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特集2 大分県農業の「今」
 昨年10月、あるニュースが県内を駆けめぐり、大分県民に衝撃を与えました。
平成17年大分県の農業産出額は九州最下位。*
 水と緑に恵まれ、その豊かさから古くは「豊の国」と呼ばれた大分県。
海あり山ありの多様な気候風土が新鮮な農産物をはぐくみ、
私たちの食生活を四季折々に彩ってきました。そのイメージから、
大分県は農業が盛んだと信じて疑わない方も多かったのではないでしょうか。
しかし現実には、大分県の農業は低迷しています。
それは一体なぜなのでしょうか?  大分県農業の「今」を探ります。
*九州農政局大分農政事務所統計部「農林水産統計」(平成18年10月27日公表)
平野副知事が感じた県農業の特徴
 第2期広瀬県政が最重点課題として掲げる農林水産業の振興。
 この難問に取り組むため、広瀬知事は農林水産省出身の平野昭氏を副知事に起用しました。5月11日の就任以来、平野副知事は県内を精力的に回り、県農林水産業の状況をつぶさに視察。本県の特徴をこのように捉えています。
 「現在、県内各地を回り、各農家の取り組みについてお話を伺いながら勉強をさせていただいているところです。
 大分県は地形が変化に富み、また気候が温暖ですから、多種多様な農産物の栽培が可能であると考えています。これは北海道や東北地方といった寒冷な気候の土地に比べて大変恵まれている点です。更に福岡という大消費地が近く、販売面で有利であるという強みもあります。
 しかし、平坦地が少なく、農地の7割以上を中山間地が占めています。生産性の高い大規模経営が展開しにくく、特に、米・麦・大豆栽培に関しては不利と言えます。
 また、品目にもよりますが、大分県では他県に比べて各産地がバラバラという指摘があります。これでは市場へ出荷する農産物の品質の均一化、十分なロット(生産単位としての同一種の商品の集まり)の確保ができず、大きな『ブランド』を形成しにくいと言わざるを得ないでしょう」
平野副知事の写真 平野昭副知事
 

具体的な振興策は?
 明らかになった県農業の強みと弱み。ではそれを踏まえて、どう振興していけば良いのでしょうか。
 「県内の農家の3分の2を占める稲作経営が消費の減少や価格の下落などにより毎年深刻化してきています。水田農業の改革が急務です。農薬の使用をより少なくするなど高い価格で売れる米づくりを進めるとともに、野菜や家畜の飼料など、需要が見込まれる他の作物への転換をより一層進める必要があるでしょう。
 園芸と畜産の一層の振興が欠かせませんが、他県もこの分野に力を集中しています。激しい産地間競争が展開されており、相当な覚悟が必要です。消費者や需要者の視点に立って供給体制を整備し、品質やロットを確保すれば、販売は伸びていきます。より多くの消費者に大分の農産物を届けることができます。今後はGAP(農業者自らが行う農業生産工程の管理手法。農産物の安全確保や品質向上などに有効)などにも取り組む必要があると考えています。
 畜産では、輸入飼料の値上がりの影響が出ています。飼料生産を推進する必要があり、採草放牧地などの農地の確保が課題となります。稲から飼料作物への転換も検討に値すると考えています」
 広い視野で農業の振興策について考えを巡らす平野副知事。他にも大切なことがあると言います。「例えば、豆腐、納豆、ミソ、しょう油、飲料、惣菜、冷凍食品、乳製品、菓子、外食・飲食店などの食品産業は農産物の重要な販路です。地場農産物の利用促進や新商品開発などでこの分野の振興を図ることが農業の振興にもつながると考えます。
 また、人づくりはどの分野でも最重要課題ですが、農業の高齢化率の高い大分県では若い人材の育成が必須です。いかにして若者を呼び込むか。これなくして農業の再生はできません。そのためには『もうかる農業』の実現とともに、知識や技術だけでなく、若者に農業というものの『魅力』や『価値』を教えることも大事ではないかと思います」
卸売市場視察の様子 大分市公設地方卸売市場を視察する副知事
 

