vol.8 2000年1月発行
特集1 新しい千年紀(ミレニアム)を迎えて
県政フラッシュ
地域からのメッセージ

新しい千年紀を迎えて
今年の県政のキーワードは“緑”。
緑のようなさわやかな風通しの良い、環境に優しい行政をすすめながら、疾風のなかの剄草のごとく、不況や災害に強く、国際競争力のある農業、林業、水産業、不況を克服できる中小企業やベンチャー企業の育成をめざし基盤を整備する。また、安心して子どもを生み、育てられる環境づくりや高齢者福祉、介護保険などにも取り組み、生活者に優しい県をめざす。

キーワードは


「緑の文化づくり」

「美しい緑のあるまちづくり」

「自然に優しいまちづくり」

緑のようなはつらつとした若々しい人材を育て、

また、美しい緑あふれるまちに

精神的な安らぎを求めて人々が行き交う。

さらに、生活環境に優しく、

美しい自然や森林(緑)を大切にすることで、

安心できる大分県を創造する。

1月2日放送「ほっとはーとOITA」
新春知事対談の要旨

基盤整備、企業進出など地固め進む

三浦 新しい千年紀(ミレニアム)を迎えましたが、昨年の暮れには明るいニュースがありました。

平松 東九州自動車道の蒲江−北川間(26km)と、宇佐−椎田間(28km)が整備計画区間に格上げになり、福岡県境から宮崎県境までの全線で開通に向けてのめどがつきました。米良−宮河内間が昨年11月に開通し、大分−津久見間も2002年W杯までに開通します。高規格道路では、大分から竹田、熊本を結ぶ中九州横断道路の大野−竹田間(12km)と中津日田道路の中津市内部分(2km)が整備区間に格上げされました。大分自動車道も4車線化が進み、県内60分・圏域内30分構想が前進しました。

三浦 これまでのクロスハイウェイから、東九州自動車道で循環型ハイウェイの形成がスタートしますね。また、昨年は進出企業の操業も多かったですね。

平松 日田のサッポロビール新九州工場が、2月に初出荷。レストランもでき、観光施設として期待できます。杵築では、大分キヤノンマテリアルが操業を始め、最終的には1500人の工場になります。中津ではダイハツ工業が16年度の操業開始へ向け、造成工事に着手し、中津港の整備とあわせ、暗いニュースが多かったなかで、本県の民間設備投資は活発でした。

大分キャノンマテリアル(杵築市)
県内全線でめどがついた東九州自動車道
交流と定住の促進

三浦 昨年、一村一品運動は、20年を迎え、多くの産品やリーダーが地域に育ちました。9月には韓国のセマウル運動との交流が評価され、韓国大統領の表彰を受賞されましたが、韓国やアジア各国の地域との交流がますます盛んになりますね。

平松 韓国は観光を未来産業として力を入れています。本県も4月1日にはアジア太平洋大学が開学します。4年制で、1学年800人のうち、留学生が400人という新しい型の大学です。大分がアジアの人材養成の中心的な役割を担います。  2002年の日韓共催ワールドカップも交流拡大の最高の機会です。各国の関係者へクリスマスカードを送り、キャンプ地の誘致などのPRをしましたが、昨年の大分トリニータの最終戦の1万6000人の感動と共感を大切にしたいですね。

三浦 さて、今年は、4月の臼杵市での日蘭交流400周年記念行事をはじめ、交流事業も目白押しです。

平松 4月には全国植樹祭が県民の森で、5月には別府市と九重町で世界地熱会議が、秋には、アジア九州地域交流サミットが開催されます。交流の拡大によって、地域の活性化を図っていきます。
 
「おおいた新世紀創造計画」 新G・N・S型社会づくり

三浦 2010年を目標とした長期総合計画が出来ました。2010年に向けて、数値目標を設定していますね。

平松 県民皆さんの多くの声を聴いて策定した計画が、絵に描いた餅にならないよう、目標を立てて実行します。
  健全財政の枠を堅持しながら、一歩一歩、確実に実現し、生活者に優しい県(生活優県)を創造します。
  今年はスタートの年です。

rowth(人が育つ) 文化立県
平松 県民一人ひとりが成長していくということです。高齢者が生涯学習としていろいろ勉強する、子どもたちが地域の文化活動などを通して健全に育つ、そのような環境を整備します。

三浦 文化といえば、国民文化祭を契機に文化立県を宣言し、昨年は第1回県民芸術文化祭を開催しました。

平松 各地域で様々な文化行事があり、30万人以上の県民が参加しました。特に、創作ミュージカル「朝日長者物語」は九重町民の手づくりで、大変素晴らしく、文化祭大賞の栄冠に輝きました。12月には「地域文化道場」を開講し、地域文化の担い手を育成します。
 一方、「国際交流カレッジ」や「商い未来塾」、「観光カレッジ」、「福祉ボランティア大学校」の開設など、商工業や観光をはじめ、福祉、農業・林業・水産業の人づくりにも力を入れています。
 また、少子化をはじめとして、子どもを取り巻く環境が大きく変化するなか、この2月から乳幼児医療費の現物給付制度導入など、安心して子どもを生み、育てられる環境づくりや青少年の健全育成、教育にも取り組みます。
文化祭大賞のミュージカル「朝日長者物語」
N
etwork(人が行き交う) 観交立県
平松 交通体系がよくなると、単なる観光でなく、例えば一村一品運動や立命館アジア太平洋大学、文化・スポーツなどを通した交流が活発化しますので、交流基盤を強化する必要があります。

