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インタビュー 地球低軌道環境観測衛星「てんこう」プロジェクト

印刷ページの表示 ページ番号:0002053921 更新日:2019年3月1日更新

インタビュー 大分から宇宙へ 地球低軌道環境観測衛星「てんこう」プロジェクト

ロケット40号

H-llAロケット40号機/温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」(GOSAT-2)

2018年10月29日13時8分、JAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)の種子島宇宙センターにおいて、地球低軌道環境観測衛星「てんこう」を載せたH-llAロケットの打上げが成功。まさに、大分県ものづくり企業4社の夢が宇宙へ飛び立った瞬間です。

 「てんこう」は九州工業大学(北九州市)の奥山圭一教授が計画したプロジェクト。奥山教授からの共同開発の提案に対し、県内企業で構成する航空機産業参入研究会「そらけん」から4社が名乗りを上げ、共同開発がスタートしました。
 「てんこう」開発に当たっての主な技術課題は2点。(1)ロケット打上げの時の厳しい機械的環境に耐荷できる「軽量構造」の開発と、(2)過酷な宇宙環境で正常に動作する「制御システム」の開発です。軽量構造については、「江藤製作所」(大分市)が外枠に使われる炭素繊維強化プラスチック製のパネルを、「ニシジマ精機」(佐伯市)がアルミニウム合金製の内部構造を担当。電源や衛星制御システムについては、「デンケン」(由布市)と「ケイティーエス」(杵築市)が受け持ちました。
 「てんこう」のミッションは宇宙放射線の観測や、次世代の工業製品を支える先進材料の宇宙環境での劣化観測で、高度600kmの宇宙空間で2年間、活動を行う予定です。また、「てんこう」開発で培われた技術は今後の宇宙開発に生かされるほか、航空機・自動車・ロボット産業・医療機器に応用展開されるなど様々な産業分野と連携し、活用されることが期待されています。開発者のみなさんにお話を伺いました。

 てんこう

「てんこう」のミッション

■宇宙放射線の観測
■先進材料の宇宙環境劣化観測

宇宙も我々の技術の延長線上

 神品社長

(株)江藤製作所/大分市 代表取締役社長 神品 誠治さん

 14面からなる外部パネルの製作を担当。軽量ながら打上げ時にかかる加速重力や宇宙空間での200度を超える温度差に耐えうる強度を保つ必要があり、まさに手探り状態。炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を使って開発。自社としては初めて扱う素材であり苦労も多かったが、我々の技術の延長線上にあることなので達成できたと思います。今回得た技術は宇宙ビジネスの世界でも注目をされています。日常の汎用製品に生かすアイデアも生まれています。大切なことは、あきらめることは考えない、どうしたらできるかを考えることです。

過酷な環境でも壊れない

仲さん

(株)デンケン/由布市 技術統括室 部長 仲 哲生さん

 自律型電源・通信管理システムを担当。宇宙という過酷な環境の中でも壊れない丈夫な電子回路基板づくりがミッション。県内企業4社と良い連携ができ、県内外に我々の技術力の高さを認識してもらえたことが大きな成果。打上げ成功後、東京国際航空宇宙展の県ブースで出展したところ、大きな関心を持ってもらえた。国の政策もあり、宇宙ビジネスへの新規参入を考えているという大企業の声も多く聞かれた。今回の実績を商談では前面に出してアピールし、航空宇宙関連企業と県内企業の縁も繋いでいきたい。

高い精度の削出加工が求められた

西嶋社長

ニシジマ精機(株)/佐伯市 代表取締役社長 西嶋 真由企さん

 アルミ合金等を使った軽量内部構造を担当。最初は楽しそうという気持ちからの参加でしたが、開発が進むにつれ、レベルも工程も増してハードルが上がっていきました。過密スケジュールの中、JAXAの検査をパスできるかヒヤヒヤしたことも。ロケット打上げ時の振動を考えると溶接が使えず、厚さ1ミリレベルの削出加工を行うなど、高精度の技術が求められました。やってみて初めてわかることも多く、チャレンジする
過程で技術やノウハウを習得できました。 

 日頃やっている技術が宇宙でも通用

津田さん

(株)ケイティーエス/杵築市 常務取締役 津田 幹輔さん

 我々が日頃やっている技術が宇宙でも通用することを確認できたことが大きな成果。
 自律型衛星制御システムを開発したが、ロケット打上げから分離まで1〜2時間の間に地上での20〜30年に匹敵する負荷が一気にかかる。デンケンさんと一緒に一つひとつの課題をクリアしながら完成させたが、打上げ当日、「てんこう」からの通信を受信したとの報告が入った瞬間は最高に嬉しかった。まさに、県内企業4社におけるチームワークの勝利。