合併影響調査報告書 市町村合併に伴う旧町村部の 課題について 平成17年12月5日 大分県市町村合併支援本部 目次 1はじめに …1 2合併の影響と課題 …2 (1)主な影響と課題 (2)調査項目別の影響と課題 3新市に期待する今後の対応 …13 (1)旧町村部住民の不安や懸念の早期解消 (2)旧町村部の課題解決に向けた支所機能の整備 (3)新市職員の一体感の早期醸成 4県の今後の対応 …15 (1)市町村合併支援プランの旧町村部対策の充実 (2)旧町村部対策に関する情報交換や住民への情報提供等の強化 5おわりに …16 <参考>課題把握の方法 …17 「市町村合併に伴う旧町村部の課題について」 1はじめに 本県では、市町村合併が進み、本年度末で、従来の58市町村が18市町村 に再編されることとなる。 市町村合併は、それ自体が目的ではなく、合併を通じ自治体の行財政基盤を 強固なものとし、少子高齢化が進む中で、地方分権の担い手として、将来にわ たり住民の多様なニーズに応え、住民福祉の向上を図り、住民が合併して良か ったと思える地域づくりこそが目的でなければならない。 このため、新市においては、行財政改革の推進とともに、周辺部となる旧町 村部の住民の不安等の解消に取り組み、中心部、周辺部が一体となって振興発 展していくことが大きな課題である。 県としては、合併を支援してきた立場から、合併後の新市の建設を支援すべ く様々な施策を展開しているが、その中で、過渡的施策として、特に周辺部と なる旧町村部の振興対策に取り組んでいる。 しかし、旧町村部の住民からは、合併後の行政の地域への関わりの変化に戸 惑いや不安の声が多く聞かれることから、住民の視点に立ち、合併の様々な影 響について調査を行った。 この調査結果を公表することで、県、新市それぞれが、旧町村部の住民の不 安等の払拭に更に取り組む契機とし、新市の円滑な建設、運営が図られること を期待するものである。 2合併の影響と課題 今回の調査で、旧町村部の住民には、合併直後という状況の中で、従来から の変化への戸惑い、過疎化・高齢化が進む現実、新市への期待など様々な思い から、不安や懸念が多くあることが把握できた。 住民の不安や懸念の対象となっている合併後の新市における様々な制度や事 業の調整については、合併協議会での協議を踏まえ、新市の財政状況等も勘案 され決定されたものであり、県としては、その判断を尊重すべきものと考える が、円滑な新市の立ち上げや新しい地域づくりに向け、解決を求められる課題 が多くあると思慮される。 -1 (1)主な影響と課題 @支所等(旧町村役場)の権限と予算 今回の調査で旧町村部に共通し、最も多くの声があったのは、住民の立場 から見て、役場が支所等になった現実、つまり支所等の裁量で、地域のニー ズに対応できる仕組みが十分でなく、また、予算も少ないことから支所等に おけるワンストップ対応が困難となったということである。 住民自治の充実を図る観点から地方自治法が改正され、地域自治区制度が 創設されたこと、また、行政と住民との協働が言われる中で、旧町村部でこ れまで培われた地域の力、コミュニティを活かすことに視点を置くことも重 要であり、加えて、広域となった市政運営を考えるうえで、支所等の扱いが 今後の課題と考えられる。 Aイベント等の見直し 従来のイベントのあり方を見直し、主催者を行政主導から地域主導へ移行 させる動きや、補助金の見直しの動き等もあり、旧町村部にこれまで根付い た様々なイベントが維持できるかという不安の声も大きいことから、地域と の十分な対話をはじめとした不安解消の取組が望まれる。 B災害等への対応 住民の安全を守る防災面について、災害時の新市内部の連絡体制、地域住 民への連絡手法、避難勧告・指示等のあり方等を懸念する声がある。また、 役場職員が果たしていた昼間の消防団の役割が支所等となり職員が減少し縮 小したことなどから、その体制を危惧する声もあり、今一度再点検する必要 がある。 