vol.7 1999年11月発行
特集1 21世紀の農業・農村の時代に向けて
県政フラッシュ
地域からのメッセージ

21世紀の農業・農村の時代に向けて
農業は食料の安定供給はもとより、地域社会の活力維持、県土・自然環境の保全など多くの役割を果たしている。
国においては高齢化や担い手不足が進むなか、世界貿易機関の次期農業交渉を控え、「食料・農業・農村基本法」を制定するなど、21世紀へ向けて農政全般の改革を進めている。
本県においても中山間地を中心に、過疎化の進行や耕地利用率の低下がみられるものの、農業企業者の育成や生産性の高い地域農業の確立などの環境整備に国に先駆けて取り組み、急激な変化に対応する。

 本県では「新農業プラン21(平成8年度改訂)」に基づき、低コスト、高品質、消費者ニーズの先取りを基本に農業企業者の養成や地域農業の組織化、施設園芸と肉用牛を重点とする生産振興など各般の施策を展開してきた。
 21世紀初頭に向けては、新たな「県農業振興計画」を策定し、本県の農業・農村の進むべき振興方向と具体的な目標、手段を明確にする。

効率的な生産システムの再編

 個別経営規模の拡大を図るとともに、個別の生産形態から、地域を単位とした効率的な生産システムへの再編を進め、生産性の高い地域農業を確立する必要がある。

 水田の耕地利用率は、生産調整に加え、高齢化や担い手不足などにより、裏作の麦や転作作物である野菜の作付け面積の減少により、94%と低迷している。

 このため、麦、大豆などを加えた土地利用型作物の定着を目指し、集落営農体制づくりを進めるほか、今年度、新たに条件不利益地域の農作業受託や管理耕作を促進する。

地域一丸で耕地利用率アップ

 竹田市の九重野地区担い手推進協議会は、8月の農地高度利用推進コンクールで、最優秀賞に選ばれた。耕地の利用率は160%だ。構成員数は118戸。89.5haの水田に、水稲52.5ha、麦2.3ha、大豆16.1ha、野菜4.2ha、花き1.4ha、飼料作物8.5ha、菜の花やそばなど58.1haを作付けしている。また、農作業の受託を進め効率化を図る一方、女性グループ「若葉会」などによる加工・販売、地区の盆踊りの復活など、所得向上はもとより、集落の活性化に積極的に取り組んでいる。

 生産調整で生産量が減少する米だが、裏作に菜の花を植え、土を肥えさせ、減農薬・有機肥料米として付加価値を高めている。

 10月末には大分や福岡の人々を対象に自然観察会や収穫物を味わう交流会を開き、消費者ニーズの把握などにも力を入れる。

 「今年の耕地利用率は173.3%は確実。行政の補償制度がなくなってもやっていける農業の確立が目標。そのために、地区内にある7つの集落(谷)がそれぞれの特性にあった生産体制“谷ごと農業”を進めていきたい」と、熊谷会長と後藤事務局長は力強く語り、まとまりの良さと結束力の強さがうかがえる。この取り組みは近隣地区へも広がりをみせている。

最優秀賞の九重野地区担い手推進協議会の
メンバー(竹田市)
転作作物のそばの収穫
 

経営感覚に優れた農業企業者の育成

 これからの農業は多様な人材の育成が課題となる。農業情勢の変化に適格に対応できる経営感覚を備えた農業企業者の育成や農業経営の法人化の推進をはじめ、女性や高齢者が能力を発揮できる環境づくりに取り組む。

 特に、意欲ある農業者を認定農業者に指定し、本県農業の中核的担い手とするため、農地の利用集積、各種補助・融資事業など経営改善のための支援策を講じている。今年度、新たに若手農業研修の受け入れ農家や高齢者の生産活動、省力化施設の導入などを支援する。現在県の認定農業者は4,602人で、平成12年目標5,000人までもう一歩になっている。

将来を見据えた農業経営

 日出町南畑の増田徳義さん(42歳)は、養豚業を営む農業企業者だ。親の代から始めた養豚業を平成7年に法人化し、(有)日出ポークを設立。県が銘柄化を進める“おおいた豊の豚”を生産している。「養豚業のイメージを払拭し、安全でおいしい豚肉の生産者をめざす」と増田社長は意気盛んだ。

 年間約2700頭の豚を出荷し、9年度決算では売り上げ1億円を突破した。また、生産者名入りの生ハムやソーセージなどを市内のスーパーで販売しており、消費者との接点を求める。

