県政だより 新時代おおいた VOL.36
県政だより 新時代おおいた vol.36 表紙写真
vol.36 2004年9月発行
特集1 魅力ある地域づくりが「人」を引き寄せる

特集2 県政出前講座

風紋 「オンリーワンのまちづくり」

県政トピックス

地産地消・とよの国の食彩

県民レポーターによる訪問記

子どものサインを見逃していませんか?

風の四季

地域の風だより

県内の各世帯に配布(奇数月に発行)しています。 ご意見・ご感想をお聞かせください。     メール a10400@pref.oita.lg.jp
【表紙の写真】 今は数少ない一本釣りの漁師として「英丸」に乗り込む蒲江町蒲江浦の清水大輔さん

 
 サラリーマンの家庭に生まれたものの、一本釣りをやっていた近所のおじいさんの影響で子どもの頃から漁業をやると決めていた清水さん。親のすすめでいったんは他県の大学に進学したものの、やはり漁業がいいと卒業後蒲江に戻ってきました。日の出前に船を出し帰りは夜の8時9時、夜釣りができる季節になると1〜2時間の仮眠を取るだけという生活を続けていますが、「今のままではやっていけなくなるのは目に見えている、今後はインターネットを利用した個人向けの通信販売なども考えたい」と語ります。
  清水さんを蒲江に呼び戻したのは近所のおじいさんです。これからもずっと漁業を続け、いつか子どもたちに「英丸の清水さんのようになりたい」と思わせる漁師になってほしいものです。


 
特集1 魅力ある地域づくりが
 豊かな自然と温泉、古い歴史や文化にさまざまなイベント、多様な地場産業、四季折々の食材。
大分県には豊かな資源を持った魅力ある地域がたくさんあります。そして、地域の魅力により
磨きをかけ、それを観光振興に結びつけようとしている人が大勢います。
大型の観光キャンペーンやあらかじめ用意された地域づくりメニューをこなすのではなく、地域住民自らの知恵と工夫で観光振興と地域づくりを一体的に推進する、文化やスポーツの催しにも地域住民が自発的にかかわっていく。県内各地でこうした取り組みが広がっています。
     蒲江町 町の顔をつくろう

 山を下りるとすぐ目の前に海が広がる――蒲江は訪れる人にそんな印象を与える町です。大分県の最南端に位置し、南北85キロメートルにわたるリアス式海岸の素晴らしい風景と海の幸に恵まれた町、蒲江。
  しかし、その蒲江には地域住民と観光客との交流拠点、蒲江の「顔」となるべき施設がない、町の玄関にそうした施設がほしい、この思いから、蒲江町の「地域再生計画」はスタートしました。
  計画の核になるのは物産館を中心とした「まちの駅」の整備です。「まちの駅」は蒲江の玄関口、国道388号線と県道37号線とが交差する旧蒲江中学校跡地に造られます。そこで扱う農水産物のテスト販売の意味も込め、「第一回浦の市蒲江まるかじりフェア」が6月に開催されました。実行委員は物産館建設推進協議会のメンバーたち。「物産館の運営やフェアの開催が雇用の拡大につながれば」と願う協議会会長の増野さん。民間主導で開催した初めての催しが盛況だったことで、民間の手による物産館運営にも確かな手応えを感じているようです。また、過疎化が進む中、このままでは地域社会が崩壊するかもしれないという危機感から「蒲江浦づくりの会」を復活させた坂本さんも、春まつりの開催や海水浴場の清掃活動を通して、地域づくりと観光振興を結びつけようとしている一人です。
  さらに、県境を越えた取り組みを通じ、蒲江を広く知ってもらおうとする試みも始まります。ともに天然のイセエビが採れるという共通点から、蒲江町は隣接する宮崎県北浦町と今年7月「東九州伊勢えび海道」協定を締結しました。合同料理研究会などで相互交流を行い、「伊勢えびフェア」や県外でのキャンペーン、海岸清掃などを合同で開催し、浦々の景観や食文化を守りながら交流人口の増加を図ります。
  蒲江の新しい「顔」をつくり、その魅力を県内外に発信する。地域再生への取り組みが始まっています。


物産館建設推進協議会
増野会長

訪れた人にウニの
加工方法を説明する
蒲江町観光協会橋本会長(左)

蒲江浦づくりの会 坂本会長
蒲江町の観光行事
◎東九州伊勢えび海道フェア
期日:9月1日〜11月30日
場所:蒲江町13店、北浦町6店
豊後水道自慢のイセエビ料理を提供。
抽選による無料宿泊券等の
プレゼントあり。
問:蒲江町観光協会 TEL.0972-42-0006

