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新時代おおいたVol.45(2006年3月発行)
新時代おおいたVol45表紙

Vol.45 2006年3月発行


県内の各世帯に配布(奇数月に発行)しています。 ご意見・ご感想をお聞かせください。
メール:
a10400@pref.oita.lg.jp
【表紙の写真】
300年以上続く手作り糀(こうじ)と味噌の老舗
糀屋本店の9代目 浅利良得さん(佐伯市)


 築150年以上という糀屋本店の作業場で、浅利さんは味噌や甘酒づくりに欠かせない糀を「育てて」います。糀は生き物、「作る」と言わずに「育てる」と言う浅利さんは、祖父母と両親、姉2人、兄1人、弟1人の9人家族の中で育ちました。いただいた名刺には「立命館アジア太平洋大学休学中」の文字が踊ります。  就職を目前にして真剣に考えた結果、自分を本当に必要としている仕事は家業の「糀屋」と結論を出し、休学を決めました。今は老舗の味を修行しながら、佐伯のまちづくりに取り組み、NPOの設立も考えています。8代目の祖父・幸市さんと祖母・和子さんも跡継ぎができてうれしそうですね。
 無着色・無添加の糀や味噌のおいしさをもっと広めたいという浅利さん。インターネット通販を始めたり、新しいロゴマークを作ったりと、老舗に新風を吹き込んでいます。




集落営農で農業を元気に、集落を豊かに

「農村地域は過疎化が進んでこのまま衰退していく」=61.5%。平成17年に県農林水産部が行った県民意識調査の結果です。農村の置かれた厳しい現状を物語っています。
こうした現状を打破するため県が進めているのが、集落の農家が協力することでお互いの問題を解決し、効率的な営農を行う「集落営農」です。
集落営農の写真1

「むらづくり」で農林水産大臣賞受賞!! 日田市大肥郷の先駆的な取り組み
 先駆的な取り組みで知られる日田市大明地区の農事組合法人「大肥郷ふるさと農業振興会」。17集落・140戸の農家から、約30ヘクタールの農地を賃借し、多集落一農場方式で米・麦・大豆の低コスト生産を行っています。その取り組みが評価され、平成17年度農林水産祭むらづくり部門では農林水産大臣賞を受賞しました。
 集落営農への取り組みについて「天が道を開いてくれた」と言うのは、同振興会代表理事の森山有男さん。  「ほ場整備の必要性を説いて回ったのが平成4年から。反対が多かった農家の反応をひっくり返したのが、平成6年の干ばつでした。用水路の整備など水の確保が大きな問題になり、ほ場整備や共同作業の必要性に気付いた若者たちが、自分の親世代にあたる農家(地主)に考え直すよう迫ったのです」
 こうして平成9年から始まったほ場整備も今年度で終了。地元農産物による農産品加工を行う「ももは工房」の設立や「麦踏み大会」での都市との交流など、多彩な取り組みを行っています。
 2月には、大肥郷で生産された大麦「ニシノホシ」を原料にした焼酎「がまだす」も発売されました。地域内の酒造会社と栽培協定を結んでの生産です。付加価値の高い農産物や加工品の生産で収益を伸ばし、地域の農業を守ろうとする大肥郷の挑戦は今後も続きます。
大肥郷ふるさと農業振興会の集合写真
10aあたりの麦の生産費は県平均の半分以下! 効率的な生産を行う「大肥郷ふるさと農業振興会」の皆さん。

収益の上がる農業で後継者確保を 宇佐市・橋津営農組合 よりもの郷(さと)
 昨年6月に設立された宇佐市の農事組合法人「橋津営農組合 よりもの郷」の特徴は、大規模な稲作農家(認定農業者)を中心とする営農組合であることです。単独でも経営が成り立つ大規模農家が集落営農に参加した理由は何なのでしょう。
 「日本の農業総生産額とトヨタ自動車一社の売上高と、どちらが高いと思いますか? *トヨタ自動車の売上高の方が高いんですよ」と語るのは、「よりもの郷」の組合長、本多通孝さんです。
 大規模農家であっても、補助金がなければ農業経営が成り立たない、農業後継者がいない、という悩みは同じ。このままでは、農業の引き受け手がいなくなり、農地が荒れてしまうという思いから、営農組合設立に奔走しました。初めての収穫を迎えたこの秋、集落への恩返しの気持ちを込めて地区内の全戸に新米を配り、大好評でした。
 「時給800円で『農業をやりたい』と思う人がいますか? 農業で収益が上がらなければ、後継者もいなくなりますよ」 収益が上がる農業で、後継者を確保したい―「よりもの郷」の切なる願いです。
*平成15年度農業生産額 9兆8,173億円  
  農林水産省発表:平成15年度農業・食料関連 
  産業の経済計算(速報)より  

