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人体寄生虫・寄生虫卵の基本的な鑑別法

印刷用ページを表示する 掲載日:2010年3月24日更新

形態学的特徴

 人体寄生種は線虫類(うどん,そーめん様)吸虫類(偏平な葉状様)条虫類 (節のあるサナダ紐様)で、
これら3類の形態学的相違点の概要を示す。

 蠕虫類(成虫)の形態学的特徴 
門別線形動物

扁形動物

類別線虫類吸虫類条虫類
形状細円筒状扁平な葉状扁平な紐状
片節の有無
体腔の有無
雌雄の別異体同体
(住血吸虫は異体)
同体
消化管の有無
肛門の有無
種名蛔虫
蟯虫
鞭虫
鉤虫
東洋毛様線虫
糞線虫 等
肝吸虫
横川吸虫
肥大吸虫
有害異形吸虫
槍形吸虫
肺吸虫
日本住血吸虫
マンソン住血吸虫
ビルハルツ住血吸虫等 
【擬葉類】
 広節裂頭条虫
 大複殖門条虫
【円葉類】
 無鉤条虫
 有鉤条虫
 小形条虫
 縮小条虫
 瓜実条虫 等 
 

中間宿主

 生活史 :寄生虫の一生涯の生活過程をいう。蠕虫では、通常、成虫を宿す宿主を終宿主、幼虫を宿す
       宿主を中間宿主という。寄生虫の種類によっては、中間宿主を1つ必要とするものと、2つ必要
                とするものとがある。中間宿主が介在している寄生虫は、それを除外しては生活史は全うされ
       ない。
  

中間宿主を必要としないもの

(線虫類)蛔虫 蟯虫 鞭虫 鉤虫 東洋毛様線虫 糞線虫 等
(吸虫類)
(条虫類)小形条虫

中間宿主を1つ必要とするもの

(線虫類)バンクロフト糸状虫 マレ-糸状虫
      【広東住血吸虫】【アニサキス】【テラノ-バ】
(吸虫類)日本住血吸虫 マンソン住血吸虫 ビルハルツ住血吸虫
(条虫類)無鉤条虫 有鉤条虫 小形条虫等、但し小形条虫は必ずしも中間宿主を必要としない。

中間宿主を2つ必要とするもの

(線虫類)【有棘顎口虫】 【剛棘顎口虫】
(吸虫類)肝吸虫 横川吸虫 有害異形吸虫 肥大吸虫 高橋吸虫 肺吸虫等
(条虫類)広節裂頭条虫 大複殖門条虫。

※【    】囲みは幼虫が人体に寄生する寄生虫
※小形条虫は必ずしも中間宿主を必要とせず虫卵の経口摂取で感染が成立する。
  自家感染をする寄生虫には糞線虫、小形条虫、有鉤条虫があるが最も危険で重要なものは人体有鉤嚢虫症
    である。

寄生虫卵の鑑別基準

 寄生虫卵の鑑別基準は(1)大きさ(2)色調(3)卵内容(4)卵殻 (5)卵蓋の顕微鏡観察で行う。
(1)大きさ
   蛔虫受精卵の大きさを基準として5群に大別すると便利である。
   (しかし蛔虫卵検出未経験の検査担当者は検出経験のある虫卵を基準にしてもよい) 
     1)蛔虫卵より著しく大きい群
    2)蛔虫卵よりやや大きい群
    3)蛔虫卵とほぼ同じ大きさ群
    4)蛔虫卵よりやや小さい群
    5)蛔虫卵より著しく小さい群 
(2)色調
   虫卵の色調は必ずしも一定ではないが、大別すると無色のものと有色(淡黄色~黄褐色が多い)のものとに
  分ける事ができる。 
     1)無色の虫卵:(鉤虫卵、蟯虫卵、東洋毛様線虫卵、小形条虫卵、蛋白膜のとれた蛔虫卵) 
    2)有色の虫卵:(上記以外は概ね有色である)特に肺吸虫卵の色調は淡黄褐色を呈し黄金色と表現する。 
 