◎第2回
浦の市・蒲江まるかじりフェア

期日:9月18日(土)
場所:蒲江浦 漁協荷さばき所
問:蒲江町まちづくり推進課
TEL.0972-42-1111

◎蒲江町ふるさとふれあいまつり
期日:11月7日(日)
場所:蒲江町営グラウンド
問:蒲江町総務課
TEL.0972-42-1111
◎のじぎく祭
期日:11月下旬
場所:たかひら展望公園
問:蒲江町まちづくり推進課
TEL.0972-42-1111

たかひら展望公園からマリンカルチャーセンターを望む


臼杵市 日本の正しいふるさとづくり 臼杵の地図と写真

 城下町・臼杵の市指定有形文化財、旧丸毛家屋敷。江戸後期の建築様式をとどめるこの屋敷には、近年まで人が住んでいました。手入れの行き届いた屋敷は、現在「スローライフ体験プログラム」を開発するための舞台となっています。
  歴史的な街並みやフグなどの海の幸に恵まれた臼杵ですが、実は宿泊施設が不足しがちです。そこで、武家屋敷での宿泊や自炊体験を通して歴史的資産を体感するプログラムを開発し、新しい観光を起こそうとしているのです。
  この日、体験合宿を行っていたのは立命館アジア太平洋大学の学生たち。臼杵学に取り組む彼らは、使い慣れないかまどと格闘しつつ、薪をくべるところから自炊を始めます。初めて体験するスローライフや、地域づくりに取り組む「臼杵人」へのインタビューを通し、学生たちの新しい感覚で臼杵の新しい価値を発見する「臼杵研究プロジェクト」を展開しているのです。
  また、伝統産業である造船業や醸造業に着目し、陸上で建造した船を初めて海に浮かべる進水式や醸造工場の見学を観光に取り入れたツアーの企画、特産の臼杵カボスを使った加工品の開発も進められています。
  大切な歴史的資産や受け継がれた伝統を、単に残すだけ見るだけではなく、それを活用しながら地域再生につながる観光振興を進めていく。単なる観光地づくりではなく、「日本の正しいふるさと」づくりに向けて、臼杵は動き出しています。

臼杵市の観光行事
◎七宵〜しちよひ〜
1週間後の「うすき竹宵」の安全や成功を祈願する。
入魂式、神事、般若姫のお披露目など。
期日:10月30日(土)
場所:二王座周辺
◎うすき竹宵
臼杵の情緒漂う町並みに約10,000本の竹ぼんぼりの明かりが灯る。
期日:11月6日(土)〜11月7日(日)
場所:二王座周辺
問:臼杵市商工観光課
TEL.0972-63-1111(内線1263)


船主による命名後、支え綱を切られ進水するタンカー
「HARUNA EXPRESS」

大野町 都市からの新たな風 大野町地図と沈堕の滝の写真

 出身は兵庫県、大学は北海道、NGOの一員としてタイでの生活経験あり。「緑のふるさと協力隊」の一員として、4月から大野町に滞在し、農業や地域づくりのお手伝いをする服部美希さんのプロフィールです。
  山村に興味を持つ若者を協力隊として大野町が初めて受け入れたのは平成15年。服部さんは2人目です。里の駅「大地」や水墨画教室での活動、保育園児との田植え、7月からはピーマンや葉たばこなどの農作業も体験している服部さん。「土地に根ざして生きている農民の強さにひかれました。農業中心の地域で『食』を通して土地とつながっていられるのは素晴らしい。永住するかはわからないが、派遣期間終了後も大野町で仕事を見つけて暮らしたい」と語る服部さんには、大野町はとても魅力ある地域に映ります。同時に、若者が出て行くのはなぜか、という疑問も持っています。どうしたら若者が残る町になるのか、と。
  そこで大野町は、住民が集まりやすい場所を若者の活動拠点として整備し、そこを地域の祭りや郷土芸能を伝承する場所、インターンシップで受け入れた都市部の若者と住民とが交流する場所として活用することを計画しています。都市からの新しい風で地域再生を目指すのです。
大野町の観光行事
◎沈堕(ちんだ)の滝・雪舟まつり
雪舟が鎮田瀑図(ちんだばくず)として描いたことでも知られる沈堕の滝。 神楽や獅子舞などの郷土芸能が披露され、水墨画の作品展などが開催される。
町では、平成2年から水墨文化の里づくりに取り組み、小学校教育の中にも水墨画を取り入れている。
期日:10月下旬
場所:ちんだ滝見公園(主会場)
問:大野町産業振興課
TEL.0974-34-2301