C個人への給付や団体の運営費補助の見直し 旧町村部の傾向として手厚い取扱いとなっていた敬老祝い金等の個人給付 や、各種団体の運営費への財政支援、各種事業の受益者負担への補助金等が 縮小傾向にある。これは合併する、しないに関わらず行財政改革の一環で取 り組んでいる自治体が多く、直接的な合併の影響と言えない面もあるが、合 併を機に行われたと受け止める住民は多く、住民への十分な説明が必要と考 える。 なお、団体への支援については、経常的な運営費補助に代えて、本来的に 必要な事業に限って支援すること等が検討可能と思われる。 -2 D各種単独補助事業の廃止・縮小 地域の様々なニーズに対応するため、旧町村で予算化されていた小規模な 単独事業が廃止・削減される傾向にあり、地域特性等に応じてこれまできめ 細かに措置されていた部分が縮小しており、今後、新市の一体性の確立と合 わせ、地域の特性を踏まえた事業の構築・実施が期待される。 E自治体所有のバスの利用制限 合併に伴い旧町村所有のバスが利用しにくくなったとの声がある。バス利 用には道路運送法上の制約が様々にあるが、一方で、地域の高齢者、子ども 達の活動を支えてきたことも事実であり、新市所有のバスを移動手段を持た ない地域住民のために活用する知恵を出すことが求められる。 F住民への説明 合併に伴う不安解消等のため、旧町村部をはじめとした地域住民との市長、 部局長等との座談会等を開催している新市が多く、合併後の一体感の醸成等 に向けた取組が行われている。 しかし、未だに不安や不満の声があるという現実も一方であることから、 合併特例法に基づく地域審議会の開催をはじめ、様々な機会を捉え、新市の 情報提供や地域住民との対話等に一層努める必要がある。 (2)調査項目別の影響と課題 今回、@福祉・保健・衛生、A農林水産業、B商工業・観光、C地域活動 ・文化、D教育、E社会基盤、F防災体制、G行財政体制の8つの項目別に 調査を実施した。調査項目別の詳細は次のとおりである -3 @福祉・保健・衛生 福祉分野では、新市において敬老祝い金等の個人給付が統一された結果、給 付額が減少したり、高齢者への配食サービスの水準が統一されことにより住民 負担額が増加しているケースも見受けられる。一方、新たに配食サービスが提 供されるようになった旧町村部もある。 保健分野では、特筆すべき影響は見られないが、住民検診について見ると、 検診項目は充実した旧町村部が多い一方で、一部の旧町村部で検診の個人負担 金が増加したケースや、乳幼児検診等の一部の検診が居住旧町村内で受診がで きなくなったケースも見受けられる。 衛生分野では、ゴミの分別収集について、有料ゴミ袋の単価が上昇したり、 粗大ゴミの持ち込み料が徴収されることなどにより、住民負担が増大した旧町 村部がある一方で、コンポスト設置費の補助制度等の適用を新たに受けること となった旧町村部もある。 分野主な聞き取り内容 福祉○敬老祝い金等の個人給付が新市の基準で見直され、一部の 旧町村部で廃止・縮小されたものがある[例:敬老祝い。 金の廃止は5旧町村、縮小は18旧町村] ○高齢者への配食サービスの負担金が8旧町村部で増加し、 6旧町村部で減少した。また、新たに5旧町村部でサービ スが受けるようになった。なお、対象者が新市の基準で絞 り込まれた地域もある。 ○保育所の入所資格が厳格化され、従来入所できていた保育 所に入所できなくなった。 ○民生委員の配置基準が市と町村で相違があること等から、 旧町村部の民生委員が減るのではないか等の懸念がある。 保健○専門検診等の実施による検診項目の増加や専門医による指 導等が可能となるなど検診内容が充実した旧町村部が13 旧町村部あるが、一方で、個人負担が9旧町村部で増加し たり、一部の検診項目で、当該旧町村部内で受診できなく なったものもある。 