない。それが世界初を目指すということになります。

 対談風景

地球の期限と太陽系大航海時代へ

広瀬 はやぶさの成果がはやぶさ2につながり、今、小惑星「Ryugu」を目指して飛んでいるんですよね。

川口 はやぶさ2のねらいは、「生命が宿る環境を作ったその元は何か」です。イトカワは太陽に比較的近いところを飛んでいるので、持ち帰ったサンプルは、水も炭素も全くない焼け石でした。「Ryugu」はもう少し遠くて、そこに行くことが地球に海ができた理由や、有機物がどうやってもたらされたかを解明する手がかりになるのではないかと思っています。

広瀬 高校生からの質問の中に、地球外生命体はいるでしょうかという質問がありました。

川口 そう期待しています。進化論では、「生命は50億年の歳月をかけて進化した」と言われていますが、それは疑問なんですね。今の地球上の生命体の90%は、たった数億年前に突然湧いたように出てきますが、どうしてそうなのか、どこからきたのかというのは未だ大きな謎です。

 1つのヒントになるかもしれないのが、生命の種は外から持ち込まれたのではないかという説です。まだ確証はありませんが、太陽系の外に行って、そこに生命のかけらがあって、地球人と同じ遺伝子を持ったものがいれば、外から持ち込まれたことが正解になるんですね。

 また、金という元素は自然に合成されるものではなく、恒星が一生を終える時の「超新星爆発」という現象を経なければできません。地球に金があるということは、地球も太陽系もかつて存在した別の星の残骸でできているということです。宇宙の始まりから地球があったわけじゃない。地球人も地球の材料も、すべてオリジナルではないんですね。夜空に散らばるすべての星の周りには惑星があって、地球に似た惑星がたくさんあることももうわかっています。だから、地球外生命体は当たり前に存在している、宇宙人も絶対いるに決まっています。

広瀬 夢は広がりますが、これからの宇宙開発はどのように進むと思われますか。

川口  いずれはいろんな手段で、人類は必ず地球の外へ出掛けられるようになるでしょう。その目的も生命の探査や資源の利用などさまざまです。小惑星は資源の塊なので、すぐではなくても宇宙を往復してそれを利用する時代はきっと来ます。我々の活動もそこにつながっていくのだと思っています。

広瀬 そうすると、地球上でかつてヨーロッパから世界がグローバル化していったように、今度は地球から宇宙が人類の手の中に入ってくるようになりますかね。

川口 我々は太陽系大航海時代と言っています。ですから、若い方々は目先でなく、ロングレンジの展望を見ながら何をするべきか考えて欲しいですね。

 対談風景2

宇宙を夢見る若者たちへ

広瀬 大分県が毎年行っている「少年の船」では、たくさんの子どもたちが沖縄へ行き、勉強や交流をしています。その帰りに種子島の宇宙センターに寄ったところ、多くの子どもたちがそこでの経験を感銘深く語っていました。川口さんは宇宙の問題に関わって人生観や価値観が変わりましたか。

川口 宇宙というよりは、この分野を志すきっかけになった惑星探査のいろんな成果があり、驚きや新しい視点を得て目覚めたんじゃないかと思います。

 この分野に入って一番驚いたのが、ものの考え方でした。例えば方程式を解くために学校では公式を教えられますが、この分野では方程式はなくて、「予想する数字をあてはめてみたら大体求めるものに近かったでしょう」となるんですね。学校では土台を一生懸命教えますから、正確な解を求めないと評価をされませんが、本当は自分の推量が求めるものに近ければそれでいいということなんです。小惑星の往復をするのに、徹底的に落ち度がないよう、穴を埋め尽くして歩くことは絶対できません。こうすればできるじゃないかということの積み上げなんです。

広瀬 最後に、宇宙を目指す大分県の若者たちにメッセージをお願いします。

川口 不完全であることを恐れるなと言いたいですね。日本人は、今完璧かどうかを見てしまうから、次のページをめくる自信がないんですね。でも、実際めくってみると、新しい世界が見えてくる。その勇気を持つことがとても大事で、だから完全でなくていいということを心に刻むと、いろんな世界が見えてくると思います。

 はやぶさも完全ではなくて、「こういうやり方で動かせばできる」と言っているだけです。その考え方は、おそらくとても大事ですね。

広瀬 今日は本当にありがとうございました。

展示室 (1月2日放送OBS新春特別番組要旨)

 


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