三浦 平成13年に山香町と安心院町に開園する大分農業文化公園も農業をテーマに、都市と農村が交流する場ですね。

平松 農業や林業・水産業も新しい文化や交流を生み出す産業としての認識が必要です。新しい「食料・農業・農村基本法」では、中山間地域の棚田が自然環境を保全するために大切なものと見直され、直接支払制度を実施することになりました。また、森林も温暖化ガスを吸収する機能があります。これからの農林水産業は環境保全をする産業としても重要なものです。
 一方、商店街のにぎわい交流を取り戻すための対策にも力を入れます。12年度は日田、竹田、安岐の商店街でチャレンジショップなどに取り組むほか、大分、中津、佐伯などに中小企業支援センターを設置します。
文化交流の源・農林水産業
交流・にぎわいを取り戻すチャレンジショップ
S
ecurity(人が安心できる) 環境立県
三浦 環境面では環境マネジメント国際規格ISO14001を全国の都道府県で初めて取得しましたが、その広がりはいかがですか。

平松 市町村にも広がり、例えば大分郡が郡単位で近く取得します。また、県内企業も支援し、認証取得が広がっています。

三浦 県内のみならず、アジア全体の環境まで視野に入れ、緑(植林)の輪を広げる取り組みがあるようですが。

平松 アジアの森林は減少しており、中国の大洪水など大きな災害の原因となっています。全国植樹祭を契機に「グリーンネットワーク宣言」を行い、アジア各国へ緑化運動の輪を広げます。
 また、4月から、介護保険が始まります。老人福祉施設の整備やホームヘルパーを増やすなど、高齢者が地域で安心して暮らせる社会をめざすとともに、全県民が安全で安心して暮らせる環境を整備します。
介護実践で安心社会の実現

「ふるさと祭り」で24団体表彰

 11月14日、「県民の日・豊の国ふるさと祭り」が真玉町で町産業文化祭と共催で開催された。
 式典では、特産品開発などを通じ地域振興に貢献した 「大分県一村一品21推進顕彰」(8団体)と、物も豊か心も豊かな豊の国づくりをめざし、地域づくり運動を実践する「豊の国づくり活動選奨」(16団体)の表彰が行われた。

【被表彰者】
大分県一村一品21推進顕彰/朝地町椎茸振興会、真玉歌舞伎保存会、仏の里くにさき・とみくじマラソン実行委員会(国東町)、臼杵料飲組合ふぐ部会、弥生町商工会青年部、稲葉牧野組合(久住町)、椿ケ鼻ハイランドパーク(前津江村)、大分宇佐農業協同組合小ねぎ部会

豊の国づくり活動選奨/櫛海なっとかすっ会(国見町)、(社)杵築青年会議所、口の原ふれあい友の会(庄内町)、どげえかせん会(蒲江町)、大分玖珠町農業協同組合女性部良心市組合、豆田地域「夢」づくり委員会(日田市)、国東アカデミアの会、吉野とりめし保存会(大分市)、ビーチクリーンアップ作戦実行委員会(佐賀関町)、徳田白楊を顕彰する会「白楊会」(緒方町)、南河内自治会(荻町)、万葉の香りのする里づくり推進協議会(山国町)、龍神太鼓保存会(院内町)、ふれあいコンサートinたかだ実行委員会、日出町豊の船の会、鶴崎歩こう会(大分市)
“観交”の時代を担う“豊の国観光カレッジ”

 10月27日、入塾式が行われ、名誉塾長の平松知事が塾生31人に入塾許可証を手渡した。
 知事は「文化やスポーツ、国際交流など地域間の交流をめざす“観交”で活力をもたらしてほしい」と要望した。
 塾生を代表して別府市の野上泰生さんが「地域文化を見直し、21世紀の県観光の一翼を担うよう努力する」と宣誓した。
 塾長に東大工学部の西村幸夫教授を迎え、来年8月まで、講演やテーマ研究などにより、新たな観交づくりをめざす。

福祉の基盤を支える“福祉ボランティア大学校”

 10月29日、福祉ボランティア大学校高齢者福祉コースが開校し、6ブロックで、16歳から78歳までの184名が入学した。
 校是は“継続・連帯・実践”。「お互いが連携し、学んだことを地域で、リーダーとなって実践してほしい」と平松知事が激励した。入学生を代表して別府市の加納映子さんが「校是を心にとどめ、自己研鑽に努める」と宣誓した。今後、1年間で介護保険制度や介護実習、ボランティアの組織づくりなどについて学ぶ。

地域商業を担う“豊の国商い未来塾”

