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通勤災害事例

印刷ページの表示 ページ番号:0000002023 更新日:2009年11月17日更新

1.「自宅」の範囲について

 職員寮に住んでいる独身職員が、金曜日に実家に帰り、月曜日に自家用車で実家から出勤してくる途上、ガードレールに激突し、「頭部打撲、顔面挫創、左下腿打撲挫傷」を負った事例(通勤災害該当)

(事例の概要)

  1. 災害を受けた職員の職種等
    A県建設部維持管理課 
  2. 傷病名
    頭部打撲、顔面挫創、左下腿打撲挫傷
  3. 災害発生年月日
    平成8年10月14日
  4. 災害発生の状況
     被災職員(以下「本人」という。)は、通常、勤務公署近くの職員寮に住んでいるが、食事等の理由のため金曜日に実家へ帰り、月曜日に実家から自家用車で勤務公署に出勤してくる途上、ガードレールに激突し、「頭部打撲、顔面挫創、左下腿打撲傷」を負ったものである。
     なお、本人は合理的経路上で被災したものである。
  5. その他
    ・本人は、月2~4回程度食事等のため週末に実家に帰り、実家から通勤しているものである。
    ・本人は一人暮らしを始めて1年程度であり、本人が入居している職員寮は、食事は出ず、自炊施設も完備されていない。
(説 明)
 本件災害は、以下の理由により、通勤による災害に該当すると認定されたものである。
 補償法における「通勤」とは、「職員が、勤務のため、住居と勤務場所との間を、合理的な経路及び方法により往復すること(公務の性質を有するものを除く)」とされ、「住居」とは、職員が居住して日常生活の用に供している家屋の他、通勤の都合その他特別の事情がある場合において特に設けられた宿泊の場所などをいうものである。
 また、単身赴任者等が週末に自宅に帰り、月曜日に自宅から出勤するというように、勤務場所と家族の住む自宅との間を往復する場合、住居を2か所に置かなければならない合理的な理由があり、かつ、当該往復行為に反復・継続性が認められれば、当該自宅は「住居」とみなされるものである
 本件において、本人は独身であり、一人暮らしを始めて1年程度で、本人が入居している職員寮は食事が出ないものであり、自炊施設も完備されておらず、このような独身職員が食事等の理由から実家に帰る行為は社会通念上一般に考えられ、合理的なものであり、また、本人は月2~4回程度、定期的に実家に帰っていることから、本件実家は「住居」と認められるものである。
 以上のことから、実家と勤務場所との往復は通勤と認められ、本件は通勤による災害に該当するものと認められる。

 2.「逸脱・中断」について

 バイクで退勤途上、通常の経路上にあるスーパーにて日用品を購入した後、バイクの給油のため通常の経路を外れ、ガソリンスタンドに向かっている際に転倒し、負傷した事例(通勤災害該当)

経路1

 

(事例の概要)

