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平成19年度 大分県危機管理研修会講演録

印刷ページの表示 ページ番号:0000003239 更新日:2007年6月21日更新

「自治体における危機管理」

講師 フジテレビ解説委員 大林  宏(おおばやしひろし) 氏

日時 平成19年6月21日(木)13時30分~15時30分
場所 県共同庁舎14階大会議室

PDF版 H19危機管理研修会講演録 [PDFファイル/378KB]

 もう20年近く前になるんですけれども、社会部長という事件・事故の取材の責任者になりました時に、当時の上司から「大林、お前危機管理をやってくれ。報道局の危機管理がこれから必要なんだ」と言われました。というのは当時、佐々淳行さん、ご存じと思いますが、あの方が”クライシス・マネージメント”という英語を危機管理と訳して、これがちょっとしたブームになっておりまして、それで、私どもフジテレビの報道局にも、その危機管理の専門家を置きたいということで私が指名されたわけなんです。
 私自身もこれは一体どういうことなのかなと、どうもトラブルばっかりあるから、それをやれということかなあというんで、どうもよくない役割だと思っておりました。
 そういう中で危機管理を始めてまもなくだったんですけれども印象深い事件といいますか出来事がありましたので、その話を、まず皆さんに聞いていただこうと思います。
 今日は「自治体における危機管理」と書いてございますけれども、私はそういうことで報道の生活が長いもんですから、自治体の危機管理と報道、あるいは報道に対する自治体の危機管理、そういうことが話の中心になろうかと思いますので、その辺もひとつよろしくお願いしたいと存じます。
 20年近く前の話なんですけれども当時、東京の世田谷で住民運動がありまして、そこに政治団体の街宣車がやってきて、いろいろ政治活動を続けておりました。当時、それを取材して夕方のニュースで40秒ばかり世田谷でこういう住民運動があるというニュースをやったんですけれども、その政治団体の街宣車に「暴力団の宣伝カー」という字幕スーパーを入れまして、これは大変だというんで、すぐ訂正のアナウンスを入れさせたんですね。「暴力団の宣伝カー」はないだろうということなんですけれども、これは当時のお若い記者がよくわかんないまま、世間並みに考えたというと怒られますけれども、そういうふうに入れてしまったわけです。そうしましたら翌日、当の政治団体から「これからフジテレビにうかがって、お話しを伺いたい」という電話が入りました。もちろん断わるわけにはいかないわけですね。「どうぞ」と言ったんですけれども。
 午後の2時頃に、当時フジテレビは東京の新宿の川田町という、東京女子医大の隣りにありまして、そこの正面ゲートのところにご存じのような大型の灰色のバスが2台横付けになりまして、十数人が戦闘服に身を包んで、どかどかと降りてまいりました。
 会わないわけにはいかないですから、地下の応接室に通ってもらいました。こういう時は一人では会わない、必ず二人以上で会うのが鉄則なんです。これは皆さんご存じと思いますけれども一人ですと、わーっと、ああだこうだ、がっがっがと言われると、何言ってるのかよくわからない。一方で言われたことに対して反論も考えなきゃいけないということになると、ましてや後で言ったの言わないのという話しになったりしますから、必ず二人以上で対応する。もう一つ言うと決定権のあるような、あんまり偉い人はその時は出ないということですね。これは後でお話ししますけれども、上司と相談してみますという時間稼ぎですね。言ってみればですね。私も割合分かっている部下と二人で、地下の応接室に10人ちょっとの戦闘服の人たちを通しまして、そして、普通に名刺を出しますよね。「大林でございます。お世話になります」名刺を出すとき、ついいつもニコニコしてしまうじゃないですか、私もついニコニコしながら、「いや、いろいろご迷惑をおかけしまして、大林です。よろしくお願いします」って、名刺を出しましたら、隊長格の人がいきなり、ガーンと応接セットの椅子のところを蹴飛ばしまして、「大林さん、ニコニコしながらするような話しじゃないと思うんですが」と、こうすごまれたんですね。言われてみればもちろん、そのとおりですね。私の方がよくないわけですけれども、「まあ、まあ」と言いましたら、10人あたりの、その辺の若い連中が「フジテレビはなんだ。俺たちを暴力団とは何だ」って、わーっと2、3分怒鳴るわけですね。これはガス抜きだからしょうがないんですけれども、2、3分続いた後に静かになりましたら、その隊長格が「今日は抗議文を持ってきたので、それを読ませていただいてよろしいでしょうか」。「どうぞ」というと、和紙にきちっと書いた抗議文、フジテレビ殿という、これは私いまも記念に取ってあります。
 なぜフジテレビが我々の政治活動を暴力団と決めつけるのだとか、いろいろ書いてございました。それを隊長が読みまして、私もうなだれて聞いておりましたけれども、それが終わりましたら、私たちはフジテレビに対して要求があるんで、これからそれをお話ししますと、こう言われて8つほどありました。
 一つは社長に会わせろ。二つ目は社長の詫び状が欲しい。三つ目は自分たちの正当な政治活動を暴力団の活動と決めつけた、その根拠を示せ。四つ目は自分たちの子どもが学校に行ったらお前の親父は暴力団かと言われて、みんなからいじめられている。近所の人たちにも、あんたところは暴力団かと言ってると、一軒一軒行って謝ってほしいと、そのほか、そういう間違った記者を出せとか、いろいろございました。もちろんどれも要求に沿うことはできないわけです。例えて言いますと、社長に会わせろとおっしゃっても、フジテレビは規模が大きくて、こういう問題は報道局の問題であって、報道の方で処理するようにと言われておりますので、私たちが責任を持って処理したいと思いますので、社長に会わせるわけにはまいりません。
 社長の詫び状、これも気持はよくわかるんですけれども、いままで社長が自ら詫び状を書いたことはありませんし、私どものしかるべき責任者が謝罪文を書くということは考えられないことではないんですけれども、一応、しかし放送の中でもすぐ訂正もいたしましたし、そこまではどうかなと思うんですけれども、これも上司と相談してみますとか。
 子どもたちがいじめられることについては、それは私どもが学校へ行って、あるいは近所のお宅へ伺って謝ってもよろしいと思いますよとか、ああだ、こうだと、そう言ってる間に、隣からなんだその答えはとかなんとか言われながら、なんだかんだで3時間近く、ああ言えばこう言う、こう言えば、ああ言うと、これはお互い様ですけれども、そうやりまして、5時ぐらいになりましたら隊長格が「今日は、いくら話してもこれ以上進まないから、また明日来るわ」と、「明日までにいい返事を考えといて、ちゃんと上司と相談してよ」と、こういうふうに言われまして、それで立ち上がったわけです。その時に、「せっかくフジテレビに来たんだから、ちょっとゲートのところで2、3分街宣やらせてくれ」と、こういうふうに言ったんですね。
 別に街宣やっていただいたから、どうっていうもんじゃないわけですから、「ああ、いいですよ。どうぞ」って、こういうふうに開き直って言ったんです。
 それを警備の部長さんに何か街宣やるというから俺OKと言ったからって言ったら、「大林さん、何言うんですか。そんなことを許可したら困ります」っていうんですけどね。「いいじゃないの。ちょっと耳塞いでりゃすぐ終わるんだから」と言って、そしたら正面のゲートのところまで行って街宣車にみんな乗り込んで、「フジテレビは我々を暴力団と言った」というようなことを3分ぐらい言って、それで僕がずっと隊長の顔を見てたら、ニコっと笑って、手を振って帰って行ったんです。それが1日目。
