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新時代おおいたVol.68 2010年 1月発行 新時代おおいたVol.67表紙
特集1 ワーク・ライフ・バランスを考えよう 〜仕事と生活の調和をめざして〜
特集2 春からは、エコ通勤 始めませんか?
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特集1 ワーク・ライフ・バランスを考えよう 〜仕事と生活の調和をめざして〜



ワーク・ライフ・バランス、なぜ必要?

  ワーク・ライフ・バランスという言葉を最近よく耳にしませんか?直訳すると「仕事」と「生活」の「調和」。
 具体的には、どんなことなのでしょうか。
 そして今なぜ、こうした概念が唱(とな)えられるようになったのでしょうか。

 女性が一生に産む子どもの数(合計特殊出生率)が低水準で推移しており、少子化が急速に進行しています。この状態が続けば、人口が減少するとともに働く人(労働力人口)が不足することになります。
 それにより、ものを作っても消費する人がいない、または、ものを作る人がいなくなるなど地域経済が縮小してしまう原因となり、県の経済にも大きな影響を与える深刻な問題を多く抱えているのです。

 少子化にはさまざまな要因が考えられますが、「仕事と家庭生活の二者択一構造」の解消が、解決への一つの「鍵」ではないかといわれています。
 そこで、多様化する働き方に対応した子育て支援制度を推進するとともに、「働き方」、ひいては個々人の「仕事」と「生活」のより良いバランスについて、根本からの見直しが必要だと考えられるようになったのです。





 仕事は暮らしを支え、生きがいや喜びをもたらします。同時に、家事、育児、地域社会への参加も暮らしに欠かすことのできないものであり、双方の充実があってこそ、人生の喜びは倍増します。
 しかし、現実の社会では

・安定した仕事に就けず、経済的に自立することができない
・仕事に追われ、心身の疲労から健康を害しかねない
・仕事と子育てや介護との両立に悩む

など、仕事と生活の間で問題を抱える人が多く見られます。

その背景には・・・

  二極化する労働環境
 現在指摘されている問題は、働き方の二極化です。
 正社員の労働時間は依然として高止まりしており、「家庭でのだんらん」や「仕事以外のやりたいこと」に時間を費やせないといったジレンマを抱えています。長時間労働が心身に与える疲労は大きく、中には過労死など深刻な事例も。
 一方で、国内外の企業間競争の激化による非正規雇用は若年層などに拡大しており、拘束度が低い反面身分の不安定さや経済不安を抱え、経済的に自立できずにいます。

  仕事と家庭の両立、現状は?
 女性の社会参画の進展に伴い共働き世帯が増加し、今では全雇用世帯の半数を占めるようになっています。
 しかし、依然として男女の役割分担意識が根強く残っていることや、子育てを支える社会基盤の未整備など、女性が仕事を続けていく環境が十分に整っているとはいえません。その結果、仕事と家庭との両立に悩み、継続勤務を断念する女性も多いのです。

これからの社会に求められるものとは

 社会環境やライフスタイルが変化する中、私たちが能力を十分に発揮するためには、性別や年齢、おかれている状況にかかわりなく多様な人材が仕事に就ける社会にしていかなければなりません。特に、人口減少社会が到来したわが国では、女性や高齢者が仕事を続ける環境は不可欠。そこで、多様なライフスタイルをもつ個々人の生き方に合わせて、また、子育て期、老親の介護等に追われる中高年期といった人生の各段階におけるニーズにも対応して、さまざまな働き方を選べるワーク・ライフ・バランスの実現に向けた取り組みが今、求められています。


 「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」では、これらの課題を踏まえ、仕事と生活の調和が実現したあるべき社会の姿をこう描いています。

 
国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会


ワーク・ライフ・バランスのイメージ図


探訪!ワーク・ライフ・バランス推進企業

残業ゼロで効率UP! 株式会社 タイセイ

 「うちの会社は6時半には電気を消します。残業は原則禁止なんです」。
そうおっしゃるのは、津久見市の企業(株)タイセイの代表取締役社長、佐藤成一さんです。
 和洋菓子の包装資材などの卸や通販を手掛ける同社では、繁忙期は夜8時〜9時まで及ぶ残業が常態化していたといいます。
 そこで佐藤さんは一昨年、「残業ゼロ」を制度として打ち出しました。社員・パートを問わず女
佐藤成一さん
性が多い職場において「社員満足とは何か」を考えた時、一般的には家庭の責任を担うことの多い女性にとっては、勤務時間が明確なことや充実した休暇制度がなによりも大事ではないかと考えたからです。
 さらに、ただ「残業ゼロ」のみを提唱したわけではありません。
 「残業をなくすだけでは、お金を払いたくないだけと思われますよね。ですから、私は昨年の残業実績を洗い出して、支払った分を最初から手当として給料に組み込むことにしたんです」。
 画期的な試みです。しかし、それまでと同じ仕事量を残業せずに処理していくことが可能なのでしょうか。
 「そもそもワーク・ライフ・バランスは、生産性を上げる取り組みだと考えているんです。まずはデッドライン(期限)を設け、それに向けて業務をこなしていく。当社では、全く私語をせず集中する時間『がんばりタイム』を設けたり、業務内容をできる限り数値化して効率化したり、多くの試みを行っています。二年経過しましたが、納期に遅れたことはありません」と佐藤さん。
 デッドラインを設け集中して業務に臨むことで、能率向上に加え家庭時間の確保にもつながり、労使双方に良い影響をもたらしています。
 同社では、子育てや介護など家庭に重点をおきたい時期とそれ以外の時期でフレキシブルに勤務形態を変えることも可能。社員の要望に沿い、常に働きやすい職場環境の充実を目標に掲げてきた結果、ワーク・ライフ・バランス推進企業として一歩も二歩も先を歩んでいます。