(3)卵内容
   卵内容は1)幼虫のもの、2)卵細胞のもの等に分けることが出来る。
         

1)幼虫のもの

 a ミラシジウム肝吸虫卵、横川吸虫卵、日本住血吸虫卵等
 b 六鉤幼虫円葉類の条虫卵(無鉤条虫卵、有鉤条虫卵、小形条虫卵、縮小条虫卵)
 c 仔虫蟯虫卵

2)卵細胞のもの

 a 単 細 胞蛔虫卵、鞭虫卵
 b 分割卵細胞(鉤虫卵、東洋毛様線虫卵)
 c 1個の卵細胞と多くの卵黄細胞肺吸虫卵、広節裂頭条虫、大複殖門条虫卵

(4)卵  殻
   1)虫卵は卵殻を必ず持つ、卵殻を持たないもの、また卵殻様のものは持っているが途中でとぎれるものは
      卵殻ではなく虫卵ではないと考えてよい。卵殻は厚いもの、薄いもの様々であるが、その厚さは、ほぼ一
             定である。(肺吸虫卵を除く、特に3倍体の肺吸虫卵は卵殻の後端部が著明に厚い) 
   2)卵蓋は裂頭条虫卵、吸虫卵はすべて蓋を有する。但し吸虫卵の中で住血吸虫卵(日本住血吸虫卵、マン
             ソン住血吸虫卵、ビルハルツ住血吸虫卵)は蓋を有せず例外である。
             ※鞭虫卵の前端部、後端部に有する蓋様のものは栓と表現し蓋とは表現しない。 
   
各種寄生虫卵鑑別のポイント

小型卵大きさ
長径(μm)
色調 卵殻【幼虫被殻】内   容
異形吸虫卵28~32黄褐色楕円形小蓋ありミラシジウム
肝吸虫卵28~32黄褐色なすび形小蓋あり(突出)ミラシジウム
無鉤条虫卵
(脱殻卵)
30~40灰褐色短楕円形【放線状紋理】六鉤幼虫
有鉤条虫卵
(脱殻卵)
30~40灰褐色短楕円形【放線状紋理】六鉤幼虫
中型卵大きさ
長径(μm)
色調卵殻内容
蟯虫卵45~50無 色柿の種様やや厚い幼虫
鉤虫卵50~60無 色楕円形薄 い4~8 個の細胞
鞭虫卵50~60褐 色グラタン皿様レモン形両端に栓あり楕円形の単細胞
蛔虫卵
(受精卵)
60~70黄褐色楕円形 非常に厚い 円形の単細胞
(両端に間僚あり)
蛔虫卵
(不受精卵)
80~95黄褐色長楕円形受精卵に比し薄い大小の顆粒が詰まる
(両端に隙間なし)
東洋毛様線虫卵90~95無 色砲弾形やや薄い 10~25 個の細胞
(前端に間僚あり)
日本住血吸虫卵70~100淡褐色楕円形小蓋なし、小棘ありミラシジウム 
肺吸虫卵
(3倍体) 
80~90黄金色鶏卵形小蓋あり、後端部が特に厚い1個の卵細胞と多数の
卵黄細胞(複合卵)
小形条虫卵45~55無 色楕円球形薄 い 幼虫被殻の両端より
数本の糸状体あり
縮小条虫卵60~80灰褐色球形厚く内側にギザギザあり幼虫被殻の中に
六鉤幼虫
広節裂頭条虫卵65~75灰褐色楕円形やや厚く、小蓋あり1個の卵細胞と多数の
卵黄細胞(複合卵)
大型卵大きさ
長径(μm)
色調卵殻内容
肝蛭卵130~150黄褐色 楕円形小蓋あり 1個の卵細胞と多数の
卵黄細胞(複合卵)

