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新時代おおいたNO.74

印刷用ページを表示する掲載日:2011年2月10日更新

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特集1 新春対談 
     サイエンスプロデューサー 米村でんじろう × 大分県知事 広瀬勝貞
特集2 育っています!明日を担う若者たち
風紋  新春雑感
トピックス  美術館構想
県民ひろば お伝えします レジ袋収益金の活用
お薦め図書コーナー 心ひらいて とよの国の食彩

 

特集1 新春対談 
     サイエンスプロデューサー 米村でんじろう ×大分県知事 広瀬勝貞

対談写真

 

広瀬 明けましておめでとうございます。
 今日は教育の問題について、ちょっとユニークなゲストをお迎えして楽しく話していきたいと思います。楽しい科学の実験で子どもたちに人気の米村でんじろうさんです。
 米村さんは、サイエンスプロデューサー、簡単にいえば科学の仕掛け人ですよね。私もテレビで拝見しましたが、大変楽しい実験で科学をわかりやすく子どもたちに見せてくれますね。

米村 科学というと、何か学ばなければと構えてしまいがちですけど、僕が伝えようとしているのは文化の一つとしての科学です。文学や映画、音楽を楽しむように科学も楽しんでもらいたいという気持ちで、実験をお見せしたりお話したりしています。

広瀬 米村さんの番組を見ていると、科学ってこんなに面白かったのかなと思いますね。

米村 きっと科学そのものに人間の好奇心を刺激する面白みがもともとあるんじゃないでしょうか。それがうまく伝わると、驚きや新鮮な気持ちが生まれるのだと思います。

サイエンスプロデューサーにいたる道のり 

個人写真

広瀬 さて、「でんじろう先生」として子どもたちから大人気の米村さんですが、米村さん自身はどんなお子さんだったんですか。勉強は好きでしたか。

米村 僕は昭和30年生まれで千葉県の田舎育ちなんです。野山で駆け回って遊んでいる、そういうわんぱくな少年でした。学校の勉強はあんまり得意じゃなかったですけど、理科、特に科学の実験は大好きでした。

広瀬 そのころから才能が現れていたわけですね。

米村 子どもって、小学生のうちは結構理科が好きなんですよ。特に実験や観察といった体験的なものが好きだと思います。僕は、身近に雑木林や小川があったり、星がよく見えたりといった環境で育ちました。だから天体や自然に対しての疑問や興味が自然に生まれ、学校の理科の授業がその興味に答えを与えてくれたので、自然と理科が好きになったんだと思います。

広瀬 本当に昔は、いろんなことを自然の中で遊びながら学んだものです。それから学校でも、電極を溶液に入れて電気を起こしたり、逆に電気分解をやったりしましたね。そのころは本当に科学がいきいきして見えていましたが、中学校3年生くらいになり化学式の暗記だとかが出てきてから、だんだん科学から離れていったような気がします。
 米村さんは、高校の先生をされておられました。教える方の立場から、科学離れを感じていましたか。

米村 僕は高校で教鞭をとっていましたが、中学高校と進むにしたがって教える内容が増えてきます。理論の割合が多くなり、実験や観察という体験的な部分がどうしても減ってしまいます。そうすると、やはり多くの生徒たちが、小学生のころには持っていた素朴な好奇心を失っていってしまう。

広瀬 そういう理科離れを、どうやってつなぎ止めたらいんでしょうか。

米村 理論と実験観察は車の両輪のような関係だと思います。理論だけでも、また実験観察ばかりやっていても偏ってしまうので、バランスが大事ですね。科学はもともと両方が大切な要素ですから、要はその両方をバランスよくやればとてもおいしい、いいあんばいの理科・科学になるんじゃないでしょうか。

広瀬 米村さんは、もっと実験の部分を楽しく子どもたちに見せようとサイエンスプロデューサーになられたわけですよね。
 面白そうな仕事ですが、初めての分野ですから苦労されたんじゃないですか。

