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特集1 楽しく、賢く、涼しく過ごす「節電の夏」
特集2 女性の皆さん、出番です
風紋 古稀に寄せて
トピックス 大地の活動が生み出した地質遺産~大分のジオサイトを知ろう~
県民ひろば 開設!県立美術館まちなか支局
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本格的な夏の到来です。九州電力管内では、原子力発電所の停止などに伴い、今年の夏の電力需給が極めて厳しい状況になることが予想されています。「一昨年より10%以上の節電」が求められている今、一人ひとりの小さな心がけが大きな力となります。それで今回の特集では、家庭や事業所で取り組んでいる節電策をご紹介します。
親子3世代6人で暮らす佐藤さんと家族5人で暮らす塚本さんのお宅を訪ね、それぞれが実践している節電方法を教えてもらいました。
【佐藤千賀子さん一家の場合】
太陽光パネルを取り付けているので、電力の使用状況をこまめにチェックしています。リビングなどの比較的電気をつける時間が多い部屋には、照度の調節ができる照明器具を取り付けることがオススメです。
また、電力が多く使われる時間帯には、できるだけ使用しないように心がけています。節電は節約にもなりますし、小さなことの積み重ねが大事だと思って、みんなで協力しています。
【塚本美穂さん一家の場合】
去年から節電を始めて効果的だなと思ったのは、照明をLEDに変えること、水洗浄便座のコンセントを抜くことなどですね。それと、旬の野菜を食べること!トマトやキュウリ、ナスといった夏野菜は、ほてった体を冷やす作用があると聞いたので、積極的に食べています。水分補給にはスイカもいいですね。涼を感じる食材を取り入れています。
そして一番良かったと思えたことは、家族と過ごす時間が格段に増えたことです。以前は別々の部屋で過ごしていましたが、今は一番涼しい部屋に集まって、『合宿』と称してみんなでカードゲームなどをして遊ぶようになりました。休みの日には、海やプール、山などに出かけて、夏を満喫しています。節電が家族のあり方を変えてくれる、いいきっかけになりました。
豊後大野市で半導体製造を行う大分電子工業株式会社三重工場を訪ねました。この会社は、昨年の夏に15%の節電を達成できたそうです。
「電力消費量の一番多い製造過程では、省エネ型機器の導入を進めています。空調も省エネ型に変えました。また、24時間稼働し続けなければいけない機械以外は、ピーク時を避けて夜間に動かすよう取り決めています」と語るのは、代表取締役の藤田忠熙(ふじたただひろ)さんです。常に問題意識を持って見直しを行い、効果を検証しているという藤田社長が、結果的に節電につなげることができた珍しい事例を教えてくれました。 「この工場は築40年近く経っていて、屋根の張り替えが必要でした。しかし、そのまま張り替えると経費がかさみます。そこで考えた結果、新しい屋根を今の屋根にかぶせることにしました。すると、既存の屋根との間に空気槽ができて、いい断熱材になりました。せっかくだからもう一工夫しようと、温度と湿度の状況に合わせて自動的に井戸水を散水するスプリンクラーも屋根上に設置しました。そうしたら、天井裏の温度が10℃も下がって、作業場の冷房負担を大幅に軽減できたんですよ!」とにっこり。 |
ガルバリウム鋼板による屋根の二重化 屋根の上に設置されたスプリンクラー
一方、ソフト面の対策にも力を入れています。藤田社長は、「工場内にある約100台のパソコンから、社員が好きな時に電力の使用状況を見ることができます。いわゆる『電力の見える化」』ですね。社員の節電意識も高まります」と話します。
このシステムを開発した工場長の堤陸生さんに、詳しいお話を伺いました。「これ(図1)が職員に情報共有しているグラフです。1分毎の最大使用電力の推移を示しており、10分を経過した時点で30分後までの予測値を試算する仕組みになっています。この予測値が契約電力に対する独自の削減目標値を上回りそうになった時には自動的にアラームが鳴るので、すぐに対応して電力管理と節電に役立てています。警報が鳴ると、まずは事務棟の電気や空調を止めますね」と堤工場長は説明します。 |
↑工場内の様子 ↑効率的な生産設備を独自で開発することで節電につなげている
このようにハード・ソフト両面からの徹底した見直しから、10年間で九州電力との契約電力量を約半分に減らしてきた大分電子工業株式会社。「現状に満足することなく、更なる節電を目指して取り組みます」と力強く語ってくれました。