 2日目にまた午後2時頃にやってまいりました。今度は黒い乗用車で黒っぽい背広に身を包んで3人でやってきました。黒の背広に3人の男です。目つきも鋭く、なかなかの雰囲気でしたけどね。
 また同じように地下の応接室に通しました。それでまた同じ話ですね。いろいろ上司と相談したんですけれども、やっぱり社長に会わせるということは無理です。私の方からも、たまにはどうかと言ったんですけれどもと、これはでたらめですけれどもね。
 いろいろ言ったんですけれども、やっぱり会社ですから、大きな組織ですからねえ、なかなか聞いてくれないんですよね。謝罪文はというと、謝罪文も過去に例がないし、まあ、私クラスの謝罪文、部長クラスだったら、部長と言っても、皆さんと部長さんと、我々のような会社の部長さんでは、皆さんのところの部長さんというと、我々で言うと局長クラスになると思うんですけれども、我々のクラスの部長は大した部長じゃありませんから、我々、社会部長ぐらいの名前でというのは、無理ではないんですけどというようなことを言って、「そんなんで通ると思ってんのか」ってとか言われて、いやいや、それは納得いかないのは、私は本当に話を伺ってますから、よくわかります
と言いながら、また2時間、ああだこうだ、ああだこうだと結局同じ話なんですけど、2時間やりました。
 「どうもいくら話してもらちが明かんな。今日は帰るわ。また明日来るから」と、こういうわけです。「ああ、すいませんね。何か時間ばっかり稼がせちゃって申し訳ないです。また明日いらっしゃるんですか。それはすいませんねえ」と、これまた心にもないことを言いながら3人が帰っていきました。
 3日目。また2時頃に今度は白い乗用車で、何かセーターみたいなので、二人来ました。隊長と副隊長と、また同じ話です。いや、やっぱり社長に会うというのは、どういっても上司がうんと言わないんですとか、詫び状もお前が書くんならいいけども、それ以上はちょっと出せないと上司が言うんですよねとか、また同じような話をやるわけです。
 そしたら、「まあ、大林さんも役目柄大変だよなあ。俺たちのようなのに、こうやって3日間も相手してさあ」なんて言われたりして、いえいえ、そんなことはありませんって、これも私にとってはいい経験ですからとか、何とか言いながら、また2時間です。
 そうしたら、白いセーターですから、「じゃあ、帰るわ」と、こう言ったんですよ。隊長が、うん、明日来ると言わないんですよ。うん、と思いますよね。そうかと、こう思って、そうしたら思わず僕の方から、一度飯でも食いますかって思わず出ちゃったんですよね。これは、さっきも言ったように向こうも大林さん、大変だよな、役目とはいいながらと、こういうのが出てくると、私も、うん、悪い人じゃないんだなとか思ってきて、まあ、いいか飯ぐらいというようなことをちょっと考えたのか思わず出ちゃったんですよね。ああ、そりゃいいですねと、こういう話になって、そして1週間後に当時、四谷の荒木町という料亭街があるんですが、そこで相手方が3人、でこっちも警視庁の公安担当、右翼担当の記者を入れて3人。6人で飯を食いまして、それでごちそうさんと、こう言われて、いえいえとか言いながら、それで終わったんですよね。
 ああ、終わったわ、何もとくに言ってないしなあという、そういうことで終わったわけです。
 それから3か月ぐらい経って、副隊長の方から電話がかかってきまして、「大林さん、フジテレビの他の番組で右翼が動いてるという話があるよ」と、こう言われたんですね。
 それは当時、「新諸国漫遊記」というのがあって、ああ、これ言うとちょっとまずいかもしれないですけどね。そういう番組がありまして、環7ラーメン街道という、環状7号線にラーメンのおいしい店があるという、そういう企画をやったんですけどね。
 どういうわけか、その番組が1軒だけ全く、他はみんな列が出来ているのに1軒だけ列ができてない店があるんで、どうしてだろうと思って行ってみたと、そうしたら味がちょっとなあと思ったと、そこの親父さんに「客が来ないですね。やっぱ味がちょっとなんですかね」と言って、「親父さん、一緒に向こうの並んでる方の店に並んでみませんか」と言って、一緒に他の店のラーメン食べに行ったんです。
 やっぱ、「こっちの方がうまいですね」と言って、その親父と話しをしたのを、そのまま放送しちゃったんですよね。そうすると、その親父さんがなんで俺を馬鹿にしたっていうんで、知り合いの右翼に相談したと、こういう話なんですよ。それで右翼が動いてるから気をつけた方がいいよという、お知り合いになったもんですからね。言ってきてくれたわけですね。
 それですぐ担当者を呼びまして、こうなってるからって言ったら、わかりましたって、じゃあ何とかいたしますって、もう翌週ですね。環状7号線に大変うまいラーメン屋があったといって、うまくないはずのラーメン屋が、どういうわけかうまいラーメン屋になって、もう20年近く前の話ですから、時効ですからあれなんですけども。
 そういうふうに何か情報を入れてくれるようになったというか、ですから7時間もああだこうだと、お互い分かっていながら言い合ってきたというのが、何となく通じるものが出てきたのかなあというような感じが私自身は持ったわけです。
 こうした経験から言いますと皆さんもこういう政治団体が何か言ってくるというようなことがあろうかと思いますけれども、できる限り相手の話を聞いてあげるということが一つ重要なのかなと、もちろん皆さん忙しいわけで他の仕事があるともちろんできないんで、そういうことを聞く人が必要なのかなということです。
 それから、もう一つは毅然とした態度を崩さない、譲れないものは譲れないということはずっと一貫して、とくにお金の話しになると、お金は払えませんよと、口で言う言わないは別にして、それをはっきり態度で表わすということです。
 それから、これも重要なことですが、警察とか弁護士さんに相談すること。それから、もう一つ相手が誠意を見せて欲しいと言いますと、これお金のことなんです。これについて金をくれというと、これは恐喝罪になるんですね。ですから、政治団体とか暴力団は、これはまたいろいろ経験しましたけど、いくら欲しいということは絶対言いません。普通の人でしたらフジテレビの何とかで怪我をしたんで、その治療費を5千円欲しいとか1万円くれとか、何かこういうことがあって、私はこういうお金を払ったんで、それを返してくださいという主旨の言い方をします。
 しかし、どんなに堅気のサラリーマンに見えても、その辺の奥さんのように見えてもその人と話してる時にフジテレビに誠意を見せていただきたいんですよねと、こういう言葉が出てきたら必ず後ろに政治団体とか暴力団がついてると、こういうふうに考えて間違いありません。これまでの経験、みんなそうでした。経験といえば、いろんな経験をしましてですね。
 それから、お金を払うということですね。これはあります。さっきも言いましたように、警察官とか弁護士さんに相談して、どう考えても私たちの場合ですと放送で人権を侵害しているということがあると、これは訴訟になってもフジテレビが負けると、だからお金を払うのは当然でしょうと、こう言われて払ったことがあります。
 これもあんまり話しをすると特定の人間が出てくるんで言えませんけれども、ある時、麹町税務署に立てこもった右翼の男がおりまして、これを放送した時に、実は公的機関に、それよりもずっと前に有名なところに立てこもった右翼がおりまして、それが、ちょうど同じような事件ですから、これまた若い人が、そういえばあんな事件があったんですよねとか、何とか言いながら当時の立てこもった人が引き出されてくる映像を、かつてこんな事件がありましたっていって放送したんですね。
 そしたら、時間が経ってましたから出所してたわけです。もう一般人ですから顔が出てるわけですよね。これはもういかんともしがたいですね。これも政治団体の人でしたけれども。