米村 とにかく学校教育という枠から飛び出て科学や実験を子どもたちに広く伝えていけたら、と学校をやめたんですが、何もあてがなくて途方にくれました。
 ただ、うまくしたもので、実際にそういう仕事を始めてみたら、ちょうど世の中では科学離れということが問題にされていました。そこで、実験を見せてくださいとか、お話を伺えませんかという仕事をいただいて。やってみたら物事が動きはじめたので不思議だなと思います。

広瀬 米村さんの実験を見ていると、ひとつひとつに感動があり驚きがありますが、日常生活の中にある身近でわかりやすいものでもありますよね。これは、米村さん流の基準があるんですか。

米村 自分の興味関心だけで突っ走っても駄目ですね。凝るんじゃなくて、逆に日常的なもので科学の不思議を表現したほうが、感動してくれることがわかってきたんです。それで、特別なものを使うのをさけるようになりました。
 科学の進歩にしたがって、科学と日常生活とのギャップが大きくなり、科学は特殊な世界になっています。でも身近なものを使って科学の実験を表現すると、違う世界のものじゃなく身近なものなんだということが伝わり、親しみがわくんじゃないかと思います。

広瀬 私たちはいま、子育て満足度日本一の大分県を目指していて、もっと親子のコミュニケーションを、といっています。特にお父さんのコミュニケーション不足が課題ですから、お父さんの子育て参画に取り組んでいるところです。そういう点から考えてみると、この科学の実験は親子のコミュニケーションにもいいですね。お父さんが科学の実験を子どもさんに見せたら、かなり尊敬されるんじゃないでしょうか。

米村 そうですね。昔から、お父さんがスポーツや釣りを教えてあげるといったふれあいの中で、言葉ではない形で子どもにいろんな影響を与えてると思うんです。科学も実験も遊びの一種という感覚で一緒にやれば、すごくいいコミュニケーションになると思いますね。

子どもたちの好奇心を育てる

広瀬 先ほど実験は芸術と同じで、それ自体、感動や驚きを与えるものなんだというお話がありました。県では、実験で感動を覚えながら理科や科学に親しみを持ってもらえればという思いを込め、昨年の夏、「O-Labo」という科学体験スペースを作りました。商店街の一角をお借りして、大分県の子どもたちに科学の実験を体験してもらおうというものです。
 大学の先生などがボランティアで実験を行ってくれていますが、私がお邪魔した時も、子どもたちはずいぶん目を輝かせて見ていました。米村さんも各地で実験をやっておられますが、子どもたちの反応はどうですか。

米村 実際に実験を見せると、子どもたちの表情や目の輝きががらっと変わります。科学、特に実験そのものには何か子どもの知的好奇心を刺激する要素があるんでしょうね。「O-Labo」は素晴らしい試みですね。実験をする大学の先生も、すごくいい刺激を受けたと思います。

広瀬 いま米村さんがおっしゃったように、子どもの好奇心と理科や科学というのは、本当は結びつきやすいものだと思うんです。ところがいまは残念ながら、理科離れ、科学離れといわれますよね。これはどうしてでしょうか。

米村 科学の発展があまりにも急激すぎて、人間の方がなかなかついていけないという気がします。難しくなりすぎて、子どもたちも身近に感じられなくなってきているんじゃないでしょうか。

広瀬 わかります。
 私も小さいころは、モーターを持って来てボートを作ったり、兄が作ったラジオを分解してもう一度作ったりしました。そのぐらいまでは科学に親しみを持てたんですが、テレビが登場してからは本当にわからなくなりましたね。出演者が後ろにいるんじゃないかと思って、そっとのぞいたりしました。
 電子の時代になって、ずいぶん物事が難しくなってきたように思います。
 そういう時代でも子どもたちが見て感動するような仕掛けを、われわれが作っていく必要があるんでしょうね。