農業・農村の大切さ
 農業の価値を知ってもらいたいと語る副知事。その「価値」とは?
 「農業は生産を通じて生命を育み、私たちの命を養う産業、『生命産業』です。社会はそれをきちんと評価しなければなりません。消費者は農家の苦労を思いやり、生産者は消費者に美味しく食べてもらうことに喜びを感じる。相互に理解し合うことが大切です。基本である地産地消やスローフードを通して生産者と消費者が絆を深め、互いに顔の見える関係を築ければ、それは安全・安心にもつながると思っています。
 また、農業用水の利用や道路、水路の修繕などに地域の人が共同で取り組むなど、農村では、農家も農家でない人も、皆で助け合って生活しています。そういう農村は社会の基盤であり、大切にしていかなければならないと思います。大きな農家、小さな農家など様々な農家、非農家が助け合って生活している農村をしっかり支え、グリーン・ツーリズムや農村女性の起業などの取り組みも育てながら、生産者と消費者、農村と都市の交流をより促進していく必要があると考えます」
 

農家の皆さんとともに
 農業の価値を重んじ、その振興に強い意欲を燃やす副知事。最後に、振興に向けての決意を語ってもらいました。
 「私は農家の出身です。今、大分県内の農家を訪問し、農家の皆さんが頑張っているお姿を拝見すると、こういった方々が将来に希望を持てるように、ご苦労が報われるように、腰を据えて農業の振興に取り組まなければならないとの思いが強くなります。時間の許す限り現場に出向き、各地域の皆さんと今後の農業や地域のことを話し合っていきたいと考えています。
 また、『もうかる農業』を実現させ、農業を営む若者が、結婚や子育てといった人生設計を当たり前に描けるようにしたいと思っています。
 自然が相手の農業の再生には時間がかかります。成果が出るまで3、4年はかかるかもしれませんが、ねばり強く、腰を据えて取り組んでいきますので、皆さんにも夢と希望を持ち続けていただきたいと思います。ともに頑張りましょう」
 

県内の生産者は現状をどのように捉え、どう取り組もうとしているのでしょうか。課題や県への要望などを伺いました。
おおば生産者 二宮伊作さん(大分市) 二宮さんの写真
副知事(左)に生産状況を説明する二宮さん(右)
 今、生産者の私たちが困っている点は主に3つあります。消費が落ち込んで価格が下がっていること。異常気象などが原因で生産が安定しないこと。更に昨今の原油高でコストがかさむ一方だということ。県には厳しい現状を見据えて、将来を見越しての生産技術の開発などをお願いしたいですね。
 大分県産のおおばは、価格では中国産のものとは勝負できません。出荷量でも愛知県などには太刀打ちできません。そんな中どうやって大分県産をマーケットに売り込むかは難しい問題です。しかし、小売店や消費者と同じ感覚を持って衛生管理を徹底し、品質の良い物を提供できれば、おのずから販路は開けるとも感じています。

酪農家 安部磨さん、指原恭博さん(大分市)
大分県酪農業協同組合職員 末田潤さん 指原さん、末田さん、安部さんの写真
写真左から2番目より指原さん、末田さん、安部さん。手前は中部振興局職員
 牛乳の消費が減り、酪農はかつてない厳しい状況にあります。安全・安心な県産の牛乳を消費者に見直していただけるよう、県には「大分県産」のイメージアップに取り組んでいただきたいです。また、牛乳の新しい飲み方や料理レシピなども広めていただければ、消費拡大につながるのではと期待しています。
 今、朝食を食べない子どもがいると聞きます。親世代の「食」に対する関心の低さは非常に気になるところです。私たちは「食育」が大切と思い、小学生を対象に搾乳・バター作り体験教室などを行っています。ぜひ県にも食育には力を入れて取り組んでいただきたいですね。


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