水墨画体験教室
「合鴨農法」を手作りの紙芝居で
説明する服部さん(写真左)
園児との田植え

県民がつくる舞台 県民芸術文化祭オープニングステージ
 今年で6回目となる大分県民芸術文化祭。そのオープニングステージで上演されるのが「〜天領ラプソディ〜人形師、三吉の恋」です。江戸末期の天領・日田を舞台に、日田祇園の山鉾(ぼこ)の人形を製作する人形師・三吉と旅芸人との恋愛に、代官とのトラブルが絡むストーリー。舞台で演じる役者やスタッフの多くは一般公募で選ばれました。
劇団員、大学生、退職して大分に帰った人。さまざまな年齢や仕事、経歴を持つ人たちが、舞台演出の吉祥じゅんさんいわく「おもちゃ箱をひっくり返したような」舞台をつくるため、特訓中です。素人のよさを生かした舞台が見られるのは9月26日、大分市の県立総合文化センター・グランシアタです。

◎第6回大分県民芸術文化祭
オープニングステージ観覧ご希望の方へ
日時:9月26日(日)13:30〜
場所:県立総合文化センター(大分市)
入場料は無料ですが、整理券が必要です。
往復はがきでお申し込みください。

往信 〒870-8501 大分市大手町3-1-1
大分県文化振興課「オープニングステージ観覧希望」係まで
住所・氏名・年齢・希望人数(2人まで)
返信 整理券を郵送する住所、氏名を記入
締切:9月9日(木)
*応募者多数の場合は先着順
問:文化振興課
TEL:097−536−1111(内線2055)

練習中の出演者たち


地域に愛されるクラブづくり 大分トリニ-タ
 平成6年4月に設立されてから丸10年、J1昇格から2年。トリニータはすっかり大分の顔となりました。九州唯一のJ1チームとして県外からも多くの来場者を集め、昨年度1試合当たりの平均観客動員数、21、373人は16チーム中第5位。試合開始前のアトラクション「アートステージinビッグアイ」では、若者中心の芸術文化団体が、多数の観客を前にその腕前を披露しています。平成16年の第1回は、佐伯市民吹奏楽団が演奏を行いました。今後も九重あばれ獅子などの出演が予定されています。
  クラブ理念の一つを「地域貢献・スポーツの普及」とするトリニータ。幼稚園での巡回サッカー教室や地域の催しへの選手のゲスト出演などを通して地域に愛されるクラブづくりを目指しています。
◎大分トリニータのホームゲーム
[1]9月12日(日)19時 浦和レッズ
[2]9月18日(土)19時 清水エスパルス
[3]9月26日(日)15時 名古屋グランパスエイト
[4]10月17日(日)15時 東京ヴェルディ1969
[5]10月30日(土)15時 ヴィッセル神戸
会場:[1][2][5]はビッグアイ
   [3][4]は熊本kkウィング
問:大分フットボールクラブ
  TEL.097-533-5657

アートステージinビッグアイ
(USAよさこい響会)

 


住民主体の取り組みへ
  大海原を一望する蒲江町のマリンカルチャーセンター。魚に直接エサを与えられるふれあい水槽や海水プールで来場者を楽しませてくれます。ウミガメにそっと触れているのは県盲人協会会長の金子さん。水産加工会社でのウニ加工や養殖場の揺れるイカダも体験し、「観光資源としても素晴らしいが、何よりももてなしてくれる人、丁寧な説明、人を楽しませる話術がうれしい」と言います。
  地域に根づき、その良さを広く県内外に伝えたいと願う地域住民。県外から訪れて、住民とかかわりながら地域づくりに貢献する大学やサッカークラブ、ボランティア。彼らとの協働によって新しい地域づくりと観光振興が始まっています。
  県ではこうした活動を支援するため「魅力ある観光・地域づくり支援事業」や「地域づくり戦略プログラム」を募集し事業化を進めています。また、「地域再生推進連絡会議」や「観光・地域振興サポートセンター」を設置し、地域づくりや観光振興に取り組む住民・団体・市町村への支援を図ります。「魅力ある観光・地域づくり支援事業」には22件の応募があり、9件が選ばれました。「地域づくり戦略プログラム」にも約30件の応募があり、審査を経て事業化されます。
  豊かな資源、温かいおもてなしの心、都市との交流や歴史を体感するための新しい試み。観光客を引き寄せるには魅力ある地域づくりが必要です。魅力ある地域には「定住したい」と思わせる力があります。大分を元気にする観光・地域づくりは今、住民主体の新しいステージに立っています。
県盲人協会金子会長とふれあい水槽のウミガメ


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