 これは同じですね。会った時に話しをしましたけど、まず弁護士さんに相談したら「まあ、10万か20万は払わなきゃね」と言われました。警視庁の公安部の公安3課というのが警視庁の場合は右翼を担当してるんですが、そこの課長にちょっと聞いてごらんと言って、うちの担当者に言ったら、課長がこう言ったというんですよ。天下のフジテレビだから10万20万というわけにいかんでしょうと、うちはその頃景気よかったですからね。せめて40万か50万じゃないと、こう言われたっていうんですよ、警視庁の課長がですよ。うーんっていうんで、これも私の上司と二人で会いました。
 そういうことで、私はポケットに50万円現金で入れておりまして、彼が来ました。同じように地下の応接室に通して、うちの息子が学校に行ったらお前の親父は前科者かと言われたと、どうしてくれるんですかっていう、もうさっきの話しと同じですね。この世界の人たちはね。誠意を見せていただきたいと、こう言われたわけです。
 私も神妙な顔をしながら、誠意を見せてくれというのは、非常によくわかります。大変恐縮ですけれども、こういう時はお金でお支払いするしかないと思いますので、これに現金を用意いたしましたので、50万円受け取ってくださいって、ボンと机の上に出したんですよ。相手は、おおっという顔をして、どうぞ中を確かめてくださいっていって、ぱぱぱっと見て、いや、分かってくれりゃいいんですって、こう言ったんですね。 そこで、嫌みの一つもというので、いや、大変恐縮なんですけど、嫌ならいいんですけどね。フジテレビは一応株式会社なもんですから、できたら領収書をいただけませんかって、嫌みですけどね。そうしたら彼はいやいや、そんなって、嫌なら別によろしいんですけれどもっていうことで、彼は帰っていきましたけれども、それで終わりました。
 皆さんの場合ですね。同じようになんかのことで、きちっとしたお金を払う理由があれば、それはお金を払っていいわけです。私どももこういうことで権利を侵害したので、相手はそれは暴力団であろうと政治団体であろうといいんですけれども、払いましたと。落ち度ですから、あんまり胸を張って言える話じゃないですけどね。
 言えるわけですからいいわけですね。皆さんも、皆さんがお支払いになると、これは税金を使ってということになりますから、いろいろ、それは市民の皆さんから言われるでしょうけれども、しかし、きちんとした理由があって払う分には、それはこういう理由で払ったと言えばいいわけです。ただ、こういう理由で払ったというのが何となく言えないような、何となくうるさいから、もうめんどくさいと言って払っちゃったりすると、今度は逆にどうでもいいのに払ったと、それも払ったことがオープンにできないというところを相手はさらに突いてきますから、さらに払えという話しになりますからね。これは気をつけなきゃいけない。
 ですから皆さんも市民の皆さんに、こういう私どもの落ち度があって、これだけのお金を支払いましたと、胸を張ってというと違いますけれども、きちっと釈明ができる。そういうものについては、堂々とお金を払っていいということを申し上げておきたいと思います。
 それから先日、長崎の伊藤市長の狙撃事件がありましたので、あえてお話しいたしますと政治団体、あるいは暴力団などに会う時は、あまり通常の仕事場所では会わない。 長崎の場合は、彼が抗議を言ってきた時に、そういうセクションに連れていって、部長さんが会ったというような報道がなされておりましたけれど、そういう人たちを仕事場に連れていきますと、話しがややこしくなるんですね。
 なぜかというと、仕事をしている他の人たちもその人を意識しますし、それからそういう類の人たちはパフォーマンスといいますか、他の人たち、関係ない人たちにあえて聞かせるために大声をあげたり、そういうことをしますので、ですから、できれば地下の応接室だとか、別棟の部屋とか、そういうちょっと離れたところの部屋を、それようにというとあれですけど、それように準備しておくと、もちろんいつも準備しておく必要はないんで、そういうことが起こって、1回会って、これはどうも長引きそうだなというような時にはそういう部屋をあえて準備するということが必要かなという気がします。
 それから、事前に危険を感じたらこれは警察官とか、警備の人に頼んで、例えば隣の部屋にいてもらうとか、私どもの最初のお話の時に10人来た時には、私は後で知ったんですけど、地下の応接室4部屋ありまして、片方には地元の警察の右翼担当者、二人来ておりまして、反対側には私どもの警備会社の幹部が3人詰めていて、何かあったらすぐ飛び込めるという体制を取っていてくれたと後で聞きました。
 それから、警察官はどんなことを言いました、場合によっては恐喝罪で逮捕できますからと言いますけど、そこでまた脅されたからっていうと、そしてまた逮捕だなんていう話になると、また話がこじれますますから、いや別にそんなことありませんでしたよと、これは、またそこで逮捕だというと話しがどんどんこじれてきて、どうしようもなくなりますから、そういう時は別に何もありませんでしたというほうが良かったのかなと、事実私どもそうしたわけですが、いいのかなという感じがいたします。
 そして、じっくり話しを聞いて相手の態度をよく観察して、本当に危険なのかどうか、長崎の場合は2年ぐらいは連絡もなくて、もう終わったと思ってたというような話もありましたが、ああいう場合は極めて特殊なケースだと思いますけれども。そういう危険かどうかという判断も重要なのかなという気がいたします。
 逆怨みというのもありますけれど、いずれにしても警察に相談するということは大切じゃないでしょうか。
 先ほども申し上げましたけれども、最近は民事介入暴力よりも行政関連の暴力というのが多いということで、政治団体がなんだかんだとクレームを付けてくるということがあろうかと思いますけれども、さっきも申し上げましたが相手の話しをじっくり聞いてあげるということ、それからこちらの態度は毅然たる態度で臨むということ、それから警察や弁護士と相談するということ、できればさっきお話しした独立した部屋を準備して二人以上で対応すると、あえて言えば決定権のある人は同席しないと、必ず上司と相談するという時間的な余裕を持たせるということですね。
 いまお話ししましたのは一つの例ですけれども、このように政治団体だとか暴力団だとか、いろいろ言ってきます。テレビ番組についてはクレーマーという、何かあるとすぐクレームを付けてくるという、そういう人たちもいまして、そういう人たちへの対応もありますし、それからいろんな団体がありますから、そういう人たちへの対応もありますし、いろいろケースバイケースなんですけれども、ただこれまでの私の経験から言うと、何かで話しがこじれることがあるけれど、しかし、これは時間をかけてやればいずれは解決するということで、そのこじれたことによって、例えば会社がつぶれるとか、あるいは社長の首が飛ぶとか、一般企業の場合ですが、そういうことはありません。時間をかければ何とかなる。
 ところが、ここ数年テレビの報道を見ておりますと企業で何か不祥事があって、それが表に出た場合に社長とか副社長とか、そういう立場にある人がテレビの対応を誤ると、これは社長の首が飛ぶ、あるいは会社がつぶれる、そういうことがある。ここ数年、そういうことが続いておりますので、この話をいたします。
 例えば、もう2000年のことになるんですけれども、皆さん覚えていらっしゃると思います。雪印乳業が期限切れの牛乳を販売して食中毒事件を起こしました。その時に雪印の本社か何かで、エレベーターホールのところで、当時の雪印乳業の社長が報道陣に囲まれて報道陣がみんな夜も眠れないで苦しんでるんですよと、牛乳のせいじゃないですか、どうするんですかと詰問しましたら、その社長がかっとなって、僕だって寝ていないんだと、こう言ったんですね。皆さん覚えていらっしゃると思いますけれども。これが毎日毎日、ニュース、ワイドショーで何度も何度もそこの部分が放送されて、とうとう、その社長さんは社長をやめました。その社長がどんな人か、ほとんど誰も知りません。その一言が何度も何度もテレビに流されて、あの社長はひどい人だと、こうなって、そして社長をやめました。