「人が一番の財産です」 株式会社バイオ病理研究所

 国東市に社屋をおく(株)バイオ病理研究所では、病理組織標本の作製と検査を行っています。ここで作られる標本は製薬会社の新薬製造開発などの重要な試験に活用されています。
 研究所の仕事には組織片のスライス、染色など経験を要する緻密(ちみつ)な作業が多く、部署によっては技術の習得に数年かかるそうです。 
  「こういった専門性の高い内容ですので、品質を落とさないためにも信頼して仕事を任せられる人というのは一番の財産です。長年勤めてくれた人が結婚や出産で辞めていくことが悩みの種でした」と医学博士でもある研究所の金林輝彦所長はおっしゃいます。
 そんな課題の打開策として生み出されたのが「大分市内の分室」の設置。
 3年前、優秀で勤続年数も長い社員の結婚退職の申し入れが直接のきっかけでした。結婚を機に大分市に移るという彼女に、なんとか勤め続けていただくための苦肉の策だったそうです。
 「9年間勤めていただいて、知識も技術もある方だったので引き留めなければと(笑)。分室の設置により、結果として社員にも会社にも選択肢が広がりました」。
 今年3月からは、母親の介護のために大分市出身のメンバーが一名分室に加わることに。
 人生の過程では、結婚や出産、あるいは看護や介護など、さまざまな状況が生じます。人生のどのようなステージでも「働き続けられる」環境整備は、今後多くの優秀な人材を惹きつける求心力となるに違いありません。


社員の声 〜分室にて〜
 大分市の分室で勤務する湯浅美穂さんは、組織標本を3ミクロンの薄さにスライスする薄切(はくせつ)という作業を担当しています。
 「分室を作っていただけると聞いた時は、うれしかったですね。主人も大賛成で、すぐに快諾しました。信頼を裏切らないように、頑張らないといけないなと感じています」と湯浅さんはおっしゃいます。今はバイオ病理研究所を、一生働く職場だと考えているそうです。
 家庭では、一歳半になるお子さんの子育ての真っ最中だという湯浅さん。「やはり、これからの企業は子育てしている女性への理解がないといけないと思います。子育てには、子どもの病気など突発的に起こる事情も多いですから」。
 春から二名体制となる分室。湯浅さんは今度はリーダーとして活躍します。仕事と生活をうまく調和しながらいきいきと働く様子が印象的でした。




企業にとってのワーク・ライフ・バランス
 少子高齢化・人口減少社会を迎えた今、企業にとって優秀な人材の確保は必須課題です。社員が求める多様な働き方の提供は、有効な人材確保策となります。
 また、多様な働き方を推進するためには労働時間、ひいては業務そのものの見直しが欠かせません。その結果、不要な業務の排除や効率化を促し、生産性の向上といったメリットをもたらすほか、社員の満足度の向上が仕事へのモチベーション維持にもつながり、企業にプラスの効果を与えることも考えられます。
 企業間競争にさらされるこれからの企業にとって、ワーク・ライフ・バランスは決して「コスト」ではなく、一つの「戦略」となりえるのではないでしょうか。 

募集 おおいた子育て応援団 しごと子育てサポート企業

 大分県では、ワーク・ライフ・バランス社会の実現に向けた取り組みとして、おおいた子育て応援団「しごと子育てサポート企業」の認証制度を設け、登録企業の募集を行っています。
 認証制度とは
 県が子育てをサポートする企業として認証することで、企業のイメージアップや社会的評価の向上を図ります。多くの企業に認証を受けていただくことで、子育て応援社会の実現をめざす制度です。
 認証・登録されると
◎県のホームページなどで広く県民に紹介されます。

◎認証マークを会社案内や名刺に使用できます。

◎この制度と連携した金融機関で融資金利の優遇が受けられます。

 *平成22年1月現在、県内332社が認証・登録されています。


  労政福祉課  tel 097-506-3327

 http://www.pref.oita.jp/14530/work-kosodate/kosodateoendan.html


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