  1. 災害を受けた職員の職種等
    A幼稚園 保母 
  2. 傷病名
    左手擦過傷、左膝打撲
  3. 災害発生年月日
    平成8年12月18日(水曜日)午後6時30分頃
  4. 災害発生の状況
     被災職員(以下「本人」という。)は、被災当日、バイクにより退勤したが、通常の経路上にあるスーパーにて日用品を購入した後、バイクの給油のため通常の経路を外れ、別の経路上にあるガソリンスタンドに向かっている際に転倒事故を起こして負傷したものである。
  5. その他
    (1) 被災当日の経路については、被災当日向かっていたガソリンスタンドへ立ち寄る場合や走行しやすい等の理由で頻度こそ少ないものの、以前にも利用していたものである。
    (2) 被災当日の経路は、通常の経路(通勤届の経路)に比べて距離で約1km、時間にして4分(バイク)程度遠回りになるものである。
(説 明)
 本件は、以下の理由により、通勤による災害に該当するものと認定されたものである。
 補償法における「通勤」とは、「職員が勤務のため、住居と勤務場所との間を、合理的な経路及び方法により往復すること(公務の性質を有するものを除く)」をいい、職員が往復の経路を逸脱し、又は中断した場合においては、当該逸脱又は中断の間及びその後の往復は、通勤とはされないものである。ただし、当該逸脱又は中断が「日常生活上必要な行為であって自治省令で定めるもの」に該当する行為をやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、逸脱又は中断の間に生じた災害を除き通勤による災害とされる。
 また、合理的な経路とは、職員が通勤のため通常利用する経路をいうものであるが、通常利用する経路は1つに限定されるものではなく、通常利用する経路が複数ある場合は、それらの経路についても合理的な経路として認められることとなる。
 本件について検討すると、本人が被災当日利用した経路については、本人は、通常は通勤届の経路を利用しているものではあるが、被災当日の経路についても給油の関係等で頻度は少ないものの、以前から利用していたとされること、また、通勤届の経路に比べて被災当日の経路は、距離で約1km、時間にして4分(バイク)程度遠回りになるものであるが、著しく遠回りになるとは認められないものである。
 よって、被災当日利用した経路についても合理的な経路として認められるものである。
 なお、被災前、本人はスーパーで30分程度日用品の購入を行っているものであり、この行為については中断に該当するが、この行為は、「通勤範囲事例」の逸脱又は中断の(1)に該当し、中断後、経路に復した後は通勤とされるものである。
 以上のことから、本件災害は、合理的経路上で発生したものと認められ、通勤による災害に該当するものと認められる。

.「逸脱・中断」について(その2)

 バイクで退勤途上、自宅近くの銀行で預金を引き出そうと思い、通常の経路から外れ、銀行に向かっていたところ、後続車に追突され、「頸椎捻挫、左大腿部打撲」を負った事例(通勤災害非該当)

経路2

(事例の概要)

  1. 災害を受けた職員の職種等
    B市役所 清掃課職員
  2. 傷病名
    頸椎捻挫、左大腿部打撲
  3. 災害発生年月日
    平成8年7月26日(金曜日)午後5時15分頃
  4. 災害発生の状況
     被災職員(以下「本人」という。)は、バイクで退勤途上、自宅近くの銀行で預金を引き出そうと思い、銀行に向っていたところ、交差点で後続車に追突され、「頸椎捻挫、左大腿部打撲」を負ったものである。
     なお、銀行の前を通って自宅へ行ける経路はあるものの、本人は、通勤の際ほとんど利用したことがなく、被災当日も下記のA地点まで戻って帰宅するつもりであった。
(説 明)
 本件災害は、以下の理由により、通勤による災害に該当しないと認定されたものである。
 補償法における「通勤」とは、「職員が、勤務のため、住居と勤務場所との間を、合理的な経路及び方法により往復すること(公務の性質を有するものを除く)」とされ、その往復の経路を逸脱・中断した場合は、当該逸脱・中断の間及びその後の往復中の災害は通勤による災害とは認められないが、当該逸脱・中断が日常生活上必要な行為であって、自治省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限である場合には、当該逸脱・中断の間を除き、通勤による災害と認められるものである。また、合理的な経路とは、職員が通勤のため通常に利用する経路をいうものであるが、通常利用する経路は一つに限定されるものでなく、通常利用する経路が複数ある場合は、それらの経路についても合理的な経路として認められることとなる。
 本件において、本人は生活資金を引き出す目的で銀行に寄ろうとして、上記の通勤経路図上のA地点を通常は右折するところ、左折し、銀行に到着する前に被災しているものであるが、本人は預金を引き出した後は、再びA地点まで戻り帰宅しようとしており、A地点を左折することは自宅とは僅かな距離ではあるが逆方向に向うこととなるこり、銀行の前を通って自宅に行ける経路があるものの、本人は通勤の際ほとんど利用したことがなく、代替経路とは認められないことから、A地点を左折した段階で合理的経路を逸脱したものと考えざるを得ないものである。また、銀行等で預金を引き出す行為は、これによる現金をもって日常生活を営むうえで将来日用品の購入が推測されることから、銀行等を利用することが時間的、距離的に見て著しく不合理である場合、著しく高額である場合、日用品の購入が目的でないことが明らかである場合等、特別な事情がない限り、「通勤範囲事例」の 「日用品の購入その他これに準ずる日常生活上必要な行為」と同様に評価できるものであるが、本件災害は、合理的経路を逸脱して、いまだ経路に復する以前の災害であることから、通勤による災害に該当しないものと認められる。