 2年後に同じ雪印の系列の雪印食品という会社があったんですが、これはBSEの問題で牛肉のごまかしをやっていて、これを追求されて雪印食品という会社はもうなくなりました。それがオープンになって解散してしまいました。
 それからさっきの雪印乳業の話しですが、いまは雪印というブランドの牛乳は販売されておりません。
 あるいは浅田農産という、これは兵庫県の会社ですが、京都の養鶏場で鳥インフルエンザが発生して、これをしばらく隠していた。そして報道陣に追求されて創業者の老夫婦と、二代目の現社長が記者会見をして、徹底的に追求されました。その夜に創業者の老夫婦は首を吊って自殺しました。浅田農産は裁判でも負けて、いまは人手に渡ってしまったと聞いております。
 いまのテレビの報道は、あるいは情報番組、ワイドショーこういったものは、いい悪いは別にして、いまのテレビはそういう力を持っているということなんです。そういうものだと認識して対応しなければいかんということなんですね。
 一方、政治の世界、お話ししますと、政治の世界でも失言というのがよくあります。最近では柳沢厚生労働大臣の「女性は子どもを産む機械」という発言がありました。  これも国会などで野党や女性議員が追求して彼がひたすらあやまっているという映像が流れました。ところが実を言うと、これは島根県の松江市で地元の県会議員の激励会で柳沢さんが講演したもので、地元のテレビも、ほとんどそれを撮影しておりませんで、共同通信が原稿にして、それを配信してオープンになって、柳沢はひどい発言したと、こうなったんですね。つまり、どこにも柳沢さん自身が発言をしている映像も音も実はないんです。ですから、テレビは柳沢さんの別の映像にアナウンサーや声優のアテレコというのを入れて、それふうにやっているだけなんです。柳沢さんがどんな顔をして、そういうことを言ったのかというのは実は分からないわけですね。
 ですから、皆さんもこうやってみると柳沢さんがそう言ってる映像がないんですから、思い出せないと思いますけれど、もう一つ迫力がない。やっぱりテレビは、その映っている人が生でどういう顔をして、どういう声で、どういうふうに喋ったかという、これが大変に大きな力を持つということなんですね。ですから、そこが活字と違う。そういうことではないかと思うわけです。
 一方テレビをうまく活用しているのは、ご存じの宮崎県の東国原知事ですね。この間の日曜日も県議会の応答が何かとか、どこかのテレビで放送されておりましたけれども、これは元タレントというだけあって、テレビの機能をよく知っている。どうやったらテレビが動くかということも知っているということではないでしょうか。
 どうやったらテレビが動くかというのは、例えば特産品一つを取り上げても、いつもの特産品だと取り上げようがないんですが、これが実は去年や一昨年とこういうところが違うんですよ。こういう新しいところがあるんです。ということをテレビに宣伝すると、そうするとテレビは取り上げます。テレビ報道、新聞も含めてですが、どうしたら取り上げるかというと、ある種のニュース性を一つ付け加える。こじつけでもいいんですよ。ニュース性を付け加える。いままでにない、こんなところが新しいんです。それから話題性、これは例えば地元出身のきれいなお嬢さんが何かやったとか、いうとそれは地元の話題になるわけですから、そうすると今度はワイドショーまでが取り上げると、こうなるわけです。ニュース性と話題性、これは屁理屈でもいいんです。なぜかというと放送した方も何で、あんなことを取り上げるんだって視聴者から言ってきます。そうすると、いやこれはこういうニュース性があったから取り上げたんですっていう、放送する側も、やる以上はやっぱり理由がなければ、いけないわけですね。そこはテレビと、それから放送してもらいたい、そこの持ちつ持たれつというところなんで、テレビ局もどうでもいいようなものを放送すると、なんであんなものを放送するんだよってこられると、いやこれは、こういうところにニュース性があって取り上げてるんですというと何となく胸を張って放送したことの言い訳ができると、こういうことなんですね。
 ご存じのように東国原さんの、あのテレビ出演、電通が調査して、知事に就任して1週間で165億円の宣伝効果があったと、ご存じだと思います。1週間で22時間半、出ていて、これをCMに換算すると165億円だというんです。あれからもう4か月ですから、何千億円のPR効果、CM効果ということになろうかと思います。
 東国原知事もテレビをそういう意味では知り尽くしている。それから前の総理の小泉さんも知り尽くしている。政治家というのは、いかにいまはテレビを利用するか、利用するというと悪いですけど、活用するか、そういうことを考えてテレビ番組に出ているというふうに考えていいかと思うんです。
 そして、そのテレビの前でしゃべることは他の新聞や、あるいは雑誌のインタビューに答えて、それが活字になるのとは全く違う。よくも悪くも視聴者に対する影響力というのは格段に違うわけです。それはお話ししたとおりです。
 言葉を変えると、かつてはどういう内容をしゃべったか、何をしゃべったか、それが新聞の原稿になり、テレビの原稿になって放送されていたわけですが、いまはその内容がどうかということに加えて、どういう顔をして喋ったかとか、正面を向いて自信たっぷりであったとか、下を向いて何か目がキョロキョロして自信がなさそうであったとか、あるいはネクタイをきちんと締めていたとか、無精髭を生やしてだらだらしてたとか、そういうことでその人物が評価される。内容ではないということなんです。
 ついでに言っておきますと、アメリカの心理学者でメラビアンというのが第一印象の法則というのを言ってるんですね。
 人は見掛けで判断する、見た目で判断するが55%。耳から入った印象で判断する、これが38%。見た目で判断するが55%。耳から入った印象で判断するが38%。話しの内容が論理的かどうかということで判断する、わずか7%。人は見た目、耳から聞いた印象、これで判断されるということなんです。
 ここまでは、テレビ取材に対処することの大切さ、あるいはテレビカメラの怖さ、あるいはテレビを活用した時の効果の大きさ、こういうことについてお話しいたしました。
 それではここで、自治体の危機管理について考えてみましょう。一般企業の危機管理というと、これは倒産であったり、あるいは会社の消滅ということになるんですね。ですから、企業の危機管理というのは、会社の作った製品に問題があった、あるいは社員に問題があった、あるいは組織ぐるみで不正があった。そしてそれが発覚した時に、この危機管理が大切になってくるということなんです。いずれにしても不祥事が危機管理の対象になる、すべてだということですね。
 ところが、自治体の危機管理というのは、それだけではない。自治体の危機管理というのは、もちろん組織内の不祥事ということも大きな要素ではあるんですけれども、それだけではない。
 どういうことかと言いますと、大きく分けて3つあります。一つは自然災害、これは地震とか台風とか、あるいは津波だとか洪水だとかですね。二つ目は人的な災害。小学校や幼稚園などの、事件とか事故、あるいは原子力関連施設の事故、大規模な列車事故、工場の爆発、あるいは疫病とか、食中毒、薬物中毒、こういうものが入るでしょう。三つ目は自治体職員の不法行為、公金の横領とか、公務員の交通事故、飲酒運転、汚職、あるいは組織ぐるみの談合、痴漢とかセクハラ、こういったものもありますね。最初の自然災害、それから二番目の人的な災害、これは規模の大きいものについては自衛隊だとか、消防庁だとか、あるいは海上保安庁だとか、国土交通省だとか、いろんなところが絡んできますから、ほぼ県単位のものになってくるということですね。