 10月19日に開設され、地域商業の活性化と後継者の育成をめざす。
 塾生は、西高、大野、玖珠九重、宇佐両院の4振興局からなる68人の若手後継者。代表して香々地町の渕秀幸さんが「高い志とチャレンジ精神を持ち、時代に対応した視野や感性を磨きます」と宣誓した。塾頭には県出身ジャーナリスト緒方知行氏が就任し、「マーケットや顧客を発掘し、地域商業を世界に広げる意気込みが必要」と訴えた。
 これから2年間、地域ごとのテーマに取り組む。来年度以降も、各振興局で逐次開校する。
文化立県の出発“地域文化道場”

 12月11日、文化を核とした地域づくりの担い手を育成する道場が開講した。山田朝夫・久住町理事の講演のほか体験文化イベントとして「久住のまつりINグランシアタ」などがあった。受講生は演劇や舞踊など各地で文化活動に携わる28人。
 今年度は「演じる」をテーマに、地域にある素材の「表現」に着目し、グループワークにより、企画・発想・立案やプレゼンテーションの方法などを学ぶ。1月には演出家の如月小春氏から「演劇、語り、文学」をテーマに、それぞれの町の活動や素材の生かし方を学んだ。第3回目は「文化の場づくり」。

農産物直売所ブームを先導 (臼杵市)

 臼杵市江無田の農産物ふれあいガーデン「四季菜彩」が大人気だ。オープンしたのは9年1月で、市内では初めての直売所。その後、これを契機に農村女性による直売所が市内の2か所に開設された。  「四季菜彩」では、組合員(63人)がつくる新鮮な朝採り野菜が午前中に売り切れる。漬け物、まんじゅう、ふきの佃煮、たけのこの水煮も売れ筋。月一回のミーティングでは販売戦略などを話し合い、結束を高めている。「自分名義の通帳を持つことなどにより農村女性としての生きがいにつながった。今後は花の生産者を増やし、花が一年中あふれる販売所にしたい」と五嶋昭子代表ら運営委員の意気は上がる。
(TEL/0972−63−1048)


共に生きる作業所をめざして(久住町)

  久住町有氏のカントリーワーク「ぱんぷきん」はハンディキャップを抱えた人たちが地域で自立することを目的に活動している。今年4月の作業所(兼販売所)の開設に向け、12年前に県外から移住してきた茅野明さんと奈緒子さん夫婦は準備に奔走している。既に昨年6月から牛舎を改造した作業所で、数人の仲間が集まり、手芸や木工、牛乳パックを使った絵はがきなどの製作、農作業に取り組んでいる。
 「様々な障害を持つ人たちが共に歩む場所が必要。将来は重度障害者や都会の子どもたちが気軽に泊まり、ふれあい、リフレッシュする施設を開設したい。10年計画で募金も始めた」と茅野さんの夢はふくらむ。


素人芝居で地域おこし(天瀬町)

 天瀬町商工会青年部(25人)は11年11月、九州地区商工会青年部連絡協議会顕彰の地域づくり部門において表彰を受けた。
 4月の素人芝居に始まり、8月の天瀬温泉夏祭り、12月には老人ホームでの餅つき大会や駅前の門松づくり、温泉街を流れる玖珠川にクリスマスツリーをたて、イルミネーションで飾るなど、地域に密着した活動に取り組んできた。34回目を迎える素人芝居は二ヶ月近く練習を続け、今では、800人を超える町民や観光客が詰めかける。
  「我々の活動で、地域が活気にあふれる。そう信じてやっている」と田代信二部長は胸を張る。


生涯学習は史跡探訪から(国東町)

11年度豊の国づくり活動選奨受賞

  国東アカデミアの会(146人)は、町内の史跡探訪を中心に、観光案内や空き缶拾い、草刈り、清掃などのボランティア活動を行ってきた。15年に及ぶ活動は地域の活性化の一翼を担っている。史跡探訪では8地区の会員がそれぞれ調査・研究し、説明を行う。すでに全地区で探訪を終え、作成した手づくりのしおりは貴重な資料となった。又、会員は町内の文化財愛護少年団への説明役もこなし、子どもたちに文化財や郷土を愛する心を育んできた。
 「探訪は会員の生涯学習。今後は他町村の史跡探訪や後継者づくりに取り組む」と今年80歳になる小深田謙四郎会長も元気だ。


“舞台は田舎”の交流活動(庄内町)

11年度豊の国づくり活動選奨受賞


 庄内町の「口の原ふれあい友の会」は自然や地域の生活とのふれあいを通じて、町内外に交流の輪を広げている。
 9年に整備された口ノ原ふれあい広場を拠点に、毎月1回の交流会を開く。春は里山で草花観察や山菜探し。夏はホタル観察のほか、川や渓谷で生き物観察や魚捕り。秋はキノコ捕りやネイチャーゲーム。冬は竹を組んでの住み家づくりや焼き芋など、各季節の特徴を生かした自然とのふれあいを大切にしている。「参加者は自然観察や川遊び、田舎料理など各々の得意分野で力を発揮する。これが自信になり、地域を愛する心が芽生える。舞台は田舎です」と世話役の生野喜和人さんは会の意義を語る。