衛生○指定ゴミ袋の価格が4旧町村部で値上げ、5旧町村部で値 下げされるとともに、粗大ゴミの持ち込み料の徴収などに より、住民負担が増大した旧町村部がある一方で、コンポ スト設置費の補助制度等の適用を新たに受けることとなっ た旧町村部もある。 -4 A農林水産業 旧町村が地域の特性や事情を踏まえて行っていた小規模な単独補助事業や、 農道整備等の受益者負担金を対象とした補助制度等が廃止されたため、それら の対象となっていた関係者には不満の声がある。 なお、農林水産業の振興に関しては、本年度については旧町村単位で積み上 げた予算を持ち寄って予算編成を行った新市がほとんどであるため、旧町村の 事業を継続して実施している新市が多く、現時点ではそれ以外の大きな影響は 見受けられないが、新市として本格的に編成を行う来年度予算において、どの ような施策が盛り込まれるかが注目される。 分野主な聞き取り内容 農林水産業○支所の権限が小さく、また担当職員も減少したことから、 農地災害対策等への迅速な対応が困難となっている。 ○合併新市の中の一部の旧町村だけで実施していた固有の単 独事業(農業団体運営費補助や活動費補助事業、畜産関係 補助事業等)が廃止された。 ○農道や林道整備事業の地元負担金に係る町村単独補助制度 が廃止され受益者負担が増大した。 ○合併前は免除されていた漁港使用料が徴収されるようにな った。 -5 B商工業・観光 旧町村役場の職員数の減少及び支所等の発注権限の縮小から、多くの旧町村 部の商店街等で売り上げが減少したとの声がある。加えて、一部の旧町村で実 施していた商店街での買い物券への単独補助制度が廃止されたり、イベントへ の支援が縮小するなどの影響もあり、過疎化が進む地域の経済活性化は、従来 から大きな課題であったが、合併を契機に地域の商工業が衰退することのない よう対応していくことが必要である。 なお、観光面については、新市が広域化し、豊かな自然環境や観光資源等も 豊富となったことや観光担当組織が充実したこと等から、広域的な取組が可能 となったと好感する声がある。 分野主な聞き取り内容 商工業○役場職員の減少等により地元商店街等の売り上げが減少し ている[旧町村部全体で職員は約850人の減少]。 ○商工会等への単独補助事業が減少(商工会発行の買い物券 への補助やイベント補助等)する一方、旧町村ではなかっ た融資制度や商店街振興事業等の適用を受けられるように なった。 ○地元への発注の減少や中心部の業者参入により公共事業の 受注機会が減少している。 ○支所となって、情報提供機能や相談機能が低下している。 観光○観光面ではこれまで現実問題として困難であった広域的な 取組が可能となった。 -6 C地域活動・文化 地域において様々な活動を行っている各種団体への運営費補助金や活動費助 成が一部減少することなどにより、それらの団体の活動に影響があるとともに、 各種イベントへの補助金の見直しや行政主催から地域主催へと実施主体を移行 させる動きもあり、その結果、関係団体や地域住民の負担が増大した、また、 地域住民間の交流の場が減少したといった声が聞かれる。 地域のイベント等は、地域の人々の心のつながり、誇りやアイデンティティ ーを形成する大きな要因となっており、地域の住民の声を良く聴き、地域の理 解を得ながら対応していく必要がある。 文化面については、一部の旧町村部で無形文化財の継承団体への単独補助の 削減等により、関係者の経費負担が増大したケースがある。 地域の誇る伝統的な文化活動が、合併したことにより衰退することは、憂慮 すべき事態であり、県としてできる限り支援していくこととしたい。 分野主な聞き取り内容 地域活動○各種団体の運営費補助やイベント実施時の補助が減少し、 団体の活動に影響がある[例:自治会活動費補助が11。 旧町村部で減少] ○5新市において、イベント等の主催を行政から地域主導へ と移行させる動きがあり地域の負担が増大している。 ○町民体育祭が9旧町村部で廃止・休止されるなど交流の場 が減少している。 ○イベント開催時の会場使用の便宜等が受けられなくなっ た。 