 それから人為的な災害の中でも工場の爆発とか、大規模な列車事故、あるいは原子力関連施設の事故、こういったものは民間企業が殆ど関係しているわけですから、民間企業の問題になる。ですから自治体としてやることは、これは住民の安全を守ること。それから、場合によっては避難させる。住民を避難させる。あるいは保護する。そして、そのための道路だとか、あるいは通信手段などのインフラをいかにして素早く整備するかということです。
 これらがうまくいかないと、自治体は例えば危機への対応が遅いとか、対策の内容が不十分だったとか、あるいは情報を隠していたとか、市民への説明責任を果たしていないとか、そういうふうにして市民の批判を買うことになるわけですね。納税者の信頼を失うということです。
 専門家によりますと、危機管理の最大のもの、これは戦争だと、あるいは侵略だと言われております。しかし、日本では憲法で交戦権は否定されております。憲法9条の改正などがいま話題になっておりますけれども、日本は戦争について真剣に考えるということは、これはタブーになっておりますから、そのせいかどうか分かりませんけれども日本の指導者は、どうも危機管理の指導、これがお粗末ではないかということが、これは世界的にも定評になっています。
 具体的な例を振り返ってみますと、まず9・11のアメリカの貿易センタービルの、あのテロですね。現地時間の2001年の9月11日、2機目が突っ込んだのが午前9時3分です。1機目は8時46分。私もまだ現役で当時夜のニュースを担当しておりまして、10時前に1機目が突っ込んだのをABCテレビで見まして、NHKが10時からニュースをやって、2機目が突っ込んだのを見た時には1機目は事故かな、何かなあなんてみんなで言ってたんだけど、2機目は、もう、これはちょっとおかしいよという、何の情報もないわけですけどね。そうしたらうちの編集長が、「大林さん、特番やれ。特番」っていうわけですよ。特番っていったって、何もわかんないのに何やるわけって、いや、とにかく特番ですっていうんで、10時半から、訳もわかんないままやりましたね。もちろんやってるうちに次々に新しい情報が入ってくるわけですけれども。
 この時にアメリカの連邦航空局、これは2機目が突っ込んだ午前9時3分、それから22分後の9時25分にはすべてのアメリカの航空機、軍用機の飛行を停止して、全部近くの飛んでる飛行機は空港に着陸させたんですね。22分。ですから22分後に飛んでるのは怪しい飛行機とこういうことになるわけですね。
 この素早い対応というのは、ブッシュ大統領とチェイニー副大統領の決断だったわけですが、これが当時非常に高く評価されました。
 その後、それがイラク戦争につながり、いまブッシュ大統領の支持率は最低という感じですけれども、当時の、この素早い対応、これは高く評価されました。
 一方の日本ですけれども、平成7年1月17日。ご存じの阪神大震災がありました。6000人を超える死者が出たのは皆さんご存じのとおりです。兵庫県知事が自衛隊に対して出動を要請をしたのが震災の4時間後。これは当時からずっと批判されました。この時の村山富市総理、大分県の方だそうですけれども、この人も具体的な指示を出さなかったということで、これも批判を受けました。
 もう一つ、その翌年の1996年、平成8年にペルーの日本大使館で人質事件が起こりました。当時のフジモリ大統領の強硬策が功を奏して人質が救出されました。
 当時の橋本総理、私と同じ岡山出身なんですけれども、橋本総理は状況を見て判断したいと、こう言ったというんですね。つまり何の決断もしなかったと、橋本総理の決断のなさというものが後で非難されました。
 どうも日本のリーダーは決断するのにスピードが足りない。何かモゾモゾしてると専門家は言ってるわけですね。
 一方、鳥取県では平成12年に鳥取西部地震がありました。当時、片山知事でしたけれども、彼は当選した時に防災対策を掲げていたんですね。地震の1年前、たまたまなんですけど、消防庁や自衛隊を集めて県と一緒に防災訓練をやっておりました。
 この時に片山知事は防災担当の係長を防災監という部長級の待遇に上げて、事件事故が起こった時には、防災監が全面的に指揮を取ると、そういうふうに防災担当の地位を上げたんですね。これが功を奏したと言われております。
 いまはこの大分県にも防災監がいらっしゃいますけれど、全国でかなりの数の県で防災監が、防災担当者といいますか、います。東京都なんかでも全部ちゃんとあります。
 東京都などは、この間お話しした時には、北朝鮮が攻めて来たらどうするかというようなことを、いろいろと研究してるというようなことを言っておりました。つまり鳥取とか、鳥取県もそういうことを研究してるんですが、鳥取とか島根に上陸してその後、どこを通って東京まで来るのかとか、そういうことをいろいろ研究してるというふうなことを言っておりました。
 こう見てまいりますと、危機管理の要、これは自治体の長の、つまり知事さんであり、市長さんであり、町村長さんでありということですね。長のリーダーシップ。これによるところが非常に大きいということがわかります。
 皆さんもそういう、自治体の長の立場であり、また将来、いまは補佐する立場であるかもしれませんけれども、将来は長の立場になる方も大勢いらっしゃるでしょうし、もちろん長の立場の方も今いっぱいいらっしゃるということですが。
 そこで危機に際してリーダーに求められるもの、これについてお話ししましょう。危機の際にリーダーに求められるものは3つです。
 一つは決断力。一つは決断力。二つ目は指導力。二つ目は指導力。三つ目は連帯感の育成。連帯感の育成。この三つです。
 指導力というのは地震であれ、噴火であれ、あるいは原子力発電の事故であれ決定には時間をかけることができません。時間をかけることができない。
 ですから、会議を開いて全員一致なんていうことはありません。あってはならないということです。リーダーが自分で決断する。このスピードが求められるということです。
 危機に際しては会議はいらない。リーダーが自分で決断する。これですね。そして決断というのは一体、じゃあ何かというと優先順位を決めるということです。優先順位を決める。何を守るのか、何を見捨てるのか、もっと言うと、どっちの命を守って、どっちの命を捨てるのかということです。
 非常に厳しいわけですけれども、さらに申し上げると決断して命令したら、それを訂正したり、撤廃したりしてはいけないということです。訂正や撤廃はいけない。訂正すると現場が混乱します。命令を発したら後は待つだけです。忍耐力がいるということですね。よく状況に応じて適切な処置を取れというようなことを言う人がいますが、これは無責任の典型です。こういう曖昧な抽象的なものは駄目です。
 あえて言えば現場に全権を移譲する、現場に全権を移譲する責任は俺が取る。ここまで言わないといけないということですね。
 二つ目の指導力、これは自分について来てくれと言う気概のようなものですが、リーダーは常に見られているわけですから、いろんな人からですね。普段から事があっても動じないという、そういう姿勢を見せなきゃいかんということですね。
 平常時から信頼されていないといざという時には誰も信頼してくれないということです。
 三つ目の連帯感の育成。これは危機に際したらリーダーを中心にしてみんなで取り組むんだという気持をいつも持たせるということですね。部下の皆さんをね。そのためには、日頃から部下の皆さんがどういう性質なのか、気質なのか、そういうものもよく見抜いていかなきゃいけないし、よく話しもしなければいけないということです。職員の能力、性格などを掌握するということですね。以上がリーダーに求められる三つの要素。決断力、指導力、連帯感。