     

類似虫卵鑑別のポイント

(1)三種の住血吸虫(卵)の相違点等

日本住血吸虫(卵)

ビルハルツ住血吸虫(卵)

マンソン住血吸虫(卵) 

中間宿主

宮入貝

Bulinus 属の貝

Biomphalaria属の貝 

感染形式

経皮感染

経 皮 感 染

経 皮 感 染

終宿主

ヒト、イヌ等

ヒトまれにサル

ヒトまれにサル 

寄生部位

門脈系の諸静脈内 

膀胱壁に分布する静脈内

門脈系の諸静脈内

診断

便中から虫卵検出

尿中から虫卵検出

便中から虫卵検出

虫卵の形態

大きさ

70~100ミクロン

110~170ミクロン

110~170ミクロン

卵殻の側方に小棘がある
(卵殻の周りに顆粒に富む粘層あり)

卵殻後端に1本の長い棘がある

卵殻の側方に1本の長い棘がある


(2)肝吸虫卵と他の小型の吸虫卵の相違点
肝吸虫卵横川吸虫卵有害異形吸虫卵槍形吸虫卵
大きさ25~30ミクロン肝吸虫卵とほぼ同じ肝吸虫卵とほぼ同じ38~48ミクロン
色調淡黄褐色淡黄褐色淡黄褐色(黄)褐色
卵形徳利型、なすび形楕円形楕円形楕円形
小蓋接合部 卵殻との接合部が外に突出
(陣笠状)
卵殻との接合部が外に
突出せずスムース
横川吸虫卵と同じ横川吸虫卵と同じ
卵殻亀甲模様の紋理あり亀甲模様なし亀甲模様なし亀甲模様なし
第2中間宿主鯉科魚類(コイ等)淡水魚(アユ等)ボラ等アリ(蟻)
寄生部位肝臓の胆管内小腸腔内小腸腔内肝臓の胆管内
※肝吸虫卵は小蓋接合部の形態で鑑別可能であるが、正確を期すため卵殻の亀甲模様の紋理を確認し決定することが望ましい。
 肝吸虫卵の亀甲模様は顕微鏡倍率 1,000 倍で観察可能(こまめに微動操作をすること)
※横川吸虫卵と他の小型吸虫卵の鑑別は困難なことが多く、駆虫により成虫の顕微鏡観察で種名の決定をすることが望ましい。
 なお検査材料、食歴の調査も参考になる。
※小型の吸虫卵 (35ミクロン 以下 ) には肝吸虫卵、横川吸虫卵、有害異形吸虫卵、槍形吸虫卵等があるが、最も重要なことは
 肝吸虫卵と他の吸虫卵を区別することである。
      
(3)小形条虫卵と縮小条虫卵の相違点
小形条虫縮小条虫
大きさ45~55ミクロン60~80ミクロン
色調無色灰褐色
卵形短楕円形球形
卵内容六鈎幼虫
※幼虫被殻の両端より数本糸状体あり
六鈎幼虫
※糸状体は無い
※幼虫被殻の両端に糸状体が有るか否かで鑑別可能。多くの場合小形条虫の糸状体の確認は容易で鑑別は容易なことが多い。
    
(4)鉤虫卵と東洋毛様線虫卵の相違点

鉤虫卵

東洋毛様線虫卵

大きさ55~60ミクロン90~95ミクロン
色調無色無色
卵形態楕円形砲弾形(湾曲が非対象)
※先端が尖っている
卵殻薄 い薄 い
卵内容

分割卵細胞
4~8個の細胞(4個位が多い)

分割卵細胞
10~25個の細胞(16個位が多い)

※東洋毛様線虫卵は大きさ、卵形態、卵内容、特に分割卵細胞の数、虫卵の先端が尖っているため先端部の隙間が大きく、卵形が 
 非対象形であること等の特徴から鑑別可能。