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講演

印刷用ページを表示する掲載日:2010年3月29日更新

演題「人と自然の共生・森づくりを考える」

こんにちは、黒姫の赤鬼です(笑い)

 私が育ったイギリスのサウスウェールズは昔、98%が森に覆われていました。貴族の猟場として、たくさんの大木や鹿などの動物がいる美しい森が多かったのです。ところが400年前、隣国との戦争に負けてから破壊されました。それでも私が子どもの頃は、この美しい森が一つだけ残っていました。しかしその森は今はありません。講演の様子1

 かつてここには炭坑があり、鉄道の枕木や坑内で使うため、木材がたくさん伐採され、森がなくなったのです。そのため大雨でぼた山が滑り、下方にあった小学校が埋まり先生や子供たち116人がなくなりました。森がなくなると大変なことになることを、私は子どもの頃から知っています。

 42年前、22歳で初めて日本に来た時、私は森が多いのにびっくりしました。当時は山の奥に行くと、ブナ林などの原生林がありました。水のおいしさ、食べ物のおいしさにほんとうに感動しました。それに都会からそう遠くない所に熊がいることも驚きでした。熊がいることは、熊が住める森があるということです。それはとっても豊かということです。英国では900年前に熊は絶滅しています。私は日本を尊敬しました。

 ところが24年前黒姫に住み着いたとき、黒姫の原生林がバサバサ伐られるのを見てショックを受けました。原生林が伐採された翌年、我々の小さな村に13頭の熊が山から下りて来て罠でとらえられました。熊が住めなくなったんです。すぐ側を流れていた澄んだ川は、原生林がなくなってからは土砂が流れ、みそ汁のように濁ってしまいました。大好きな山や川、干潟が破壊されるのを見て、本当に悲しくなりました。

 カナダの西海岸の例を挙げてみましょう。ここの川は海まで50キロほど。いろんな支流や沢があって一つの川になり、日本の川に似ています。その川に4種類のサケとイワナが上って産卵していました。ここは大雨が降っても川があばれても、6日間ほどで落ち着いていました。ところがその地域が全部伐採されてからは鉄砲水が起こり、支流が土砂で埋まり、砂利場が流され、何百もの川でサケが上れなくなりました。そこで15年前から「サケを戻そう」、「川を作り直そう」という運動が起こり、いろんな分野の人が協力して川直しをしました。そしてサケが戻ってきたのです。サケやイワナが産卵できる川は、安定しているんです。川をどうやって安定させたか。それは、柳の木を使ったり、岩を使ったり、まっすぐ流れる水をちょっと避けたりして、自然を復活させたのです。講演の様子2

 ぼくがなぜ黒姫に森を作ったか。20年くらい前、炭坑がつぶれて南ウェールズの失業者は英国一でした。それを救ってくれたのは日本です。日本がたくさんの会社を作って、ウェールズ人を雇ってくれたのです。私は感動して、何十年も帰ってなかった国へ帰ってみると、ぼた山が緑の山に生まれ変わっていました。滑りやすいぼた山を、なだらかな形に変えて石壁で滑り止め。肥料を巻いて草の種を蒔き、緑がいっぱいになってから、苗木を植えたのです。南ウェールズの地域は、現在60%が森になりました。死んでいた川は今、サケが産卵しています。カワウソが戻って来てるんです。その努力を見て私は、目が覚めたんです。そして日本で、放置されたヤブなどを買って森を造ったのです。森の中に景色を楽しめる場所や沢の音を聞ける場所、休憩所を備えた散歩コースも作りました。

 森の中で深呼吸すれば、体の循環が良くなります。木は酸素や水だけでなく物質を出し、空気中に流れている菌を巻き込んで殺す力があります。つまり病気を治す力が森にはあるんです。虐待を受けた子共たち、目の不自由な子供たちの手当も森でやり始めました。ひどい虐待を受けて、男性におびえていた小さな女の子が2日目、森の中でぼくの手をつないでいるのです。僕に抱っこされるんです。本当の笑いが聞こえてくるんです。目が見えない子供たちに、森の中で鳥の羽を触らせたり、鳴き声を聞かせたりして鳥の形や習性を教えるんです。その効果に僕は感動しています。

 森の中でじっと水の音、鳥の鳴き声、風の音を聞くと心が安らぎます。いろんなことを忘れます。寂しくなった時、森に座ると寂しくないんです。森にいると、陽炎のような一日しかいない動物もいれば、何百年も生きられる木もいます。人間はその曼陀羅の中で生きているんです。それを忘れるととっても寂しくなる。だから子供たちは特に森に返そうよ。

 僕は日本に来たとき、東京の郊外の東村山市に住んでいました。そこには里山がありました。林がきれいで、休みの日には、子供たちがそこで遊んでいました。。日本の森から消えた一番大事な動物は子供だと僕は思っています。健康的な里山じゃないと、ヤブの中では子供は遊べません。自然の大事さを私たちは忘れててはいけません。

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