 次は事が起こってからの問題ということになります。事が起こってからの問題。危機管理の第一歩、それは情報の収集と情報の管理です。情報の収集と情報の管理。通常の報告は5W1H。我々マスコミもそうですけれども、誰が、いつ、どこで、何を、なぜ、いかにしてという。5W1H。通常はですよ。
 しかし有事の際はこんなことにこだわっているわけにいきません。全部がわかるわけじゃないんですね。ですから、完全な報告をしようとすると手遅れになります。したがって、完全なものでなくても、分かっているものは素早く報告する。完全でなくても分かっているものは素早く報告する。その後、断片情報が次々に集まって情報が完成していけばいいわけであってね。
 ですから、正確な情報でも機を逸すると何の役にも立ちません。危機に当たっては、巧遅、完全で遅いという、巧みに遅いと書きますが、巧遅よりも拙速、不完全だけれども早い。拙速。この拙速の方が優先されるということです。
 それから、情報収集者の役割。これは三つあります。情報を収集する者の役割。これは現場に行って情報を見て、そして報告する人ですが、一つはとりあえずの第一報。とりあえずの第一報。二つ目は悪い情報ほど早く。悪い情報ほど早く。三つ目は、迷ったら報告する。どうしようかなと思って迷ったら報告する。この三つですね。
 何かおかしいとか、もしかしたらとか、念のためと、そういう感覚を持って空振りを恐れない。逆にリーダーの方は、その情報が間違っていても、お前駄目じゃないかと言って怒ってはいけないということです。
 リーダーが怒ると情報はもう上がらなくなります。遅くなります。リーダーが間違ってるじゃないかと怒ると、じゃあ正確なものをと思うと時間がかかって、気がついたらもう機を逸していると、こういうことになりますね。
 ですから、間違ったからといってリーダーの立場の人は怒ってはいけません。怒ると報告が遅くなって、間に合わなくなるということです。
 それからもう一つ迷ったら報告ということに関連して、定時報告というのを決めるのがいいと専門家は言っております。定時報告を決める。
 これはある時間に変化があろうとなかろうと報告をする。その時間になって報告がないということは何もないということではなくて、異常事態だということなんです。時間に報告すると決めてるのに何も報告がないのは何も報告するものがないからではなくて、異常事態が起こってるから、報告が届かないということなんです。
 ですから定時報告をする。これは非常に有効なことだそうです。そして定時に報告があれば何もない、あるいはこういう動きが新たに出てきたという報告が入ります。
 報告がないということは報告が届かない何か異常事態が起こってると、そういうふうに受け取った方は理解しなきゃいかんということですね。
 ここまでは大規模災害といいますか、自治体の危機管理のうちの天災、あるいは人的な災害、こういったものについてお話ししましたけれども、いずれにしても大きな災害の時は例えば何らかの判断ミスがあったから人がこれだけ大勢死んだとか、そういうことが的確にね、的確に証明できるようなことがない限りは、リーダーの責任が問われることはありません。先ほどお話ししたように阪神大震災の時の兵庫県知事、あるいは村山総理。批難はされましたけど責任は問われておりません。その後はこうやって私が話すと、みんな、ああ、そうだったなと思い出しますけど、ほとんどみんなもう忘れているわけです。
 これはなぜかというと対応が遅れた。あるいは自衛隊の出動が遅れたと言っても、遅れたことは事実なんですけれども、じゃあ自衛隊が早く行ったら、その人たちは何人か助かったのか、そんなことは誰もわかりません。この間も東京都の石原知事が阪神大震災の時のあの兵庫県の対応は何だ6000人も死んだじゃないかというようなことを何かの時に、つい最近言いました。そうしたら兵庫県がすぐ反論しました。あの時は家屋の倒壊で死んだんであって、自衛隊がすぐ行ったからといって助かったわけじゃないと、こういうふうに反論しておりました。つい1週間ぐらい前のことだと思います。
 つまりこういうものなんですね。誰も6000人死んだのが、例えば自衛隊が出動したら2000人で助かったのかと、そういうことは証明できないわけです。ですから批難はしますけれども責任を取れというところまではいかないんです。
 ですから、こういうことを考えるといま話題になっております社会保険庁の5000万件の、例の年金の宙に浮いたというものも、一体社会保険庁があるいは厚生労働省が、当時の関係者は一体誰が責任を取るのかというといまこそこうやって大きく騒いでますけれども、私は多分誰も責任取らないまま、うやむやになってしまうのかなと思うんですね。何かいまそういう感じかなあという、皆さんどうお考えかわかりませんけれども。
 自治体の場合、テレビや新聞やメディアが集中的に批判をする。これはどういうことかというと職員の不祥事です。職員の不祥事の時はメディアは一斉に叩きます。民間企業の評価の対象というのは物なんですけれども、例えば販売した車が欠陥商品であったとか、販売した牛乳が腐っていたとか、そういうことで批難されるわけですが、自治体の場合は物ではなくて人なんですね。職員です。公務員、役人、こういう人たちが評価の対象になるわけですね。
 ですから公務員の不祥事、これに対する危機管理がもし失敗すると住民、納税者の大きな批難を浴びることになります。ですから、これまでお話しした地震とか台風とか津波だとか、あるいは鳥インフルエンザだとか、あるいはBSEだとか、そういう災害対策と、それから自治体職員の不祥事、これは自治体の危機管理のいわば両輪になると、主要な二つの輪、両輪になるということです。
 公務員あるいは自治体職員の不祥事についてお話ししますと、公務員の不祥事というのは二つに分けられます。一つは公務に関するもの、もう一つは公務以外のもの。公務外のもの。公務に関するものと公務外のもの。
 公務に関するものとしては、もう皆さん御存じのとおり官製の談合、汚職、横領、セクハラ、あるいは学校での生徒に対する体罰。こういったものがあります。公務外では酒酔い運転による交通事故だとか、喧嘩とか、痴漢行為だとか、いずれもテレビや新聞で大きく報道されて市民のひんしゅくをかうことになります。
 ご存じの大阪府のノック知事、この間亡くなりましたけれども、セクハラ事件は1000万円以上の賠償請求をされましたし、三菱自動車のアメリカ法人の和解金は、実に49億円と、これも覚えていらっしゃる方が多いと思います。
 こうした場合の報道への対応について少しお話ししていこうと思います。報道関係者への記者会見。これは公務に関するものについては直接責任ある立場の人が記者会見をするということになります。不法行為の程度にもよるわけですけれども、市長、助役、あるいはこれに準ずる人、公立の学校なら校長、教頭。警察官の不祥事なら県警の本部長、警務部長。こういうふうになります。各警察署長ということもあります。自治体の不祥事、公務員の不祥事の場合、メディア、テレビや新聞が、つまり取材者が考えることは三つです。
 一つは組織ぐるみではないのか、組織ぐるみではないのか。二つ目は構造的な原因があるのではないのか。構造的な原因があるのではないか。三つ目は以前にも同じようなことがあったのではないか。この三つです。
 この三つをよく頭の中に入れておいていただいて、取材する人間は、こういうことを考えながら聞いているんだと思って発言をしてください。
 では、万一不祥事が起こった時のテレビ会見、あるいは記者会見についてお話ししておきましょう。冒頭にお話ししました雪印乳業の社長の私だって寝ていないんだという発言。これがどうして私たちの脳裏に非常に鮮明に印象を残しているのかといいますと、これはあのVTRが繰り返し、繰り返し放送されたからなんです。