  トヨタ自動車(株)発表  
  平成17年3月期連結売上高 18兆5,515億円
農作業の様子
「よりもの郷」の皆さんの農作業風景
集落内を流れる「寄藻川」から名前をもらった「よりもの郷」の皆さんの農作業風景。
組合による育苗コストは49%も低減された。

農家が安心できる受け皿として 豊後大野市千歳町・みしま
 豊後大野市千歳町でも、昨年10月に農事組合法人「みしま」が設立されました。
 「この地域出身で、大分市やその近郊に住む人が多いんです。そういった人たちが定年後、千歳に『通勤』しながら農業をやってくれれば、と思っています」都市部への人口流出を逆手に取った提案をするのは、「みしま」組合長の廣瀬成芳さん。
 「みしま」では、現在農作業の受託を中心に、農地を有効利用し生産性を上げるための裏作やチヂミホウレンソウなど特産物の開発、女性・高齢者も参加できる集落営農づくりに取り組んでいます。
 「農業は自分の代で終わり、と不安を持つ農家は多いんです。農業をやめれば、集落全体が荒れてしまいます。法人になったことで、いつでも農地を任せられる受け皿ができたと、安心してもらえたと思いますよ」と言う廣瀬さん。農家の受け皿「みしま」の今後が楽しみですね。

 農業後継者の確保や収益性の向上には集落営農が不可欠です。国の農業への支援も、今後は集落営農組織などの「担い手」に集中されます。そのため、県では組織の指導者養成や機械整備費用・法人設立費用の助成など、さまざまな支援を行っています。
 私たちの生活に欠かせない食料を生産し、景観保全の役割も果たす農村。耕作放棄地が広がれば、周辺の環境も悪化します。農業と農村の活性化が、私たちが住む地域全体の活性化にもつながっていくのです。
麦畑の写真 「みしま」集落内の麦の豊かな実り。 耕地にいつも何かが植えられている状態にして、 耕地利用率を上昇させる。
地域特産物の研修会の様子
収益性の高い地域特産物をどう開発するか。
真剣な表情で研修に参加する「みしま」 組合員の皆さん。
集落営農とは?
集落内の農家の合意に基づき、農地や機械・施設の共同購入や共同利用、農作業の分担など、共同化・組織化された農業を行うことです。施設の共同利用にとどまる場合もあれば、農作業の受委託を行う場合、集落営農組織が組合員の農地を預かり利用計画・栽培計画を立て、1つの農場として経営する場合など、その形態は集落の実情や農家の意向に応じてさまざまです。

集落営農のメリットは?
◎高能率な機械・施設の利用でコストが下がり、作業の効率化、省力化が図られる。
◎高齢者や女性、兼業農家などそれぞれの状況や適性・意欲に応じた役割が発揮できるため、高齢化や後継者不在などによる人材不足を補える。
◎耕作放棄地がなくなり、農地の荒廃が防げる。 などです。

集落営農をすすめるための県の施策は?
「おおいた集落営農組織育成・強化緊急対策事業」として、集落営農組織づくりを進めるための農業機械の整備等に対する助成、法人化促進のための農地の流動化や法人の設立経費に対する助成、集落リーダーの育成講座などを実施しています。
◎大分県農林水産業振興計画「おおいた農山漁村活性化戦略2005」の目標指標
  平成16年度 平成22年度
集落営農組織数 347 600
うち法人組織数 22 200

国の施策「品目横断的経営安定対策」の対象となる「担い手」とは?
1. 認定農業者(経営規模4ha以上)
2. 一定条件を備える集落営農組織(経営規模20ha以上)
*中山間地域等には経営規模の特例あり
水田農業の構造改革を図り、国際競争力を強化するため、現在すべての農家に支払われている麦・大豆の価格補てん等が廃止されます。平成19年産の米・麦・大豆から国の支援策は、上記の「担い手」に集中されるため、「担い手」にならなければ、60kgあたりの手取り金額が、
小麦:約 9,800円→約2,900円に
大豆:約13,100円→約4,800円になります。(14年産の全国平均値から試算)
このように今後の収入が大きく変わります。
集落営農組織づくりに向けて、話し合いを始めましょう。


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