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知事からのメッセージ 風紋 -80歳の私は倖せ

印刷ページの表示 ページ番号:0000248200 更新日:2012年1月21日更新

80歳の私は倖せ

大分県知事 広瀬勝貞

  皆様お健やかに新年をお迎えのことと存じます。

 年の始めのめでたさに宝の話、それも宝の中の宝、子どもについて一言。

 年頭に政治学者の姜尚中(かんさんじゅん)さんと対談をさせていただきました。

子どもが一膳のご飯を無心に食べている姿を描いた高山辰雄の「食べる」という絵を見ながら感想を述べ合いました。

私は、「戦後の貧困時代に育ったから、今だに食べることには執着があって、この絵を見ると確かな幸せを感じます」と何とも即物的な話をしたのですが、姜さんの方は「外で遊んでいる自分を母が『ご飯だよ』と呼びに来てくれた時の温かい気持ちを思い出す。この絵には感謝の祈りを感じる」とこちらの方は高い感性を思わせる話をしていました。

 子どもの頃の思いや体験が大人にまで持ちこされて来るものだと実感したものです。英国の詩人が「子どもは大人の父親なり」と詩っていますが、このことを言っていたのだと思います。

 だからこそ、親はもちろん地域の皆さんが子どもに愛情を注ぎ、期待を込めて育んでいくことが重要です。

 姫島の人が言っていましたが、島では子ども達は輝く海を見ながら育ち、小学生になると盆踊りを習い、中学生になると少年消防隊で訓練を受ける。そうやって大人や先輩の手ほどきを受けながら、島の自然に誇りを持ち、生活を楽しみ、社会に尽くすことを学び、自ずと島への愛着を育んでいくのだそうです。

 子どもは宝ですが、だからと言って子どもの欲するままに育てればいい訳ではありません。
やはり「しっかり抱いて、下におろして、歩かせる」、たっぷり愛情を注ぎ、一方で自立への準備もさせ、社会に送り出していくことです。

 毎年「少年の船」に乗船し、子ども達を見ていると、集団生活の中で規律や言葉遣い、そして友への思いやりなどいろいろなことを吸収し、日ごとに大きくなっていくのを目の当たりにして、本当に頼もしく思います。

 突然、猿の話で恐縮ですが、永年高崎山の猿を観察している人から考えさせられる話を聞きました。近頃高崎山最大のA群が消滅の憂き目に合ったのですが、それはA群で子猿を甘やかして自立させられなかった、いわば子育てに失敗したことが原因だったそうです。

 「おおいた教育の日」に寄せられたエッセーに、豊府中学の田崎萌亜さんの「おばあちゃんの書」というのがありました。
 祖母の愛情を受け止め成長していく孫、その孫の成長を喜ぶ祖母の姿が述べられています。県美展で入賞した書にその祖母は「孫たちの 精一杯の 努力の 成果が 傳(つた)わって 80歳の私は倖せ 一杯」と書きました。私も「倖せ一杯」になりました。

県政だより新時代おおいたvol.80 2012年1月発行