 読売新聞の渡辺恒雄さんが3年ほど前になりますが、プロ野球の選手会ともめて1リーグだ2リーグだというときに、古田会長がオーナーの皆さんと話しをしたいんですよねというようなことを言って、記者が渡辺さんに選手会のみんながオーナーの皆さんと話しをしたいと言ってるんですよねって言ったら。渡辺さんが、なに、選手の連中が、たかが選手の分際でと、こう言ったんですよ。このたかが選手の分際でというのも、皆さんご存じだと思いますけれども朝から晩まで何度も何度も流されて、そして、これはスポーツの話でもありますから、ニュースだけじゃなくてスポーツ番組でも流されて渡辺恒雄というのはひどい老醜をさらしてる人だという話しになって、権力者だと。一方の古田は、昼はそうやって選手会の会長として頑張って、夜はナイターで頑張ってるって、こんな素晴らしい人はいない。今、古田のヤクルトはさんざんですけれども、ところがこのあいだ、若い人を相手に理想のリーダーというと2位だったんですね。1位が所ジョージでしたけどね。だからまだ古田はいいイメージが残ってるわけです。ナベツネさんは相変わらず嫌なおやじさんという、そういうのが残っている。それがテレビだということですね。
 ですから、テレビカメラの前で何かを釈明する時は、このごく一部を繰り返し、繰り返し放送されるんだということを考えて話さなければいけないということなんです。
 逆に言うと短いコメントを作って、これを繰り返し話す。それ以外のことは一切話さないと、こういうことなんです。
 そこで釈明のためのテレビ会見についてお話しいたしましょう。記者から質問されることは4つです。記者から質問されることは4つ。
 これはどんな記者でも結論は同じですから4つです。一つは現状はどうか。何か不祥事が起こった時に現状はどうなのか。これは原因とか経過なども含めて、現状はどこまで把握なさってるんですかということですね。原因とか経過も含め。二つ目どう対応するのか、どう対応するのかというと、これは民間企業の場合は中毒を起こした当事者、被害を受けた、一般の消費者に対してどう対応するのか、お役所の場合、例えば加害者が職員であった場合は、その加害者には役所としてどう対応するのか、それから被害を受けた人がいるなら被害者にはどう対応するのかということですよね。
 あるいは、加害者が一般企業の場合は、企業に対してはどういうことを科するのかということですね。被害者と加害者に対して、いずれにしてもそれぞれ立場が違ってくることがあるわけですが、どう対応するのか。それから今後の再発防止策、それから最後は職員の不祥事なら、誰が責任を取るのか。誰が責任を取るのか。この4つです。現状はどうか、どう対応するのか、今後の再発防止策、それから誰が責任を取るのか。
 ですから、不祥事が起こったら、まず想定問答集を作るということです。想定問答集。これは役所の専門の部署の方、それから弁護士、こういう人を入れて、この4つについて想定問答集を作るということ。そして記者会見をする人を、この想定問答集から絶対に外れない、どんな嫌なことを聞かれても、それはこうなんですよねって想定問答集にしたがって答えると、答えになってなくても、その想定問答集にしたがって同じことを言うということなんです。
 ここでついカッとなって思ったりしたことを言ったら、これは混乱してきますから、そこであえて、しらを切って想定問答集に沿って答えられると、そういう腹を据えなきゃいかんということですね。
 そしてテレビ会見のポイントこれは三つあります。
 一つは説明は完結に事実のみを話す。二つ目は嘘はつかない。三つ目は情報を一元化する。説明は簡潔に事実のみを話す。嘘はつかない。情報の一元化。
 説明は簡潔に事実のみを話す。これはその時点で分かっていることだけを話すということです。原因についてわからなければ、ここまではわかってるんですけど、これ以上のことはわかりませんので、いま調べておりますと言えばいいわけですね。
 それから、話したことがそこまでは事実だというふうにして思うんですが、これが実は真実かどうかというのは、これはわかりません。真実かどうかは1週間、2週間経って、ああ、あの時、あれが事実だと思ってたけど、違ってたよなというのはあるわけですから、その時点で分かっていること、つまり事実をそこまで話すということなんですね。
 説明は、これは分かりやすいことが原則ですけれども、聞く方は記者ですから、記者だって勉強してないやつはいっぱいいるし、ましてやそれが専門でない人もいると、これは分かんない人に分かれというのは無理な話ですから、あんまりそういうことを気にする必要ありません。自分たちの範囲で説明すればいいわけで、分からないのは、それは勉強してくれということであって、そんなにへりくだる必要はありません。
 受け取る側がどう受け取るかということですから、場合によってはむにゃむにゃむにゃと言っても、それもゆるされるということですね。
 嘘はつかない。これは嘘は本当にすぐバレるんです。これはもうテレビ、新聞、週刊誌、この取材力を侮ってはいけません。嘘はすぐバレます。この一つは何かがオープンになると内部通報というのが、そういえばこんなこともうちはあるんですよ。こんなこともあるんです。って言って次々に一般企業なら社員、お役所ならお役所の関係者が言うんですよね。それまで言わなかった人たちが、あれと同じことはこの間もあったよとか、何とかいう感じですね。だから嘘を言うと、これは必ずバレます。
 ご存じの西武の関係で国土の堤さんが嘘を言って、もうその日の夜には、あれは嘘だったとバレて、翌日の新聞に嘘だったって書かれましたけどね。そういうふうに、どんな場合もすぐバレてしまいますからね。これ、嘘言っちゃいけません。
 それから情報の一元化、これはどういうことかと言いますと、一つ不祥事がオープンになると、それは役所全体の問題になります。一般企業だって企業全般の問題になります。例えばさっき言った牛乳が腐っていたという話しになると、それは企業で言えば管理部門の責任になるわけですが、しかし、それがオープンになると企業全体の問題になってくるわけですね。そこで広報というのが、もちろん役所にもあります。企業にもあります。そこで、広報部長なり何かが発表する。その後に専門のところに電話がかかってきて、ああだ、こうだと専門的な話しをすると話しがこんがらがってくるわけです。だからどんな場合もこの話しは広報の例えば部長なり、局長なり、そういうものが担当しますので広報に電話をしてくださいと、みんながそういうふうに言うわけです。
 フジテレビでも報道で不祥事があって、報道にかかってくると、それは報道の不祥事でも広報が担当しますから広報に電話してくださいと必ず言うように指導してますし、皆さんも同じことです。そうしないと二箇所、三箇所で言うと微妙に違ってくるんですよね。微妙に違ってくると、そこを記者は追求してきますから話しはこんがらがってくると、こういうことなんです。
 ですから、情報は一元化する。広報局、広報室、広報部、そういうところの部長さん、副部長さんあたりにまとめて、せいぜい一人か二人が外の人に対する情報等はその人たちだけが言うと、そうするとブレがありませんから。ブレてくると話しがこんがらがってきます。
 お話ししたように説明は簡潔に、嘘は言わない、情報は一元化する。この三つは守ってください。
 あとは技術的な問題になりますけれど、不祥事がありますと、テレビの記者やカメラマンがわーっと職場にやってきます。皆さんの職場、お役所であろうと一般企業のどこであろうと学校であろうと、最近学校については、ちょっとマスコミの方も遠慮して、子どもたちへの影響がありますから、あんまり門から入らないようにしてますけどね。それでも、お役所とか一般企業はわーっと入ります。みんな腕章付けてます。フジテレビとか時事通信とかね。なんで付けてると思いますか。私はフジテレビの人間ですと言ってることになるわけです。その人間が職場にづかづかと入っていってカメラを回してる。誰も文句を言わない、みんな若い人はうちは悪いことしちゃったからなあ。というんで、何となく後ろめたいから下向いて仕事してます。これは暗黙の了解ということになるんです。ですから我々は腕章を忘れるなと言います。何者かも分からない人が来て勝手にやった時に下向いてるのは、これはしょうがないですよね。ところが、ここにフジテレビと書いてあると相手はフジテレビと分かってるわけです。分かってるのに出て行けとも言わない。取材を認めたと、こういう理解ができるわけです。