 毎年計画的に1千万円以上の単位で設備投資をしており、省力化や自動化にも積極的だ。今年6月には従業員を一人雇用し、経営者と従業員という関係もでき、少しずつ会社の形になってきた。

 「法人化して、資金調達がスムーズになった。経営と家計の分離ができ、どんぶり勘定的な経営から脱皮できた」と法人化の利点を語る。家族あわせた年間給料は通常のサラリーマンをはるかに超える。農業は儲からないというイメージはない。

  「将来は、飼育頭数を増やし、さらに自動化を進め、定期的な休日を確保するなど、よりよい経営環境を整えていく」と経営者としての増田社長の挑戦は続く。
 
 

生産振興と食料自給率の向上

 日本の食料自給率(70品目のカロリーベース試算)は低下傾向にあり、9年度は41%(大分県は54%)。食料・農業・農村基本法では自給率の目標値を定めるよう義務づけており、国内供給体制の確立が課題となる。

 県は、米を基盤として、生産性の高い施設園芸と肉用牛を重点に振興を進めている。10年(県推計)では、園芸は対62年比で73%と飛躍的に伸び、粗生産額(1,705億円)の44.9%を占め、切り札として期待される。

園芸振興対策

 園芸1,000億円プロジェクト(野菜500億、果樹350億、花き150億)に沿い、地域特性や農業者の創意工夫を生かした生産拡大と品質向上を図ってきた。

 今年度から新たに、価格保証の基準価格の引き上げなどで価格の安定に取り組み、主要施設野菜(とまと、ピーマン、きゅうり、にら、こねぎ)を生産する認定農業者の経営強化・産地拡大を図る。安心感のもたれる農産物の生産のため、適正施肥や家畜ふん尿のリサイクル利用などにも新たに取り組み、環境にやさしい農業をめざす。

豊後牛県内一貫生産の確立

 肉用牛10万頭プロジェクトに沿って、助成措置や肥育技術の確立など諸施策を講じてきた。今後は肥育農家と繁殖農家の経営安定、豊後牛の銘柄確立が課題。

 今年度新たに、県内産の黒毛和種を導入する肥育農家に対して低利の貸付資金を創設し、繁殖から肥育までの県内一貫生産をめざす。
 

雇用対策で25億円の補正予算

 9月定例県議会で、県の一般会計補正予算25億1千万円が承認された。
 内訳は緊急雇用対策24億6千万円と少子化対策5千万円だ。今回の主なものは、国の緊急地域雇用特別交付金の受け入れに伴うもので、景気対策によって雇用情勢が好転するまでのつなぎ策として、新たな雇用を創出する事業を2001年までの3年間実施する。今年度は人材確保相談員の設置やホームヘルパー資質向上対策、中学校の英語科非常勤講師の配置などを実施する。3年間で1600人の雇用創出を見込んでいる。
 10月4日には、県経営者協会内に「人材確保相談室」が設置され、相談員5名が助成金制度や求人手続きなどの相談業務を始めた。

(TEL/5097−532−6453)

ダイハツ中津工場造成工事起工式

 10月1日、ダイハツ工業中津工場の造成工事の起工式が行われた。2004年度の操業開始を目指し、乗用車や関連部品を製造する。
 7月に国の重要港湾指定を受けた中津港ではすでに機能拡充の工事が進行中で、生息する生物など環境に配慮しながら、しゅんせつ工事は進んでいる。
 民間企業の大型投資による景気浮揚と完成後の地元の雇用創出、県北地域のさらなる活性化に大きな期待がかかる。

ワールドカップまで1000日

 2002年ワールドカップサッカー大会まで残り約1000日。9月5日、大分市で記念イベント「2002年へのキックオフ」が開催された。会場では平松知事が「J2で活躍中の地元大分トリニータとともに、ワールドカップを盛り上げていきたい」と呼びかけた。その後、サッカー少年団ら約1500人が商店街などをパレードし、市民に大会の成功をアピールした。この日、行われた大宮アルディージャ戦では5対0とトリニータが快勝し、イベントを盛り上げた。

県民芸術文化祭 華やかに開幕

 10月2日、第1回県民芸術文化祭が大分市のオアシスひろば21グランシアタのオープニング行事で開幕した。
 11月30日まで、各地で音楽や書道、芸能など幅広い行事が開催される。11月7日にエイトピア大野で開催される県民オペラ「滝廉太郎」や28日に蒲江町で開催される「神楽フェスティバル」など大分ならではのイベントがもりだくさん。27日には県立芸術会館で九重町民によるミュージカル「朝日長者物語」がフィナーレを飾る。21世紀に向け、大分の文化が今花を開こうとしている。