文化○無形文化財への補助が削減され、関係者の負担が増大して いる。 ○旧町村では未指定であった文化財が新たに新市の指定を受 けた。 -7 D教育 社会教育面では、町村単独の各種団体への補助等が減少しており、従来実施 していた研修規模を縮小するなどその活動に影響が生じている。 学校教育面では、一部の旧町村部で単独の小学校交流研修事業や通学費補助 が見直された例があるが、逆に校区が弾力化され通学が容易になった、また、 放課後や週末学習教室が開催されるようになり充実したと評価する声もある。 公民館等の施設利用については、休日や夜間利用が可能となり、便利になっ たという旧町村部の声がある。一方、気軽に利用できた施設が、施設利用規程 を厳格に運用するため利用しづらくなったとする住民の声も多く、住民への情 報提供や説明を行い理解を得ることが必要と思われる。 分野主な聞き取り内容 教育 社会教育() ○町村単独の生涯学習のための団体補助等が7旧町村部で減 少し、研修活動をはじめとした当該団体の活動等に影響が ある。 学校教育()○町村単独の通学費助成制度や小学校交流研修事業が廃止さ れた。 ○校区の弾力化が行われ選択肢が増加した。 ○放課後や週末における子ども達の学習教室が新たに催され ることとなった。 施設利用()○公民館等の各種施設の夜間や休日の利用が可能となり利便 性が向上した。 ○公民館等の施設利用規程が厳格に運用され、利用しづらく なった。 -8 E社会基盤 道路や水路の維持補修について、支所等の権限が小さく予算も少ないため、 本庁との協議に時間を要し、迅速に対応できなくなったとする住民の声が極め て多い。 この点については、新市全体の維持補修予算が、合併前と比較し極端に減少 しているわけではないことから、支所等において維持補修の必要性を判断し、 迅速に対応ができる新市組織内での仕組み作りが課題であると思われる。 また、一部の旧町村部では地域住民が道路の補修や草刈り等を行う場合に、 経費の一部補助や原材料を提供する制度があったが、廃止された地域が多く、 住民主体の地域活動等に影響が生じている。 一部の旧町村部で行っていた林道事業や治山事業の受益者負担金を対象とし た補助制度が廃止されたため、その対象となっていた関係者には不満の声があ る。 一方で、CATVの旧町村部への拡大等を期待する声や、ワンコインバス等 の新たな制度の導入を好感する声もある。 なお、旧町村時代に着手したハード事業については、基本的に継続しており、 現時点では合併の影響は見受けられない。 分野主な聞き取り内容 社会基盤○道路や水路の維持補修さえ本庁との協議に時間を要し迅速 に対応してもらえない。 ○道路維持補修等の町村単独補助が10旧町村部で廃止・縮 小され、地域が主体的に行う草刈り等の維持補修の取組が 減少した。一方で、2旧町村部で制度が充実した。 ○治山事業、急傾斜地崩壊対策事業等の受益者負担への町村 単独補助が廃止された結果、受益者負担が増大した。 [例:県単治山事業の受益者負担金への補助制度がなくなり 6旧町村部で負担増] ○CATVの整備やワンコインバス制度の適用等による利便 の向上を評価する旧町村部もある。 -9 F防災体制 住民の安心・安全に直結する防災体制が、合併の影響で手薄になったり、住 民等への情報伝達に支障があってはならない。 一部の旧町村部で、合併により迅速な避難勧告等が実施できなくなるのでは と心配する声があることや、今後、支所等の職員を含め広域的な異動が進み、 地域の状況に精通した職員が減少することが懸念されていることから、特に高 齢化の進行等も念頭に、現場を預かる支所長等の災害時の権限を強化するなど、 住民の安心・安全を担保する現実的な対応策や仕組み作りが喫緊の課題となっ ている。 また、過疎化・高齢化に伴い消防団員の確保が難しくなる中で、これまで中 心的な役割を担ってきた旧町村役場職員が支所等となることで減少したことか ら、特に昼間の消防活動への影響を懸念する声があり、定年で退団した団員の 再登録を含め何らかの対応が必要と思われる。