エ.暖房の利用
事前に強制暖房が可能な場合は、内張を外して直接天井ビニールに暖かい空気が十分行き届くように加温する。
固定式の暖房機の場合、設定温度は最低10度は必要と思われる。それ以上の設定の方が効果は高いが、燃料がなくなり数日の積雪に耐えられない恐れがあるので注意する。
また、かなり積雪してから強制加温する場合は、雪が凍って逆に重たくなる場合があるため、積雪初期から加温することが重要である。
(稼働していない暖房機の場合は)燃油量を確認するとともに、暖房機や電源、配線等についても正常に機能するか事前に確認する。
但し、豪雪の場合は停電も伴うので、補助暖房や緊急補強対策も考慮しておく。
一方、加温設備がない場合、過去の事例で、灯油ストーブや、防霜用の園芸ろうそくをハウス内で燃焼させて、積雪による倒壊を防いだ事例がある。この場合、ハウス内温度を上げるには至らないが、熱対流により、天井部の積雪を溶かすといわれている。ただし、いずれの場合も火災には十分注意する。
(注)練炭・炭等の加温は、一酸化炭素中毒になる恐れがあるので原則利用しない。
オ.積雪後の倒壊防止
雪が積もったら速やかに雪下ろしを行い、ビニールが雪でたるみ積雪量が多くなるのを防ぐ。
例1)内側から棒でつついて落とす。
例2)グランド整備のようなT型のブラシ性のもので落とす。
例3)両側にロープを渡して2人で斜め気味に引っ張って落とす。
(注)散水による除雪・融雪については、雪の積雪を防ぐ目的で積雪前から行う場合は有効であるが、積雪後に行うと水を
含んだ雪の重量が予想外に増大し、施設の倒壊を引き起こす可能性があるので絶対に行わないようにする。
片側日照または風向きにより天井部の片側だけに偏って積雪があると主骨に予想外の大きい力が加わり(図4)、ハウスの片側だけを除雪すると逆にパイプハウス倒壊の危険が生ずることもあるので、除雪の場合は初期から行うか、両側均等に除雪する。
また、2年目以降の古ビニールは、滑性が劣り倒壊の危険性が高いので、除雪の順番としては古ビニールのハウスから行う。
最終的に、ハウスの除雪が困難で倒壊の危険がある場合は、ハウス本体の倒壊を防ぐため、ビニールを切ってハウスの倒壊を防止する(写真12)。ビニールの切断は、天井パイプに対して左右対称に行うとともに、肩部だけでなく、天井部まできちんと行わないと、倒壊する場合がある(写真13)。また、連棟ハウスの場合、ビニールを切断しても谷部のパイプ上に雪が溜まり、両端のハウスの積雪に偏りが生じることで倒壊につながる場合がある(写真14)。そのため、このような形状のハウスの場合、谷部の前後にロープを渡して2人で斜め気味に引っ張って落とすなどの措置を別途行う必要がある。
なお、ハウス内に入りビニールを切断する場合には、複数人で入りヘルメットの着用等の安全対策を行い落雪や倒壊に細心の注意を払い作業を行う。
果樹棚等で防鳥・害虫対策のネット等を除去していない場合も同様に、ハウス本体の倒壊を防ぐため、ネットを切ってハウスの倒壊を防止する(写真15)。