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学位(博士)取得報告(2012)

印刷ページの表示 ページ番号:0000262506 更新日:2012年10月1日更新

研究の背景

微生物担当の緒方喜久代主幹研究員が、市中型MRSAの感染媒体の一端を明らかにした研究で学位を取得した研究課題についてお知らせいたします。

○ 学位授与大学  産業医科大学(平成24年3月31日)

○ 学位請求研究課題 「市販流通食肉が市中型MRSAの感染媒体である可能性の検討」 

背景

 MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌:Methicillin resistant Staphylococcus aureusの略)には院内型MRSAと市中型MRSAがある。近年、欧米を中心に白血球を破壊する毒素を有する強毒な市中型MRSAが分離され、その蔓延、死亡例の増加が問題になっている。有効な対策のためには、感染源、感染経路の特定が肝要であるが、いまだ不明のままである。本研究では、市販流通食肉が市中型MRSAの来源の一つとして関与する可能性を検討することを目的に、市販流通食肉のMRSA汚染状況と同流通地域下の下痢症患者におけるMRSAの分布を調査し、食肉由来株と下痢症患者由来株の性状の比較並びに分子遺伝学的疫学解析を行った。 

今回評価された研究内容

 感染源は未だ、不明のままで、食肉由来株とヒト由来株を比較した報告はない。
 本研究では、法に基づく定期的な収去検査のための市販流通食肉と、入院歴がない患者の病院受診48時間以内に採取した下痢便について、MRSAの検出、性状解析を行った。その結果、長期療養施設入所者由来の2株を除くMRSA12株は、日本で分離される市中型MRSAと共通の性状を示し、またその疫学背景からも市中型MRSAと考えられた。そのうち、2007年に分離されたコアグラーゼタイプIII/SEC 3株(食肉2検体と下痢便1検体由来)は、遺伝学的性状が完全に一致した。食肉由来株とヒト由来株の市中型MRSAを比較して、一致するものがあることを確認した初めての報告である。この結果は、市販流通食肉が市中での市中型MRSAの伝搬拡大に関与することを強く示唆するものである。 

 本研究から、流通・販売される食肉を介した「耐性菌の拡がり」の可能性が示され、病院内感染による拡がりに比べてはるかに広域的であるために問題がより大きいと考えられる。得られた成果を基に、保健所の食品衛生監視員などを通じて、日常の食品取扱業者への衛生指導や消費者等に対する食中毒防止啓発活動にMRSA感染のリスクも視野に入れた注意喚起を行うことにより、市中への拡散防止、医療機関への持ち込み防止に役立つものと考える。研究論文は、評価されアメリカ微生物学会の学術誌Applied and Environmental Microbiology の2012年Vol.78, No. 8 (3月25日発行) に掲載された。 

用語解説  [PDFファイル/457KB] 

 

知事報告の様子

知事に説明している様子

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