217人が100歳以上

 9月14日、敬老の日を前に、平松知事は県内最高齢の別府市の佐藤ムツエさん(108歳)を訪問。知事は「おめでとうございます。ますます元気で、長生きしてください」と長寿を祝った。  県内の100歳以上(平成11年度中に到達者含む)の長寿者は男性45人、女性172人の計217人となった。
 県の高齢化率(県人口に占める65歳以上の割合)は20.7%で、全国平均16.2%を上回り、高齢期を豊かに送れる地域社会づくりが最優先の課題だ。


新『一村一品』誕生 缶入り飲料「九重高原茶」 (九重町)

 九重町内の農協、商工会などでつくる「九重町資源活用新製品開発協議会」は、地元の無農薬・有機栽培茶を使用した“九重高原茶”を開発した。すっきりした味が特徴。190g入り110円と340g入り120円の2種類。「消費者のニーズをつかみ改良を加えたい。町の交流人口550万人の1割、年間50万缶販売が目標」と甲斐事務局長。

(TEL/09737−6−2424)



麦焼酎「むぎゅ」 (直川村)

 直川村では地元産の大麦のみによる焼酎“むぎゅ”の発売を始めた。国産のみは全国でも珍しく、農地の利用率アップにもなると期待がかかる。アルコール20%、720ml入りで733円。「飲み安さと値段の手頃さで販売は好調なすべりだし。転作奨励により、さらに栽培量を大幅に増やし、全国展開をめざす」と村役場産業課の芦刈係長。

TEL/0972−58−2111)


地域づくりのNPO (中津市)

 中津市を拠点とする「豊前の国建設倶楽部」が、9月9日、特定非営利活動(NPO)法人の認証を受けた。県内2番目、地域づくり団体では初めて。同倶楽部は昭和61年に設立。長さ400mの大綱引きで、福岡、北海道、ロスアンゼルスなどとの交流をはじめ、「空き缶捨てない宣言」を通じた実践活動などを行ってきた。

  「認証を機に地域の力を再結集し、本当の意味での地域に役立つ活動を継続していきたい。まず、山国川の上流と下流、水を供給する側(源流域)と使用する側(北九州市などの都市域)の交流をやっていく」と代表の木ノ下勝矢さん。


甲冑づくりで地域おこし (竹田市)

 竹田市制施行45周年を迎え、岡城跡大手門の模擬復元など、11月23日まで記念行事を開催している。11月21日には子ども100人による武者行列がある。

 使用する甲冑は、甲冑づくり愛好家グループ「甲冑工房岡の里」のメンバー10人がボランティアで制作している。材料は紙を基本としており、全て手づくり。

 「作業は緻密で根気が必要。メンバーは完成した時の喜びを夢見て頑張っている。このイベントを機に、甲冑づくりの輪が広がってくれれば」と田崎信雄代表は意欲を燃やす。


11村が連携「ぶんご村」創設 (三光村)

 県内11村の村長や地域づくりリーダーによる第12回「豊の国村サミット」が三光村で開催された。昭和61年の第1回大会以来、交流と活性化を目的に毎年各村巡回で開き、今年で1巡した。前直川大会では具体的取り組みとして「豊の国村めぐりスタンプラリー」を決定し、12月末まで実施している。

 今大会では21世紀へ向け11村が連携するシンボルとして「ぶんご村」創設を決定し、ぶんご村イメージソング「星とともに」で心を一つに合わせた。共同で情報発信をし、交流人口を増やすなど新たな村づくりへの挑戦が始まったばかりだ。


よみがえったホタル・白山川を守る会 (三重町・清川村)

 昭和49年、絶滅状態であった源氏ホタルをよみがえらせるために発足した。有リン合成洗剤の使用禁止や農薬使用の軽減、清掃、水質調査などの活動を続けている。毎年6月の「ホタル祭り」、8月の「しぶきあげ大会」では町内外の人が交流する。昨年、熊本県から里帰り中に大会に参加した小学生の兄弟が「白山で過ごしたい」と、地元小学校に転校してきた。交流が定住につながった好例だ。

 「11月14日に「源流探訪会」(5町企画商工観光課0974−22−1001)を開催する。白山の自然を感じてほしい。これからは最小限の開発も行い、ベールに包まれた源流域を紹介していく」と上野卓男会長は愛する白山川に地域おこしの夢をかける。