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パネルディスカッション

印刷用ページを表示する掲載日:2010年3月29日更新

「すべての県民で支える森林づくりについて考える」

堺氏

 森林は、木材供給だけでなく、水源涵養、洪水緩和、土砂の崩壊防止、さらに保健休養、温暖化防止などの機能を持ち、人類にとって無くてはならないものになっています。ところが人間は、森林を破壊し続けてきました。そのために災害や木材不足が顕在化してくると、伐採を禁止したり、人工造林という形で修復を行ってきました。森林の様子

 しかしこの森林が今、危機に直面しています。間伐などの手入れをせずに放置され弱体化してしまった人工林。伐採しながら再造林せずに放置しているため、土砂崩壊や山津波の発生が懸念される再造林放棄地。シカに新芽を食われて伸びの止まったスギやヒノキの植林地。日光の林内照射が不足して灌木や草類が消失し、カラカラに乾いてしまった人工林の林床。土砂に埋まり枯れあがってしまった渓流。鳥の鳴き声が消えて久しい森林など。このような状況の中で森林を守れ、森林を再生せよという声が各地でわき起こっています。森林を守り再生するためには、適正な森林管理が必要です。ところが木材価格の長期的低落、過疎化・高齢化の状況の中で、森林所有者だけで、森林を再生していく力はほとんど残されていません。循環型社会構築のためには森林・林業、木材産業が強固な地盤を築かなければなりません。

 そこで今日は、森林を守り、再生し、豊かな自然を回復するために、県民は何をなすべきかを考えていきたいと思います。

 まず森の体験、森林への思いをどうぞ。

坂本氏

 私は森の中で生まれ、森と一緒に育ち、まさに「森の子供」という人生を歩んでいます。坂本氏

 もともと植林は、生活の投資でした。ところが今は、40・50年では木は無償に等しい状況です。

 中津江村では、10年ほど前から、森と川と緑、つまり「森川緑(しんせんりょく)で若芽の育つ村づくり」をテーマに、森と環境に力を入れてきました。

 過日、国枝カメルーン駐在大使夫妻が昨年中津江村を訪れた折、スイス生まれの奥さまが「スイスのようだ」とおっしゃったことから、私は中津江村を「東洋のスイス」と自称し、スイス以上にきれいな環境の村にしたいと思っています。

 また、若い有志が林業支援センターという会社を組織して、除間伐ができない山林所有者の支援をするなど、村を挙げて森づくりに取り組んでいます。

井上氏

 うちは代々林業家で、私で8代目です。林業経営は、先祖が植えた木を伐採して孫のために植えるわけで、自分で植えた木を伐ることは、普通はありません。これを50年・60年のサイクルで行ってきました。代々続くということは、非常に自分の家の森林に愛着を感じます。その意味での森林への熱い思いがあります。私は最近、人工林に誇りを感じています。

 地球温暖化問題が取りざたされていますが、森林は二酸化炭素を吸収し酸素を生産する機能を持っています。この機能は、植林してから20年・30年してから発揮し、70年・80年くらいまでがピークです。森林も老齢化してくると機能が弱ってきます。70年・80年のサイクルで森林を造成していくことが、森林機能を最大限に保つやり方なのです。同時に木材も育ちます。森林機能を最大限に発揮しながら、健康的な素材である木材も生産している人工林は、非常にすばらしいを実感しています。また人工林は人が入りやすい森林です。森林は森林浴など癒し効果があり、環境教育にも利用できます。それに何よりも子どもたちが遊べる森を作ることができます。

 森林経営は単なる産業ではなく、水と空気と木材の生産、すなわち環境づくりをしているということだと思うのです。

瓜生田氏

瓜生田氏 私は、テレビやゲーム、パソコンの前から離れて、森へ行こうよ、子どもも大人ももっと自然の中に入って汗を流しませんかと呼びかけたいのです。私たちが思い描く心理いいの持つ力、例えば木々のざわめきとか木漏れ日、森の活力や癒しの力を、果たして若い世代がどのくらい実感できるだろうかという点が気がかりです。自然や体験から子どもたちを遠ざけてきた大人の責任を今、すごく感じています。

 以前新聞で読んだ記事に、理科の授業で「雪が溶けたら何になりますか」という質問に、ほとんどの子どもが「水になる」と答える中で、「春になるよ」と答えた子どもがいたとありました。春になって雪が解けて、川になって流れるという、その子の中に描かれたイメージを大事にしたいですね。

赤木氏 私はこの3月まで高知県庁で、森林環境税制定に関わってきました。高知県は森林が多く、大山持ちの専業林業家のクラブもあります。その人たちは「昔は良かった」と言います。昔は林業でどんどんお金が入ってきたけど、今は、山持ちは金持ちではなく、借金持ちだと言っています。ところが町の人の中には、そんな山の所有者に対し、過去に儲かったんだから今ダメでも仕方がないという冷ややかな意見もあります。山の人も町の人もみんなの森という意識をもって、お互いに理解し合い協力していく気持ちが大切だと思います。