4.「起因性」について

 出勤途上、バスの出発時間に間に合わなくなったため、当該バス路線の次の停留所まで約300mを走り、バス停で立ち止まって約5秒後に意識を失って転倒し、負傷した事例(通勤災害非該当)

(事例の概要)

  1. 災害を受けた職員の職種等
    A町立B小学校 職員
  2. 傷病名
    顔面及び左膝関節挫創
  3. 災害発生年月日
    平成5年2月12日(金曜日)午前7時頃
  4. 災害発生の状況
     被災職員(以下「本人」という。)は、被災当日起床時から気分が悪く、通常の出勤に利用する自宅から約200mのところにあるバス停からのバスの出発時間に間に合わなくなったため、当該バス路線の次の停留所であり、また、目的地に向かう別のバス路線もあるバス停まで自宅から約300mを走り、バス停で立ち止まって約5秒後に意識を失って転倒し、負傷したものである。
     なお、当該バス停付近は舗装され、転倒した場所は平坦であり、転倒時は目撃者はおらず、本人もバスの車掌に声をかけられるまで、記憶がないため、転倒時の詳細は不明である。
  5. 本人の既往歴等
    なし
(説 明)
 本件災害は、以下の理由により、通勤による災害に該当しないと認定されたものである。
 通勤災害保護制度における「合理的な経路」とは、職員が勤務のため通常利用する経路を原則的にはさすものであり、時間的、経済的に最も合理的な経路をいう。一般的には、通勤届による経路、定期券による経路等がこれに該当する。
 しかし、「合理的な経路」とは、1つに限定されるものではなく、通常利用することが考えられる経路が複数ある場合はそれらの経路についても、合理的な経路と認められる。
 本人は被災当日、体調不良のため出勤時に利用するバスの発車時刻に間に合わなくなり、遅刻しないためやむなく次のバス停に向かったものであるが、約300mを走った後に舗装された平坦な場所で立ち止まっていたところで意識を失い、転倒したものである。
 一般に、災害発生の原因が本人自身の素因によるものであったとしても、危険な設備、器物があるなど勤務公署の施設として災害を発生させるような危険が内在していたために負傷したものであれば、これを公務上の災害と認めることができるものであり、通勤による災害においてもこれに準じて考えることとされている。
 本件災害発生の原因について検討すると、転倒時の詳細は不明であるものの、本人は自宅から約300mを走った後に舗装された平坦な場所で立ち止まっていたところで意識を失い、転倒したものであり、通常、舗装された平坦な場所で立っていることに転倒の危険が内在することは考えにくいことから、意識を失ったことが本件災害発生の原因と考えられる。
 また、意識を失った原因について検討すると、本人は意識を失う直前に自宅からバス停まで約300mを走っていたものであるが、通常の通勤時にバスや電車に乗り遅れないために300mを走ることは日常的に起こり得ることと考えられるものの、一般的に健康人が300m程度を走ったために意識を失うことは考えにくく、本人の不良であった健康状態が転倒の主たる原因と認められる。
 以上のように、本人が被災当時利用した経路は「合理的な経路」と認められるものの、約300mを走ったことにより意識を失う危険性や舗装された平坦な場所に立っていて転倒する危険性は通勤に内在しているとは認められないため、本件災害は、通勤に内在する危険が現実化したものとは認められないので、通勤による災害に該当しないものと認められる。

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