 ですから、腕章を付けた記者やカメラマンがわっと来たらここは職場ですから後でしかるべき場所でしかるべき人間が対応しますから、ここは出てくださいというと、どの記者もパッと出ます。なぜかというと、そう言われたらすぐ出なさいと指導しているからなんです。何も言わなければ暗黙の了解だから、遠慮無くやれと、一言いわれたら、すぐ出ろと、これはどこの社もそうやって指導しているからです。
 ですから、ここは仕事場ですから出てください。誰々が後で、どこどこで対応しますと、こういうふうに、もちろん対応しなきゃ、わかんなきゃ、それは対応はまた後でどこかでやると思いますからでもいいわけですね。とにかく、ここは仕事場だから出てくださいと、この一言を言うように若い人たちに皆さん言ってください。
 あとは技術的な問題になりますけれども、カメラマンはいろんなところで撮影、カメラを回します。こうやって記者会見してると記者がわっと並んでこの辺まで来て、何か写真を撮ろうとします。皆さんは、ああ、これは記者会見を聞いてる記者の全体の会場の雰囲気を撮ってるんだなって、非常に温かい気持ちで考えていたらそうじゃありません。こうやって記者会見してる人のメモはどうなってるかとか、そういうものを撮ろうとしているわけです。ですから、横に来たということは、何か、他の社にない映像を撮ろうとしているわけですから、絶対そういうことを許してはいけないわけですね。
 かつて田中真紀子さんが外務大臣をクビになった時に、田中真紀子を励ます会という誰が出席者だという名簿を本会議場で広げていたら、横の方からカメラで隠し撮りされて、それがオープンになったことがありました。鈴木宗男さんも何かメモを見ていたら、またこれもカメラ席から望遠レンズで撮ったのがオープンになったことがありました。カメラマンというのは必ず他の社と違う映像を撮ろうと思ってるわけです。ですから、あえて言えばロープを張ることなんです。ロープ。取材の方はこのロープから出ないでくださいと、このロープの中で取材をしてくださいということなんです。そうするとこっちへ来れませんから。
 もう一つ言いますと、さる石油会社の社長がやめる時の記者会見で靴を脱いで足を組んで喋ってる映像が全国に流れたことがあるんです。どうしてかというと、この机の前が空いてたんです。この前が空いてて、彼は緊張してたもんだから、靴脱いで足組んでたわけですよ。それで申し訳ございませんって言ってたんだけど、各社みんな、この足を組んでるところの映像をアップで流して、靴脱いでると、そうするとなんだあの社長はと、あれで反省してるのかと言われました。これはお付きの人がここに白い布を張れば何の問題もないこなんですよ。周辺の人が、もちろん広報の人がいろいろいるわけですから、そういう人がここに白い布を、よくありますよね。白い、パーティーなんかで使う、あれを張っとけば何の問題もないんですよ。下で足組んでようと靴脱いでいようと、そんなことに気がつかなかった周辺の人が悪いんですね。そのぐらいの配慮は周辺の広報の関係の人はすべきだと思います。
 それでその人は辞める記者会見なのに、また非難されて、お気の毒だったんですけどね。
 後はもう、だらだらだらだら聞いてきますから記者というのは。だから、20分なら20分、30分経ったらもう時間ですからというふうに言ってください。黙ってると、いつまでも聞いてきます。2時間でも3時間でもやりますからね。同じことを。だから時間になったら、もうそろそろ時間なので、あと質問一つでよろしいでしょうかといって打切るということですね。そして会見が終わって、しかるべき人が会場を出て行きます。そうすると皆さん経験があると思いますが、さーっと記者が寄ってきて、いろいろまた聞いてきます。この時は先ほどお話ししたとおりですと言ってください。
 記者というのは、これは当たり前といえば当たり前ですが、本当は記者会見なんだからみんなで聞くのがルールですから自分が聞きたい事は、ちゃんとその場で言えばいいわけです。ところが他の社に聞かれたくないというような姑息なところがありまして、終わってから退席して行く記者会見をした幹部に質問をぶつけるわけです。
 しかし、原則は記者会見の場で聞くのがこれがルールなわけですから、記者会見が終わったら、それは聞かなくていいというか、こっちはしゃべる必要がないわけです。ですから何もしゃべらないで手を振って、すっと出ていくという手もありますし、あえて言えば初めて聞かされた質問であっても、先ほど会見でお話しした通りですと、これでいいわけです。先ほど会見で聞かなかったあなたが悪いんだということですよね。先ほど会見でお話ししたとおりです。
 度々言いますが、雪印乳業の社長さんのようにエレベータホールまで追いかけられて、何だこのやろうと思って、わっと言ったら、ああいうふうになるわけですから、ひたすら黙ってる。あるいは会見でお話ししたとおりですと。こういって新しい話はしないということです。
 さっきもお話ししましたが、情報の一元化ということで後の各社からの問い合わせは広報部なり、そういうセクションのしかるべき担当者が応対するということにすれば、その後の混乱は起こらないということですね。
 以上が私がテレビ記者として永年取材をしてきた、あるいは逆に報道の危機管理の担当者として、いろんな団体の人たちとお話しをしてきた、そういった中で、こんなもんかなということをお話しして、中には本当は、もう、何か裏切者のような感じで仲間うちのことを話しているようなところもあるんですが、こうやってやると不思議なもんで、あれじゃわからない、会見をした後の何かの番組でコメンテーターと称する人が出て、今日、こういう役所で、こういう記者会見がありましたってやると、後で、どうですかというと、いや、あれじゃ説明になってませんねとか。あれじゃ視聴者、あるいは市民の皆さんはわからないと思いますよ、なんて言うんですが、これは私がその立場でも同じようなことを言います。でも、それはそういうもんだと思って頭の上を通り過ぎるのを待つと、そうすれば1週間も経てばなんとなくうやむやになってしまうというのが実際のところじゃないかなと思うわけですね。
 最後に繰り返しになりますが、不祥事を抱えた企業とか役所がその危機を増大させるかどうか、その分かれ目、これは三つあると言います。企業や役所が、その役所の危機を増大させるかどうか分かれ目は、三つある。
 一つは緊急事態が発生した時に、マイナス情報を迅速に組織の上層部に上げることができるかどうか、緊急事態が発生した時にマイナス情報を組織の上層部に迅速に上げることができるかどうか。
 二つ目、調査の結果を隠蔽せずに公表できるかどうか。調査の結果を隠蔽せずに公表することができるかどうか。
 そして三つ目は上層部がいかに真摯にきちっと責任を取れるかどうか、上層部がいかに真摯にきちっと責任を取れるかどうか。
 一つ目は緊急事態が発生した時に、マイナス情報を迅速に組織の上層部にあげることができるかどうか。二つ目は調査の結果を隠蔽せずに公開できるかどうか、三つ目は上層部がいかに真摯にきちっと責任を取れるか、この三つです。
 不祥事があって記者会見をする時は、テレビを利用する。あるいはテレビを活用する。そういう気構えで会見に臨んでいただきたいなと思います。
 どうも時間になりました。ありがとうございました。

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