米村 そうですね。でも高度に発達したものをそのまま子どもたちに与えたら、消化不良になってしまいます。別に現代の最先端の科学技術ではなくても、100年前、1000年前の科学の核心部分だけを取りだして子どもたちに与えれば十分だと思います。高度なことを教えようと思わずに、いま大人の方が子どもだったころに興味を持ったことをそのまま伝えていけば、子どもたちに想像力の芽が素直に育つんじゃないでしょうか。

広瀬 前にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊さんのお話を伺ったことがあります。小柴さんが必ずおっしゃるのは、自分で成し遂げてみたいテーマをいつも持っていなさい、ということです。先に進んでいくためには、それが非常に大事だとおっしゃっていました。
 子どもたちが実験を通して科学の感動を覚えて、これを突き詰めてみたいなとか、勉強してみたいなと思い始めるといいですよね。そこから自己問題解決型の人間に成長していくような気がします。

米村 やはり自主性が育っていかないといけませんね。自主性を育てるには、外部からの強制ではなくて、本来子どもたちの中にある好奇心を刺激し、育ててあげることが大切だと思います。

広瀬 そうですね、好奇心をかき立てていろんなことに興味を持ってもらえば、自発的に課題を持って勉強するようになると思います。
 そしてもう一つ、子どもたちの自発的な成長を応援するためには、やはりそのための武器としての基礎基本をよく身に付けてもらうことが大事ですよね。そういう意味で学力向上も忘れてはいけません。

米村 そうですね。確かに驚きのある実験を見せれば興味を持ちますが、それだけで終わってしまうんです。子どもの好奇心というのは、種の部分だと思います。それを植え付けたあとは、肥料や水を与え、手入れをして好奇心の芽、想像力の芽を育てなければいけません。その時に芽が育っていくための栄養が基礎学力だと思います。だからこちらもすごく大事です。

広く科学への理解、親しみを

米村 ここ数十年の技術革新は本当に革命的です。世界中がインターネットで結ばれるなんて想像もできなかったことですから。人間の方がその仕組みについていけなくなり、混乱を生んでいるところもあると思いますね。人間が自分で作った道具に逆に支配されたり、害されたりすることがないように、技術と一緒にそれをコントロールする知恵も子どもたちに伝えていければ素晴らしいですね。

広瀬 そうですね。科学や技術とうまく付き合っていくためにも、実験等を通じて感動を覚え、好奇心を深めていくことは、大事なんじゃないかなと思います。
 そのためには、やはり芸術と同じように、本当に感動を持って科学を感じていくことなんでしょうね。

米村 優秀な研究者や科学者を育てることはもちろんすごく大切なことですけど、そうじゃない大多数の人たちが科学に対して正しい理解をしていることの方が、もっと根本的に大切なことだと思っています。
 そのためには、専門的なことはまかせるけど、科学技術というのは面白くて素晴らしい夢がある、そう思ってくれる「科学ファン」をたくさん育てることが大事です。それが結局は優秀な研究者や技術者を育てることにもつながるし、いま抱えている環境問題やモラルの問題にもきっとつながっていくんじゃないかと思います。

実験の様子

県民へのメッセージ

広瀬 米村さんに科学や教育についていろいろとアドバイスをいただきました。ここで一言、色紙に大分県民の皆さんへのメッセージをいただけないでしょうか。

米村 では、「科楽」。この言葉をおくります。私の造語なんですけど、科学の「学」を楽しむ「楽」にしてみました。

広瀬 科学を楽しむという、まさに今日のテーマですね。 
私の方は「夢・挫折・成長」です。夢を持って研究をしていく、努力していく、そしてきっと挫折がある、挫折も乗り越えなければいけない過程で、どちらも成長につながる大事なことだという意味です。
今日は米村でんじろうさんに知る喜び、学ぶ楽しみについてお話を伺いました。ありがとうございました。

(1月1日放送TOS新春特番要旨)


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