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知事からのメッセージ 風紋 与謝野 馨先生のこと

印刷ページの表示 ページ番号:0002040647 更新日:2018年9月21日更新

与謝野 馨先生のこと

大分県知事 広瀬勝貞

 強い陽光に周りの緑という緑がぐんぐん伸びて生命の躍動を感じるとき、たじろぐような日射しの中で、ふと亡くなった恩人の元気な姿を思い出すことがあります。昨年鬼籍に入られた与謝野 馨先生の遺稿集を読みながら在りし日のことを思い出しました。
 素人っぽい、真正直で普通の市民感覚を外さない、だから親しみやすい政治家でした。そもそも、普通のサラリーマンとして仕事をするうちに、人に勧められて、東京一区から与謝野鉄幹・晶子の孫という、この世界では余り大きくない看板だけで戦いに臨み、結果は落選、厳しいスタートでした。
 政治家としてのセンスは確かなものがありました。お父さんが外交官だったこともあり、講和直後の海外生活を経験し、諸国に「佳い国」「強い国」として認められるようにならなければならないと強烈に感じたようです。それに人徳でしょうか、誠実、率直な振る舞いが多くの人にかわいがられ、いろいろ教えてもらったようです。当選して、中曽根元総理に議員の本分は「憲法に基づいて国家を運営することである」と言われたことを大事にしていました。その国家運営に当たっては、いかに日本の力をつけ、国民がきちんとした生活ができるようにするか腐心しておられました。財政、金融、経済運営、教育、それに国際貢献等の面で先んじて課題を捉え、対策を打ち出す、頼りになる政策マンでした。
 実は、高校の先輩、後輩の間柄でしたが、テレくさかったのか「政策とは関係ない」ということか、互いにそのことは口に出しませんでしたが、大変温かくご指導頂きました。
 消費税導入の際には、先生は自民党商工部会長、私は通産省の税制担当課長で、連日顔を合わせて対応を相談させて頂いたものです。名称を消費者の税という意味で消費税とすること、小規模企業などの納税事務を簡素なものにすること、確実に税の転嫁ができる対策をとることなど、与謝野商工部会長にお力を頂きました。
 情報政策には特に熱心に取り組んで頂きました。その一つが情報収集衛星です。日本も独自の情報収集衛星を持つ必要があるという考えを示され、一緒に生産現場を見学し、議論し、資料作りをしました。実現までに紆余曲折ありましたが、その分大変勉強させて頂きました。
 また、これからの情報産業の育成は、秀でた人材を発掘し、思い切り仕事をさせることが大事だと言われ、当時、事務的には難しいとされたヒトへの直接的な投資の制度、今の未踏事業だと思いますが、それを創っていただきました。
 何しろ好奇心旺盛で、人生の彩りとしてカメラ、絵画、囲碁、音楽それに料理と多彩な趣味を楽しんでおられました。いつも語彙豊富で、会話が弾んだのもそのお陰ではないかと思います。本もよく読んでおられましたが、一時は「物理学」特に素粒子物理の勉強もしておられたようです。お陰で世界が広がってロマンのようなものを感じると言っておられました。こちらもあやかってこの夏は「ホーキング、宇宙を語る」を読んでいますが、悪戦苦闘、とてもロマンを感ずるまでには至りません。
 様々憶うに、やはり「先達はあらまほしきもの」です。