加えて、消防団予算や団員への 手当が減少している旧町村部も多く、団員の確保や士気の低下が懸念されるこ とから、このような面での対策も今後必要となるものと考える。 更に、防災パトロールについては、一部の旧町村部で実施されなかったこと を懸念する声があり、防災パトロールのあり方について、今一度点検が必要と 思われる。 現実には、先の災害を教訓に、現地に近い支所長等が危険を察知し、市長等 に避難勧告等の発令の指示を仰ぐ暇のない場合、市長が事後承認を行うなど工 夫をしている新市や、合併による広域化に伴う緊急連絡体制確保のため、携帯 電話による民間気象会社のメールシステム等を導入し、防災体制の早期確立に 取り組んでいる新市もある。 分野主な聞き取り内容 防災○4市の支所長等に、避難勧告発令等の事後承認等の仕組み がなく、本庁とのやりとりに時間を要すことなどから、住 民への迅速な避難勧告等に不安の声がある。 ○支所等の職員減少に伴い、地域に精通した職員が減少し、 災害時の対応が懸念される。 ○合併による広域化に伴い、防災の初動体制としての職員の 参集方法について工夫が必要である。 ○支所の職員減少に伴い昼間の消防団員が減少し、緊急時の 初動活動が懸念される。 ○消防団の訓練費等の予算や団員の手当が13旧町村部で減 少し、士気の低下が懸念される。 -10 G行財政体制 支所等に関しては、権限が小さく、また、支所長等の判断で執行できる予算 が少ないため、住民のニーズへの迅速な対応が困難となっているということが 旧町村部共通の大きな課題となっており、何らかの対応が必要となっている。 また、支所等では、国や県などの新規施策や事業等に関する情報を直接入手 する機会がなくなったという声や、予算や権限が縮小していることから職員の 意欲が減退しているという声も聞かれた。 自治会活動に関しては、自治会そのものへの補助金が減少する一方で、行政 補完の役割は増大するなど負担が増加したとする声も聞かれた。 分野主な聞き取り内容 行財政体制○支所に予算や権限がなく住民のニーズに迅速に対応するこ とが困難となっている。 ○国や県の制度に関する生の情報が不足している。 ○自治会への補助金が減少し、行政補完の役割は増大するな ど負担が増加している[例:自治会活動費補助が11旧。 町村部で減少] [参考:新市の支所等の体制] (1)支所等の位置付け 今回の調査対象の9市については「振興局」と呼称する場合もあるが、9市 、 全てで総合支所または支所として旧町村役場を位置付けている。 総合支所と支所の違いについては、総合支所が基本的に新市の事務の全般を 所管するのに対し、支所は窓口業務を中心に事務を行うという相違点がある。 また、臼杵市と豊後高田市については、総合支所方式に、新市の一定の部門 の組織と権限を旧町村役場におく分庁舎方式を併せて採用している。 (2)支所等の体制 合併に伴い旧町村役場から支所等に移行する中で、組織体制は簡素化され、 職員数は減少している。 具体的に職員数について見ると、合併後1年が経過していないことや退職者 数との兼ね合いもあるが、減少率が10%に満たない新市がある一方で、約 1/3へ減少している新市もあるなど、新市における支所等の体制は様々であ る。 -11 (3)支所長等の権限 総合支所や支所に配置されている支所長等については、6市で部長級の位置 付けを行っている。 支所長等の決裁権限は、例えば工事請負契約可能額を見ると下表のとおり権 限のないところから1,000万円を限度として任されているところまであり 大きな違いがある。 また、新市によっては、支所長等の権限の範囲内であっても、本庁への合議 が必要な新市も多く、この点も支所長等の権限が小さいとされる根拠となって いる。 