堺氏 次に森林・林業が置かれている現状について、現場からの報告をお願いします。

井上氏 井上氏現在大分県は、県土の72%が森林であり、そのうち民有林が90%、そのうちの54%が人工林です。人工林はおよそ21万ヘクタール、ゴルフ場2000個分です。直面している現状は何と言っても木材価格の低迷です。丸太価格は現在、15年前の 1/2、25年前の1/4で、伐ってもほとんど手元に残らない状況です。収入を得るためにどうしても伐採面積が広くなります。全伐したら植えなければならないが、植える余力のない人が山を放置してしまうという残念なことにもなっています。

 ポイントは、やる気と資金と人材ですが、資金はないし、担い手となる人材は確実に減っており、仮に金と意欲があっても人がいないのが現状です。森林経営が成り立つということは環境保全にもつながるので、自助努力はしたいのですが、次の手が打てないというのが現状です。

堺氏 中津江村では地域振興に向けて、非常に多様な取り組みをされていますが、森林林業の問題点について、自治体行政の立場からお話ください。

坂本氏

 林業組合、農協、行政が一緒になって取り組むことが地域の林業や環境、食の安全につながります。これが大切な三要素と思います。

 私の村に「200海里の森」というのがあります。役場の裏に流れる川は筑後川から有明海に注いでいます。ここに放置された6ヘクタールほどの無立木地を、有明海の漁師さんたちといっしょに育てようと考え、コンタクトを取りました。すると、漁師さんたちは、自分たちからお願いしたいことだと協力を頂きました。日本の領海が200海里ということからネーミング。

 漁師や都市の人と一緒に木を植え、秋には紅葉を楽しみ、落ち葉は腐葉土となって川を流れ、海に注いで微生物が魚の餌になり豊かな海を形成するというシナリオを描いています。今、この森の手入れの参加者は、年々増え、村と都市の交流が深まっています。それに都会の人たちの、水の大切さ、環境への理解も深まっています。

堺氏 森林には多様な機能があります。お金に換算すると年間70兆円にも達すると言われています。そこで森林のどんな機能に着目するか、それを達成するためにどのような対策が必要かについて考えてみたいと思います。

ニコル氏

ニコル氏 森が無いと大変。それだけです。我々はいろんな実験をやっています。一つは、我々の森にも成長が止まった貧弱なカラマツとスギの場所があり、これを間引いて、藪刈りを3年続けました。その間に地面から12種類の木々が出てきました。それをマーキングして残し、ほかの場所にはカツラやナラを植えました。8年くらいして若い落葉樹が伸びたら、スギとカラマツの成長がものすごく良くなったんです。太くなっただけでなくまっすぐに成長するんですね。だから場所にもよりますが、森では材木づくりだけでなく、他の木も一緒に育ててはどうかと思うんです。

堺氏 赤木さんは、外国から帰られたばかりだそうですが、外国の林業についてお話しいただけますか。

赤木氏

 今、温暖化が深刻な問題です。見通しでは100年後くらいに平均気温が5.8度ほど上昇すると言われています。二酸化炭素の排出削減だけでなく、吸収源としての森林の機能をもっと高めることが重要です。そして、それらをきちんと評価することが必要であると思います。ディスカッションの様子

 また林業経営で今、木材価格は確かに安くなっています。外材がどんどん入っている中で、コストを如何に抑えるかが課題です。所有の零細性が大きなネックになっているわが国で、出来るだけ森林をまとめて作業することがコスト減につながるのではないかと思います。例えばスウェーデンなどは、全国を7つのブロックに分けて、それぞれに森林所有者協会が組織され、森林の計画を作り、大規模な経営をしています。日本でも森林組合などがそういう役割を果たせれば、もっと効率的な林業が出来るのではないでしょうか。

堺氏 木材利用は、森林に対する支援として有力な方法だと思いますが、国産木材を利用することの意味は?

井上氏

 木材が、鉄とかプラスチック、アルミなどの化石燃料を燃やしてCO2を排出する素材に取って変わられた部分が多いですね。たとえば建築時の足場丸太は鉄パイプに、また窓枠がアルミに変わるなどいろんな部分で木が使われなくなっています。木材を使うことが、化石燃料を燃やす素材を使わないことにつながります。

 健康面では、シックハウス症候群が問題になっています。これも無垢の木材を内装に使うことで解決できます。環境と健康面で国産材の利用拡大は大きな意味があると考えています。

赤木氏 国産材需要の拡大を目指して、高知県梼原町は平成13年に森林認証制度(FSC)を取得しました。将来は認証されてない材は使われないという時代が来ると思います。梼原町の場合、認証取得後必ずしも木材の値段が上がったということはないようですが、引き合いは多くなったようです。

堺氏 生協は環境問題に取り組んでいますが、その実態を紹介してください。

瓜生田氏

 生協では、13年ほど前から県内各地でNO2の測定をし、環境について考えてきました。また牛乳パックや卵パックの回収と再資源化、マイバック運動、食品のノントレイ化など、今すぐ出来ることをやってきました。

 その中で一番力を入れてきたのは、子どもたちとの取り組みです。田植えや稲刈り、芋掘りなどの体験農場、自然観察会、親と子のリサイクル教室など、体験を通して暮らしを考える力を付けてほしいと願って活動しています。

堺氏 中津江村は、ボランティアとの提携を積極的にやっているようですが、ボランティアについてどうお考えですか?