市名大分市臼杵市中津市佐伯市日田市豊後高田市豊後大野市宇佐市竹田市 支所長等の位置付け課長級部長級部長級部長級課長級課長級部長級部長級部長級 支所長等の工事請負 契約可能額単位:万円()−1,000 300 500 100 300 300 1,000 1,000 注1:日田市は、事務決裁規程上、支所長等の権限はなく、担当課長の権限 2:豊後高田市は、新市として部長制をとっていない。 <その他> 1市の旧町村部を除いて、共通して、新市になって、従来可能であった老人 会の活動や小中学生のスポーツ活動等での町村所有のバスの利用が困難となっ たことの声が聞かれた。 この点については、無償であれば法律上の問題はなく、現実に、新市保有の バスに関する「バス使用規程(名称は任意」等を整備し、団体等の利用に供し ) ている自治体もあることから、新市の工夫が求められる。 なお、今後、行財政改革が進められる中で、新市のバスの保有台数の見直し が行われることが予想されることから、新市保有バスの有効利用と併せ、民間 の活用等その他の方策も検討する必要があるものと思われる。 また、合併すると当然のこととは思われるが、各種会議が中心部で開催され 不便になったという声が聞かれたが、多くの新市で会議の開催を工夫しており、 市議会の各種委員会を旧町村部で開催した新市もある。 -12 3新市に期待する今後の対応 (1)旧町村部住民の不安や懸念の早期解消 新市においては、合併を通じ行財政基盤の強化を図る一方で、旧町村部住民 の不安や懸念を解消し、新市としての一体性の確立、中心部、周辺部を合わせ た振興発展に取り組むことが大きな課題と考える。 旧町村部住民の不安や懸念の声に対しては、住民に理解を求めなければなら ないものもあるが、何らかの対応が必要なもの少なからずある。また、不安や 懸念が生じる背景には、過疎化、高齢化が進む旧町村部と中心部とでは行政と 住民の関わりが異なっていたことがあり、新市においては、行政と住民の新し い関係の構築に取り組む一方、過渡的な対応も含め、旧町村部住民の不安や懸 念の早期解消に努めることを期待したい。 (2)旧町村部の課題解決に向けた支所機能の整備 支所等のあり方については、今後の新市の運営に関わる大きな課題であるが、 旧町村部の課題に新市が応えていくためには、当面、支所等の権限、予算面で 住民のニーズに柔軟な対応ができるよう機能を整えることが期待される。 @災害時の迅速な対応 住民の避難勧告等が迅速に行えるよう、住民に身近な支所長等へ権限を 委任する。 現実に、県では、地すべり等防止法における知事の立ち退き指示権限を 土木事務所長に委任している。 A簡易な維持補修等の予算執行 住民に身近な道路や側溝等の緊急維持補修等が迅速に行えるよう、支所 長等へ権限を委任する。 B公民館等の利用許可 住民に身近な公民館等の施設等の許可権限については、支所長等へ権限 を委任する。 C地域住民の自主的活動への支援 地域の実情に応じ、行政と住民の協働という観点から、奨励すべき住民 の自主的・ボランティア的な活動を支援・連携できることとする。 D支所等における予算措置 支所等への権限の委任等に併せ、必要な予算の配当や令達措置を適切に 講じることが必要である。 -13 (3)新市職員の一体感の早期醸成 地域の様々な課題に対応するうえで、支所等をはじめとした新市職員の早期 の一体感の醸成が重要なことであり、人事異動や各種研修等を通じ、積極的に 取り組む必要がある。 また、一部の新市では導入済みである職員のモチベーション向上のための職 員提案制度の創設等も検討する必要があるものと思われる。 [参考:県の地方機関の権限等の取扱い] 名称工事請負契約具体的な権限 地方振興局長 土木事務所長 等共通 千万円未満8本庁からあらかじめ予算令達(8千万円以 上も基本的に同様)を行い、起工伺い、指 名、入札、契約、監督等の全ての事務が可 能 千万円以上億円8 5 未満 起工伺い(起案のみ、指名(原案作成の ) み)入札、契約、監督等の事務が可能 名称委託契約 地方振興局長 土木事務所長 工事関係千万円未2 満 本庁からあらかじめ予算令達を行うことで 交付決定等全ての事務が可能 土木事務所長草刈り等の維持補修 委託 本庁から年間所要額のほぼ全額を年度当初 に一括令達を行うことで全ての事務が可能 名称負担金補助金具体的な権限 地方振興局長 百万円未満3本庁からあらかじめ予算令達を行うことで 交付決定等の事務が可能 輝く地域創出事業本庁から年度当初各地方振興局へ 2千万円 の令達を行うことで、基本的にその範囲内 で交付決定等全ての事務が可能 -14 4県の今後の対応 (1)市町村合併支援プランの旧町村部対策事業の充実 県としては、旧町村部の不安や懸念の払拭に向け、大分県市町村合併支援プ ランの中に旧町村部対策事業を位置付け、本年度は道路整備や農林水産業の振 興等に関する46事業、総額360億円を予算化し、旧町村地域への優先採択 ・重点投資を進めているところであるが、旧町村部の様々な課題等に対応する ため、来年度予算においては次の方向で旧町村部対策の充実を図る。 @新市とも連携・役割分担を行いながら、旧町村部の不安等にきめ細かに対応 するため、過渡的に新たな支援措置を検討する。 A合併地域活力創造特別対策事業や輝く地域創出事業等の既存事業等を更に有 効に活用し、旧町村部の不安等の払拭を目指す。 B旧町村部の高齢者が安心して暮らせるよう高齢者福祉サービス支援事業等の 充実を検討する。 C商工会の活力向上による商店街振興や地域活性化支援事業等を検討する。 D旧町村部を対象とした一次産業振興事業等を検討する。 (2)旧町村部対策に関する情報交換や住民への情報提供等の強化 @旧町村部の不安等の払拭に向けて、合併新市に共通する課題等をテーマに意 見交換会等を開催し、より効果的な旧町村部への対応策等について、先進的 な取組を行っている新市からの情報提供や県としての助言等に努める。 [例]新市総務部長・総務課長会議 新市防災担当課長会議 A県としては、現場主義に徹する中で、地域住民の声を聴きながら施策を検討 し、その実施に努めているところであるが、市町村合併の進展も踏まえ、更 に地域住民への県の計画や事業実施等の説明やその声を踏まえた施策展開に 取り組むこととする。 -15 5おわりに 地域の合併協議において、昭和の大合併により合併した周辺部は衰退してき たという声があったが、今回の合併はその轍を踏むことがあってはならない。 今後とも、県は、新市全体に活力がみなぎり、一体的な振興発展が図られる よう、新市全体の支援とともに合併により周辺部となった旧町村部の振興発展 に努めていきたい。 また、国の地方制度調査会の報告でも、市町村合併等による基礎自治体とし ての市町村の規模・能力の充実強化と併せ、住民自治の充実が今後の方向性と して示され、地域における住民サービスを担うのは行政のみでなく、住民、自 治会、NPO等民間セクターとの協働が言われている。 合併後の新市においては、旧町村部で培われた住民の知恵や力を活用し、地 方分権時代にふさわしい新しい地域づくりに向け、より一層の取り組みが期待 されるところである。 -16 [参考] 課題把握の方法 県の地方振興局の職員が中心となって、下記のとおり、合併した9市の旧町 村部の自治会や老人会などの各種団体や支所等を訪問し、合併の影響による様 々な課題等を直接聞き取り調査を行ったものである。 このため、本報告書が合併の影響による全ての課題等を網羅したものではな い。 (1)調査対象地域 平成17年4月1日までに合併した9市[大分市、 臼杵市、中津市、佐伯市、日田市、豊後高田市、豊後大野市、宇佐市、 竹田市]の旧町村部[市役所の置かれた旧三重町を除く33旧町村] (2)調査対象団体自治会、老人会、商工会、農協、漁協、森林組合 社会福祉協議会、消防団、旧町村長、支所等等 (3)調査時期平成17年10月 (4)調査項目@福祉・保健・衛生A農林水産業B商工業・観光 C地域活動・文化D教育E社会基盤F防災体制G行財政体制 -17