坂本氏 森づくりとなると経験や体力が必要で、しかも急傾斜地のため危険な仕事です。だからボランティア活動で森づくりをするには限界があります。山仕事の入り口から中程までの表の部分をボランティアの皆さんが担い、それより奥の深い部分はやはり専門の林業家が受け持たなければなりません。しかしボランティアは、山への理解を広げ、盛り上げる上で大きな役割を果たしてくれます。

井上氏 持続可能な森林経営という意味においては、我々が従来の制度を利用しながら自助努力でやっていかなければならないのですが、本来我々がやりたいけど出来ないことを支援して頂くことを期待します。それは、一つは啓蒙活動です。このようなシンポジウムやマスコミなどで、森林・林業のことを理解していただき、それによってボランティアの方も出てくるでしょう。ボランティアの方は山の作業をするだけでなく、国産材のファンになっていただいて国産材のPR活用などのサポートをしていただく。またボランティアによって山村や林業家たちが元気づけられます。そういう意味でのボランティアの存在は大きいと思います。また担い手の育成や、ユーザーと林業家を結びつける支援も期待します。

堺氏堺氏 森林を健全に維持し、多様な機能の高度発揮を実現するには、従来の森林整備政策を超えた新たな社会システムの構築に向けて考え方をまとめ、仕組みを作ることが必要な段階に来ています。その一つの考え方として森林環境税があると思います。最後に森林整備に向けた新たなシステムの構築を検討することに対しての考えをお聞きします。

赤木氏 高知県は15年度に森林環境税を制定しました。検討の中で、まず県民みんなが利益を受けているものに対する税に着目しました。高知県は84%が森林で、県民が森林に接する機会が多いため、賛成が多かったのです。第三者が入った森づくり推進委員会を組織し、原案作成時から県民主導で行い、県はそれをサポートするという形を取りました。森を県民自ら守るという意識啓発を第一に置き、徴収した税金が森づくりに実際に生かされているという透明性を重視。税は森林環境基金に積み立てられ、それを事業資金にしました。そして事業内容は運営委員会が検討するというシステムです。

坂本氏

森林の様子2 長寿樹齢に達するには10年に一度は必ず除間伐をしなければなりません。これが今、実現されずに放置されている状況です。環境保全と治水のために、山を持つ村として果たすことはしっかり果たしていかなければと思っています。

 また、大気汚染で呼吸がしにくくなったから早く環境税をと言っても間に合いません。事前の手として必要だと思います。県民に税を理解してもらうことは大変だと思いますが、理解を得られる説得・説明をやらなければならないと思います。

ニコル氏 森のことを本当に考えている人が減りました。これ以上減ると、悪魔が出ますよ。長野県で産業廃棄物の不法投棄が森の中で2000カ所あるんです。大体が沢です。食の安全、水の安全は全部森とつながっているんです。森を見捨て、無視すれば悪魔が出ます。もうすでに出始めていますよ。

井上氏 私たに林業家は元々仕事として森林を育て、木材を生産してきました。それが結果的に環境保全になっていたわけです。ところが木材生産が採算に合わなくなってやめてしまえば環境破壊につながります。そういう意味から考えると、森林環境税導入を議論すること自体が、森林・林業のことを皆さん方に考えていただくきっかけになると期待しています。

赤木氏赤木氏 森林環境税の議論の中で一番大きな問題は何に使うかだと思います。それと結果をなんらかの形で明確にするようにしてほしいと思います。そのためには、議論を十分にしていろんな人の意見をきいてほしいと思います。高知県が森林環境税に取り組んできて言えることは、これをやったことによって、森林や林業に対する関心や理解が、ものすごく深まったことです。間違いを恐れず、常に県民の意見を聞いて修正できる仕組にしておくことが重要だと思います。

瓜生田氏

 「地球は子孫からの借り物」という言葉があるそうです。私たちはこの地球をもっと良くして次代に渡さなければいけません。まだ間に合うことはいっぱいあります。そのためにどうしたら良いか。それをいっしょに考えていきたいと思います。ディスカッションの様子1

森林環境税については、どうしてこんな状況に至ったのか、その原因は誰が作ってきたのかということを確かめることが必要だと思います。この税の導入がみんなが納得できるかどうかに疑問を感じます。それと税金の使われ方そのものの仕組みも議論していくことが大事だと思います。

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